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七人の勇者と咎の龍 作者:ホライゾン

第一章 終わりの始まり

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1-11 乱戦! 盗賊団VS武装宿屋

 飛鳥達が戦場になだれ込み、場は一瞬乱れる。だが、乱れはすぐに整い、落ち着きを取り戻す。

「敵の数、すげえな……」

 飛鳥はそんなことを呟いた。見ると、城の衛兵は制服を着用しているため一目で分かるが敵は明らかに三倍以上はいる。百人以上はいると見ていいだろう。予想はしていたといえ、やはいすごい戦力差だ。よく見ると衛兵達も頑張ってはいるが段々押されてきている。

 戦場の全体像を見ると少し離れたところに一人の男性が先頭には加わらずに見物を決めていたのが見えた。おそらく、盗賊団のボスだろう。飛鳥はそれをいち早くレスカに伝える。

「レスカさん! あそこにボスっぽいのが!」

「気付いていますよ。あの男は私が相手してきましょう。雰囲気で分かります、旦那様をやったのはあいつでしょう。あなた方は邪魔が入らないようにあの乱戦に交じって助太刀に入らせないように戦っていてください」

「了解!」

 レスカだけ方向を少し変え、ボスと思われる男の方へ向かう。飛鳥達は予定通りに乱戦に乗り込む。

 飛鳥達が乗り込むと衛兵たちがこちらに声を掛ける。

「君達は!?」

「宿屋『ホーネスト』の所属です!!」

 そう答えると衛兵達は一気に士気が沸き立った。

「おおおおお! 皆聞け! 『武装宿屋』が応援に駆けつけてきてくれたぞ!」

「うおおおおお!」

 各所から歓声が沸き上がる。いかに自分達の宿屋が信頼されているのかを思い知らされる。と、同時に絶対喧嘩を売ってはいけない相手だということを改めて認識したのだった。
 飛鳥達は歓声に包まれながら戦闘を開始した。

「サーシャの村での修行の成果を見せてやるぜ!」



 一方、レスカの方はまっすぐにボスの方向に向かっていった。途中、脇から雑魚がちょっかいを掛けてきたが全てテキトウに蹴散らしつつ、男の目の前に踊り立つ。と、同時に言ったばかりで飛鳥達の詰めの甘さに嘆息した。その後、ボスの男はレスカに気付き、余裕の表情を浮かべつつ口を開く。

「お前、衛兵じゃないな……。『武装宿屋』か……?」

「お察しが良いようで助かります。なら、何の為に来たのかもお分かりですね?」

 レスカの方もあくまで余裕の表情を保つ。

「はっ! ジャックとかいう男の敵討ち? くだらないねえ」

「なにが下らないというのですか?」

「くだらないさ。誰にやられたから、彼にやられたから、そんなつまらない理由で無謀な戦いに挑む、気持ちで戦いに勝つことは出来ないんだよ。事実、あの衛兵達、ひいては王様は戦力差も見極められずに勝負を挑みこうして、防戦一方。憐れすぎて見てられないよ」

「そういうあなた方だって私達に一度やられているから私達の宿屋を襲撃したんでしょう?」

 レスカは冷静に、相手の言葉の節々には一部心の奥底から込み上げてくるものがあるがこういうときこそ努めて冷静にならなければならない。レスカはとにかく目の前の憎き男を前にして冷静に勤めていた。
 だが、それとは対照的に男は飄々と笑うだけだ。

「ん? ああ、あはは! 違う違う。今回の襲撃はそういう理由じゃないよ。単純に君らに興味があったんだ」

「興味……?」

 レスカが怪訝な表情をすると、男はにっこりして頷く。

「そうさ、君達はうちの一団の一派を事もなげに撃退し捕獲してみせた。正直、彼らはまだまだ実力不足でへっぽこだけど一般人よりかはずっと強い。そんな彼らがただの警備員に負けたというからね、興味が湧いた。そして、軽く調査したら『武装宿屋』の二つ名を持つ宿屋の仕業だと聞いてね。武装宿屋の噂は俺も聞いたことがある。腕っ節自慢の宿屋だってね。だから戦ってみたかったんだ、それだけさ。でも結果的には残念だった。期待しすぎた自分が悪いのは分かってるがあまりにもガッカリすぎたよ」

「そんなつまらない理由で私達の宿屋を襲いあんなことをしたというのですか!?」

 レスカの口調が強くなる。

「まあまあ、そう怒らないで。別に弱いのは罪じゃない。罪なのは愚かなことだ。彼らのように」

 そう言って男は衛兵達を親指で投げやりに指差す。

「彼らが愚かですって?」

「愚かさ。相手との実力差も分からずに勝負を挑む無謀さ、気持ちがあれば勝てると思っている傲慢さ。今、彼らを動かしているのはちっぽけな復讐心だ。そんな程度じゃ戦いには勝てないよ」

