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落ちた者
作:海乃



第六話 大会


「俺的には〜そろそろ助けに入った方がいいと思うんだよね〜」

机の上に並んだ豪華な料理をつまみながらソウヤは隣にいた祖屋に向かって言う

「んお?」

返事を返す祖屋の口には肉が詰まっていていて口から骨が飛び出している

「そうだよね〜」

と盗み聞きをしていた識が割り込んでくる

彼女はきちんとフォークとナイフで肉を切っている

「もう戦闘は終わって敗走してるしね」

「何の話だ?」

そこに識の隣にいたシャスラも話に入ってきた

「ん、あぁ、エリオルトの事ですよ」

「エリオルトがどうかしたのか?」と首をかしげるディエルサラン

今この場には3国の王と彼等に使える将軍達が一同に集って食事会のような物をしていた

辺りは暗くなっておりここ数日は滞在する雰囲気の2国の軍はそれぞれ城の外で野営の準備をはじめている頃か

「いや、今エリオルト攻められてるんですよ。ガルトニールとガストレルに」

「ほぉ。それは又行動が早いなあの国は。もう少し後かと思っていたのだが」

とディエルサランは言って今度は腕を伸ばして果物に手を伸ばす

「人ごとじゃ無いですよ。分かっていたとはいえそれは予想以上に早いですね。にしてもこんなに離れてるのに分かるんですね」

「まぁ天人だからって訳でもないけどさ。イディルの流れってそこそこ離れてても分かるもんなんだよ」

「戴冠式の前日、沢山死んでたね・・・」

「あぁ。って一人話に参加せず何飯ばっかり食ってるんだよフリージア」

「え?だって今のうちに食べておかないと。どうせ助けに行くんでしょ?」

ともはや礼儀を無視して食べまくるフリージアは一人口を動かしていた

「ん〜まぁ今エリオルトを落とされるのはまずいしな。人助けだと思ってさ。後保険もかけておきたいし。それにあそこで感じたイディル」

「やっぱり気がついてた?」

「あたりまえだ。あれは恐らくコルテスと霜雪だな。どっちについてるかはわからんがあいつ等がいるなら戦いには勝ってるだろう」

「でもぱったりと消えたよね。イディル。生きてるかどうかは別として」

と不安そうに言う識

「あぁ。それが奇妙な点だな。あいつ等なら負けるとは思えないが・・・現にイディルが感じられなくなったもんな」

と祖屋は続ける

「でもあれだけのイディルの中でずば抜けてたのが3つ、2人は分かるにしても後一つは何なんだ?」

「ガルトニール側後方から来たのは分かるんだけど」

「感じたことが無いって事は恐らくは天人じゃない」

「2人は多分エリオルト側についていたんじゃないかな。方向からして」

「だと俺も思う」

とフリージアが言うとソウヤもそれに同意した

「こんなかで一番臆病なソウヤ君が言うんだ間違いない」

「黙れ祖屋。まだあのこと・・・」

と立ち上がって剣を抜こうとする

「おもしれぇ、やるか?」

「うるせぇクソ野郎!」

と言ってフリージアは食べ終わった骨付き肉の骨を2人に投げつける

カコンと音をたてて2人の脳天に直撃

2人はギロリとお互いを睨んでドサッと椅子に座り直す

「ケッ、あの時のことまだ覚えてやがったのか」

「忘れるはずもねぇよ!お前俺をクリオトネオラの無の前に落としやがって!」

「あーあの時のことかー」と識とフリージアはなつかしそうに頷いていた

「クリオトネオラの無って何ですか?」

とフィーネが聞いてきた

それに識が答える

「えっと向こうの世界でやっていたゲームのボスでなんか黒いカクカクのクリオネみたいな奴なんですけど・・・ってあークリオネじゃ通じませんよねぇ」

「あの時の慌てた様子は凄かったもんね〜」

「ね〜」

と意気投合する2人

「おお、そうだとも!あの姿、未だに忘れられんわ、ハーッハッハッハ!!」

とプラス一人

ウゼェ此奴・・・

「そんなこと言うともうお前の店いかねぇぞ」

「あっ、ごめん、それだけは勘弁!!」

「じゃぁその話は置いておいて、どうする?」

「エリオルトの件か。あいつ等恐らく城に立てこもるだろうな。援軍なんか来ないくせによ。しっかりとヒラの谷で追い返しておけばこんな事にはならなかったものを」

「まぁまぁ。とりあえず私たちだけでも向かう?」

「両者の位置的に恐らく城に籠もって1日で完全包囲だな。ガストレルの方も向かってるみたいだし出来るだけ急いだ方が良いかもしれないな」

「じゃぁ今日のこの晩餐のあと辺りにでも向かうか」

「そんなにすぐに出るのか?」

と聞いてくるシャスラ

本来なら時間の事を考えたら今出ても恐らくつく頃にはすでに包囲された後であろうから助けに行くなら早いほうが良い

「そうですね。ガルトニールは別としてエリオルトの王都はガストレルから距離がありますからね。二手に分かれた方が良いかと」

「ならば我が国からも援助を出そうではないか」

「おぉ、助かる」

クォールから今兵を出すとかなり時間がかかるのだがルヴァインの方がエリオルトの王都に近いため援軍を送りやすい

「ただそれならばカルパの森を迂回して行かないと行けないからこちらも兵を出すなら早めに指示をするが」

「では頼もうかな。ここからなら飛龍を飛ばした方が早い。割り振りを考えよう。先に王都へ向かってガルトニールを任せる方とルヴァインの兵と合流してガストレルの兵を追い返す方と」

「そうだなぁ。とりあえず私エリオルトが心配だからそっちにまわっていい?」

「あ、じゃぁ私も」

「なんだ。案外すぐ分かれたんだな。別に割り振りぐらいはどうでも良いがやっぱりこの別れ方か。男女で分かれるけど得にレベルの差はないしそんなもんか」

「ま、女性陣は魔法が使えないのが難点だな。やっぱり変えるか?」

「大丈夫でしょ。たぶん」と言って爪楊枝で歯を突っつくフリージア

脚を机の上に放り上げている

「お前親父臭いぞ」

「あ?なんか言ったか?」

「べっつに〜」

「何かむかつくわね・・・」

「ま、フリージアは置いておいて女性陣は軽いし近いからすぐつくだろう。とりあえずその場での判断は任せる」

「なんで私は置いておくのよ!重いって事!?」

フリージアがキーキーわめいているのをシャスラが襟首を持って押さえている

ってか以外に力あるんだな

「一応早めに向かうけどさ。霜雪とコルテスの事も気がかりだし何かあったら引くんだぞ」

「りょーかい〜」

「じゃぁ、俺と祖屋は先に向かいます」

ソウヤは立ち上がって祖屋の襟首を持つ

「は?もう!?ちょっとまて飯がまだ・・・」

「五月蠅いですよ。ほら、行きますよ」

「俺の飯〜!!」

「うるせぇ!」

と言ってフリージアは肉を放り投げる

ガボッと祖屋の口にフィットした肉は彼の口を塞ぎ静かにさせることに成功した

机の片隅でシェルファスがその様子を横目で眺めていた

「彼ももう独断で動くようになってきましたね。陛下も何も仰る様子がないですし」

その隣に座っていたガーランドはガツガツと肉を口に頬張っていた

「だな。天人だから仕方ないのかもしれんがそれでもこの国に対する忠誠心が薄れているな」

「まぁまだこの国に対して働いてはいるがそれでもこれまでとは変わってきているな。彼等の存在なのだろうな」

「元々の世界の住民ですからあたりまえですね。予想から行くと、彼は近いうちにここを出ると思います。自らの仲間を捜し元の世界へと帰るための方法を見つけるために」

「そうだな。・・・・あぁ・・・・そうだな」

シェルファスはそう言い残して部屋を後にした




「じゃぁ行ってきます。ディエルサランさん。援軍の件、よろしくお願いします」

「あぁ、任せておけ。すでに3000を向かわせてある。こちらもこれからルヴァインへ帰る。帰城すれば今城に残してある兵も向かわせることが出来るとおもうが・・・まぁそのころには終わっていると思うがな」

