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狼男
作者:マル丸円
狼男

「んでさ、やっぱ俺は生肉しか食べないイメージついちゃってるのかな?そりゃぁね、俺だって狼男さ、狼さ。でもね、俺焼いた肉のほうが好きなんだよ?特にネギタン?こんがり焼いてレモン付けて食べるの大好きなんだよね、それでね・・」一人暮らしをする大学生である僕は、現在自宅のこたつで、人語をしゃべる巨大狼の愚痴なんかを聞いている。

なぜこんなわけのわからん狼男の愚痴なんかを聞いているのかといえば、さっき台風の雨がそのまま雪になったような吹雪の中、寒くて道端に倒れていた狼男さんの尻尾を踏みつけて、黄泉の世界から連れ戻してしまったんだ。それで[一晩泊めさせなければ、ハラワタ××して○○○したのち□□□□して燃えないゴミの日に袋に詰めて出してやる]と脅されたからである。

んで、殺されるのは嫌なので、家に連れて来て風呂に入れてあげてご飯を御馳走し、こたつで酒を酌み交わすと、これがなかなか面白いやつで、なんか意気投合してこうして雑談中である。

「ネギタンいいねぇ〜でも僕はハラミかな、ちょっと生の部分残してやるとこれがうまいんだよ!」

「ハラミもいいなぁ、じゃぁ今度一緒に焼き肉にでもいくか」

「ナイスアイディアじゃん、じゃぁどこいく?やっぱ肉壱?」肉壱ってのは俺の行きつけの焼き肉ができる定食屋だ。安いしうまいし、店長には味があるし、看板娘の涼ちゃんかわいいしとなんでも一級品のすんごい店だ。大学の友人や、家族にそこらで知り合った酔っ払いのオヤジともいったことがある。

「えっ?・・肉壱はちょっとなぁ〜・・」さっきまでほろ酔い気分で、いい顔してたのに急に眼が泳ぎ始めた。

「んっ?なんだ、涼ちゃんに告って振られたんかよ?」あの子に振られて店に行きづらくなるなんてよくあることだ。涼ちゃんは誰にもなびかないから人気なのだ。まぁかくいく僕は、いつも見守るだけでデートの一つも誘えた試しもない。

「ははは・・・まぁそんなとこだ。・・それより、駅の近くに新しい店が出来たらしいからそっちなんかどうだ?まぁ行くからには人間の姿だから、今みたいなやり取りはできんかもしれないがな」あぁ忘れてたそうだ今日は満月だったな。雪雲に隠れて見れなかったが、うちの月の満ち欠けが記されたカレンダーを横目でチラッと見ると、確かに今日は満月。それでこいつは、狼男ってわけか。たぶん戻ったらごっつい男なんだろうなぁ。

「お前の人間の姿ってどんな感じだ?声やらしゃべり方で男なのはわかるが、お前と話していると初対面という感じが全くしないからな。もしかして俺の友人のひとりか?」

「あぁそんなとこだ、おまえカンがいいな探偵にでもなれるんじゃないのか?」

「マジかよ誰?!」「いわねぇよ、どうせ明日になったらわかるんだ、それまでおとなしくしてな」「あぁ〜?そりゃねぇぞお前、今夜死んだらどうすんだよ?」

まぁそんなこんなで、酒も会話も進み、気づいたら寝ちまっていて、ふと尿意に目が覚めると、午前2時45分。眠い目で、トイレに行き。ぼーっとしながらコタツに入りなおし、また寝てしまった。

「んぁぁ・・」ゆっくりと目が覚めると、目の前に狼男の代わりに人間がいた。でもそいつは、小柄な体型でサラッサラの黒髪をしてて、胸のあたりに山が二つあった。まぁようは“女の子”だった。それでなぜか僕はその女の子を腕の中に抱いている。

「・・・はぁ?」眠気なんかぶっ飛んだよ。だってその女の子、肉壱の看板娘の涼ちゃんだったんだもん!!

僕の腕の中で眠っている涼ちゃんの瞼がゆっくり開き、半分開いたところで、顔を上にあげ、僕と目が合った。

しばらく沈黙が続く。僕と涼ちゃんは、目を合わせたまま固まっている。

「おっ、おはようございま・・す・・ぅ」急にうつむく涼ちゃんの耳は真っ赤になっている。僕の顔も今真っ赤だろうなぁ。

「おはよ・・えっと狼男・・さん?」とりあえず聞いてみた。間違いないのだが・・。

「あっはい・・でも狼女でした・・アハハ」まったくその通りだ。

「とりあえず・・朝ごはんにしようか」

その後僕達は、こたつを出て、僕が用意した朝食を食べ、とりあえずもう一度こたつに入って、状況を整理した。狼女こと涼ちゃんの家系は、代々狼化できる能力があるらしく、いつもは、コントロールして、狼にならないようにできるが、昨日は調子に乗って、友人とバカ飲みして騒いで、コントロールが緩くなってしまい、満月だったことも手伝って狼化してしまったそうだ。ちなみに狼化すると言葉使いが乱暴になり、声も男のように低くなるそうな・・。それでたまたま通りかかった僕を脅して、家に入りまぁ楽しく雑談し酒を飲んでいたと・・。まぁなんともおもしろい喜劇だ。

「えっと、じゃぁ送ってくよ、親父さん心配してるだろうし」ちなみに親父さんとは肉壱の店長のことだ。

「やっ、やめたほうがいいですよ、お父さん私が男の人に朝送ってきてもらった上に、狼化のことバレたって知ったら、ぜったいあなたのこと噛み殺しちゃいます。私そんなの嫌です!」俺のこと守ってくれるのか涼ちゃん、ほんとかわいいなぁ。

「かみ殺されるのは、いやだな・・・」

「そっそれじゃぁ、私は帰りますね!」涼ちゃんはずばっと立ち上がり、ダッシュで玄関まで行った。

「あのぉ!」姿は見えないが、玄関のところにいるのだろう。

「んっ?なに?」

「今度のデート、楽しみにしてますねっ!!」あっ・・昨日の約束・・駅前の焼き肉屋一緒に行くって約束したな。

「よっしゃ!じゃぁ俺の奢りな!!」ハハッ・・恥ずかしくてこたつから出たくないよ。

「はっ・・はいっ!!!」

狼女も悪くないな、でも親父さんにかみ殺されるのはカンベンだ。

さてと、風呂入ってひげそったら肉壱に朝飯食いに行くかぁ。
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