挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
七人の勇者と咎の龍 作者:ホライゾン

第三章 不思議の国のエルフ

35/36

3-6 白虎激戦

 白虎はやや優勢に戦いを進めていた。その巨大な体躯と強靭な肉体を利用し、森内部を縦横無尽に走り回り、飛鳥達に襲い掛かっていた。しばらくして飛鳥と和弥も戦闘に入り込み、木の上から攻撃を仕掛けるが大したダメージは入っていないように見えた。まともにダメージを入れられているのはジャック、レイス、レスカ、リク、サーシャの五人だった。

 意外にもリクの戦闘能力は高く、勇敢にも白虎に頻繁に突っ込んでは自分の体を魔法で武装し戦う魔法を用いて格闘を繰り返していた。リクはその小柄な体を利用して白虎の巨大な体躯を潜り抜けていた。もはや、弥生にボコボコにされたことなど何だったのか分からないほどであった。

「ガキンチョ、中々やるじゃねえか」

 白虎との格闘から一度距離を取り、後ろに下がってきたところをレイスがリクの頭をポンと手で押さえる。それをリクは乱暴に振り払いレイスを見上げた。

「当たり前だろ、元々俺はこの白虎を倒すために力を付けたんだからな」

 リクはそう言って、自分の両手を氷で包み込み、手先を氷柱のように尖らせた。

「にしてもお前は随分と白虎にご執心のようだな。なんでだ?」

「あいつを倒して、エルフ共に俺を認めさせてやるためだ」

 リクは目を細める。白虎がリクを見据え、走り出す。リクは姿勢を落とす。レイスも錬金術の陣を展開する。それと同時に、魔法で炎の剣を構える。

「さて、話は戦いながらにするか。子供ばかりに危険な目に合わせるのも癪だ。俺も白虎と斬り合ってみるか。レスカ、ジャックさん、サポート頼むよ」

 レスカとジャックは無言で頷く。

 レイスとリクが走り出し白虎と斬り合いを始める。

「なんでそんなにエルフに認めてもらいたいんだ? あんな奴ら無視すればいいだろ」

 炎の剣を振るいながらレイスはリクに問い掛ける。リクは白虎の腹部に潜り込みながら答える。

「俺は気付いた時にはエルフの里にいた。そんでずっとエルフの傍で育ってきた。俺はカーリーの元で育てられながらもエルフ達が俺を見下してるのが分かった。俺は人間だからな。生まれて十四年間、俺はずっとエルフに対して見下され、憐れまれて、生きてきたんだ。だからあいつらに俺はすげえんだってところを見せつけてやるんだ。そうしないと俺の生きてきた意味がない。今まで頑張ってきた意味がないんだ。元々は白虎じゃなくてカーリーをぶっ倒して認めさせてやるつもりだったが中々難しくてな。あの性悪ババア、性格悪い癖に強さは一級だからな」

「それで代わりに白虎か……っておっと危ない」

 白虎の鋭利な細長い爪をレイスの胸部を微かに捉えた。間一髪でレイスは避けて、代わりに炎の剣で引っ掻いてきた腕を狙う。しかし、それもあっさりと避けられてしまう。

「しかし、白虎討伐を狙ってた……か。あの性悪ババアめ……、リクが言わなかったら何も言わないつもりだったと思うと今でも殺意が湧いてくる……エルフは人間じゃないから殺してもいいよな?」

「いや、俺に聞かれても! でも一度くらいは殺しておくべきだあの女! ってうお! 危ねえ!」

 リクがそう答えながら白虎の足蹴を避ける。その太い四肢で踏まれたらリクなどあっさりと死んでしまうだろう。ジャックは姿勢をぐっと下げて白虎の下に入り込み、リクを抱えて白虎から脱出する。