「いやぁー戦闘が長引けば結構頼りになりますよ。じゃぁ」

そう言ってソウヤ、識、フリージア、祖屋の4人は各自飛龍に乗って北、エリオルトを目指した
















大陸南部地方、エルガンの都市アステト

その都市で今日行われる予定の大闘技大会

騎士、民間人、種族を問わず誰でも参加自由なこの大会はこの国の王が提案した物だった

北方の国々の異変にはすでに南方の国々も気がつき始めている

中原の国々も大国ガルトニールのおかげで何処も恐ろしいほどに国の警備を強化している

そんな中で行われるこの大会の目的は城の騎士の戦意向上などが含まれ、他国へ自らはこのような優秀な兵達を持っている!と見せつけるのも一つだ

まぁ大会といっても模擬戦のような物で今回は他国から見に来るような者は少ない

代わりに観客席の多くを占めるのは国内から見に来た人々と貴族ぐらいである

最も貴族といっても別に剣に興味がある者は殆どおらず大半が自らのボディーガード探しと言ったところである

そしてこの大会に参加するリヴェルこと中野 由重なかの ゆえは大会への登録を済ませると自らの愛槌、神々激鉄かみがみのげきてつをその細い腕でぐるんと一回しする

これは通常の人間では持つことは出来ないほどにレベル、こちらで言うアビリティとやらが高い

こちらではアビリティが武器のアビリティにとどいていないと武器が重すぎて使えないという事態に陥るようだ

ただ単に巨人のような大男でも小さな武器すら振るうことは出来ない

用は筋力の問題では無いということだ

栗色のショートヘアーで飾りの紅いリボンが風になび

しばらく待つとエントリー時間が終了してそれぞれA〜Dブロックのトーナメント表が闘技場の正面に張り出される

ブロック分けはエントリーの時にくじ引きで決まっている

彼女はAブロックの第2試合に当たっていた

ちなみにここ、Aブロックの控え室には多くの人々がおり中には獣人やオーク、エルフなどもちらほらと混ざっている

オークといってもそれほど醜いわけではなく単に紫色の肌をした人間がオークと呼ばれているだけである

室内には試合観戦が出来るように魔法で作られたモニターが出来ている

空中に闘技場の映像が映し出されている

しばらくすれば第一試合が始まるであろう

先にエントリーを済ませたリラは確かBブロックの控え室で待機していたはずだ

そのリラから貰った弾丸ブレッドをポケットから数発取り出す

手の上でジャラリと数発の銃の弾のようなものを一つ手に取り後は全てポケットにしまう

「ま、多分使わないとは思うけどね」

そうつぶやいてその弾を神々激鉄の尻から装填する

カシャンとカバーのような物を引いて其処に弾をいれてポンと叩いてカバーを閉める

よっし、じゃぁ準備だけでもすっかな!

ハンマーを肩に担いで準備のために出口に近づく

すると肩が隣に立っていた男に当たった

当たったというか掠っただけなんだが

「あ?嬢ちゃん、ぶつかっておいて無視はねぇんじゃねぇか!?」

これまたもの凄い大男だこと・・・。とリヴェルは思った

気性も荒そうだし、どうも見るからに筋力バカみたいだし

ま、私に似てるかもね

ついフフンと鼻で笑ってしまうがどうもそれが相手にも聞こえていたようで

「てめぇ名は!?」

あら恐いこと恐いこと

「リヴェル」

「リヴェル・・・・奇遇だなぁ、俺の初戦の相手じゃねぇか!」

「すいません。私いちいち相手の名前は覚えていませんので」

とにっこり

男も流石に嫌みをニコニコとした顔で言われるのはむかついたようで無言でクルリと去っていった

よくわかんないなぁ〜。とか思いつつ部屋を出て配置につく

円形の巨大な闘技場を4つに区切って行われるが広さ的には問題ないため

「よっし、行くわよ〜!!」

先に向こうで待っていたのは先ほどの大男だった

両手には巨大な斧を持っており防具を胴にだけつけている

「うゎ、でかさだけは一流ねぇ」

「でかさだけってのが気にいらねぇよちっちゃいの!」

男は斧を構える

が、リヴェルはだらんと槌を持っているだけで本当に今から戦いが始まるのかどうかすら危うい様子だ

「なんだそれは?それが嬢ちゃんの構えか?」

「いやぁ、構えるまでもないかなぁと」

「その小さい体で何処まで俺と・・・え?」

男は宙を舞っていた

ぐるんと一回転してハッと気がつく

自分が宙を舞っていることに気がついて目を見開く

その時真下にぶらんとハンマーを持つリヴェルが恐ろしく見えた

リヴェルは上を向く

ニヤリと笑った彼女が恐ろしく見えた

「フフッ、覚悟してよね。私に喧嘩うったんだからね」




誤った!!

