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正妃になりたいわけじゃないっ!! 作者:ぺぺ
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突っ込みたい時は、こっそり優しく突っ込んでください。

真摯に受け止める所存ですが、案外脆い強化ガラスのぺぺの心です(。-_-。)

そして、誰か今回は更新早かったねと褒めてください。ただ、ニヤけるだけですけどね( ̄▽ ̄)
傾いていくヤヤの体をヴァンディットとセリウスは呆然と見つめながらを、彼らの体はヤヤを受け止めるために動いていた。

「ヤヤ…っ!?」

「ヤヤ様っ!!」

椅子が倒れる音が連続して響き、僅差でヴァンディットの腕に収まったヤヤの顔は青白く口から吐瀉物に混じって流れ出ている血が余計に生々しく映った。

ヴァンディットは急いでヤヤを抱え上げ立ち上がると、さっとテーブルに目を走らせるとセリウスを呼ぶ。

「食事を調べろ」

そう言うと、ヴァンディットは扉に向かって歩き出した。
慌ててヤヤについた護衛がヴァンディットに交代を申し出たが、ヴァンディットは冷めた目で黙殺した。

部屋はいまだに出来事に騒然としており、ヤヤについてきた侍女たちも全く役に立っていなかった。

扉の前に立っていた警護兵が焦ったように扉を開ける。

「セリウス以外は出すな」

去り際に警護兵に言いつけるとヴァンディットはその足で医務局へ急いだ。







ヤヤを医務局へ運ぶ間、ヴァンディットの顔は無表情ではあったが、その瞳は怒りに満ちていた。

それが己に対してか、ヤヤに対してか…、それとも何かしらを仕掛けてきた相手に対してなのか。

それの全てである様な、そうでもない様な、不明瞭な苛立ちは留まることを知らない。

この一ヶ月、ヴァンディットを始めセリウスたちは、ヤヤの侍女が下らないことをしているのは知っていた。
ヤヤが助けを求めれば、信用出来る者が集まる間、もう少しマシな侍女を用意出来る準備はしてあったが、ヤヤが何かを訴えることは一度もなかった。
それに苛つくヴァンディットではあったが、ヴァンディットも執務が忙しく、下手にヴァンディットが動けば増長している彼女たちが何を仕出かすかわからない。結果、暗部に見張らせるだけに止めた。

彼女たちを抜擢したのはセリウスであるが、今後のことを考えると人選が難しく、害はあっても死に至る様な害のない侍女を選ばせたはずだった。

(…ミスったか?)

一瞬そう思ったがセリウスがそんなヘマをやらかすとは思えなかった。

そもそも、ヤヤのスープに浮いていた鼠事態、奇妙すぎるのだ。

鼠が入る余地など程、あの場は清潔に保たれ、利用されている。侍女たちが用意したにしても、ヤヤが倒れた際、不審な侍女は見当たらなかった。
護衛は言うまでもなく、今までのことも含めてシロだった。

護衛は部屋から出なかったヤヤのせいで、侍女たちに締め出しをくらい何かに加担出来るような位置におらず、ヤヤの身辺は殆ど暗部の者が行っていたのだ。暗部からも、護衛についての報告は上がってきてはいたが、後ろ暗いものはなくただの役立たずとわかっただけだった。

もう少しで信のおける者で固める準備が整うといった所で、この騒ぎ。
ヴァンディットの預かり知らぬ所で何かが起きているようだった。






医務局に着くと扉を蹴破るように開け、慌てて出てきた医務局長に詳細を話ながら、医務局のベッドにヤヤを静かに降ろす。

話を聞いた医務局長は弟子に胃の洗浄を手配するよう命じると、その間に脈拍を測ったり、毒物の反応を調べたりして、一通りヤヤの初見をすました。

「陛下、今の所、この女性の症状は即効性毒物の使用による可能性は低いでしょう。毒物がはいっていて、吐瀉により助かった可能性も捨てきれませんので、念のため胃の洗浄を行っておきます。脈は低いものの吐血の際の貧血と思われますので、安静にしていれば目を覚ますかと。」

