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虹色石を探して
作:カスヤ セイイチ



十二話


夜は冷える。
この地域の気候は、昼はシャツがべったりと体に張り付くくらい熱いんだけど
夜は対照的に、冷たい風がシャツをすり抜けて身体中に口づけをする。
寒いなぁっと呟きながら両腕を擦り合せる。
親方をちらりと見上げると、その横顔は厳しい顔のまま真っ直ぐ前を見つめている。
何か考え事をしているような顔をしていたが、何を考えているのか
俺には分からなかった。
歩きながら色々な疑問が浮かんだ。
でも、まるで寒さで張り付いたかのようになったその口から出ることはなかった。

家に着くと、ニーナじゃなくシンっと静まり返った空気が
俺と親方を出迎えた。
ニーナは、親方の言った通り寝ているんだろう。
外の冷たい風から解放され、身体が徐々に温まってくる。
身体は温まるが、心の中ではまだ冷たい空気が吹いている気がした。
ニーナはどこで寝ているんだろうか?
『ニーナなら、私の部屋で寝ている』
俺の考えを先読みしたんだろうか?
親方が、こちらを向き微笑を浮かべながら言った。
『親方、ずるい』
俺が、素直にそう言うと親方は、命令は絶対!っと
声高らかに宣言した。
そのあと、慌てて口元に人差し指を当てるその姿は
まるで子供のようだ。
親方は、ニーナが起きていないか周囲を見回す。
やがて、安心したようにほっと一息つき椅子に座った。
時折、外の冷たい風が窓をノックする音が聞こえる。
俺も座ると、ほぼ同時に互いに目一杯ため息をついた。
『親方、どうしようか?』
『もし、ニーナのママに会って認めてもらえれば
ニーナを家族だと言った手前、私には育てるという義務がある』
『それじゃあ』
『話を最後まで聞きなさい』
親方が厳しい顔つきで窘める。
『もし、仮にニーナのママが良いと言ったなら良しとしよう。
だが、ママが認めないと言うかニーナがママの方が良いと言った場合』
俺は親方の次の言葉を待つ。
親方は、両手をテーブルの上に乗せると
『その時はニーナの意志に従う』
厳しい顔をしたまま言った。
親方の意見には納得がいかなかった。
親方はニーナの本当のパパじゃない。でもそれでいいんじゃないか?
俺も親方に拾われた。だから何だというんだ?
ママに会わずに、三人で暮らして行っていいんじゃないか?
『このまま』
俺は親方を見る。
『私も一緒に暮らして行けたらと思う』
親方は、目を伏せながら言った。
『しかし、いずれニーナが大人になったとき、、絶対ママに会いたいと思うだろう。
その時になってニーナを苦しめるのか、今敢えてママに会わせてニーナに決めて貰うか。
そう考えたら、今の方がいいだろう?例え、それがルールを破る事だとしてもだ』
俺は、反論できなかった。色々と反論したかったが、それがニーナの為だと言うのなら。
俺はしょうがないと思う。それでも、何か納得がいかない。
何か他に方法はあるんじゃないか?
あっそうだ!
『親方、ニーナのママも一緒に暮らせば?』
俺がそう言うと、親方は、深くため息を吐く。
『ゴロー、ニーナのママにはまだ会ってないんだ。
ニーナのママにも気持ちを確かめないといけないだろう?
それに、お前を育てるだけならいいがニーナとママが加わったら
とてもじゃないがやっていけない。』
親方は、焦るんじゃないっと呟きながら席を立つ。
あれこれ悩んだってしょうがない。まずはニーナのママに会って話をする事。
それが俺達のする事。
問題は解決してないけど、何か一歩進んだ気がした。
その時、台所から親方のアーッと言う叫び声が聞こえた。
どうしたんだろうと思っていると、親方が俺に駆け寄って来た。
『ゴロー、食材を使いすぎだ!』
親方は俺を見下ろしながら怒鳴る。
そういえば、ちょっと張り切って作りすぎたかな?
親方は、腰に手をあて俺の顔を覗きこむ
口を結び、片方の眉を釣り上げて時折ピクピクっと動かす
その表情は完全に怒ってますって感じだった。
『ごめんなさい』
俺は心から謝った。
親方はしばらく眉毛の運動を行っていたが、、やがてため息を吐いて
がっくりと肩を落とし、ふらふらと寝室に向かった。
親方は、明日は仕事だからなっとぼそっと呟く。

『親方、おやすみなさい』
俺が言うと、親方はおやすみっと呟いた。
俺が食材を使いすぎたんだろう。仕事しないとお金は入ってこないからな。
これからは気を付けて使わないと、ママに会うどころじゃなくなる。
まず、俺達がニーナのママに会う前にやらなければならない事。
それは、明日の糧を得る事。ただそれだけ。












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