俺としたことが相手の力量を計り間違えた

大男は名をガレンと言った

男は別に騎士と行ったわけではなくただの木こりの一人であった

今回は自らの腕試しをかねて大会に出たのだがどうやら初戦落ちになりそうであった

ここまで来ればもはや力の差は歴然

小さき少女が上で大男が下なのだ

周りで見ていた者も何が起こったのかが分からなかったであろう

見えていた者にはこう見えたはずだ

片腕で大男を頭上へと放り投げたように

一応ガレンもそれなりに酷い男ではないのだ

その口調と見た目で勘違いされ勝ちだが表ではああ振る舞っていても内心はいい男なのだ

少女がニヤリと笑った

見た目と性格が違うと言うことがどういう事かはガリストは知っていた

用は自分がそれに当たるのだから他の人間が猫をかぶっていたとしてもそれが分かるという妙な力ももっていた

あぁ、この少女はおとなしそうに見えて性格は真逆じゃないか

すぐさまそれを見破った彼はまるで時が止まったかのように感じ、そして

ドSじゃねぇか・・・と思った

直後、男の腹に強力な一撃が襲う




片手で軽々しく頭上でその巨大な大槌を一振り

大男は真横に吹っ飛び壁に激突する

「救護班〜」

彼女は手を振って常備壁際で待機していた救護班を呼ぶ

その救護班もこの大男が吹っ飛ぶのを見ていたのだがあっけにとられていたために彼女の声が彼等の意識を元にもどしたのだった

「やっぱり見かけ倒しねぇ。思ったよりいい音もしなかったし」

そう言って槌を担いで控え室へと戻った

リヴェルが室内へと戻るとサッと自分を避けるようにして大の大人達が道を譲る

ふふふ、良いわねぇこういうのって。そう、自分が他人を従えてるっていうの

ま、流石に其処まではかわいそうだからしないけどね

何て事を考えていた

ふと顔を上げるとDブロックのモニターにリラが映っていた

紫の長い髪を後で括っており黒いローブでその身を隠してはいるものの腕だけは外に出して杖を構えていた

「相手もかわいそうだねぇ」

ぽつりとつぶやいた




彼女たちがこの闘技大会に出るのには理由があった

ただ単に優勝したときの賞金が欲しかっただけである

彼等2人が向かおうとしていたのはさらに南の方角である

2人はもう少し北方の地域に落ちたのだが偶然出会い放浪するうちにここアステトへと流れ着いていた

そのくせ他の天人達とはまるっきり出会うことが無かった

2人とも実力はあるくせにまるっきしシグンスが使えなかったのである

つまり相手のイディルを感じることも出来なかったりする

おかげで当てもなくフラフラとさまよっていただけだったりするためお金も無かったりするし宿賃も食費もその場しのぎなのだ

というわけで3年目にしてやっと大金を手にするチャンスが出来たのだ

しかもこの世界では負けることなど無いと思われるような自分たちなら勝利も確実かと思われる戦闘でだ

これはもう100%負けない賭けのようなものだ

あれ?それって賭けって言わないような・・・

そんなこんなで2人はこの大会にエントリーした

さて、次の試合まで時間あるしどうしようかな

観戦もつまんないしなぁ

とか思っていると観客席で歓声が上がった

ま、つまんないけど仕方ない。暇つぶしには・・・ね

一旦闘技場の外に出て観客席の方に向かう

階段を上りきるとドッと歓声がわき上がる

「五月蠅い・・・」

ぽつりと零した言葉は歓声に飲まれて誰にも聞こえることは無かった

「あら、貴方にしてはまともな発言じゃない」

いつの間にか来ていたリラが背後から声をかけてきた

「まともなっていつも私がどんな発言を?」

「死ね、消えろ、ウザイ、バカ、クソ野郎」

「うふふ〜そんなこと言ったことは無いわよ?嘘は止めて欲しいわね〜偽りのリラちゃん?」

「全部、鏡だから」

「わっかりずらいのよあんたのしゃべり方」

リラはちょっとした癖で本当のことと反対に当たる言葉を使って話す

つまり普通の人間で殆どそれを聞き分けることは無理なのだ

「癖じゃないから」

「癖なんでしょ」

「いや・・・」

「分かった分かった。なんであんたまでこんな所にいるのよ」

「貴方こそ」

「暇だから」

「隣に同じく」

「あら、暇じゃなかったらなんなのよ」

「アレ」

「あれ?」

彼女が指を差したのは優勝賞金が置かれた台座

優勝トロフィーが横に置かれておりその前には謎の杖が置かれている

杖?

というか見覚えがあるぞあの杖

遠くてよく分からないがあれは恐らく彼女の使っていた杖に酷似している・・・・ような気がする

流石に向こう側にあるので遠すぎる

するとリラは一枚の紙をリヴェルへと渡す

それはこの大会の参加者募集のポスターだった

優勝商品に出されていたのはなにも賞金だけではない

賞金に合わせて杖か魔剣のどちらかが与えられるようであった

案外そっちで選手を釣っているのかもしれない

あと魔力玉と呼ばれる魔具も商品に入っているらしい

どれも国から出された商品である事には間違いない

魔剣と言うだけでも数少ないレア物だ

欲しがる者は少なくはないはずだ

少なくとも集魚効果はあるはずだ

さらに言えばあれだけレベルが高い杖までも商品に出されているのだ。魔法使いの参加も狙っているのだろう

確かに剣だけでは流石につまらないところもあるし

その点武器が自由っていうのは正直以外だった

持ち込みが可能な時点でそれなりに各自使い慣れた武器を使えるわけだから一概に強弱をつけるのも難しい

その分接戦にもつれ込むため観客としては嬉しい限りであろう

「アレってあんたの水鏡木の杖でしょ?」

「うん」

もう長いつきあいがあるんだから彼女が本当の事を言っているのか偽りを言っているのかは見分けられるようになっていたりする

「じゃぁアレだな。取り戻すしかないねぇ?」

ニヤリとリヴェルは笑った

そのにやけ方を見て彼女は「悪い癖」とつぶやいた

彼女もリヴェルの行動を長年見ているためか分かってしまう

何を考えているのか





控え室に戻る

午前の試合はこれで全て終わり彼女は控え室に戻る

すると小さな騒ぎが起きていた

近くにいた青年の一人に声をかけた

「何事?」

「ん?あぁ、何人かの選手が行方不明なんだってさ」

「行方不明ぃ!?」

「どうも奇妙で試合で負けた選手の、それも国内の騎士を中心に行方不明なんです」

「国内のってことはこの国の聖騎士団が?」

この国が持つ兵達は聖騎士団と呼ばれ南方の国々の中でも騎士の国とまで言われるほどにこの国の騎士達の質は高い

周囲をユーリア、イリメーヌ、アリーア、エルービ、エンドリアに囲まれるこの国はそのおかげかこれまで他国の進行を殆ど受けたことがない

勇敢な戦士が多いこの国には優秀な頭脳を持った者も少なくは無い

故に進行も難しい

何しろ国内の約5分の一を占めるジェル砂漠との境界線にまで砦を築いている位に守りは堅く、さらに攻撃面でも申し分ない位だ

アステトは王都では無いため其処まで強固な砦などは近くには無いがそれでもかなり多くの聖騎士団の騎士達がここに集まっている

その聖騎士団の騎士達が行方不明というのも奇妙な話だ

彼等は少なくともかなりの腕を持つ兵達だ

そこらの国の兵達と一騎打ちしても勝つ自信がある者が殆どである

奇妙な大会だ。

そもそも何故王都にも闘技場はあるのになぜこのような地方の闘技場を使うのだろうか?

兵達は最低限必要な数を除いてここに居ると聞いた

何故?誰かがここに回すようにし向けた?

ということは困るのは王都の方かな。もしそうなら誰かが攻め入ることも可能だしね。兵がここに集中しているんだから

「ま、考えても仕方ないわね」

次の試合が始まろうとしていた

彼女は立ち上がると身を翻して闘技場へと赴いた







6戦目、ここまで来ると流石に少しずつ戦士としての質が上がってきている

それでも一瞬でケリをつけてきている2人は初撃のみで相手をノックアウトしている

後一戦済ませればそれぞれのブロックの代表が決まりそれから抽選により準決勝を始めるのだ

「弱いっ!」

Aブロックの決勝の相手は若い成人男性で奇妙な武器を使ってきていた

腕を振るっているのは分かるのだが手には何も持っていないように見える

ただその手には何かが握られているようでこうしてかわす動作をすると真横を風が通り抜けるのがよく分かる

一応リヴェルにはよくは見えていないのだが全ての太刀筋は何となくは見えている

不可視の何かを男は横一閃に振るう

それをこの試合初めてリヴェルは神々激鉄を取り出した

カァン!と甲高い音と共に手に手応えが伝わってきた

ふむ、なるほど剣ね。でも魔剣じゃないわね。魔法をかけて不可視にしてるのかしら?にしても長いわねこれ

思った異常に長い透明な剣を振るい続ける男はやっと自分の太刀筋が見切られていることに気がついた

これまでの相手は自らの腰に刺したフェイクの剣を見てそちらを武器だと思いこんでいるようだがその隙に透明な剣で振るうという攻撃により敗れ去っていた

「驚いたよ。君には見えているようだね」

「何となくね。でも」

そこで大きく右足を踏み出す

男は急にその距離を縮められたことに驚き一瞬とまどいを見せてしまった

「やっぱり弱い」

槌の尻で相手の胴の防具を突く

それだけで鋼の防具はあっけなくへこんだ

男も「グッ・・・」と言ってあっけなく倒れ込んだ

それと同時に不可視の剣が実体を現す

「得にたいした剣って訳でもなさそうね。やっぱりただの剣みたいだね」

パキンと剣を踏みつけておる

普通剣なんか踏みつけても折れるような代物ではないはずなのだが・・・

あっけなく倒れた男はさっさと救護班に運ばれていった

これで後残すところ2戦か。

彼女はめんどくさそうに引き上げて室内へと戻っていった






「さぁーて、これにて全ての予選ブロックが終了致しました!残ったのはこの4名!」

拡声呪文を使って声を大きくした司会者がそう言うと中央に巨大なモニターが現れた

4名の名前が現れる

「第1試合、エスティオ殿対リヴェル嬢、第2試合、リラ嬢対フォルカ殿!!どうやらむさ苦しい男以外にも2人の戦女神が舞い降りたようです!彼女たちは殆どの試合で相手を一撃で倒している強者揃い!これは目が離せません!」

