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正妃になりたいわけじゃないっ!! 作者:ぺぺ
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4/36

読んでくださった全ての方に感謝を。

既にプレッシャーに負けそうですが…、メンタル面が激弱ですが…orz

今後ともよろしくお願いします。
リンクスに抱かれ自分の部屋に着いたヤヤは、部屋にある三人掛け程のソファーに降ろしてもらうとリンクスを労った。

「ありがとう、リンクス」

白いスリップドレス姿なのであまり格好は付いていないのだが、そんな時でもただの護衛でしかない自分を労わってくれるヤヤを護りきれなかった事に臍を噛む思いになるリンクス。

いつまでも丈の短い己の上着を着せているわけにもいかないので、部屋付きの侍女を呼ぶベルを鳴らす。

先程の聖光の間の戦闘の際、リンクスは少しの間ヤヤと距離を取っていた。それが仇となり、リンクスは人波に飲まれる形で聖光の間を押し出され、戻るに戻れなくなっていたのだった。いくら護衛といえど、恐怖に駆られた群衆に一人ではどうする事も出来ずに、ヤヤの名を叫ぶしかなかった。
そんな未熟な己を責めるでもなく、労うヤヤに居た堪れなさを感じてしまう。

(俺がちゃんとお守りしてさえいればっ!)

そう叫びたいのを必死で堪えるため、唇を噛み拳を握る。
リンクスの脳裏には、あられもない姿で必死に自分を探すヤヤの姿が焼きついて離れなかった。

そんな彼を困って見つめているヤヤはリンクスの思いが何となくわかっていた。
言い訳や後悔を口にしないのは、したところで済んでしまったものを戻すことはできないから。そして、何より自分を護ろうとするその心が全身から溢れている。
ヤヤはリンクスに敢えて何も聞かないことを選んだ。
彼は口に出させるよりも己の力でそれを昇華し、更なる力を望む方があっていると思ったからだ。

リンクスはヤヤが側室になった際に護衛としてついた。身分が高くなく、寵愛を得ていたわけでもないヤヤに唯一ついた護衛。それがリンクスだった。
真面目で涙もろいリンクスに何時の間にか心を許していたヤヤ。
一方リンクスは、初めて側室の護衛として付き、緊張の連続だった。階級意識の高い貴族に平民上がりの騎士がどんな扱いを受けるかを事細かに先輩騎士に教えられ、内心はいつ首が飛ぶのかとビクビクしていた。
ところが蓋を開けてみれば、自分は市民より少しだけ身分が高いだけだと言う側室。むしろ、ダラダラと過ごす自分よりせっせと働く市民の方が偉いと言い切ったヤヤに、刷り込みの如く護りたいと強く思ったのだった。

部屋の扉を叩く音がして、外から声が聞こえる。

リンクスはヤヤに一礼すると、扉を開けるためにそちらに向かう。

リンクスが扉を開けるとそこには歳の若い侍女が立っていた。

この侍女、部屋付きのとは言ってもまだまだ見習いの域を出ないようなもの。
身分は低く皇帝の覚えも良くないヤヤの元には、将来身分の高い側室につけるよう、こうしてたまに見習いが派遣されてくる。
そんなわけで、特に親しい侍女ができなかった。
しかもこの侍女、向上思考と言えば聞こえは良いが、実のところ欲が深く、どうもヤヤを下に見ている節がある。しかし、仕事はキッチリとこなすので、ヤヤは特に不満に思うことなく好きなようにさせていた。そして、その欲望丸出しの態度に感心してさえいた。

「お呼びですか?」

侍女はリンクスに促され、部屋に入りヤヤ前に進み出ると軽く眉を顰めた。

「こんな遅くにごめんなさいね、サリ。悪いのだけれど、湯浴みの準備をお願いできるかしら?」

侍女ことサリの顔の変化を目に止め、自分の姿を一瞥したヤヤは困ったような顔でサリに湯浴みを頼んだ。

「…畏まりました」

サリはその物言いを苦々しく思う。所詮は侍女でしかない自分に謝りお願いと言うヤヤの態度が気に食わなかった。お願いと言いながら、自分たち使用人には拒否権はないのだ。だから、サリには偉そうに命令された方がまだマシだと思ってさえいた。

