第三話 間諜 【後編】
ソウヤの頭をぶつけてふらふらっとベットの上に倒れ込むフィーネ
その横にバタリと倒れるソウヤ
はぁ、びっくりした・・・!!
うっかり手を放しそうになってしまった
とは言っても何故手を放してはいけないのかも聞かされていないしそもそも何がどうなってこんな状況なんですか?
ぐっと腹筋に力を入れて起きあがろうとしたところに部屋をノックする音が聞こえた
へ?
ちょっとこれはまずいのでは・・・?
「朝食をお持ちしましたよフィーネさんっ!?へ?将軍!?」
フィーネの横には布団にうつぶせで倒れる将軍一名
しっかりと手はつないでいます
「ちょ、将軍何やってるんですか!?」
セレアだった
朝食をのせたお盆をひっくり返しそうになったがなんとか持ちこたえてお盆を机の上に置く
そしてソウヤの後に仁王立ちになっている
「これはどういう事ですか?」
「いや、私もよく分からないんですけど・・・」
そういうとセレアは鬼の形相で睨み付けてきた
「へ〜、ってか将軍もさっさと起きてください。何故彼女の手を握ったままなんですか!?」
そう言ってセレアはフィーネとソウヤの手を引き離そうとするがそこに第3者の声が割ってはいる。いや、この場合は第4者か?
「止めた方がいいですよ。将軍は今彼女の過去を見ている最中なんですから」
くいっと下がり気味だったメガネを直してシフォンはセレアの手を2人の手の甲から放した
「過去って・・・?」
フィーネが聞いてきた
「あれ?聞いてなかったんですか?やっぱり将軍は一言も二言も足りない人ですね」
はぁ、とため息をついてシフォンは説明を始めた
説明が終わる頃には2人とも妙に不審そうだが何故か納得したといった雰囲気であった
「とりあえず将軍が過去を見ている時間とこちらの世界の時間は平行ですからしばらく時間がかかると思いますので決して手は放さないように」
「でも不思議な気分です。自分の過去が見られているんですか・・・」
「私だったら絶対に戻ってきた将軍をちぎり殺してますね」
ちぎり殺すって・・・・
フィーネはちょっとこの人が恐ろしく見えた
なにせ本当にもの凄い顔でしたから
そんなことは口が裂けても言ってはいけない気がしたので黙っておいた
「さぁ、朝食をおとりになるのでしょう?」
そうだ、すっかり忘れていた!
朝食はパンとスープにサラダが付いていた
それだけなのにもの凄く豪華である
リテルにいた頃とは大違いであったためここに来てから数日は少し戸惑ったものである
一応は客として扱ってもらっているもののこんな平民にこんな待遇してもらっていいのだろうか?
いまいち自分の立場が分からない・・・
そんなフィーネをよそに2人は部屋を出て行ってしまった
話し相手がいなくなって部屋は静かな空気に包まれた
むぅ、おいしい・・・
フィーネはしばらく片手でご飯をとることとなった
1時間後、そろそろ退屈になってきた
片手では出来ることも限られてくるしなにしろずっと同じ場所で座っているのだからあたりまえなのだが
フィーネは昔からじっとしていることが嫌いだったためもう我慢の限界に来ていた
本当にすることが無かったのでソウヤの顔を見つめていた
「黒髪、結構ツヤツヤだ・・・」
自分と同じ黒髪のくせに彼の方が髪に艶があった
少し嫉妬した
さわり心地は抜群だったがあんまりさわっているとなんだか自分が気持ち悪く思えてきたためさっと手を引いた
次に筋肉だ
服の上からだとよく分からないがよく見ると結構筋肉がついているのが分かった
試しに彼の袖をまくって見ると予想通り、もの凄い筋肉の塊が現れた
つんつんとさわってみると思ったよりも硬くて驚いた
フィーネ自信も剣の修行をしていたおかげで多少の筋力はついただろうが彼女の筋力を100とすると彼の筋力は1000を越えている
それぐらいに凄かった
なのにすらっとした腕はどこか美しく見えた