「うるせぇぞー!」

「さっさとはじめろー!」

「すいませーん!!ってことで初戦を始めマース!あ、痛いッ!あ、ゴミは投げ込まないでくださーい」

そう言って司会の男は幕裏へと引き下がる

「第一試合!魔法使いエスティオばぁぁーーさす大槌使いのリヴェルーーー!!」

先ほどの司会者はすぐに音声のみで解説をし始めた

「ウザッ」

相手に出て来たのはどうやら珍しい魔法使いのようだった

魔法使い自体数が少ないので滅多にあえる者ではない

それに大半の魔法使いは国等に使えているためにあまり世間には出てこない

リヴェルにも一応は彼がそれなりに強い魔法使いだと言うことも分かった

それに

「私はこっちの魔法使いと戦うのが初めてでねぇ、それはそれは楽しみな訳よ。だから一発二発で倒れないでよ?」

2人は一定の間隔を保ったままジリジリと円を描くように動いている

「君の戦いは見させて貰っていたよ。なかなかに強いじゃないか。それにあの透明な剣を使っていた若者、どうして見えたんだい?」

と老魔法使いは木で出来た杖をこちらに向けて聞いてきた

「見える見えない以前にあんなの腕を振るう方向で見切れるわよ。あれぐらい」

「どうやら相当に反射神経が良いようじゃな君は」

「ふふ、私をそんな言葉で持ち上げて手加減させようとでも?それとも隙でも作りたいの?」

リヴェルは両手を肩まで上げてやれやれといった感じで首を振る

「ご想像にお任せしよう。もっとも、君はすでに私の術にはまっているがね?」

「あんたねぇ、詠唱無しでどうやって魔法使ったっていうのよ?嘘も・・・ってあり?」

パキパキと言う音が聞こえ下を見る

気がつくとリヴェルの足下にはいつの間にか氷が張っており彼女の脚が一気に膝まで凍ってしまう

「冷たいわこりゃ」

フンっと力を入れるとすぐに氷は砕けて自由の身となる

「お?」

直後、巨大な炎がドッと押し寄せてきて彼女を包み込んだ

周囲から悲鳴と歓声が上がった

「流石にやりすぎじゃないこれ?」

その炎を腕の一振りではじき飛ばすのを見た老魔法使い、エスティオは歯ぎしりを立てた

白髪と白髭が弾かれた炎の熱風で揺れる

「ならこれでどうだ!」

男が口を開こうとした

恐らく呪文を唱えはじめようとしていたのをさっしたリヴェルが初めて攻撃にうつろうとした

その瞬間に背後で大きな爆音がした

さらに周囲でも大きな爆発音が鳴り響いた

リヴェルは攻撃を中止して周囲の状況を確認する

観客席では観客達が逃げまどっており

「やっと合図か!」

突如エスティオは杖を大きく掲げた

杖の先端に小さな魔法陣が展開する

そこからヒュルヒュルと一筋の光が上っていく

それと同時に観客達の騒ぎが大きくなった

観客席の一部に巨大な岩が突き出ている

それらはまるで観客達を出口へ誘導するように飛び出していく

「これは・・・・」

リラも手すりを乗り越えてリヴェルの所へ駆けてきた

「目的・・・聞かせて貰おうか?初撃で私の足止めをしたよね?それもわざわざ魔術固定してたでしょ空間に」

クルリと視線をエスティオへと向ける

「あぁ。大会が始まる前からここには魔術固定をしておったよ先ほどの魔法をな。最も足止めの魔法のはずだったのに片手で弾かれたのは予想外だったがね」

「質問に答えてくれない?」

「なぁに、たいした事は無い」

すると男は再び杖を構えた

「フォルカ!」

フォルカと呼ばれたリラの対戦相手の男は選手用の入り口から飛び出してくる。

見た目は小柄な成人男性で腰には小さな剣を4本下げている

防具はつけておらず肘まですっぽり覆うような巨大な手袋をしているわりにはその他は動きやすいような服をしているため多くの肌が露見している

「了解!」

男はダッと駆けてくる

見切れない速さではない

早いけど私には通用しない!

相手は走りながら右手で左腰にある剣を抜き、左手で右腰に付けた剣を抜く

シャリンッという音をたてて剣は銀色の刀身を光らせる

リヴェルは慌てずハンマーを構える

男は右手に持つ剣を水平に振るい左手に持つ剣で突きを放ってきた

また難しいことをっ!

リヴェルは初撃を体の重心をずらし右足を軸にして体をそらしながら反転、左足を相手の目の前まで持っていき振り向き様に相手の剣の裏の位置をとり片手でハンマーを振り上げて振り下ろされる剣を弾く

その瞬間、残った二本の剣が突如鞘から飛び出す

えっ!?

そして二本の剣は相手の腰の位置で剣先をこちらにクッと向けて飛んでくる

魔法使いっ・・・!

後にいたエスティオが自らにバリアを張りながら杖を振るっている

ぐっ・・・・・・

がら空きになった目の前にバリアを展開しようとする

しかしその必要は無くリラが援護をして真っ先にバリアを張る

剣は不可視のバリアに当たるとあっけなくカランと音をたてて落ちる

「あんた等なんか苦戦するまでもないよ!ストーンストライク!」

大きく後方に飛んで着地すると思いっきりハンマーを地面へとたたき付ける

すると二本の巨大な岩の柱が彼等の下から現れて2人の体を空中へと跳ね上げる

「結界二式展開!落ちろ」

リラがつぶやくと2人は空中でピタリと動きを止めた

そして数秒の制止が終わり一気に地面までたたき落とされる

巨大な土埃が舞う

「足場頼むリラ!」

「わかった」

リラは腕を何度も振るう

それと合わせてリヴェルは見えない足場を飛び跳ねていき上空数十メートルの辺りまでくる

2人はイディルの使い方が下手なので空中に足場を作ることが出来ない

「うおおおおっ!!」

彼女は懐から2発の小さな銀色の玉を取り出して上へと放り投げる

玉は重力にしたがって降下して行く

それをまとめて神々激鉄で叩く

二つの玉はカーブをして二つの土埃の中へと吸い込まれる

ドオオオオオン!

あんな小さなパチンコ玉のような玉が地面を数メートルに渡って陥没させる

「リラ!」

リラは魔法を発動させた

彼女が突きだした腕の周りを3つの魔法陣が展開している

「リフレクター!そして・・・トライ・ラインッ!!」

彼女は周囲にいくつもの反射鏡を発生させる

通常リフレクターは相手の魔法を跳ね返すときに使う

それも大抵は一対一の状態が殆どである

だが彼女は自らの攻撃を反射させている

複数の反射鏡で角度を調節しながら進む赤と青と黄色の光の光線は3つともバラバラの鏡にあたり跳ね返りまた別の鏡にあたり跳ね返る

そうしているうちにリフレクターがー持つ魔法攻撃倍返しの効果がどんどんと付属されていく

この攻撃は通常はあまり高い攻撃力は期待できないのだがこのおかげでどんどんと攻撃力が高まっていく

そして数秒の間で3つのラインの攻撃力は数千倍へと高まっていた

高速で動く3つのラインが向きを変える

赤いラインはエスティオが落ちた土煙の中へ上空から一直線に落ちて行く

青いラインは斜めに落ちてフォルカが落ちた土煙の中に吸い込まれていく

そして黄色いラインは真横に水平に突き進む

その軌道は二つの土埃の中心を捕らえている

まず二つのラインが地面へと落ちる

赤いラインは炎の塔となって数十メートルの火柱を立てる

青いラインは土煙ごと覆い隠す水の波となる

はじけ飛んだ水と流れていく水が火柱に触れてジュウジュウと音をたてて蒸発していく

そして其処に突っ込む3本目の黄色のラインはその二つを貫く

直後、火柱は大きな爆音と共に電気を纏ったまま爆発した

一方水の波は電気を地上へ逃がし切れていないのか上空へと伸びる大きな逆雷を発生させた

通常電気を逃がし切れないという事は無いのだが下の方に溜まっていた水は実は純粋な水で電気を通さなかったのだ

それでもすぐに不純物が混ざった水と混ざって地中への放電が始まった

というのもすぐにリラの足下まで水が押し寄せてくるため空中へと足場を作り逃れる時間を作るためにトライ・ラインを撃つ前に水の属性の下半分を純粋な水へと変換させていた

兎も角、その3つの属性は確実に彼等を捕らえた

周囲にいた逃げ遅れた観客にもそう見えたはずだ

「ちっ、外した。いや、防がれたか!?」

空中で待機していたリヴェルはとっさにハンマーを身構える

「今の状況で防がれたとは思えないんだけどどうも当て損なった見たい。恐らく第三者」

「隠れてないで出てこいっつあ!?」

突如リヴェルが地面へと墜落する

それをリラが魔法陣を展開させて弾性の結界を張る

ポンと跳ねて着地するリヴェルはまじまじと何が起こったのか不思議そうに上空を見つめていた

周囲にいくつもの大きな岩の塊が落ちてきた

これが先ほどのリヴェルを墜落させたのだ

「見えた?」

「いや、ずっと見てたけど見えなかった」

「ちっ、こそこそと不可視の呪文をかけやがって」

恐らくこの魔法に不可視の呪文をかけて不意打ちを食らわせたのだろう

するとまた周囲で爆発音が聞こえた

そして今度はさらに沢山の男達が入ってきた

彼等は雇われた殺し屋の一団である

「残った奴等は全員殺せぇ!」「ひゃはははははは!!」

男達は狂ったように刀を振り回しはじめた

その剣先に血が付くのはほんの数秒後のことだった





一体全体なんなのだこれは!?

