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正妃になりたいわけじゃないっ!! 作者:ぺぺ
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閑話 とある少女の拾いモノ③

大幅に端折ってしまいたい気分の私。

もうここでいいよね?え、ダメですか?いいですか?どっちですか?

もうちっと書けよとおっしゃりたい方は、優しく囁いて下さい…。
ヤヤの拾った男は最初こそ、血塗れのズタボロでとても見れた姿ではなかったが、看病をする上で清潔にされるとヤヤを含め使用人も息を呑むほどの風体であった。

灰色の髪は実は艶があり、その顔の造作はとても人とは思えぬほど均等で完璧であった。体つきもひどい裂傷や火傷、盛り上がった古傷を除けば、いや除かなくともそれすらも彩として、色素は薄く肉厚ではない筋肉であったが、誰もが使い込まれているとわかる惚れ惚れとする体つきである。

そんな人物が何故、血塗れのズタボロ状態にならなければならなかったのか。屋敷の誰しもが気になったが、危うい様態の男にその疑問はいつしか遠くへ追いやられていた。

そうして、男がベルーラ邸で倒れて一週間程経った頃、男は漸く目を覚ました―。




男は向かい闇の底から無理やり引きあげらる感覚のような目覚めに、最初何が起きているのか全く解らなかった。

ただ解ったのは、闇に慣れた己の目が、見知らぬ天井を映しており、未だかつて感じたことのない倦怠感を全身で味わっているということぐらいであった。

何もわからない故に男は身じろぎもせず、ボーっと天井を見上げていたのだが、徐々に覚醒へと向かう意識が無意識に周りの空気を読み男の状況を知らしめ始めると、ゆっくりと首を側面に向けてその目に映ったある人物と無言で見つめあった。

男が寝ているベッドの端に膝立ちの状態で、両手をベッドの端に重ねて置き、そこに頬を乗せて男をすっと見つめていた人物―、ヤヤである。

無言で見つめ合っていた二人だが、唐突にヤヤが口を開いたことでその沈黙も終わりを告げる。

「ねぇ、いきてる?」

男はヤヤの特別可愛くはないが、幼さ特有の可愛さがあるヤヤの顔を、じっくりと見てから声を出したのだが、以前に聞いていた自分の声とは程遠いか弱い声に違和感を感じた。

「…わからな…っ」

ヤヤは起きてから全く表情の変わらない男を、心の中でへんなひとの一言で片付けると、徐に立ち上がり男の顔を覗き込むようにベッドの端に片膝をあげる。自然と男の頭もヤヤに目線を合わせたまま、ゆっくりと向きを変える。

「じゃ、ヤヤがおしえてあげるね。あなたはいまからいきるのよ」

そう言ってにっこり笑う目の前のヤヤに、男はまるでヤヤよりも小さな子供のようなあどけない顔できょとんとした。

その破壊力は抜群で、ヤヤの後ろに静かに控えていた使用人たちが鼻を抑えて俯きプルプルと耐え、目の前でそれを目撃してしまったヤヤはカポーンと顎を落とし目が点になってしまっていた。

それからまた、しばらくお互いに見つめ合っていたヤヤと男であったが、ハッと気づいたようにヤヤが頭を振ると漸くそれ以前の空気に戻り、ヤヤは再び口を開いた。

「…とりあえず、まばたきはしたほうがいいとおもうよ?めがかわいちゃうよ?」

先ほどの会話が続くと思っていた男だったがヤヤから口から漏れた言葉は、先ほどの話とは全く別物であった。男はヤヤを見つめたままどう返せばいいのか悩んだが、考えることが億劫で仕方なく、ヤヤの言葉をそのまま素直に受け取り返すことにした。

「…瞬きは標的を狙う邪魔になる」

無表情のまま物騒なことを口にする男に、控えていた使用人がにわかに警戒するが、それを言われた当の本人は先ほどの男と交代するようにきょとんとして首を傾げた。

「ひょうてき?ここにはあなたがねらうものがあるの?」

使用人が男を刺激しないようにヤヤに近づきヤヤを庇おうとするのと同時に、ヤヤは男に質問を返していた。男を刺激したのではとびくりと体を揺らす使用人を他所にヤヤは男が目覚めてから一度も男に対して、恐怖というものを感じていなかった。