きっと力を入れたら凄いことになるんだろうなーと思いつつ袖を元に戻した
やはり将軍なだけあってこの人はかなり凄いのだろうとは思ってはいたがこれが物的証拠になったのか今度からはもっと敬意を込めて話をしていきたいと思った
再び顔をのぞき込んだ
その瞬間、ソウヤの目がぱちりとあいた
「うわっ!?」
かなりびびった
そのせいでひっくり返って壁に後頭部をぶつけた
「痛ったーいっ!?」
それと同時にソウヤも後頭部を地面に思いっきりたたき付けられる
「ぐっ!?」
頭を押さえて床を転がる2人。それをいつの間にか部屋に入ってきていたシェルファスが見つめている
「何をしている?」
「お、おぅシェルファスか。いや、ちょっとはじき飛ばされてな・・・」
「お前が少女一人に突き飛ばされるとは?お前ならそれぐらいよけられ」
「あー違う違う。えっと、まぁ、此奴に放り出されたのは間違いないんだが・・・まぁ心に突き飛ばされたってことだ」
「こころ?」
話が読めないシェルファスは首をかしげていた
フィーネはシェルファスを覚えていた
確かソウヤの近くにいた将軍の一人だったと思う
容姿美麗、金髪碧眼、臨時でついた侍女からそう聞かされていた
といっても聞いたのはシェルファスと自分を助けたガーランドについてだけだが
シェルファスは彼女の、まぁ監視をソウヤに任されたためしばらくは彼女の世話をすることになった
世話といっても実際に世話をしているのは侍女であるためシェルファス自体は責任者のような存在だ
「まぁ、なんだか追い出されたって感じよ。ところで何してるんだお前?」
「たまたま部屋の前を通りかかったらお前の叫び声が聞こえたのでな」
「あ、外まで聞こえてたか。だって痛かったんだぜ?」
「しらん。ところで何か分かったのか?」
「ん、まぁな。ってか何でお前しってるんだ?」
「貴様の副官から教えてもらった」
「セレアかあんちくしょうめ。だからあいつは口が軽いって言ってるんだ。後で罰しておかないとな」
ソウヤはぶつぶつとつぶやいていた
「何がわかったんだ?」
「そうだな。じゃぁとりあえず将軍を集めてくれないか?まだ一人戻ってきてないがとりあえず今いる将軍をここに呼んでくれ」
「・・・分かった。すぐに呼ぼう」
そう言ってシェルファスは部屋から出て行った
「何が分かったんです?」
「ふっ、後で全部話してやるから」
リクヤはそう言って立ち上がると窓際のイスに腰をかける
その顔はなんだかニヤニヤしていて気持ち悪かった
そして数十分後、すぐにフィーネの部屋基客間にこの国の将軍が集まった
「えーっと、とりあえず彼女の身元が判明したのでお知らせしようかと思い集まってもらいました」
「おお、分かったのか!」
ガーランドが身を乗り出してきた
保護したのが彼だからか結構気になっていたりはするのだろう
フィーネとシェルファス、ガーランドの間に割ってはいる
「よっし、じゃぁ言うぞ。俺達の目の前にいる彼女は先代の血を引くクォール15代目女王、フィーネ・アディアス・イグレシアだ」
そう言ってソウヤはクルリと身を翻し地面に膝をつけ頭を下げる
その後に2人がソウヤの言ったことを理解したのか膝を地面につけてソウヤのように頭を下げた
「へ?」
フィーネは戸惑った
先代の血を引く?どういう事なの?なぜ平民の私が王族の血を?
状況が刻一刻と変化していく状況でフィーネの頭は混乱していた
「わ、私が王・・・?」
「そうです。あなたは先代イグリス王と平民の女性との間に出来た子供です」
私が王との間に出来た子供!?
「え、えっと・・・それじゃぁ・・・私がこれからこの国を治めないといけないの?」
「はい。あなたにはこの国をまとめてもらいます。もちろん今はまだ我々がその補佐を致しますのでご心配無用です」
えーっと・・・・王・・・・
平民から・・・・王!?