エルガンの聖騎士団副長の男は高台の上から周囲の様子を眺めて状況判断をしようとしていた

つい先ほど起こった2度目の爆発により全4カ所の出入り口が全て瓦礫の山となって通行が出来なくなっている

それを合図とするかのように沢山の男達が観客の中から突如剣を持って暴れはじめるのを男は見た

名をテレンと言いテレンは敵の総数を数えようとしたがどうにも数が多く人混みに紛れているため数えることが出来ない

このようなときに限って何故か部隊長達が兵士を集めてこない

この場には隊長は不在でテレンがこの場の指揮を任されていたのだが収集を駆けようとしているにもかかわらず誰も部隊長が現れない

部隊長は10人の兵をまとめるいわば班長のような者なのだが

「何故だれもあつまらん!?このようなときに・・・」

テレンは歯ぎしりをした

この場にいる聖騎士団は試合に参加せず周辺の警護に当たっていたもののごく一部だ

外を警備していた兵は閉じられた出入り口によって入ってくることが出来ない

テレンのもとにいるのはこの周辺の警備に当たっていた者で反対側の警備に当たっていた者達の数人はすでに男達を止めようとしているようであったが数に不利があったためか続々とその白い服装は一人、また一人と黒い服の中に飲み込まれていく

テレンは闘技場の中央を見た

其処には元々試合が行われるはずだった者達が戦っている

恐らく片方の老人が合図とも思える閃光を上げたことで男2人が敵になることだというのはすぐに分かった

少女2人ではきついかともテレンは思ったのだが流石準決勝まで勝ち残っただけのことはある

というか一方的にいたぶっている

しかもそれが男の方ではなく女性の方だということにも驚いたのだがその魔法の威力にも驚いた

男達2人を一瞬で消し飛ばしてしまった

「副隊長!」

その声でハッと我に返ると高台の下で兵の一人がこちらを見上げていた

「指示を!」

そうだった

早く指示を出さないと

「この場にいる4番隊長、4番隊を二分して左右から戦闘中の8番隊を援護しろ9番隊長は現れない8、13番隊の連中の捜索に当たってくれ」

今回この場に連れてくることができたのは4、8、9、13番隊の全4部隊である

他の部隊は各自の仕事があるため国内にバラバラになっている

警備や王都の守護、危険グループの捜査などいろいろと忙しい中でこの闘技大会に4つの隊が集まっているのははっきり言っておかしい

それはテレンも感じていたことだった

しかし上の命令では逆らうことも出来ないしましてやそれでも人手が足りなくなるとは予想もしていなかった

今回試合に参加した聖騎士団は全て8、13番隊でありその全員が行方不明となっている

おそらく奴等にやられたのだろう

くっ、と拳を強く握りしめるとテレンは剣を抜き去った

「私は敵の主力と思われる男達の方へと向かう!」

テレンはバンッと高台から飛び降りる

白いマントが揺れ白い剣がきらめく

音もなく着地をするとその剣を掲げて

「各隊持ち場へっ!」と号令をかける

同時に客隊の隊長達と兵士達はそれぞれに割り振られた持ち場へと駆けて行く

テレンはそのまま観客席を駆け抜けて手すりを飛び越える

ちょうど先ほどの魔法の土煙が晴れたようだった

そこには気絶した2人の男を守るかのように展開された二つのドーム型のバリアが青白い光を纏っているのが目に入る

ゆっくりと2人に近づく

「その格好は確か聖騎士団の服装だね」

栗色の髪をした少女がつぶやいた

その手には自分より大きいのではと思うくらい大きなハンマーを持っていた

しかも片手で

「君達の働きに感謝しよう。助かった。とりあえずそこからは我々の仕事だ。その2人をこっちに回して貰えるかな」

「いいよ。ところであんた誰?」

「私は先ほど言われた通り聖騎士団全体の副長を務めるテレンという者だ。君達は?」

「リヴェル。あとこっちがリラ。どっちも天人ってやつだよ」

そこで初めてテレンの目に驚愕の色が伺えた

「天人・・・我は初めて見るが・・・なるほど・・・強いという噂はだてじゃないらしい」

「じゃ、そいついらは任せます。一応幹部レベルでしょうから気を付けてくださいね。その結界が消えるときは彼等が目を覚ましたってことですから」

「君達が張った物じゃないのか?」

「えぇ。攻撃を当てる直前に防がれました。一応そいつを捜すんですが・・・近くに居ると思うんで」

「わかった。こいつらの監視は私が引き受けよう」

「サンキュー。リラ、足場出して」

「了解。結界13式、足場展開」

リラはそういうと空中に向けて手を何度も振る

それと同時にリヴェルが空中へと跳躍、不可視の足場を飛び渡る

「どっこだーどっこだー」

あたりをきょろきょろと探してみる

「いた」

後方まで足場を乗り継いできたリラが一点を指さす

そこは闘技場の外壁の上であった

そこには白いローブを纏った少女が杖を構えており足場と杖には魔法陣が展開している

「青い髪・・・」

全身白い格好をしているがどうもその少女の髪は青いようである

青いというよりも水色に近いだろう

「何する気かは知らないけど止めるよ」

「了解、結界1式、ルート固定完了」

「おっけい!!」

リヴェルはハンマーを構えてその少女めがけて一気に走り出す

その素早さは下で見ていたテレンも驚くほどのスピードであった

あれほどの大きな槌を持っているにもかかわらず風のような速さで走り抜ける

あっという間に少女との距離を数メートルまで縮める

そこまでくるとやっと彼女はキッと右足を踏ん張り直線の力を止める

もちろん押さえきることは出来ないためそのまま体を右足を軸にくるっと返す

助走のスピードが乗ったその一撃は不可視のシールドに阻まれた

巨大な金属と金属がぶつかるような音の後、両者の間では膨大なエネルギーの摩擦が生じ始める

そしてその一点に溜まったエネルギーが押さえきれなくなり、爆発する

その爆風は数十メートル離れたテレンの元へも押し寄せた

煙が晴れる

「あんた等がこの騒ぎを?」

「そんな所です」

「目的は?」

「この闘技場に居る全員を闘技場の中から出す事です」