 リクを降ろしてからリクに再度言葉を投げる。

「まあ、それでもカーリーを殺すのはなしだな」

「なんでだ? 聞くにあんたもカーリーのことが憎いんじゃないのか?」

 リクは片眉を上げる。

「確かにカーリーのことは憎いがあいつを殺すの話だ。カーリーは腐ってもレスカの母親だからな」

「好きなのか?」

 リクが尋ねるとレイスはあっさりと答える。

「気は強いし、口は乱暴だしおっかないけどな……、でも大切な人だ」

「全部聞こえてるんですけど?」

 後ろから人影が近づいてきた。人影を見てレイスはぎょっとした。すぐ後ろにいたことをすっかり忘れていたのだ。彼女はゆっくりと錬金術の陣を展開しながらレイスの方へと近づいてきた。そして、横目にレイスとリクを見てから溜息を付き、白虎をの方を見た。レイスは汗を掻きながら弁明をするしかなかった。

「あ、あのなレスカ? 今のは別に本心じゃねえぞ? な? 俺がお前を愛してるのは本当だから」

「兄ちゃん、すげー恥ずかしいこと言ってるぞ」

 リクが呆れたように言う。だが、レイスは構ってる余裕すらなかった。

「まあ、とにかく気にするなレスカ」

「なんで、あなたがそんな上から目線なんですか。まあいいですこの戦いが終わったら弁明は十分に聞きます。その上で説教です」

「お手柔らかに頼むぜ」

 レイスがちらりとレスカを見る。そして、表情を見て安堵した。いつもの和やかな表情だ。表面上は仏頂面のように見えるがなんとなく悪い気は起こしてない様子の顔に感じた。レイスは心の中で一息ついた。

 そして、目の前の飛び回る白虎に改めて視線を向ける。今は、遠距離攻撃主体で攻撃しているため白虎の接近は許していない。それもレスカの時間差による連続の錬金術の攻撃による部分が多い。次の錬金術の陣を展開する間に少し前に造り上げた陣から攻撃が射出される。大量同時展開の出来るセシリアとは別の燃費の悪い錬金術の弱点を補った戦法だ。

 再び、白虎が再び咆哮の姿勢に入る。それを見たレイスがサーシャに掛け声をする。

「サーシャ! 咆哮だ!」

「はいなのですよ!」

 白虎から咆哮が放たれると同時にサーシャが相殺するかのように音波を放つ。

 だが、その時異変が起こった。

「頭が揺れる!」

 その場にいた全員が頭を押さえた。白虎の咆哮がこちらに届いてきたのだ。木の上にいた人もなんとか体を支えながら耳を押さえて必死に姿勢を保っていた。

「はあ……はあ……ごめんなさいなのですよ。僅かに……はあ……タイミングをずらしてしまったのですよ」

 サーシャが肩で息をしながらそう説明した。

「サーシャ、あまり無理するな。今のミスは気にするな、大した被害じゃない」

 実際のところはレイスはまだ頭がガンガンするがこうでも言わないとサーシャのメンタル面に影響が出るだろうと考えて、敢えて平気な風を装っていた。

 今まで白虎とはまともに戦えていた規格外の体躯を持つ強大な魔獣に対して、何とか戦ってこれていたのだ。

 しかし、それもサーシャが咆哮を全て無力化していることによる部分が大きい。彼女が居なければ遠くから咆哮するだけで全滅するのが関の山だった。

「はあ……はあ……頑張らないと……なのですよ……」

 サーシャの体力が大幅に消耗して限界に近くなってきていた。

 しかし、無情にももう一度白虎は咆哮の構えをする。

 サーシャは再び咆哮の打消しを狙う。しかし、やはり完璧には打ち消しきれず咆哮が飛鳥達を襲う。さすがに威力が減退されているとはいえ何発も食らうのはまずい。なんとかしなければいけなかった。仕方なく、レイスはサーシャの元に駆け寄る。