「ま、待ってください!本当なのですか!?」
「間違いありません。魔具はあなたを示し、過去もあなたが王の血を引くものだと証明してくれています。問題は無いかと」
ソウヤは顔を上げずに言った
「そう・・・ですか」
あぁ、倒れそう・・・
ふらふらとした足取りでベットにもたれかたる
「一応あなた様はまだ正式には女王ではありません。近いうちに戴冠式を行いますのでその時があなたがこの国を治める者となる時です」
あぁ、まだ実感が・・・ってこのフラフラな体を見れば十分実感しているのか
そしてソウヤが腰を上げてフィーネを見下ろす
年は大して変わらないはずなのにその身長差でどうしても大人に見えてしまう
「それではあなたのお部屋に案内させて頂きますフィーネ様」
「あの、もっとさっきの様な風に喋ってくださってかまわないのですが・・・」
歩きながらソウヤに訪ねた
ソウヤは振り向くことなく歩きながら
「いえ、それはちょっとまずいと思いますので・・・」
「王命令でもですか?」
「うっ・・・それを出されると困るのですが」
「フフフッ」
「・・・おーけー。俺も堅苦しいのは面倒だ。ちなみにそうなると他の奴等、せめて将軍だけは敬語にしておかないとな」
「何故です?」
「それはおまえ、俺達だけこんな会話してたらいろいろと怪しまれるだろうが」
怪しまれる?何がだ?
「一ついっておくがその命令を乱用するのは止めてくれよ」
「それぐらいは分かってますよーだ!」
顔をふくらませたがソウヤは前を向いているために見えていない
階段をいくつか上って気づけば2人は最上階にいた
「ここがお前の部屋だ。自由に使え。あと一応部屋の前には門番と侍女を待機させておくから何かあったら彼等に伝えてくれ」
「いませんけど?」
「後からつけるから気にするな」
「はぁ、ところで私は何をしていれば?」
「そうだな、俺は今日兵の徴募試験があるからな・・・まぁ後のことは他の将軍にでも聞いて友好度を上げてくれ」
そう言ってソウヤはふらりと立ち去った
さびしい・・・
ぽつんと部屋の前に取り残されたフィーネであった
しばらくしてガーランドとシェルファスが挨拶に来たのでソウヤのように喋って欲しいとお願いした
そして部屋の前には兵が2人と侍女一人がついた
さーて、とりあえず彼女の事は置いておいて試験の事を考えないといかんなぁ
そう思ったリクヤはとりあえず城を出て試験内容を考えることにした
こういうのは部屋で考え込んでいても仕方ないからな
一応試験内容も大体は決めてあるのだが・・・それだと面倒くさいからさっさと終わる方法をさがすことにした
流石に一人一人と斬り合ってみるっていうのは時間と根気が必要だからな
まぁ長時間待たせて相手の反応を見るって言うのも良いかもしれないな
5時間部屋の中で待機という命令で命令に背いた者を落とすっていうのでもいいが・・・そういうのは大抵周りに感染してしまうため大勢落ちてしまう可能性もあるからな
いいわけなんざ忍耐力とでも言っておけば納得するだろうが・・・やっぱり一人ずつ相手した方がいいか
それならイディルの流れで相手の志気も分かるしな
そんな事を考えながらソウヤは城の前の広場の様な場所にいた
城下と城との間には数10メートルほどの花道があった
丘のような場所に道がありその脇には木々や花畑が城の周りを囲みその内側に大きな堀がある
その中でも一番お気に入りだったのが草原の中に立っている一本の木の陰であった
鳥のさえずりや木々の葉のざわめきが聞こえてきて妙にイオンを感じさせる感じだ
ソウヤはその木に背をあずけてどさりと座り込む
にしてもここしばらくでいろいろあったな
しばらく続いた平和な城の生活に慣れてきたと思ったら今度は反乱が起きて王は死ぬは新しい王が見つかるわでちょっとどたばたしていたからな
どうせこの後はフリージアの言うとおり同盟の件でいろいろとありそうな気もしたが偶にはこの辺で見張りも悪くないだろう
門と丘を挟んだ堀にかかった木の橋の上にきちんと兵はいるがそれとはまた別にゆっくりしていようとも思った
ふむ、このまま参加者を待つのも良いかもな〜と思いつつ気がついたら寝ていた
そのソウヤを起こしたのは2人の声だった
「ん、おぅっ?」
「あ、起きましたよ?」
「みりゃ分かるって」
「誰だお前等?」