少女はその杖をリヴェルの頭の前で構えておりその先ではピンク色の魔法陣が展開している

一方リヴェルは両手で振るったハンマーを少女の胴の数センチ手前で止めてじっとその少女の目を睨み付けていた

「じゃぁその理由は?」

「邪魔だからです」

「なんの邪魔になるか聞いてるんだよっ!」

リヴェルが脚払いを仕掛ける

が、それは少女にスッとかわされる

一気に彼女は後へと跳躍して間合いをとった

「邪魔しないでください」

「やだね。こちとら金と商品お預けになったんだ。理由もなく引くわけ無いでしょここまで巻き込んでおいてさ」

「そうですか。では一時術をかけるのを中止します。あなた方の相手は私でないとつとまらないでしょうし」

そう言ってちらりと視線をずらした

二つの結界の中で気絶する2人を見た

「何か作業をしていたな。ということはそれを邪魔される恐れがあった。だから有名な聖騎士団を排除したのか」

「そちらは私が指揮を執っていないため分かりませんがあのお二人が進めたことです」

「そして勝ち残った強い選手2人をあんた達の組織の幹部をわざわざ使って止めようと考えたのか」

「もっとも負けてしまえば世話無いですけどね」

「違いないわねっ!」

リヴェルは再び距離を詰める

ハンマーを振りかぶる

「ライトニング」

少女がぽつりとつぶやいた

いくつもの稲妻が空気中に突然現れた魔法陣から飛び出してリヴェルに直撃する

轟音と激しい閃光に包まれる

「あまーいっ!」

リヴェルは閃光の中から飛び出してくる

少女が頭上を見上げる

槌を振りかぶるリヴェルのシルエットが太陽と重なる

少女は杖を一振りする

魔力が生み出したシールドと神々激鉄がぶつかり合う

その均衡は数秒後に崩れる

リヴェルが叫びながら腕に大きく力を入れる

ググッと一瞬シールドがくぼみシールドはバラバラに砕け散る

ブンと音をたてて少女の目の前に神々激鉄を向ける

「誰」

「サーシャ。サーシャ・ペルライトと申します。以後お見知りおきを」

ぺこりとお辞儀をする少女

それを見下ろすリヴェルは目を細めた

小さいな。まだ小学生レベルの歳じゃんか

「以後?」

「以後、です」

突如嫌な予感がリヴェルの脳裏をよぎった

まるで脳内で警鐘が鳴り響くような、あえていうなら勘が自分に訴えかけていた

後からリラの声が聞こえる

「下!!」

バッと下を見る

足下に広がる巨大な魔法陣がリヴェルの眼にうつる

6つの魔法陣が描く巨大な魔法陣はその光を強めた

「そんな、詠唱が・・・」

ドンッと衝撃が来た

とっさに両腕を下に突き出してシールドを張る

彼女を中心に周囲数メートルが光の柱が突き上げる

「助かったリラ!」

光の光線の中からリヴェルが飛び出してくる

「そんな・・・・あれを防ぐなんて・・・あれはシールドで止めるのは不可能な威力のはずなのに・・・」

一瞬うろたえた少女は後ずさりをする

動揺してここが闘技場の外壁の上だということを忘れていなければそんな行動をとらなかっただろうに

脚を踏み外した

その小さな体は一瞬にして外壁の向こう側へと消え落ちた

トッ

外壁の上へと降り立ち下を覗く

バッと首を戻す

目の前を巨大な光剣が飛び抜けた

「危ないわっ!あ、そうだ。殺しちゃだめなんだっけか」

と、思いっきり神々激鉄を振り上げていたリヴェルは槌をくるっと回して左手に持ち替える

睨み付けていた目がゆるみニヤリと不適に笑う

「捕まえないといけないんだっけ。そっち系はリラの方が得意だったよね?」

ちらり横目で隣に立つリラを見る

「捕まえれば良いのよね。結界1式」

パキンッ!!

サーシャの周囲に突然現れた結界は彼女を飲み込んで閉じこめることに成功した

「いゃぁ、流石に詠唱いらない分囲むの早いわね。恐い恐い」

「そうでもない。その分耐性が少し落ちてるから」

「それでその強度なら問題ないって」

「念のためあと3重に張っておく」

リラはそう言うと腕を3振り

サーシャを包む結界の上にさらに3つの結界が出来る

「さぁて・・・聞かせて貰おうか襲撃事件の理由を」

「言う必要はありません」

「殺したろうかお前」

ぐるんと振り回す槌を構えて睨み付ける

「貴方はその結界を敗れないと思うんですが」

「言ったなコラ!?やっぱてめぇは殺す!」

「落ち着いて。では質問を変えます。これに見覚えはありますか?」

リラの手に握られているのは紫色の魔力玉。今回の大会の商品の一つである

魔力玉は不気味な色を放っており中心に近づくほど濃くなっている

「それが何か?」

「あっそう。大事なものだと思ったんだけど。じゃぁこれは私が貰うわね」

そう言ってリラは懐にそれをしまった

「あんた泥棒?」

「いいの」

サーシャは内心焦っていた

肝心の魔法を発動させるための一番重要な物が相手に奪われてしまったのだから

魔力玉とは本来魔力をため込みやすい性質を持った石を磨き上げた物だ

そこに魔力を溜めておき、後で魔力が枯渇したらそこから魔力を補充するというアイテムである

本来はである

この玉は少し違いため込んでいるのは魔力の一種、データと言うそうだ

ただその名前がさす意味は知らないし使ったこともないがそれを解放しようとするのが彼女のしようとしていることだ

全回砂漠で解放したのも地中深くに埋まった魔力玉である

解放をしたいのに・・・

こちらがアレを欲しているのをばれないように嘘をついたがこの有様

まだまだ私もダメですね。一手も二手も足りませんね

だけどこの距離ならまだ間に合う

結界は割れないでも解放だけなら

サーシャは狭い結界内で杖を構える

あれ・・・このイディルは・・・

それに気がついていないのこの人達は?

2人はこちらに向けて何かを言っているようでどうにもこのイディルの流れに気がついていないのだろうか

天人なら気づいても良さそうなのに

でもこの様子じゃ気がついていないふりってわけでもないですね

ということはこの2人はそれほどイディルに対してよく知らないということでしょうか・・・

ならばさっきの私の攻撃を裂けたのは・・・瞬発力で!?そんな・・・

どっちにしろこの新しいイディルは・・・

来た!!