胃の洗浄をする前に医務局長はヴァンディットにそう告げる。

ここにいても、ヴァンディットに出来ることはもうない。

ヴァンディットは、ベッドに横たわる少し乾いた吐瀉物と血に塗れたヤヤの唇に手を伸ばす。

「陛下、お手が汚れてしまいます…」

医務局長の控えめな発言を気にも止めず、ヴァンディットはその手の指で、汚れたヤヤの唇を拭った。

途端に噴き出すヴァンディットの仄暗い気配に、医務局長は声もなく怯える羽目になる。

「後は任せた」

ヴァンディットの言葉に、

「はひぃっ!」

と、裏返った声で答えた医務局長が見たものは、指に付いた吐瀉物塗れの血に唇を歪ませるヴァンディットだった。

「目を覚ましたら…、覚えておけよ?」

まるで愛を囁くように甘ったるい声で、ヤヤの耳元に恐ろしいことを吹き込むヴァンディットは、その後、振り返りもせずに医務局を出る。

その言葉を聞いた後に残された医務局長は、ヤヤが誰かもわからないままヤヤに同情し、ヴァンディットの後ろに悪魔を視て震えるのだった。







医務局を後にし、執務室に向かうヴァンディットの脳裏には、去り際の言葉に僅かに震えたヤヤの姿が焼き付いていた。

意識はなくても、己の声に反応したヤヤにまたも言い知れぬ気持ちを抱いたが、悪い気持ちではなかった。無意識に恐怖を覚えたにせよ、声が届いたことにそれまで何処か焦燥とした気分が消える。

ヴァンディットの瞳には、依然怒りに満ちてはいたがその瞳は見えない敵を見据えていた。







ヴァンディットが執務室に着くと扉の前にイセルとドルドー伯が控えていた。無言でその前を通り過ぎ執務室に入ると、イセルとドルドー伯が後に続き、扉は閉められる。

「『幽界』」

ヴァンディットが椅子に座るのを待つことなく、ドルドー伯から出た言葉に、ヴァンディットは振り返った。

「ヤヤからは毒物反応はなかったが?」

ヴァンディットの言葉に、ドルドー伯とイセルの眉間に皺が寄る。

「パフォーマンスってヤツ?」

イセルの戯けてはいるものの、その低い声にヴァンディットの口が弧を描いた。

『幽界』とは、スゥーリャと呼ばれるガルディナ帝国では誰もが知るそこら中を一年間通して生い茂る逞しい雑草から作られた毒物である。
スゥーリャ自体強い毒物と広く認識されていて、誤って食べるものはまずいない。混入するにしても、苦味や臭いが酷くすぐばれてしまうのだが、そのスゥーリャを特別な方法で精製したのが今回使用された『幽界』と呼ばれるものだ。
通常のスゥーリャよりも強い毒性で即効性の高いそれは『幽界』の名に相応しく少量で天界に召されるしろもの。精製によってスゥーリャの苦味も臭みのなくなったそれは、死後赤い花のような痣があちこちに現れるため、別名『死に花』とも呼ばれていた。

「冥風…か」

ヴァンディットがボソリと呟く。

『幽界』の精製法は、ある組織でしかわからない。それが、ヴァンディット呟いた冥風と言う名の昔から暗殺を請け負う闇の組織だ。

過去一度も冥風の人員構成やアジトなどが明らかにされたことはなく、依頼人が接触を図ろうもこちらからは接触することは出来ない。冥風は自らきな臭い人物の前に現れては、多額の金と引き換えに任務をこなす、そんな謎の組織だった。

「しかし、負に落ちないのぉ。冥風はここ十五年程活動をせずに解散したものと思われおったが…。違ったのか?しかも、殺しをする前に、わざわざ前座を用意するような組織ではないはずじゃが」

そう言って首を傾げるドルドー伯は、ヴァンディットを窺っている。

「ふん…っ、前座だろうと余興だろうと構わんさ。こうして俺に存在を知られたんだ。冥風ともども依頼人も地獄を見せてやる。ドルドー伯、『番犬』を使うことを許可する。冥風を必ず捕らえろ」

『番犬』の名に、ドルドー伯は眉を上げたが、冥風相手にはと思ったのか、軽く頷くと一人部屋を出た。

「『番犬』ねぇ…。暗部の特殊部隊ぐらい使わないと冥風相手じゃ無理か」

イセルはドルドー伯の背中を見送りながら呟くと、ヴァンディットに向き直った。

「冥風が出てきたとなると、準備してた替えの護衛兵だけじゃ心もとねぇな。警護兵も合わせて二・三人入れ替えるぞ」

いつになく真面目な顔つきのイセルに、頷くヴァンディット。

「セリウスとシス候が既に侍女と護衛を処分しているだろう。すぐに替えられるか?」

「あぁ、大丈夫だ。人選もばっちりだし、能力も上げといた。『番犬』程じゃねぇが暗部ぐらいは相手に出来るさ」

「ならば任せた」

必要事項だけ伝え会った二人は、互いに目配せをすると、イセルだけが軽く手を挙げその場を去った。

一人残ったヴァンディットは、椅子に腰掛けると、机の上に手を組み一人不気味に笑う。

(刃向かう者は…纏めて潰してくれる。二度と日の目が拝めないようにな)