「くっ、仕方ねえ。サーシャ少し休め! 俺が木の上で回復させる。回復系はお前ほど得意じゃねえから時間は多少掛かるかもしれないがこの際仕方ないだろう」

「ごめんなさいなのですよ」

「謝るのはこの戦いが終わってからにしてくれ」

 そう言って、レイスはサーシャを抱えて木の上まで飛び上がっていった。飛鳥達が立っているところよりも更に少し高い位置にまで登ってきた。これなら白虎に襲われる心配もないだろう。そして、レイスが声を上げる。

「お前ら、死んでも白虎に咆哮を撃たせるな! 咆哮を撃ちそうになったら死ぬ気で妨害するんだ!」

「恐ろしく無茶なこと言ってますねあの馬鹿は」

「まあ、やってやろうぜレスカ。レイスの奴に時間稼ぎの貸しも作れるしな」

「あんな兄ちゃんが居なくても余裕だろ」

 レスカ、ジャック、リクはそれぞれが意気込み、ぐっと前に出て白虎との間合いを詰める。

 リクは両手にまとわせた氷の刃を構え、白虎に向かって走り出す。リクが白虎と格闘を繰り返しながら近距離でジャックとレスカが錬金術を放ち、木の上から飛鳥、和弥、弥生、セシリアが魔法を絶え間なく放ち、文字通り咆哮を撃たせる余裕を造らせないように戦っていた。


 それから五分が経過した。順調にサーシャの回復が進んでいた。後数分も集中して回復させれば戦闘に復帰できるだろうと感じた。サーシャ自身の顔色も随分と良くなっていた。そして、レイスは上空から戦闘の様子を窺った。

「もうちょいだサーシャ。あっちもなんとかやれているようだ」

「ありがとうなのですよ。だけど、さっきから気になっているのですが……」

 サーシャが僅かに体を起こした。そして、遠くの方を見た。

「どうした? あっちになんかあるのか?」

「いえ……こちらに何か向かっているような……強烈に殺気を放っている魔獣が一体こちらに来ているような気がしますのですよ」

 サーシャの言葉にレイスが呆気にとられた。事と次第によって重大な内容だからだ。

「は……? 待てよ、そいつどんな感じの奴だ? 分かるか? 強そうか?」

「まだ遠くなので詳しいことは分からないのですよ。ですがあれがこっちに到達すれば穏やかにはいかないと思うのですよ」

「マジかよ、ちっさっさと済ませねえと。どれくらいでこっちまで到着しそうだ?」

「後五分ってところなのですよ」

「早えな糞、こっちの回復が終わってすぐくらいじゃねえか」

 レイスは上から声を飛ばした。

「おい! サーシャの情報だが、こっちに未確認の魔獣がどうやら接近してるようだ! 殺気を放っていて、おまり穏やかにはいかなさそうだ! 合流まで五分ほどだ!」

 そう言うと、地上の方から声が返ってきた。

「おう、レイス心配すんな! 俺達も殺気には気が付いた。五分ってところまでは分からなかったから助かった! まあ、なんとかするしかないだろ! そっちも終わりそうか!?」

 ジャックがそう楽観的に返してきた。確かに、やってきている以上はどうしようもないからなんとかするしかないのだが、口で言うほど簡単な話にはならなさそうなのはレイスは感じていた。それはもちろん発言者のジャックも分かっていた。だが、一々悲観的になっていても仕方ないのも事実だった。

「ジャックさん、こっちも終わりそうですよ! 後数分で!」

「おう、早く降りてこい。子供達にこれ以上頑張らさせるわけにもいかん!」

「今、終わりました! 降ります!」

 レイスがそう返した。そして、サーシャを改めてしっかり抱き抱えて、地上へと真っ直ぐに降りて行った。そして、着地と同時にサーシャを降ろした。

「サーシャ、状況は悪い方向へ向かっているようだ。頑張るぞ」

「迷惑掛けた分は頑張るのですよ!」

 サーシャが気合を入れてそう言った。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