初投稿となります。
妄想好きの愚者の世界を駄々漏れにした作品となる予定です。
プロット・設定が甘く、文章下手くそすぎて読めねーよ、と思われるかもしれませんが
もし、お時間許されるようでしたら是非とも読んでいただけたら幸いです。
感想・誤字脱字・批評などいただけましたら作者は尻尾を振って喜びます。
第一部―竜殺―01
遮る者のない高地で吹き付ける風に、男が身に纏った黒い外套がなびく。
若い男だ。青年には届かず、少年としては時を重ねすぎている。短く切られた黒髪、垂れ気味の目は優しげな印象を与えるが、瞳には強い意思があった。
体感する気温とは裏腹に、はるか高いところにある太陽は、視線を細めたくなるほどに眩い。
周囲を見渡せば、岩肌だらけの地面と雲に囲まれている――雲海が見える。ところどころ岩肌に残る白は雪か。
ここはフレスト山脈、高度七〇〇〇ミータを超えるこの山脈は国境線としての役割もある。
「楽に入れるとは思わなかったが……、これは――」
岩陰に隠れるように身を潜めていた男は、行く手を遮る存在を伺うようにして見る。
大きさは男の四倍はあろうかという硬い鱗に覆われた巨体。その体躯相応の太さの腕の先には岩すら楽に削りとる強爪。
翼持つ者の最上級種とも呼ばれるそれは、王国最高峰のこの山脈が自らの玉座であると言わんばかりにそこに鎮座していた。
「竜……」
更に運の悪いことに、未だ成竜とはなっていないようだ。
竜は人よりも賢い。人語を解し、他者を理解すると言われる竜ではあるが、それは成竜に限って、と言えばである。
幼い竜は人族がそうであるように、無垢で、無邪気で、残酷だ。まして種族が違えば、竜にその意志がなくとも、じゃれ付かれただけで肉塊へと変わる。
「勝てる……わけないな」
男は、これまでの道行での疲れで、ぐったりとした少女を抱えていた。
もし、竜が『ブレス』を出せるのであれば少女を巻き込む可能性がある。
そんなことを考えていたときだ。
男の耳に何かが聞こえた。強風でかき消されそうではあったが、誰かの、否、複数の人間のすすり泣く声だ。
その声が届いたのは男だけではなかった。玉座に座っていた竜も、もぞりとすすり泣きの声に頭を持ち上げた。
そして嬉しそうに一声を上げる。幼竜とはいえ、その泣き声は、大気が震わす大音声だ。。
男が抱えていた少女もだるそうに瞳を開ける。捉えるのは厳しい顔をした男の顔か。
「じぃ?」
「しっ。静かに」
男は竜から目を離さない。
竜はゆっくりと四足で立ち上がり、その背にある大翼を羽ばたかせた。巻き起こす風は周辺の雪と小さな岩を吹っ飛ばしていく。
「っ!」
男は、隠れていた岩陰に引っ込み、少女をかばうように抱きすくめる。
羽ばたく音が遠ざかっていくのを聞きながら、竜が向かった方角を岩陰から見つめる。山脈を挟んだ王国側、男が目指す方角だった。
断末魔の悲鳴、絶望の泣き声、発狂した人の笑い声。
そんなものを聞くのは、戦場でだけだ。少なくとも、自分の人生に、そんなものは関わらないだろうと、リース=エシフィールは思っていた。
今、この瞬間まで。
竜座と呼ばれる場所がフレスト山脈には存在する。山脈の中央部に存在する岩の台座がそう呼ばれている。麓に住む村人からはその役目から『餌場』とも呼ばれている。
そこには二〇人の純白の衣装を着た少女たちがいた。竜を鎮める生贄として集められた少女たちは、全て乙女だ。
王から領地を下賜された領主たる貴族は、平民二〇人を生け贄にすることに躊躇いはなく、むしろ安いものだと乙女たちに言い切った。
そして今、竜の台座に集められている少女たちは身を寄せ合って恐怖に陥っていた。目の前で人の体が食いちぎられる光景を見れば、普通の人間なら恐怖するだろう。
すでに、五人が食われている。竜の口周りは血の赤に染まっていた。牙に引っかかっている白い布は全ての乙女に纏わされた純白の花嫁衣裳であり、死装束。
リースはガタガタと震える体を両腕で抱きしめるようにしている。銀色の長髪は、こんな状況でも陽の光をはらんで輝いている。
怖い、怖い、怖い。
どうして私たちがこんな目に遭わなくちゃいけないの? 悪いことなんてしてないよ? 畑仕事を手伝って、夕暮れには森で摘んだハーブでお茶を入れることが一日の少しだけの贅沢で。お金はないけど、笑って暮らしていただけなのに。
視線は竜から離せない。竜の一挙手一投足が自分の、自分たちの『死』に直結する。
身を寄せ合った少女たちの中から叫び声が上がる。
「いや! 絶対に死にたくない!!」
リースはその少女を知っている。その少女は十七才だと聞いていた。
最期だからと領主の館で振舞われた料理の味は覚えていなかったが、仲間と交わした会話だけは覚えている。そう、彼女――スティニアはこう言っていた。
『私は幼馴染のリヴィって男が好きだったんだ。伝えておけばよかったなぁ……。でもすぐに死ぬような女に告白されても迷惑だよねぇ、あはは』
冗談のように言っていたが、瞳には涙が浮かんでいたことを覚えている。
スティニアは少女たちの輪から駆け出す。恐怖で占められた思考は思い出せなかった。
少女たちの足には、逃げ出せないように足には奴隷用の鎖で繋がれた重しがついていることを。
駆け出したスティニアは、十歩も進まないうちに足をもつれさせ転んだ。竜は鎖の音と声に気づいて、スティニアに視線を向ける。
スティニア!! そう叫びたかったが、そんな時間は与えられなかった。
竜は一度羽ばたくと、跳躍するようにスティニアの目の前へ着地。禍々しいまで鋭い牙が生えた顎を広げ、上半身にかぶりついた。
「――!!」
スティニアだった体は半分が消え、下半身だけが岩場に倒れる。
限界だったのだろう、少女たちから悲鳴が上がる。
声に反応した竜が血の滴る口を開く。それはまるで――
「笑ってる……」
竜は咆哮を上げた。次なる目標達へ飛びかかる。
リースは目を閉じた。
きっと一瞬だ、痛くない。でも怖い、怖い、怖い! 神様助けて!!
風が頬を通り過ぎる。
轟音が二つ。
衝撃は何時まで経ってもやってこなかった。
パラパラと何かが降り注ぐ。
リースは目を開いた。竜が倒れていた。そして一人の少女があらぬ方向を見ていることに気づき、視線を追うとそこには――
男がいた。かなり距離は離れているが、黒い外套に異国を匂わせる黒い短髪。距離が遠すぎて他にはわからない。そばには子どもが一人いるようだ。
幻かとリースは思ったが、男は何かを投げたような格好から立ち直ると、隣にいた少女を抱え跳躍した。
なかなか難しいですね。
まだ主人公の名前が『じぃ』としか出せていない。
やはり最初に入れるべきなのか……。
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