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七人の勇者と咎の龍 作者:ホライゾン

第一章 終わりの始まり

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1-last 龍の盟約

「一通りの話が分かった。ワシの衛兵共よりも随分と早く帰還した理由が分かった。まずは、無事に帰還したこと、心から嬉しく思う。何かあったら、ジャック(ばか)が乗り込んで来かねんのでな」

 あれから更に一日掛け、城へと辿り着いた飛鳥達は城へと結果報告に上がった。事の顛末を話すと深く頷いた。そして、次第に視線はレイス・レオンハートへと向けられた。

 レイスはあれから結局、城に着くまで本当に寝ており、城内で起こされて、そのままここまで連行されてきたのだ。彼は途中に逃げようとする素振りは見せず、すんなりと付いてきた。むしろ、咎人とは思えないほど堂々としている。飛鳥達、宿屋の人間の方が落ち込んですらいる状態だ。

「お主が件の幽霊盗賊団の団長じゃな?」

「ええ。レイス・レオンハートと申します」

 レイスは軽くお辞儀をする。国王はじっとレイスを見つめる。

「お主はこの神龍王国において各地で盗みを繰り返してきた大罪人。決して、軽い罪にはならんぞ。何故、すんなり付いてきた? 逃げようとは思わなかったのか?」

「正直、あまりにも疲れてたんで逃げるのも面倒だった」

「軽い男じゃのう。まあよい」

 次に国王はレスカの方を見る。視線が合うとレスカは僅かに頭を下げる。

「レスカ、お主の此度の行動は些か軽率に思う。ジャックにも随分と心配と迷惑をかけたはずじゃ、猛省するといい。じゃが、不測の事態でウィルオー・ザ・ウィスプと接敵しながらも無事に生きて戻ってきたことは良きことと言えるじゃろう。その点に関してはレイス・レオンハートの尽力があったそうじゃな。レイス・レオンハート、礼を言おう」

「いやあ、俺みたいな盗賊団の団長に感謝なんかしちゃ駄目でしょ。いや本当に」

 レイスは飄々とした態度でそう答える。それを国王は睨み付ける。

「餓鬼め。感謝なんぞしとらんわ。一応、形式的に礼を述べただけじゃ」

「国王、よろしいでしょうか?」

 レスカが右手を小さく上げ、発言を許可を求める。国王は、頷いた。了承の意味だ。

「はっ、では恐れながら……先の件のウィルオー・ザ・ウィスプですが、過去に例を見ないところに姿を現したどころか、逃げる際にかなりの距離を追跡されました。このウィルオー・ザ・ウィスプという魔獣に対して今一度、情報を集めなおして再調査すべきかと存じます」

「その点に関しても調べなおさなくてはの。何故、今回急に遠くまで姿を現すようになったのか、調べる必要があるの。加えて、対処もせねばなるまい。これ以上は放ってはおけないじゃろう。一年以内に討伐隊を組むこととする」

「失礼ですが一年とは随分と掛かりますね?」

 レスカが追加で質問する。

「これでも、急ピッチなのじゃ。ワシは他にもやらねばならぬことがあるのでな。…………そうじゃ、お主達なら話してもよかろう。決して、口外してはなるぬ話じゃが、もうすぐ龍との盟約が尽きる日が近いのじゃ。神龍との盟約が尽きれば、この国は神龍にとって何をされるか分からぬ。決して、いい方向に進まぬことだけは確かじゃ。神龍は元よりこの世界に対して友好的ではないのでな。だから、先手を打つために神龍の居場所を突き止める。まあ、すでに検討はいくつか付けてあるのじゃがな」

 神龍という言葉に反応を見せるものがいた。飛鳥だ。

 神龍――龍と呼ばれる存在に飛鳥は心当たりがあった。ウィルオー・ザ・ウィスプに悪夢を見せられた際にその存在を見た。無論、それが神龍と呼ばれる存在かは分からない。だが、手掛かりになることには違いないだろう。そう思い、国王に進言する。

「国王、よろしいでしょうか?」

 飛鳥は夢で見た内容を事細かく正確に説明した。そうすると、国王は深く考え込んだ後に口を開いた。

「そこの、キリシマ・アスカの話を信じるのであればやはり、神龍は『最果て』にいる可能性が高いようじゃの」

「『最果て』…………」

「うむ、最果てと呼ばれる最西端にある生物が一切生息していないと言われている暗黒の地じゃ、あそこの周りは海流が物凄い乱れている上に霧も濃く、噂では空間が歪んでいるとも言われている。まず、辿り着くのも困難じゃ。少なくともワシの生きている間に辿り着けたという報告は一切あがっていない。歴史書に何名かの報告があるのみじゃ。世界でもこんな未踏の地なんてのは後、一ヶ所しか存在していないのじゃがそれについてはまた今度としよう、レスカもいるしの」

 レスカの表情が一瞬にして堅くなる。周りの人間は何のことか分からず、キョトンとしている。

「まあ、今は話せることはもうないじゃろう。宿屋『ホーネスト』の諸君は今日のところは宿屋に戻りたまえ。ジャックもかなり心配しているはずじゃ。レイス・レオンハートについては牢屋にて身柄を拘束する」

「承りました」
「へいへい」

 レイスのみ軽い返事をする。そして、衛兵に引っ張られたように連れていかれた。飛鳥達はレスカの後に並んで一礼した後に退室した。去り際に、サーシャが空気を読まずにレイスに大きな声で礼を言っていたが、これについてはさほど問題にはならなかった。国王の人柄とサーシャの人間性が功をそうしたようだ。そしてそのまま、宿屋へと真っ直ぐ帰還した。

 宿屋に着くなり、松葉杖を突いていたジャックにレスカを含む飛鳥達一行はこっぴどく叱られてしまった。最終的にはやむなく盗賊団への仕返しを認めたジャックだがやはりずっと心配でいたようでレスカ達が帰還するとレスカ、飛鳥、弥生、和弥、セシリア、サーシャの六人全員に平手打ちをすると同時に肩を強く抱きしめた。特に、セシリアとレスカのことは特に強く抱きしめていた。

「レスカ、もうあまり俺の見ていないところで無理をするな。前にも言ったかもしれないがお前はもうセシリアと同じ、俺の娘同然の存在だ。娘を失って平気な親なんていない。だから、もう俺に心配掛けさせないでくれ」

「……ごめんなさい。お義父さん」

 レスカが珍しく一頻(ひとしき)り泣いた後には泣き顔からいつもの凛とした顔立ちに戻っていた。

 聞いたところによると宿屋はまだ、通常業務に復帰は出来ないそうだ。荒らされた宿屋内は大方片付いたようだが、従業員の方が怪我人ばかりでとても働ける状態ではなく、さすがに傷の少ないレスカや飛鳥達だけで宿屋を回すのは厳しいということで今のところは通常業務は無期限休業中だ。

「次は負けない」

 飛鳥達は敗北を噛みしめ、まずは宿屋内の清掃業務から再開した。
これにて第一章は完結となります。
次回より第二章「黒龍の咆哮」が開始となります。
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