桜がちらほらと咲き始めた、今日は帝丹高校の入学式だ。2、3年生が会場準備から受付、全てをやる事になっている。そう、あの名探偵も。
「・・・藤、工藤!」
「あ、はい。何ですか?」
眉間に皺を寄せ考え込んでいた新一は、担任から話しかけられている事に気付くのが遅れた。
「お前なー全く話聞いていなかったな?」
「う・・・」
「いつもの事だから良いが、今後少しは聞くように」
「はい・・・」
この行為、有名な探偵工藤新一だから、許されるのだ。他の奴だったら、即雷が落ちていただろう。
「では、聞いていなかったようだから簡潔に言うが、お前入学式の受付をやれ」
「・・・は?」
入学式の受・・・付?受付!?普通なら女がやる、例のアレか!?
「今年はな、3年の中から、最も制服が似合う男女各1名ずつにやってもらう事になったんだ。この学年と言ったら、男子はお前だろう」
「・・・です」
「ん?なんだ?」
それまで呆けた顔で聞いていた新一が、何か言葉を発した。
「嫌です!!他の奴にやらせて下さい!!」
物凄い拒否の台詞だった。だが、断る前に女子の方を考えておくべきだったと思う。この学年一美人なのは、学年一制服の似合う女子は・・・
「女子は毛利だが、良いのか?他の男子にやらせても」
「・・・先生。多分、誰もやりたがりません」
まだ、誰も死にたくない筈。この役目を引き受けられるのは、新一しか居ないのだ。
「どうするんだ?良いのか、それで本当に良いのか?」
「確実に脅してますよね、先生。・・・分かりました、引き受ければ良いのでしょう?」
「最初から言え。じゃあ、当日は決して事件の方を優先させないように。させたら、代役を勝手にたてるからな」
こう言っておけば、確実に来る事が分かっている。というか、来ざるえない。工藤新一を使いたかったら、毛利蘭と言う、新一唯一の弱点を引き合いに出すしかないのだ。
「らーん。受付どう?」
「特にこれといった問題も無いよ」
ニッコリと笑う蘭。女の園子でも、釘付けになってしまう位綺麗な笑顔である。それをそこら辺に振り撒いているから、彼氏の新一としては面白くない。
「なら、良かった。そうそう、新一君も頑張ってねー」
「嫌味か」
勿論、この彼の機嫌が良い訳なく。新入生が近付いたら、逃げていきそうな顔をしている。
「そんな顔してたら、新入生が来にくいわよ。ちょっとは、笑顔を作りなさいよ」
文句を言いつつも本当は新一が、ちゃんと笑顔を作っている事を知っている。まぁ、蘭に近寄る男共には絶対零度の笑みだが。
「あのー受付はここでしょうか・・・?」
「はい、そうですよ。お名前は何でしょうか?」
新入生が来ると2人共にっこりと笑って対応している。
「〇〇〇〇です。(こんな綺麗な先輩がいる帝丹を選んで良かったー)」
次々と来る新入生の殆んどが思っている事。教師達もこの事を狙って、最も制服が似合う男女を受付にしようという案を出したのだろう。
「入学おめでとうございます。楽しい学校生活になると良いですね」
「あ、ありがとうございます」
帝丹高校一の美男美女ににっこりと笑いかけられては、まともに話す事もできなくなっていた。オーラが凄すぎるのだ。
「私、そろそろ行くわね。じゃ、お2人さん。頑張ってねー」
園子が行った途端に、新入生がぞろぞろとやって来た。一人一人さばくのがとても大変で。案内の生徒等も会場入りが始まった為、新一が案内をしなくてはならなくなったりと急に忙しくなってしまった。
「ふーやっと終わったよ・・・」
「結構、疲れるよな。これ・・・」
「そうね・・・」
話している2人から、お疲れオーラがはっきりとでていた。後輩全てだし、帝丹高校は決して小さくなく新入生もかなりの数が、入ってくる。それを調べ、案内するといったら、かなりの労力を使っただろう。
「これから式だよな。サボろうかなー」
「ちゃんと出なきゃ駄目よ」
新一をこういう時に1人にしたら、必ずと言っていい程サボりたがるのだが、蘭が居ればその心配はなくなる。だって、新一は蘭のいう事だけは素直に聞くから。簡潔に言うと逃げようがないだけだったりする。
桜の咲く頃にある入学式で、受付をやる事になった人はその年一年間、幸せに過ごす事が出来る
そんなジンクスがここ、帝丹高校にある。今年の受付は新一と蘭であった。まぁ、この2人なら、ジンクスがなくても幸せに過ごしていそうである。
「例のジンクスに頼る訳じゃないけど、新一と少しでも長く一緒に居られる一年になって欲しいな・・・」
蘭が呟いたこの台詞は、誰も知らなかったりする。勿論、新一も知らない。
そして、新一も・・・
「桜の咲く頃にある入学式、ねぇ。今年はピッタリだな・・・出先で事件に巻き込まれないよう、見てくれる神サマいねーかな」 |