ソウヤの目の前にはおそらく10代ごろであろう少年と少女が立っていた
男も女も見るからに平民だ。腰にさした剣の鞘が古ぼけているのを見ると使い込んでいるものなのだろうか?といってもたいした剣でもなさそうだ
女性の髪は黒のショートで腰にはレイピアがさしてある
レイピアは細身の剣で切ると言うより刺突用の片手剣である
このレイピアはあまり派手な装飾が無いためおそらく市販のものだろう
女性、しかもまだ子供のため普通の剣は振れないのだろう
複雑な形をした装飾は相手の剣を絡めて折るためともいわれる
もっとも巨大な剣などに対しては効かないのでそれが力を発揮するのは対レイピア戦の時のみなのだろう
レイピアは軽いためスピードが乗ればかなり強い武器となる
「えーっと、試験受けに来たんですけどどうもまだ受付が始まっていないのか通して貰えなかったんであそこで寝ている人も受付が始まるのをまっているんじゃ ないかと思って声をかけてみたんですよ」
と少年
「まさか死んでいるとは思いませんでしたけどなんだか倒れていたので心配しましたよ」
と少女
そう言えば木にもたれかかっていたはずなのだがいつの間にか草の上で倒れる様に寝ていた
「ん、お前等試験受けに来たのか」
「はい。あなたもですか?」
「いや、俺は将軍」
・・・沈黙
そして時が動き出す
「しょっ、将軍!?」
「嘘ッ!?」
2人は一気にソウヤから距離をとって低頭した
「失礼しましたっ!将軍とは知らずつい」
少年はもの凄く慌てて口走った
「いや、いいって。うん、礼儀はあるし他人への気遣いもある。よし、じゃぁ予定変更、ちょっとここで待っていろ」
ソウヤはそう言って2人の前から姿を消した
「「えっ?」」
2人がきょろきょろと辺りを見回すといつの間にか何十mも先の橋の上に立つ兵士の前に立っていたのでもの凄く驚いた
そして次の瞬間には再びその姿が見えなくなり残像もフッと消えてしまう
「はやい・・・」
ぽかーんと口を開けた少年はそうつぶやいた
そして次の瞬間には2人の前にソウヤが現れた
「おう、待たせたな。一応お前等はちょっと早く来すぎたから特例として入れてやる。試験の参考にもさせてもらう礼だ。とりあえずこれに名前を書け。書いたら城の裏手に回れ。もう一つ入り口があるから門番にソウヤに言われて来たとでも言ってくれ」
2人に紙を渡してソウヤは再び寝っ転がった
「あ、ちなみに他に誰もいないから心配ないがこのことはご内密にな。ばれると篩を掛ける意味が無くなるからな」
そう付け加えてソウヤは紙を受け取るとポケットに仕舞い目を閉じて再びいびきをかき始めた
その時間わずか2秒
2人は顔を見合わせて城の裏手に回るべく歩き始めた
2人の名前はリューン・レイクスとシリカ・ハーウェルト
何も幼なじみとか恋人とかそういう関係では無かった
ちょうど城下の市で試験を受けるために来たことをしり意気投合、城の前まで来てみたはいいが門番には追い返されるしどうしようか迷っていたところ寝ているソウヤと遭遇したのだった
城の裏側まで回ると裏口のような場所がありその前に門番が立っていた
「あのー、ソウヤっていう将軍に言われて来たんですけど〜」
リューンがそう言うと門番はすんなりと道をあけてくれた
しばらく進むと分かれ道と看板があった
予定変更と言っていたので本来なら正門の方から入るべきだったのだからこんな所にこれが置いてあるはずがないのだ
さっきの一瞬でこれをしたのか!?
想像以上にあの人は凄すぎる
まるでこの世界の人間じゃ無いみたいだ
どえらい人にしゃべりかけてしまったものだ。敬語を使っておけばよかったー!!
リューンは下を向きながら地下へと降りていった
その後をシリカがついて行く
いやーいいことを思いついたものだうん。我ながらさえている
何も妙な輩まで入れる事も無いのだからな
弱い者イジメをする様な奴は騎士としてやっていくべきではないからな
いわゆるこれが第一の試験のようなものだ
ようは他人への思いやり、やさしい心を持っているかどうか試す
一応ここなら倒れているのが分かるだろうし唸っていればなお結構
それでも無視する奴はどれだけ強かろうが入れる気はさらさら無い
そしてその優しさの中にも騎士としてやっていくことが出来そうだと思う者を第2試験で見分ける。どうだ完璧だろ!