2人がリラが張った四つの結界の中に彼女が新にシールドを張ったことに気がつく

「何を・・・!?」

その瞬間、彼女の勘が自らの脚を動かした

リラもとっさに後方にジャンプしたのが分かった

リヴェルはダッシュで飛ぶようにして避ける

ほぼ空中で逆さまになる状態で目の前に何本もの薔薇の蔦が雨のように降り注ぐ

ツタはリラの張った結界全てを突き破りサーシャが張ったバリアまであっという間に到達してしまっていた

いくつものツタは地面に大きな穴をつけていく

地面に突き刺さるツタは上空から伸びてきている

その先にいるのは・・・・

ジャリッと音をたてて数個の小石が空を飛びリヴェルとリラが滑るようにして止まる

「セレナーデっ!?」

リヴェルが叫ぶ

緑色の髪

黄色のマフラーと黒っぽいマントが風に靡く

黒のブーツがギラリと太陽の光に反射する

鋼の籠手、右手に持つ巨大な剣には薔薇のツタが絡みついており刀身には薄い緑色をしているようにも見える

身長はやや高めの男である

そしてとあるギルドの長でもある彼はまるで哀れだと言わんばかりの目で彼等を見下ろす

そのセレナーデはゆっくりと口を開いた

「消えろ」

会場全体は悲鳴と剣と剣がぶつかる音で一杯なのにもかかわらず3人にもその小さな声が届いた

人間聞きたい音を複数の音から聞き分ける事ができるそうな

その声を聞いたサーシャは目を見開いた

「そ、その声は・・・」

自らが張ったシールドを解除して叫ぶ

その声が彼に届くか届かないかのうちに彼は剣を振りかぶっていた

上空から剣を一振り

すると切っ先が描く軌道上からいくつもの魔法陣が現れた

緑色が明滅する魔法陣から再び薔薇のツタが現れた

それも先ほどのような範囲内に落とす物ではなく、一点集中の追尾式、狙いを定めた一撃であることが予想できた

むこうで何度も見たことがある技だから

現れたツタの数は12本

一人3本ずつの計算か・・・

リヴェルは2人から一旦距離をとるため後方へとジャンプする

これは追尾式の技だったはず

ならばどれが自分を追撃してくるツタかを見極めなければならない

これはツタの数が少ない代わり一本一本の威力とスピードがハンパない

2人から距離をとった瞬間、すでにツタは地面すれすれまで伸びておりそこから一気にこちらへと軌道を変え突っ込んでくる

リヴェルは後方へと飛んだ状態で正面にはもうツタが迫っている

神々激鉄を斜め右に振り上げる

まるで植物のツタを叩いたとは思えないほど甲高い音をたてて3つのツタは周囲にはじき飛ばされる

この技は一度はなったら何かに触れるまでは追尾能力かつく技であるため一度でもはじき返せば後はただのツタとなる

ただ注意すべきはこの後の連続コンボをよけられるかどうかである

複合技とも言える

何通りもあるため事前に何の技を使うかは予測不能

つまり瞬時に対応しないとよけることが出来ない

弾いた瞬間にすでに相手の複合技は放たれていた

ツタにつく何本もの棘が突如本体の蔦から分離してロケットのように周囲にはじけ飛ぶ

シールドを張ってその棘を全て弾くが棘は地面に突き刺さると同時に根を張りグググッと勢いよく伸び始める

グネグネと蔦をくねらせながら伸びていく蔦はすでに10メートルほどの高さまで伸びている

自分の周囲には結界を張ったため蔦は伸びていないが自分の周囲をすっぽりと包むように薔薇の蔦が伸びているのが嫌でも分かる

差し込む光はほんのわずかである

もはや外の様子など分かりやしない

成長が止まったのを確認すると神々激鉄を振り上げる

そして地面へと向けて思いっきりたたき込む

一発ではなく何発も

それと同時に大きな地鳴りと共に地面の岩盤がめくれ上がっていき巨大な岩の壁となる

すでに蔦は押し上げられた岩によって倒れ、崩れた岩の下敷きになっている

そして最後一発をたたき込み自らの下の岩盤を持ち上げる

これは剣士系を選んだリヴェルの筋力パラメーターの高さを現している

ようは魔法で持ち上げているわけではなくただ単に筋力のみで持ち上げたということになる

左を見ると何本もの蔦がバラバラになっているのが分かった

自分のことで手一杯だったので気がつかなかったのだが恐らくリラだろう

右ではもはや蔦というより炎のタワーが出来ていた

燃える蔦が黒い消し炭となってパラパラと降ってくる

あのちっちゃいのか

杖を持つ少女が上空を見つめていた

リラも同様に同じ一点を見つめている

リヴェルは神々激鉄をしっかりと握りしめ上空に立つセレナーデを睨み付ける

「代表として聞いてやる。いきなりなにしやがるっ!!」

セレナーデは無表情に近い顔でこちらを見ている

口を開いた

「僕はお前達が知る僕ではない」

「は?質問に答えろよ!」

リヴェルの叱声にも動じず彼は話し続ける

「つまりはこれまで君達が接し続けていたのは僕であって僕でない。君達が描いた空想だ。そしてここにいる僕こそが本当の僕」

「訳わからんのだが」

「まぁそのうち分かるときが・・・来ないか。どうせ僕はここでは神にも等しい存在だそう、この世界の創造主よりもね」

「創造主って・・・お前ここがどこだか知ってるような口ぶりだね」

「まぁね。でも教えるわけにはいかないよ。それでは物語がつまらなくなる。カラクリも全ては最後で明かされるものだよ」

「カラクリって・・・なんだよ、知ってることがあるなら言えよ。あんただってここから出たいんだろう?」

「僕はいつでも出れるんだよ。こんなところで言うつもりじゃなかったけどまぁいいか。じゃぁ、君達には消えて貰うよ」

「だから理由を言えっ!なんで私たちが争ってるんだ!?同じ向こうから来た人間だろっ!」

「いゃ、正直そっちの人間じゃないんだけどね。まぁいいか。質問に答えるね。理由は簡単、つまらないからだ」

「は!?」

「だからつまらないからだよ。このままじゃさ。後で他の奴等にも合ってくる予定だけど手始めは君達だ」

「待てよ!言ってる意味が・・・」

リヴェルが叫ぶ途中でセレナーデは遮った

「いいから戦え上位プレイヤー、鍛冶屋リヴェル」

「鍛冶屋・・・か。かなり上限まで溜めた鍛冶スキルもこっちに来てからはあまり使ってなかったね。いいじゃないのよ。理由はよくわかんないけどさ」

ここでもしリヴェルが心優しい少女だったら説得してでも争いは止めようと言えたかもしれない

そうでなくとも争いなどおこそうとも思わなかったであろう

こんなところで戦ったらどうなるか

それぐらいは予想が出来ただろう

だが彼女はあえて戦いを選んだ

それは先にリヴェルと戦ったガレンが想像したとおり

ドSなのだ

ガキィン!

剣と槌がぶつかり合う

突っ込んできたセレナーデに対し受けをとるリヴェル

力の均衡は保たれてはおらず若干リヴェルの方が押している

攻めてきたのはセレナーデの方なのにスピードと彼の体重が加わった重い一撃を受けきったのはやはり彼女の筋力の高さからだろう

「そうでなくては」

彼の足下に魔法陣が浮かび上がる

「だが・・・」

「えっ!?」

急にセレナーデの力が増しリヴェルは驚きで目が見開く

連撃がリヴェルを襲いリヴェルはジリジリと後退させられる

「リヴェルっ!!避けないで!」

リラはいつの間にか商品であった水鏡木の杖を握りしめていた

杖の先に巨大な魔法陣が展開する

これは・・・

いつもと同じ、リラの癖

反転言葉

とっさにその場から離れる

「何を・・・」

セレナーデはその場で追撃をかけずに立ち止まる

というのもリヴェルは後方へ飛びながら何かを投げてきたからだ

小さな球形で大きさは野球ボールくらいの玉が2、3個セレナーデへ向けて飛んでくる

それを切り裂くと切り裂かれた玉は魔法陣へと変化する

「これは・・・」

切り裂かれた玉は互いの魔法陣を繋ぐようにしてセレナーデの周囲に浮かぶ

そしてピンク色の線はギュッと収縮してセレナーデを束縛する

キッと束縛された体から目線をリヴェルへと向ける

リヴェルはこっちを睨み付けていた

その瞬間、一点に収縮するイディルを感じ取る

その方向を見るとすでに魔法が発動されていた

いくつもの光の線が魔法陣から溢れてくる

それらは全て斜め外側に打ち出される

そしてそれらは同時に軌道を変えセレナーデへと殺到

爆発が起こる

こんなことでHPがゼロになる上位プレイヤーでは無いためすぐに2人が追撃に入ろうとするが

「なっ・・・!?」

「・・・やられた」

リヴェルは自らの体を見つめ叫び、リラは歯ぎしりをしながらサーシャを睨み付ける

2人の体には先ほどセレナーデを拘束したような線が腕と体を締め付けていた

「あなた達が自由に動けるのはまずいのです」

そう言ってサーシャは杖を構える

リラへと向けて

魔法陣がリラを中心に広がる

「何を・・・」

リヴェルが動こうとするがすぐに動きが止まる

いつの間にか眼を覚ましていた老魔法使いのエスティオが彼女の動きをさらに制限していた

脚を先ほどの光る線で巻き取られ倒れ込む

「てめぇ・・・本気で死にたいのか?」

「そんな動けぬ貴様が吼えたところで恐くも何ともないのお」

エスティオはフォッフォッフォと笑いながら杖をドンと地面に突く

そう言えば先ほどまで彼等を見張っていたはずのテレンはどうしたのだ!?

副隊長のテレンはいったい・・・

先ほどまで彼が2人を見張っていた場所へと視線を動かす

そこには先ほど捕らえたはずのフォルカと呼ばれていた男ともう一人男が立っており2人の足下に横たわるテレンの姿があった

「ちっ・・・」

一旦状況を整理してみることにしたリヴェルは周囲をぐるっと見回す

ちょうど三つ巴の形か・・・

サーシャと名乗った少女は何かの目的のために今魔法を発動中

そしてその部下は邪魔をしないように足止め

この部下はたいしたことが無いが意識を払わなければいけないのが後一人、セレナーデ

根っからのソロプレイヤーで上位プレイヤーの一人であった彼はリクヤの用に友好的ではなく本当に一人でレベル上げをしていたプレイヤーである

上位プレイヤーの中では一番後のほうにゲームを始めたらしいのだがそれなのに一番レベルの上達が早かったのを覚えている

それによく使うあの意味不明な言葉

頭逝ってるんじゃないかとも思える

何故か彼もこちらと敵対している用で両者に対して攻撃を加えてきた

だがその目的が分からずリヴェルは苦悩していた

攻められる理由が見あたらないのだ

何かしたっけ私!?