「……彼らは勝てますよ」

 レスカは冷静に相手の言葉を短く否定する。今度は男の方が怪訝な表情を見せる。

「何を言っているんだい? 彼ら――城の衛兵達だっけ? 彼らの実力不足は見てれば分かるだろう、事実、圧されているじゃないか」

「何か忘れていませんか? 武装宿屋(わたしたち)が来たのですよ?」

「は…………?」

 なおも意味が分からず怪訝な表情を浮かべたままの男。それとは対照的にレスカは意味ありげにいかにも意味深な雰囲気を出しつつ、言葉を続ける。

私達(・・)が来たのですよ? ただで済むと思っているのですか?」

「はったりが過ぎるぞ」

「はったりかどうかは戦えばわかるでしょう」

「いいよ、そこまで言うなら相手になってあげる。少しは楽しませてよ?」

 改めて向かい合うレスカと男――。

「グレイス・オマリ海賊団傘下、幽霊盗賊団団長、レイス・レオンハート」

「神龍王国国営宿屋、宿屋『ホーネスト』所属、レスカ・アルティミリア」

「参る」
「参ります」

 言うと同時に互いに錬金術による陣がいくつも展開され、強烈な衝撃音と共にお互いの攻撃がぶつかり合っていった。



 一方、飛鳥達乱戦組は圧されていた戦局を少しずつではあるが盛り返していた。特にサーシャがとりわけ活躍しており、既に十五人は戦闘不能追い込み、撃破していった。飛鳥、弥生、和弥の三倍近い撃破数であり、全体で見ても圧倒的な強さなのが示されていた。

「和弥、お前何人目だ?」

「んーとね。六人目かな? 飛鳥は?」

「俺はこれで五人目」

 飛鳥が敵の一人を自身の魔法で作った氷の剣で斬り伏せ、地面に突っ伏させる。相手は呻き声をあげいているが気に掛けることもなく蹴飛ばし、他の相手に向かう。

「和弥、最終的に多く敵を倒せた方が勝ちな」

「はいはい、分かったよう。どうせ俺の方が勝つに決まってるしねえ」

「はっ、言ってろ」



 一方でセシリアも快進撃を見せていた。

 戦闘が開始されてから十五分、十二人もの敵を倒していた。この戦いにおいて一番限界以上の実力を発揮しているのは彼女だろう。なにしろ、実の父親が手酷くやられてしまったのだ。怒りは最高潮と言ってもいいだろう。しかし、その怒りの感情のせいでいくらか戦い方が荒っぽくなってしまっている。そんな様子が端から見ても分かる為、そばで戦っている弥生は些か不安を抱えていた。

「セシリア、あんた少し落ち着いて戦いなさいよ。見てて危なっかしい場面が何度もあった。ハラハラするからやめて」

 セシリアは戦いながら顔を向けずに声だけで返事をした。その声にはやはり怒気が含まれている。

「ヤヨイは人の心配をしている余裕があるの? あなた、全然敵倒してないように見えるけど?」

「人数の問題じゃない、あんた今すごい顔してるわよ。分からないの?」

「当り前じゃない。私は実の父親が重体の大怪我負わされているのよ。これで頭に来なかったらどうかしてる」

 セシリアは怒気を強めて弥生にも強く当たる。だが、弥生は冷静に反論する。

「セシリアの気持ちは分かる。でも、少し落ち着きなさい。そんな気持ちで戦ってもいい結果なんて残らなない」

「ヤヨイに何が分かるの……? 私の気持なんか分かりっこないよ」

 今度は悲壮な声色で泣き入るように呟く。

「分からないよ。だって私はあんたじゃないし。でもね、あんたには私のようにはなってほしくない」

「ヤヨイのように……?」

「そう、気に入らないことがあれば周りに当たり散らして、自分は正しい、自分は間違っていない、だから自分は何をしても許されるはずだって、親とも喧嘩、勘当状態。精神的にも危なくてね、あいつらがいなかったら……多分、私は壊れてた」

「……あいつらって、アスカとカズヤのこと?」

「そう、あの二人がいなけりゃ今の私はいない。だからセシリアには同じ道を歩んでほしくない。憎しみに囚われても何も良いことはない」

 弥生が寂しそうにそう呟くとセシリアが弥生に寄ってきた。

「ヤヨイ、ごめん。少し落ち着く。戦いはやめないから少し、側にいさせて」

「構わないよ」



 それから、宿屋『ホーネスト』の参戦から三十分。乱戦は決着が着きつつあった。

 盗賊団も残り僅か、戦える者は残り五人にまで減っていた。だが、こちらの消耗も激しく、衛兵達は殆ど戦えないほどに疲労と怪我が蓄積されていた。戦えるのは宿屋組だけと言っていいだろう。

