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虹色石を探して
作:カスヤ セイイチ



第十一話


カンチさんは何かを知っている。
ただそれを、今聞くべき事か、あとで聞いた方が良いか分からなかった。
俺はカンチさんに何度も話しかけようとするが、黙って暖炉の方を見て
何やら考え込んでいる表情のカンチさんに、俺は声すら掛けられなかった。
どちらも言葉をを忘れたかのようだった。
沈黙だけが支配する中で、俺はどうする事もできずに、ただ目の前に置かれたグラスをじっと見つめていた。
どのくらい時間がたっただろう。
お店のドアがキィっと音を立てるとともに親方が入って来た。
良かった。親方は、あたかも暗闇の中を射す一筋の確かな光のようだった。
別に、親方が禿げてるからというわけではない。
実際、このいたたまれないような空間で、親方が救いになる。そんな気がしたのだ。
親方は俺とカンチさんを見比べると、そのまま黙って椅子に座った。
カンチさんは親方からそっぽを向いて黙って暖炉を見ている。
『カンチ、どうした?』
親方は、何か良い事でもあったんだろうか、笑顔でカンチさんに尋ねる。
『別に、何もないさ』
投げやりな言い方でカンチさんは言った。親方からカンチさんの表情は見えない。
親方は、一瞬戸惑いの表情を浮かべ、そうかとだけ言うと、俺にどうしたんだと口の動きだけで聞いてきた。
俺は分からないっと首を傾げる。
フーッとため息を吐くと親方。テーブルに両手を載せてカンチさんに声を掛けようとそわそわとしている。
やがて決心したように口を開いた。
『なあ、カンチ?その、ニーナに、、ママが居るようなんだ』
『知ってる。ゴロー君から聞いた』
カンチさんは
親方は、驚いた様子でカンチさんを見ている。
『それじゃあ、ニーナのママの居場所も?』
『大方、グルーティナじゃないのかい?』
親方は、その目を大きく見開いて、何でわかった?みたいな顔をしている。
カンチさんはなんで分かったんだろう?
『女の子が一人で、こんな所まで来るはずないじゃないか?』
カンチさんは、こちらが質問する前に言った。
『女の子がここまで来るのは大体、訳ありでどこからか逃げて来たか、、
そのくらいだろ?グルーティナは金さえあれば、どんな女まで用意できるからね
。そういった趣味の男は世の中に五万といる。ニーナちゃんの足だけだとここまで来るのに無理があるけど
途中でニーナちゃんを憐れんだ、髪の毛の一本一本まで善人の誰かが手助けすれば、不可能じゃないだろう?』
カンチさんは、一気に捲くし立てるように続けた。その口調は、どこか俺たちを責めているようだった。
『しかし――』
親方は少し間を置いてから口を開いた。
『しかし、それにしてもなぜ私の事をパパっと言ったのだろうか?』
『はん、それはあんたがパパだからじゃないのかい?』
親方が独り言のように言うと、カンチさんは鼻で笑い、不機嫌そうに言った。
『私は――』
『分かってるわよ。、ゴロー君みたいにニーナちゃんまで拾っちゃうんだ。
結婚している男がそんなことするわけないじゃないか』
『カンチ、、お前、あの時医者と何を喋っていた?』
唐突に、親方は、カンチさんに質問した。
途端にカンチさんはびくっとなる。
あの時って、あぁ、昼にニーナを町はずれの病院に連れて行った時か。何かあったのか?
『気になっていたんだ』
親方は、カンチさんを真っ直ぐと見ながら言った。
『、、、何もないよ』
絞り出すような声でカンチさんは言った。微かに体が震えている。
『カンチ、本当か?』
親方が聞く。
『帰っとくれ』
『えっ?』
親方と俺の声が重なる。
カンチさんは、やっと親方の方へ振り返ると
『悪いけど、帰っておくれよ』
今までで一番真面目な表情で親方を真っ直ぐと、見据えながら言った。
その横顔は、一枚の絵画のように奇麗だった。カンチさんの目尻には、微かに涙が滲んでいる。
親方は、驚きのあまり声が出ないっというようだった。
『今日は、上客が来てたのに無理言って帰ってもらったんだ。
全く、商売あがったりだよ』
っとまた元の暖炉の方に向くと、微かに声を震わせながら努めて明るくしているような
口調で言う。その目には涙が零れようとしている。
しばらく親方は黙っていたが、やがて帰るぞっと呟き、席を立った。
成り行きを黙って見ていた俺は、うんっと呟くようにして席を立つ。
ドアを親方が開け、俺が親方の後に続いて出ようとすると
『ゴロー君』
カンチさんが呼び止めた。
『何?』
俺が振り返りながら言うと
『今日はごめんね。色々と』
っとそのままの姿勢のまま言った。
『うん。おやすみ、カンチさん』
『おやすみ。ゴロー君』
そうして、カンチさんの店を出た。カンチさんの隠し事も分からぬまま。












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