そのセレナーデもリラの使った束縛魔法でとらわれているはずだが煙でよくわからない

バリィィン!と大きな音をたてて筋力のみで相手の束縛魔法を破る

リラもこちらは筋力ではなく魔力を使って消したようだが魔法を使えないリヴェルにはよく分からなかった

とりあえず最優先はあの謎の魔法を使っている彼女を止めないといけない

発動対象にされているリラも杖を構える

すでに魔法陣が展開しておりリヴェルがたたき込む前に攻撃が放たれていた

「ウォータースピア!」

一瞬でサーシャとエスティオの周りにはいくつもの水の槍が現れている

それらは出現と同時にサーシャへと直撃

とりあえずは魔法を止めないといけない

魔法を止めるには詠唱を止めるか魔力の流れを途切れさせる、あるいは本人の意識が途切れたり集中が欠けた瞬間、魔法は止まる

とりあえず攻撃を当てて魔法の中断を計ったリラだったが

その周囲には球形のバリアが展開されておりサーシャをすっぽりと包み込んでいた

彼女は一心不乱に呪文を読み上げている

ちっ・・・

リヴェルは大地を蹴った

めくれ上がった岩盤がその蹴られた勢いで割れる

「うおおおおおおっ!」

そのバリアは恐らく先ほどのエスティオが出した物だ

だがそんなところまで行っている時間が惜しい

そのためたたき割ることにした

普通のバリアなら彼女でも余裕で突き破れたはずだった

だが

バチィン!!

神々激鉄がバリアにぶち当たると同時にはじき返される

「なっ・・・!?くそっ・・・このガキめんどくさいことをっ!!」

脚を踏ん張り体を反転させ槌を振るう

ガシャン!ガコンッ

リロードを済ませるリヴェル

この神々激鉄には装填機能と言うものがあ

これは元々はついていなかった能力なのだがリヴェルがこちらに来たときに改良した物だった

そしてそれがついに実践でも試されることになった

試合前にリラに渡された弾丸ブレッド

魔力が詰め込まれたその弾丸を使うことによって一時的にその能力を上げることが出来る

ようは攻撃に魔法属性が追加されるのだ

これは魔法とはまた別なのだが打撃なのに属性的には魔法という属性を得ることになる

つまりこの振るわれる槌そのものが魔法の塊だと思えばいい

なのに打撃の効果も残っているためこれは打撃と魔法の融合とも言える

バリィイインン!!!

通常の魔法でははじき返されるのがおちだがこれは力押しでどうとでもなる

あっけなくバリアを突き破る神々激鉄がサーシャを襲う

カァンンッ!

それを受け止めたのはフォルカだった

何故こんなザコが私の一撃を受け止め・・・

答えはすぐに分かった

「魔力・・・吸収!?」

リヴェルでもどんどんと槌に溜められた魔力が外へと出て行くのが分かった

その魔力はフォルカの剣へと吸い込まれていく

「魔剣・・・か」

だから折られなかったのだ

普通の鋼の剣ならあっけなく叩き折られていただろう

どういった剣なのかは分からないが能力だけは見た目で分かった

魔力の吸収

それがあの剣の能力だろう

こういった能力の場合恐れるのは奪い取られた魔力を攻撃に転換してくることだ

だからその前に

「じゃまだぁぁぁぁ!!」

自慢の腕力で相手の剣を体ごと吹き飛ばす

フォルカはそのまま地面に痕をつけながら反対側の壁まで飛ばされる

そこで初めてサーシャが動いた

「やはりあなた方は邪魔です。先に終わらせます」

「ガキのくせになまいきだなぁ。ああ!?」

叱声と共に槌をふりかざす

サーシャも杖を構える

至近距離ではやはり魔法使いは不利である

カァン!カンッカンッ!ガガンッ!

何度も交差する体

ぶつかり合う槌と魔法障壁

押し続けるリヴェルにサーシャは小さな手のひら大の魔法障壁を出しながら後へとジャンプして距離をとろうとしている

そして距離を空けまいとリヴェルは押しに押しまくる

通常のバリアでは砕かれるのだが障壁を一点にだけ作り出すことによりその強度を増すことが出来る

これは広範囲魔法の時には使えないため使えるのは一点集中型の魔法か打撃系の攻撃を受ける時のみに使われる

「いいかげん諦めなよ」

押し合う中でグッとサーシャへと顔を近づけるリヴェル

「嫌です」

「ああそうかい!!」

リヴェルは二つ目の弾丸を神々激鉄へと突っ込む

ガシャンッ、ガコンッ!

2発目の弾丸を使う

大きく振りかぶる

そしてぶつかり合う

バリィィン!

バリアは破られた

振り下ろされる槌がサーシャの頭上へと吸い込まれるように落ちて行く

それを止めたのはリラだった

「待って!」

ピタリと止まる槌

ぐるりと首を回すリヴェル

「なんでとめんのさ」

「そうよ。殺しなさいよ」

「事情、聞かなくて良いの?」

「めんどくさいしいいよ」

「悪い癖」

リラがぼそりとつぶやくと嫌々槌を腰のベルトにさす

リヴェルは向き直りサーシャを見下ろす

「じゃ、いろいろと聞きたいことがあるんで覚悟しなさいよ。幸い私は人をいたぶるのがだーいすきな・・・っと」

カァンッ!

「まだやんの?」

リヴェルはすぐさま戻した槌を抜くと振り向いてセレナーデの放つ突きを止めていた

「あぁ。僕がやっていることは近道なんだよ。だから邪魔をするな」

「ここから出る近道だったら私たちだって知りたいわねっ!!」

再び斬り合いをはじめる2人

金属同士がぶつかる甲高い音が響く

「それに時間稼ぎでもある」

「時間稼ぎ?」

なんの時間稼ぎだ!と聞こうとしたのだがその前にサーシャが叫んだ

「・・・・解放!」

リラが懐から先ほど手にした玉を上空へと放り投げた

玉は神々しく光り輝き砕け散った

破片は地中へと散らばり地中へととけ込んで行く

「何を・・・」

その瞬間、セレナーデが距離をとった

そして剣を構える

あの構えは・・・

サーシャもすべき事を終えたかのように杖を構えた

撤退するつもり!?

「逃がさない」

ぼそりとつぶやいたリラが杖を振るう

バシィッとまるで何かを縄で叩いたかのような音が響き渡る

その瞬間、サーシャの目に曇りが見えた

「勝って徒歩で帰れということですね」

「おっしゃぁやってやるぜ!と言いたいが2人とも魔法使ってくるからなぁ。任せたリラ!」

「やだ」

「おっしゃぁぶつけてやれー!」

リヴェルが叫ぶ

3人が同時に叫んだ



「ローズストーム!」

「スペースブレイク!」

「エレメンタル・バースト!」

薔薇の竜巻が

空間支配術が

全属性の光線が

3つの大技がぶつかり合った

リヴェルの視界には、ただただ真っ白な世界が広がっていた

それからゆっくりと瞼が重くなり、そして意識は其処で途絶えた

いつの間にか辺りを照らす閃光とは裏腹に周囲が夕闇に包まれる時間帯となろうとしていた

セレナーデ。またの名を夜曲

それからしばらくしてセレナーデはどこかへと飛び去っていった






そしてそれからしばらくしたあと、クォール北方を飛び去る者達にもその魔法の激突が感じることが出来た

飛竜に乗る者達は一斉にふり返った

どこか遠くで何かが起こったのがわかった

ここまでその余波が到達するのには時間がかかっており彼等の前にはそろそろクォールとの国境が見えようとしていた



なんか・・・一ヶ月に1話ペースになっている・・・











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