「さて、後はお前達だけだな」

 飛鳥は余裕たっぷりに相手を見る。お互いに残りは五人。それは相手も分かっているようで、あまり焦っている様子はない。そのうちの一人が余裕たっぷりに口を開く。

「君らも残り少ないようだが? 見たところによるとそっちの衛兵達は全滅のようだな。城を守ってるわりにはだらしないなあ」

「はっ! たかだが三十五人にここまで追い込まれておいてよく言う。お前ら最初は百人以上いたように見えたんだがな。とんだ無能揃いだな、盗賊団を名乗ってる割に」

 飛鳥が煽り返すように嘲笑の笑みを浮かべる。だが、敵は右手で頭の後ろを抑え、下を向き嘆息した。

「あー、それは本当に情けないと思うね。このヘタレ共、俺らがいなかったら負けてたと思うと泣けてくるね」

「まるで、自分達は特別強いみたいな言い方だなあ」

 飛鳥は鼻で笑うと敵の男は下を向いたまま上目で飛鳥をじっと見る。

「事実として俺らは一味違うぜ?」

「強がりは止せって」

「なら戦おう。それで提案なんだが、お互い五人ずつだしそれぞれで一対一の決闘ということにしないか? チーム戦みたいで盛り上がるし、力も示しやすい。だろう?」

「ふむ…………」

 敵が一対一を提案してきた。飛鳥はそれには即答せず、少しの間に思考する。正直に言えば、一対一は今の状況は不利なのだ。疲労が相手よりも比較的に蓄積されている以上はなるべくは乱戦の方が有利だ。当然、飛鳥達に相手の要求を呑む義理も利点もない。飛鳥は結論を出し、横にちらりと視線を向ける。視線を向けられた相手は飛鳥の視線に気付いたのか、アイコンタクトを返してくる。飛鳥はそれを確認し、声を出す。

「サーシャ、やれ」

「Ahーーーーー!!」

 サーシャによる音波攻撃。不意打ちによる攻撃、これをもって返答とする。交渉は決裂、そういう意思表示だ。
 今のサーシャの攻撃力は絶大だ。今は既にここにいる盗賊団程度なら一発か二発でダウンさせられるほど驚異的な威力にまで上がっている。サーシャの攻撃力上昇はあまりにも際限がないのだった。ここまでくると、近くにいる味方までもが危ないくらいだ。ここで一人か二人倒すことが出来れば圧倒的に有利になる、だからこその不意打ちだった。

 だが――――。

「……今のは危なかったなあ」

 敵の五人のうちのまた別の一人がサーシャの攻撃の射線上に立ち、完全にサーシャの攻撃を打ち消してしまった。

「なっ…………!?」

 飛鳥は思わずたじろぐ。一歩下がり、距離を取る。

「おいおい、返答が不意打ちとは……くくくっ、お前も中々の悪党じゃないか」

「決まりだな、一対一で戦う。もとより拒否するのは不可能だよ。強制的に一対一の形にもってくからね。さっきみたいに不意打ちしようとしても無駄なのは分かったな? 少々、付き合ってもらうよ」

「…………? ちっ、仕方ない」

 飛鳥は渋々、一対一を受け入れる。しかし、どこか相手の言葉に引っかかりを受ける。今のうちでは何か分からないので今はそのことは気にする必要性はないのでやめておくことにした。

「対戦相手はどうする?」

 敵は相談するように訪ねてくるが、飛鳥は適当に返事をする。正直、今この状況において誰が相手だろうと大した差はないように思うのだが、イマイチ敵の言動は理解し難い。本気で相手を倒そうという気があるのだろうか? イマイチ本気さが感じられないのである。

「テキトウでいいよ。ぶっちゃけ誰が相手でも変わらんから、目が合ったやつと相手するってことで。あっ、面倒だからお前の相手は俺な」

 飛鳥は投げやりに返事すると相手は僅かに吹き出すように笑い、了解の合図を出す。

「君、面白いね。いいよ、君の相手は僕だ」

 お互いに向き合う。対戦相手が決まり、体に気合いが入る。どうやら、他の四人も全員対戦相手が決まり、向かい合って火花を散らしている。すぐさま、各々戦いをはじめような勢いだ。

 飛鳥も身構える。飛鳥達のアジトでの最後の戦いが始まった。
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