戦に比べれば少量ではあったが、ヴァンディットは自分がヤヤの血に酔っているのを感じていたー。




* * * * *





ヴァンディットがヤヤを連れて部屋を去った後、残されたセリウスは扉の外側にいた警護兵の一人を軍の特殊部隊と法務省へと走らせた。
自らは部屋に残り、誰かが逃げ出さないかを扉の内側から見張る。

軍の特殊部隊からは、毒物に精通した者を頼み、法務省からは事前に用意してあった罪状とこの事件を裁ける者を頼んだ。

ヴァンディットは既に侍女と護衛兵に見切りをつけた。セリウスはそれに対応していくだけ。

侍女たちの素行と護衛兵の役立ちには始めから誰も期待はしていなかったのだ。ただ、先の反乱の処理や人員の異動で、すぐに信用出来、尚且つ使える者をおくことが少々困難であった。

対の間に誰かを迎えるのは、実は計画ではもう少し先で、ヴァンディットがヤヤを見つけなければ充分に対の間の主のための準備が出来たはずだった。だが、ヴァンディットはヤヤを見つけてしまった。ならば、それに対応していかなければならない。
計画があるため人選を慎重にする必要があり、執務の傍ら、それをこなすのは骨が折れるもの。とりあえず、後ろ盾も強くなく誰かを殺す度胸もないような者を選んでヤヤにつけた。その結果、中流の新興貴族の行儀見習いにきていた侍女をつけたのだが、一人では何も出来ない彼女たちは大勢ではえげつない女になってくれた。
護衛兵に関しては、セリウスの管轄外だか、大方イセル辺りが本当の護衛を暗部に頼み、潰したかった間抜けでも推薦したかと思われた。

どちらにせよ、この侍女たちの家も護衛兵の家も、ガルディナ帝国に必ず必要という家ではない。彼女たちの家にとって変わりたいという家はいくらでもあるのだ。

セリウスはいまだに動揺と役立たず具合を隠せない彼女たちに少しだけ同情する。今回選ばれなければ長生きできたかもしれない彼女たち。だが、うまく立ち回れば、地位を獲得できたかもしれないのに、自ら捨てたのは彼女たち自身だ。

元の身分が自分たちより低いからといって、後宮に入った時点で身分は誰もがただの側室。それでも、侍女よりはずっと身分は上なのだ。そして、対の間に入ったヤヤはそれよりもさらに上になる。

それを理解出来ずに蔑んだ彼女たちも、そんな風に育てた家も帝国には必要ない。

軽く同情したものの、それは必要なかったかとセリウスは一人心の中で嗤った。

しばらくして、扉を叩く音がし、軍の特殊部隊の副部隊長が毒物の検分に現る。

それまでの間、セリウスは自分たちが疑われていると思った侍女たちの泣きながらの訴えを、その美しい微笑で一蹴し、無能であるにも関わらずヤヤの元へ向かおうとした護衛兵たちを穏やかに一喝していた。

毒物の検分が終わり副部隊長は使われた毒物をセリウスに告げると、セリウスは眉を顰めながらドルドー伯と医務局への伝言を頼んだ。
部屋を去る際に副部隊長は鼠の浮いたスープを貰えないかセリウスに交渉し、許可を得ると嬉しそうにそのスープ抱えて、部屋を去った。

副部隊長と入れ違いのように法務省のものが訪れる。

法務省から来たのは、事務次官で、シス候もなかなか気に入っている男だった。セリウス自身も彼の手腕の良さを耳にしたことがあり、早速彼に罪状の読み上げを頼んだ。

事務次官が罪状を読み上げ出すと泣き喚きだした侍女たちは、お互いに罪を擦り合いだし醜いことこの上ない。淡々と読み上げる事務次官とは反対に、セリウスは美しい顔を歪ませ嫌悪を露わにしていた。

護衛兵にいたっては、何故自分たちも?と理解すらしておらず辟易するセリウス。

罪状を読み上げ終わった事務次官は優秀で、セリウスが頼むまでもなく、扉の外に執行部を控えさせており、侍女と護衛兵たちは速やかに連行された。

それから、セリウスはそのまま事務次官を伴い、対の間へ向かうと部屋には来ていなかった残りの侍女を捕らえる。それがすむと事務次官と別れ、ドルドー伯の許可を得て休暇中の侍女と護衛兵に対し執行部を放った。

セリウスがそれらを終えホッと一息ついた頃、世間ではお茶を楽しむ時間になっていた。

しかし、セリウスに休む間はなく、ヤヤにつく新たな侍女への通達をするために自らの執務室へと急ぐのだった。
ってな感じで、ヴァンディットの変態具合が際立ってしまった今回です。

誰がなんと言おうと、この作品のヒーローはヴァンディット、ヴァンディットなんですよ~っ(泣)

いつになったらヒーローらしくなるんだぁ~っ((((;゜Д゜)))))))
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