流石に優しさだけあっても人を殺すという仕事 (まぁ警備というのもあるが)に就く以上はそれなりに覚悟は無いといけないからな。うん
するとまた一つ違うイディルが感じ取れた
ふむ、一般の人間か。ならうめき声を上げるくらいでちょうど良いだろう
流石に大人になると心配するよりも寝ているのを起こさない様にするだろうからな
うなり声をかすかに立てると男は案外簡単に寄ってきた
よし、第一試験通過だな
しばらくして受け付け終了時間が過ぎた
城の前では男達数人がたむろしている
彼等はソウヤが苦しそうな声をしても聞こえなかったかの様に素通りした者たちだ
彼等は門番の兵に文句を言っている様だった
まぁあたりまえか
試験を受けに来ているのになぜ試験を受けさせてくれないのかと言う声がちらほらと聞こえてきている
どいつもこいつもむさい男どもだな。見苦しい。あー高校に戻りたいよ
あの若々しい日々を取り戻したいぜちくしょう
ソウヤは体を起こした
そろそろ門番がかわいそうになってきたし新しいイディルも感じないことからもう試験者はこれで全員であろう
頃合いだな
ソウヤは立ち上がってしっかりと剣を腰にさした
魔剣 夕闇の鞘が木陰を出た瞬間、光を浴びてその光を反射させる
「さっさと其処あけろよ!!俺達は試験受けに来たんだぞ!何で通してくれないんだよあぁん!?」
「お前達は通る資格がないと言っているのだ。分かったら帰れ」
「てめぇいい加減にしねぇとぶっ殺すぞ!!」
門番の兵と言い争いをしていた男は剣に手をかけた
おっとこれは危ないなぁ
ソウヤは集団を飛び越えて2人の間に割って入り着地する
そして相手の剣の柄を握り抜きかけていた剣を鞘にパチンと収める
まぁこのぐらいのスピードなら相手にとっては急に目の前に現れた様に見えるだろうが
「え、あっ!?なんだてめぇ!!」
「うちの兵どもをいじめるのはよしてほしいもんだな」
「うちの兵?お前ここの隊長かなんかか!?」
「将軍だ」
集団がざわざわっとなった
将軍にこんな口きいてていいと思ってるのかねぇ?俺が試験官なら−100点プラス出直してこいと言ってやるところだがもうこいつらの不合格は決まっているしな
それでも男は引かなかった
「それがなんだ!?俺はここを通せっていってるんだよ!俺達は試験を受けに来たんだから通してくれてもいいだろうがぁ!」
「ダメだね。お前達は大事なことをわかっちゃいない。だから通せない」
そこで男が切れた
「ふざけんなよ糞ガキ風情が!試験を受けに来ている奴を追い返す?お前は何をしてぇんだ!?」
「五月蠅いなぁ。別に無差別に追い返しているわけじゃ無い。ちゃんとお前等以外の奴は合格して中に入っている」
そこで再び辺りがざわざわっとなる
どこから?いつのまに?そんな声があがる
「倒れている人間見捨てるなんて最悪な奴等だな。言っておくが兵に困っているとはいえ殺人鬼や野盗を雇う気は無いんでね。言うなればもう第一試験は始まっているっていうか終わったんだが、お前等は不合格ってことだ」
集団の中から数人があっと声をあげた。おそらくソウヤの言ったことを理解したのだろう
「まぁどうせお前は隊の風紀を乱すと思うから入れたとしてもクビにしただろうがな」
「なにいぃっ!?」
男は其処でソウヤに手を出した
剣の柄を再び握り直し剣を抜く
刃こぼれはしていない様だったが酷く薄汚れた剣であった
「お前みたいなガキが将軍なら俺だって将軍になれるんだよおおお!!!」
そう言って抜剣してそのまま斬りかかる
「分からない奴だな。そんなんだからお前は第一試験に落ちたんだ」
ソウヤは慌てることなく数十センチの間合いであったにも関わらず剣を人差し指と親指でつまんだ
「俺より弱いくせにそんなこと言えるのか?」
グッと腕に力を入れると剣がパキンと折れた
男の腕が震えている
「くそおおっ!!」
「剣がダメなら素手で?馬鹿かお前は。みそっかすのような頭だな」
ソウヤは折れた剣先を堀の中に捨てると左手で男の拳を受け止め、腕をひねる
男はぐるんと一回転して木の床にたたき付けられる
「ぐっ・・・!?」
「弱いくせに大口を叩くな。これでも上位プレイヤーの一人だったんだからななめんなよ」
彼等には訳の分からない事を口走ってしまったか、そう思い
「どうする?俺に勝てる様な実力を持っているならしょうがないから入れてやろうとは思うんだけど・・・やるか?」
男達はざっと一歩引いた
おそらくソウヤの出す力の波動に怖じ気づいたのだろうか?