そんなサリを知ってか知らずか、ヤヤは拒否されても特に苛立つことはないのだが、用意してもらえることに安堵した。

サリが不機嫌な空気を出しながら、一礼して湯浴みの準備のために部屋を出ると、ヤヤはリンクスに声をかけた。

「リンクス、上着をありがとう。今日はもう休んで?あなたも疲れたでしょう?」

リンクスに上着を差し出しながらそういうヤヤにリンクスは顔を赤らめて視線を反らした。

「いえ、自分は今夜は部屋の外におります。ヤヤ様が大変な思いをなされたのに…、自分ばかりがのうのうと休んでいる訳には参りません!」

俯きながら、拳を握る。

「ははっ、確かにあのソルディー公の姿はトラウマになりそうだったね…」

遠い目をして、先程のソルディー公の姿を思い出し、身体をぶるりと震わす。

「でも、もう大丈夫だよ。湯浴みして、後は寝るだけだから」

俯いているリンクスに自分の出来る精一杯の優しい声をかける。上着もなかなか受け取らないので、腰に力が入るのを確認してからリンクスの側に歩み寄る。

自分の思考に浸っていたリンクスは、いきなり視界に現れた自分の上着にハッと顔をあげ、その顔を羞恥に染めると再び勢いよく俯いた。

「もっ、申し訳ありません!!」

吃驚するくらいの大声に目が点になるヤヤは、リンクスのその態度にクスリと笑みが零れた。

「こんな私を女扱いするのはリンクスぐらいね。私より初心なんじゃない?」

クスクス笑いながらリンクスをからかうヤヤは、リンクスの手を取り上着を握らせ、寝室へと向かう。その足で寝室にあるクローゼットの扉を開け、丈の長いカーディガンを手に取りそれを羽織った。
それから前を合わせながら、ソファーまで戻るがリンクスが固まったまま微動だにしていない姿を見て、思わず噴き出してしまった。

「ヤヤ様っ!」

「ぷっ…!ふふっ、あははははっ!!」

からかわれたと思ったリンクスが声を荒げると、ヤヤの我慢していた笑いが弾けた。

「ふふっ、はっ…ごめんごめん。わざとじゃないのよ?許して?」

何とか笑いを抑えると、ヤヤは笑いすぎて涙の溜まっている瞳をリンクスに向け許しを乞う。
そんなヤヤに根っからの従属体質のリンクスが勝てるはずもなく、むうと唇を尖らせながら頷いたのだった。

そこへ再び響くノックの音。どうやらサリが帰ってきたようだ。

再度、リンクスは扉を開けるためにそちらに向かう。

「リンクス、今日はありがとう。どうか今日は部屋で休んで。また、明日からもお願いね?」

そのリンクスの背にヤヤは言葉をかけ、リンクスの退室を促した。
リンクスがハッと振り向けば、そこには先程まで震えていたとは思えない程、しっかりと立ち頬笑むヤヤの姿があった。

もっと頼りにされたいと願ってはいても、その姿に何も言えず、リンクスはわかりましたとだけ声を絞り出し、サリと交代してヤヤの部屋を出たのだった。

部屋を出る際に見せたリンクスの顔を見てヤヤは溜息を吐きたくなる。

(出来るなら側にいて欲しいよ…)

そう思っていても、口には出せないのがヤヤだ。歳の割に子供っぽい所があると自覚している分、素直に甘えることを良しとしない。

そんなヤヤを尻目にテキパキと湯浴みの準備をするサリは、ある意味真面目な人間と言えた。こなさなければならない仕事、頼まれた仕事など、仕事に関しては一切手を抜かないその仕事ぶりは完璧で、仕事に対するサリのプライドの高さが伺えた。

「ありがとう、サリ」

リンクスを見送った後、サリに向き直るとヤヤは礼を言った。
既に湯浴みの準備を済ませたサリは無言の一礼でそれを受け流す。

後宮での湯浴みといえば、一般的に大浴場なるものがあるが、そこを使えるのは精々中流貴族出身の側室までだ。末端貴族であるヤヤには敷居が高く、それでなくてもこんな夜更けに入りに行けるものでもなかった。
ヤヤの通常の湯浴みといえば、大量のお湯を部屋に持ち込み、床に防水加工を施した大判の布を敷き、その上に人一人が丸まって入れる位の盥を置く。そこに裸で入って髪から順に洗ってもらうというものだった。

手早く服を脱ぎ捨て、それをソファーに置くと、盥に蹲るようにして座る。
その時にサリが湯加減はどうか聞き、良いいと答えるとあっという間に髪からつま先まで磨かれた。
他の側室は、入浴の際に侍女を最低でも三人は連れているのだが、ヤヤにはサリしかついていないため、洗い終わると自分で身体を拭く。身体を拭いている間、サリは湯浴みの片付けをする。
それを眺めながら、拭き終わると用意されていたナイトドレスに袖を通す。それから湯浴みの片付けの済んだサリがヤヤの髪を乾かし、香油を塗る。それから保湿液をヤヤの顔に施すと、サリは失礼しますと声をかけ、部屋から出るのだった。

サリが部屋から去る際に、改めて礼を言うと案の定苦々しい顔をされ、ヤヤは苦笑した。

サリが礼やお願いをされることを嫌っているのには最初の一日目で気づいてはいた。
今までの見習いに比べれば、私語もなくテキパキと仕事をこなすサリ。見習いにしては出来すぎていた。すぐに他の側室の元に行くのかと思えば、既に半年もヤヤついている。

サリが何故礼やお願いが嫌いなのかはヤヤにはわからなかったが、サリに嫌がられても自分の自己満足の為にそれを辞める気はなかった。
今回の湯浴みのように女性では重労働ともいえることを、文句を言うことなくこなしてくれるサリにお礼ぐらいはきちんと言いたいと思うヤヤの気持ちの表れが、主従関係という間ながらそういう風にさせるのだった。
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