男は、ヤヤの質問にそれまでの自分が急激に思い出され、軽い頭痛に苛まれたがそれを顔に出すことなくヤヤに答えを渡した。

「いや…、ないな」

その声はひどく頼りなさ気で、男の目は気づくと虚ろにさ迷いヤヤを映さなくなっていた。そんな男の様子にいささかびっくりするヤヤの後ろでは、使用人が肩で息を吐いている。

「じゃあ、まばたきをすればいいわ。ここにはあなたをねらうものはないんだから」

びっくりしたヤヤではあったが、至極まともなことを返すと、視線をさ迷わせながらも相変わらず瞬きをしない、男の瞳を隠すようにその小さな手を男の顔へと伸ばす。

男はなにもわからないまま、やわらかく降りてくる影にそっと瞼を閉じた。

「あのね、ヤヤはね、ヤヤっていうのよ」

男が瞼を閉じたのを手のひらに感じながら、ヤヤは静かに話し続ける。

「あなたのなまえはなんていうの?」

子供特有の甲高い声であるのにも関わらず、優しく穏やかに話しかけるヤヤの声が、男の耳を心地よく打つ。それまで感じたことのない静かなでいて何故か胸が温かくなるような感覚に男は戸惑いつつも抗うことも出来ずに身を委ねる。

「名前…、名前…」

男が子供のようにヤヤの言葉を繰り返す。

「そう、おなまえ。あなたのおなまえをおしえて」

ヤヤの手のひらに男の瞼が開く感触が伝わり、その小さな手をそっと退けてやる。再びヤヤの顔を静かに映すその瞳をヤヤは素直に綺麗だと思った。

澄んだ水を湛える深い底を持つ湖の水面のような、真っ青な瞳は見つめ続ければ吸い込まれそうだ。

「俺の名は、冥界に吹く風のひとつ、死の薬師と呼ばれていた…」

男の名前に、使用人の顔は急激に青褪め、ヤヤと男を見比べた後意を決したように踵を返すと、部屋を後にする。

使用人が開け放った部屋の扉がやけに大きく部屋に響く。ヤヤはそれをどこか他人事のように聞きながら、

「それは、なまえじゃなくておしごとのときのなまえでしょ?」

と、男に言っていた。

ヤヤの脳裏に名前すら与えられない市井の裏路地の子供たちの姿がチラつく。あの子達をすべて救えるなんておこがましいことを考えたわけではない。ただ思い出してしまったのだ。全ては救えなくとも、自ら手を差し伸べたものぐらいは、全力で助けてやりたい。それが自己満足であっても、だ。

ヤヤは男ににっこりと微笑む。

「じゃ、あなたのなまえは今日からクロノス。クロノスにけっていね!」

ヤヤを映す水面が揺れる。

「クロノス…?クロノ…ス」

何かをかみ締めるように男は繰り返す。

「そう、クロノス。だれもしらないとおいせかいのかみさまのなまえなのよ。そのかみさまはときをつかさどっているんですって。いきているかしんでいるかわからなかったあなたのじかんがうごきだすのにとってもぴったりななまえでしょ?」

にこにこと笑うヤヤの黒い瞳の奥に、淡く煌く光を見る男、クロノスはいつか見た夕焼けと夕闇の狭間を思い出す。

少女特有の快活さを持ち合わせながら、どこか落ち着いた節のあるヤヤに、そこには辿り着けなくもそれに似た少女のもとへ辿り着けたようだと目を細める。

「俺はクロノス…。お前はヤヤ」

「そうよ、あなたはクロノス。わたしはヤヤ。これからよろしくね」

ふふふっと笑うヤヤをクロノスはじっと見つめる。

(…止まっていた時が動き出す…)

クロノスはその時初めて己の鼓動を意識した―。



前回でどうも納得がいってないぺぺはいまだにそれを引きずっているようです…。

特にご要望がない場合は、いったんここで閑話を締めさせていただき、後日こちらの閑話を下げさせていただきます。

どうぞご理解いただけますようお願いいたします。
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