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七人の勇者と咎の龍 作者:ホライゾン

第三章 不思議の国のエルフ

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3-3 弥生VSリク

「さて、本題に入りましょうか」

 カーリーは椅子に深く腰掛け、飛鳥達全員を視界に捉えた。

「先刻、そちらの国王から連絡があったと思いますが、あなた方にはエルフの里の森――つまりあなた達が未開地の森と呼ぶ場所を調査してほしいのです」

「報酬は?」

「レイス、落ち着け」

 ジャックがレイスをたしなめる。そして、ジャックが再びカーリーと向かい合う。

「まあだけどだ、実際のところは報酬くらいは確かに聞いておきたいもんだな。異物の調査らしいがどうせそんなものは建前だろ? 本来の目的はもっと面倒なところにあるはずだ。たかだか森の異物調査だけならこんなに大人数なんていらねえ、二、三人いれば十分な筈だ。そうだろう?」

「一応、訂正しておきますと私が呼んだのは資格者とレスカだけなのですがね。あなたとそこのレイスとかいう盗賊は呼んでないんですがね。まあ別に今更追い返すこともするだけ無駄なのでイチイチ文句も言いませんが」

 カーリーはそう言ってさりげなくジャックの追及をはぐらかした。しかし、今度は飛鳥がカーリーに向けて質問をぶつける。

「カーリー、そのことで聞きたいことがある」

「なんでしょう?」

 飛鳥は淡々と続ける。

「なんで今回、弥彦を呼ばなかった? 聞いたところによると資格者の中であいつだけは呼ばなかったそうじゃねえか」

 飛鳥の質問にカーリーも同じく淡々と返す。

「彼は囚人なのでしょう? だからです。おいそれと気軽には呼び出せないような立ち位置にいるとそう判断し、国王の気を使い、彼だけは呼ぶのを遠慮したのです」

「まあ、俺も重犯罪者の現役囚人なんだけどな」

 レイスがボソッとそう呟いたが、カーリーは目も向けず、無視をした。

「では、今回の概要を説明しましょう」

 一息。

「あなた方には、あなた方が未開地の森と呼んでいるエルフの里の森の調査をしてもらいます。今回の調査の目的はエルフの里に突如出現したと思われる謎の異物についてです。大体の位置はこちらで探知してはいますので後で地図を渡しましょう」

「後の注意点は森の内部で迷わないことですね。今回は地図があるので平気でしょうけど。ね、簡単でしょう?」

 カーリーは両手を広げ、にっこりとしながら説明を終わらせようとしたが、カーリー以外に笑う者など当然いなかった。そして、ジャックが少しだけ苛立ちを示した。

「だから、全部を話せカーリー。さっきも言ったがそんな単純な話じゃないんだろう。それを話せ、あと報酬についてもだ」

「いえ? 別に何も不足はないと思いますが、ただの調査、これが本題なのは嘘偽りありませんよ? 報酬についても必ずそれなりのものを用意しましょう」

「だけど、本当のことも言ってないだろう?」

「本当のことも何も私たちはあの森に直接入ったことはないのですよ? 本当の意味で未開地なのですよ、あの森は」

「まあ、言いたくないなら言わなくてもいい、聞いても無駄だろうからな。その代わり……」

 ジャックが喋っている途中に天幕が大きく揺れた。外から誰かが入ってきたのだ。

「おい、ババア! 面白そうな話してんじゃねえか! 俺も混ぜろ!」

 中に入ってきた小さな影が威勢よくそう言い放った。

「なんですか、リク? 入ってくるなり随分と元気がいいですね。少し静かにしてくれませんか?」

「あの森に行くんだろ!? なら俺も行くぞ! 力試しにはもってこいだろ!」

 力試し……という言葉に全員の眉根が上がる。

「リク、だからあまり大きな声で喋らないでください。彼らも驚いていますよ」

「お前の命令なんか聞くか、この性悪ババアが! とにかく、おれもあの森に行かせてもらうぞ!」

 カーリーはリクの不遜な態度に眉根が上がるのを抑え、顔を伏せてため息をついた。その後、再び顔を上げた。

「まあ、私としては構わないですがね。彼らが良しといえばですが…………このタイミングは初めてなので少々驚きましたが」

 そう言ってカーリーは飛鳥達を指差した。

「ああ、このにーちゃん達か。なあ、いいだろ!?」

 リクはまず一番傍にいたレイスの顔を見上げ、そう聞いてきた。

「ボウズ、随分と威勢がいいようだがこれは遊びじゃないんだぞ? 気合が入ってるのはいいが少しは身の程も――」

 レイスがリクを説得するように説明していたが、途中で言葉を切らされてしまった。

「うお!?」

 レイスが辛うじて体を仰け反った正面を鋭い風がすり抜ける。そこには、瞬時に回し蹴りを放っていたリクの姿があった。

「どうだよ? 俺だって戦えるんだぞ。魔法の才能だってある」

「おう、悪かったな。確かにお前はそこそこ戦えるようだ――――」

「なら……」

 リクがこれでもかとくらいに言葉で食いついてきた。しかし、レイスはそれでも尚リクに言い放つ。

「だがそれでも駄目だ」

「なんでだよ!?」

 リクが必死に叫び、レイスの服を掴み激しく前後に揺らす。だが、それでもレイスは毅然と立ち、リクを見下ろす。

「それは、お前がまだ子供だからだ」

「だから、子供だからって馬鹿にするなよ!」

「馬鹿にはしていない。お前の才能は高いように思う。今現在でも歳の割には強い。だが、それでも駄目だ。何故ならそれはお前が子供だからだ。お前のその様子から察するに森の中にはやばい魔獣かなんかがいるんだろう? 未来有望な子供を潰したくはない。だからここは我慢しろ」

