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七人の勇者と咎の龍 作者:ホライゾン

第三章 不思議の国のエルフ

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3-1 船出

 某日、飛鳥達は国王に呼び出しを受けていた。

 聞いたところによると、エルフ族の長であるカーリー・ミストからエルフの里に来てほしいと打診があったからだ。

 ここ、謁見の場には既にカーリーの姿はないがカーリーから伝言という形で国王より飛鳥達の耳に入ってきたのだ。

「『霧島飛鳥、霧雨弥生、西島和弥、セシリア・ホーネスト、サーシャ・アーネローゼ、レスカ・アルティミリアの六名はエルフの里まで来てください』とのことのようじゃ。ワシとしてはっきり言って突っぱねたいところじゃが、そう言うわけにもいかぬからのう……――」

 そう言って、玉座に深く腰掛けている国王はチラリとレスカの方を見た。

「なんでしょう?」

 レスカは聞き返す。

「カーリーの奴はお主もエルフの里に来いと言っておる。だが、ワシとしてはお主が行きたくないというのなら無理に行かんでもいいと思っておる。ワシはカーリーよりかはお主の見方をしたいと思っておるしな。どうする? お主もついていくか?」

 国王は尋ねてきた。レスカは顔を伏せてしばらく深く考え込んでいた。そして、考えがまとまったのちに顔を上げ、国王を真っ直ぐと見た。

「お気遣い感謝いたします。私もエルフの里に行きましょう。しかし条件があります」

「条件とは?」

「指定した以外の同行者を認めてください。まずは、ジャック・ホーネストの同行。そして――」

 レスカは一瞬の間を置き、息を吸いはっきりとした口調で言い放った。

「レイス・レオンハートの同行を認めてもらいます。その二人が同行するというのなら私も行きましょう。二人のどちらかでも欠けるというのでしたら私はエルフの里へは行きません」

 謁見の間全体に妙な空気が流れ込んできた。同行させる人物に雇い主であるジャック・ホーネストの他にあのレイス・レオンハートを指定してきたのだ。一瞬、国王は驚いたような表情を見せたがすぐに戻り、深く黙って思考し続けた。しばらくしてからゆっくりと言葉を作る。

「…………うーむ、ジャック・ホーネストの同行は問題ないじゃろう。しかしじゃな、レイス・レオンハートはそうも簡単にはいかん。なにせ奴は超重犯罪者じゃからのう。投獄してからはそれなりに更生はしているようじゃが、まだ刑期を終えているわけでもないし、世間の目もある。中々そう簡単には外には出せん。前回のウィルオー・ザ・ウィスプの時もかなり苦労したのじゃ、世間の目の誤魔化しと周囲の金持ち共への根回し等々、本当に苦労した。あの時はウィルオー・ザ・ウィスプの討伐という大義名分があったのじゃが今回はそう言うわけではない。はっきり言って、奴を連れ出すのは難しいじゃろう」

「ですが、レイスが一緒でないのなら私は絶対に動きません」

 レスカは確固たる意志を持って頑固な程に意見を緩めない。国王相手には本来無礼どころではないのだが、そこは国王の人柄が問題にしなかった。

「さて、どうしたものか…………」

「あのーちょっとよろしいでしょうか?」

 飛鳥がそっと手を上げる。国王は飛鳥を一瞥し、発言を促す。

「申してみよ」

「では畏れながら。国王はなぜそんなにカーリーのことを尊重しようとしているのですか? カーリーの性格が最悪なのは国王もご存知かと思いますが。彼女、ただの一種族の首長ですよね?」

「そのことか。ワシがあやつのことを無碍に出来ないのはあやつがエルフ族の長だからじゃ」

「と言いますと?」

 飛鳥は首を傾げる。

「エルフ族というのは人間と同様に種の歴史が長く――むしろ人間よりも記録は古いのじゃが、まあそんなエルフ族の長となると、立場は国王と同じようなものじゃ、正確には違うがの。それで、そのエルフ族の長というとワシから見れば他国の国王と同じ立場の相手なのじゃ。外交面からあまり無下にはしたくても出来ない。それなりに尊重せねばならぬ。だから、ワシはあの性格の悪いカーリーを尊重するのじゃ」

「ありがとうございました。そのような事情があったとは思いもしませんでした。無礼なことを聞いてしまい、申し訳ございませんでした」

 飛鳥は頭を斜めに下げる。だが、国王はすぐに頭を上げさせた。

「まあよい。それで先程の続きじゃが、はてさてどうしたものか……。いっそのこと、レスカは無理だって言って突っぱねてみるかの。後々で面倒なことになるじゃろうが………………そうじゃ!」

 国王は何かを思いつき、レスカを真っ直ぐに見る。

「おそらく、今回の旅は往復で三か月は掛かる。だから、レイスが空ける三か月分の懲役をレスカ自身が肩代わりするのじゃ。まあ、本来そんなことじゃ代わりにはならんがまあそのくらいは譲歩してやるとするかの。どうする? もちろん、服役するのは帰ってきてからで良い」

「いいでしょう」

 レスカは即答した。国王は深く項垂れた。

「まあ、お主がいいというならわしも全力でレイスが外に出れるように取り図ろう。しかし、お主はどうしてそこまで奴を気に掛けるのじゃ? わしには到底理解出来ん」

「私にもよく分かっておりませんので」

「難しいのう……」


 それから一週間後、結局ジャックとレイス引き連れてエルフの里に向かうことになった。ちなみに、レイスの外出許可の根回しで国王は精神的に相当な疲労が溜まったようだった。

 そして一行は陸地を二週間掛けて進んでから海岸沿いで船に乗り込み、エルフの里に直接向かうところまで進んできた。

 船尾のテラスで風にあたりながら飛鳥は和弥に話しかけた。

「エルフの里――普通だったらワクワクするところなんだろうけど、まるでそんな感じはしないな」

 和弥は鼻で小さく笑い、言葉を返す。

「そうだねえ。まあ、あのカーリーの呼び出しだからどうせまたろくでもないことだろうしねえ」

「違いない」

 二人で笑い合う。

「ところでさ……」

「なんだい?」

 和弥が聞き返す。

「なんで、今回は弥彦が呼ばれてないんだろうな」

「彼が囚人だからじゃない?」

「でも、カーリーが国王と同じ立場だってんなら無理に呼び出すことも可能な筈だろ。大体、レイスほど重罪じゃないって聞いてるわけだが」

 飛鳥はそう説明すると和弥がハッとしたように納得して頷いた。

「確かにねえ。呼ぶことなんて考えれば割と楽だねえ。でも、どうせ俺らにはわからない何か理由でもあるんだろうねえ。なんせカーリーのことだ。ろくでもない理由に決まってるけど考えたところで思いつくようなことじゃないから考える無駄だけどねえ」

「そうだな……直接聞いて確かめるしかないか」

「だねえ」

 それっきり、二人はテラス上で風を気持ちよく受けていた。せめて今だけは気持ちを楽にしておきたかった。


 三週間の船旅の後にエルフの里が見えてきた。
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