「そんな悠長なこと言ってる場合じゃ……俺は……ここの奴らに認めてもらわなくちゃいけないんだ……!」

 リクは掴んでいた手を放し、一歩、二歩と下がる。レイスは小さく一つ溜息を付いた。

「まあ、お前の事情は分からんでもないがな。人間はお前一人だけなんだろう? そりゃ、生き辛いさ。でもな、それでも、お前は未来有望な子供なんだ。俺達が無事帰ってきたら少し話をしよう。そうしたら、お前の気も晴らしてやることも出来るだろう」

「それじゃあ駄目なんだ! それじゃあ……!」

 そこまで言うとリクははっとしたように何かを思いつき、手をポンと叩いた。

「そうだ、あんたらが連れて行ってくれないのあんら魔獣の情報教えてやんねー」

「なっ!? 坊主てめえ……教えやがれ」

「俺を連れて行くって誓ったら教えてやるよ!」

リクは一転して優位に立ったかのようにドヤ顔を始めていた。それこそ全面的勝ち誇ったかのようにだ。レイスが唇を噛んでいると傍で聞いていた弥生がリクに近づきながら声を掛ける。

「リク、あんたあんまり調子に乗らないの。別に私達、無理にあんたから情報を聞く必要なんてないのよ。私達こう見えて結構強いのよ」

「はっ! さっきの見間違い女じゃねえか! 女が自分で強いとか言ってんじゃねえぞ! 己惚れんな!」

「ほう……へえ……? あんた、今なんて言ったのかしら……? もう一度言ってごらんなさい」

「はうっ!……」

「ひいっ!……」

 リクの物言いに静かに返答する弥生を見て、飛鳥と和弥が同時に肩を震わせた。顔面蒼白で弥生の顔色を伺う。しかし、それは二人の思っていた以上に弥生の顔は鬼の形相をしていた。余計に肩を震わせ、お互いに肩を組んですっと同時に一歩後ろに下がる。

 その様子を見て、レイスとサーシャが二人に耳打ちをした。

「二人共、弥生が珍しくすごい形相だがあれそんなに怖いのか?」

 飛鳥は恐る恐る声を振り絞って小さく答えた。

「弥生が五年前にあの形相をした時、一つ年上の男を三十人まとめて二の足で自力で立ち上がれなくなるほどボコボコにして、トラウマ植え付けて再起不能にした。実質的に廃人状態まで追い込んだ気がする」

「それは……おっかねえなあ……マジで」

 レイスも僅かに顔が引き攣っていた。話を聞いていたサーシャとセシリアも顔が青ざめていた。平然としているのはレスカとジャック、カーリーくらいなものだった。

 そして、鬼の形相をした弥生とリクは向かい合ってお互いに睨みあっていた。リクは僅かに気持ち顔を仰け反らした。リクは汗を流しながら、一杯に気持ちを張った。

「は……はっ! そんな凄んだって……び、ビビんねえぞ! 脅かしなんて通用しねえからな!」

「その割には声がビビってるようだけどねえ? 謝るなら今のうちよ?……死にたくないならね」

「はっ! ビビらねえぞ! 死ぬのはあんたの方だ!」

「じゃあ、仕方ないね。ここじゃ、狭いから外に行きましょう? 人生の墓場にはちょうどいいでしょう」

「あ、あんたの墓場だけどな!」

 弥生とリクは再び外に出る。それに続いて他の人も外にずらずらと出ていく。最後にジャックがカーリーに一言言う。

「悪いな、カーリー。後でまた話の続きだ」

「まあいいでしょう、あの二人にやりすぎないように言っておいてください。リクが再起不能になっても困りますので。あと、別にゆっくりしていてくれて構いませんよ。一週間くらいここでゆっくりしてから森に向かってもらうつもりでしたので」

「ああ、分かったまたな」

 そして、ジャックもカーリーの小屋から出て行った。

 出入り口の外では既に弥生とリクの戦いが始まっていた。勝負は当然のように一方的に行われていた。リクは持ちうる限りの魔法の全てを駆使して応戦するが魔法を殆ど使っていない弥生に全く歯が立たず、ボコボコにされ続けていた。

 結局、十分の後にリクは全身をボコボコに殴打され地面に突っ伏し気絶した。その一方で弥生は殆ど怪我をしておらず、勝負の体すら成してないほどの一方的に勝負であった。
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