はぁ、はぁ・・・
そんな声が集団の中からあがり、その後にドサッという音がした
将軍と倒れた相手との間に道が出来た
「ふむ?」
そこに倒れていたのは一人の少女だった
「此奴いつからいた?」
そう聞くが誰も知らない知らないというように首を振った
「うーむ、おかしいな。倒れるまで彼女のイディルに気づかないとは・・・俺のシングスも鍛えたりないということか?」
目の前にはおそらく自分の力の波動を感じ取って倒れてしまった銀髪の少女が一人
銀髪・・・少なくともクォールの人間じゃないな。にしてもここまで力の波動を敏感に感じ取れるとは・・・
大抵の人は人から常時出ている力の波動には気がつかないものだ
ソウヤが今の様に思いっきり力の波動を放出しても彼等にはおそらく背筋が多少ぞくぞくするぐらいにしか感じ取れていないだろう
イディルを感じやすい人間というのはそれなりに素質をもっているということになる
少なくとも自分と相手との力量の差を感じ取れるだけで十分だ。それは自分が危機に瀕していると感じ取れるということだ
それにこの俺がイディルを感じ取れなかったというのはおそらく彼女が自分自身のイディルの流れを遮断しているからであろう
それもここまで完璧に遮断するとは・・・俺としたことが
「まぁいい。お前等は帰ってくれ。まぁもし不満があるならい今一斉にかかってきてもいいぞ。もっともどっちがやられるか分からないわけではあるまい」
男達はしぶしぶと帰っていった。その後をさっき投げ飛ばした男が走ってついていった
ここで帰っていくと言うことはおそらくたいした信念も持っていない連中だったのだろう
「おい、お前、大丈夫か?」
少女は息を切らしている
気を失ったという分けでもないのだろう
「悪かったな、お前みたいなのがいるとは思わなかったからつい手加減抜きで力放出しちまってさ」
ソウヤは少女をお姫様抱っこして城の看護室に連れて行く
ふむ、17、いや18か?
とりあえずその場は看護室の人に任せて一端自分の部屋に戻った
試験者達を待たせるのは悪いとは思ったが一つ気になることがあった
それはつい先日、ソウヤが張った国境のセンサーにある2人の子供がかかったことである
その時の画像はすでに手元にあるし驚いたのはそれがガルトニールとの国境だったことだ
ということはこの2人はガルトニールからやって来たのだ
あの国は今ややこしいことになっていると耳に挟んだことはあるし詳しいことはしらないが彼等の目的を知りたかった
あの2人は何故ガルトニールからクォールにやって来たのか
脱国か、それともスパイか・・・どちらにせよこのまま放置するというのもまずい気がしていたので後日現地から彼等のイディルをたどろうと思っていたのだが・・・
その彼等がこの試験を受けに来ていたのには驚いた
やはりとなるとおそらくはスパイ、間諜だな
城に潜り込むには最適だったか。其処まで考えてはいたが案外簡単に話を聞き出せそうだ
一応部屋には2人の写真を取りに戻っていた
おそらく後で多少の役にはたつと思ったからだ
2人を頭上から撮った写真をポケットに仕舞う
そして試験会場に向かう
部屋に入り一通りみまわして、それから試験を始めるべく声を上げた
試験が終わりふぅとため息をつく
長かったぜ畜生!
もうどれだけの時間やっていたのか分からない
一応全員合格ということにしてあるがちょっと気になる奴等もいるしな、まぁその辺は後で話をするとするか
名簿に筆を走らせていた手を止めてよしと頷く
待合室にしておいた部屋に入ると其処には試験者達が待っていた
ふむ、みんな年上だというのに年下の俺との立場をわきまえてはいる様だな。年下もいるが・・・
周りは殆どソウヤより背が高い
やっぱり見下ろされるのは良い気分じゃないな・・・なんか気まずいし
と思いつつソウヤは全員合格の通知を明け渡すとポケットに入れておいた長々と書かれた説明事項を説明する
「では正式な手続きとかはまた明日やる。それまで各自自宅待機なり宿に泊まるなりしろ。手続きが終わったらお前達は晴れてクォールの騎士の一人になるからしっかりと自覚をもてよ〜。問題なんか起こすなよ、じゃぁ解散!」
ざわざわと会場が声で安堵の声で包まれる中、ソウヤは4人を引き留めにかかった
「あっと、おい、えっとマグリス兄弟とシリカとリューン、お前等4人はちょっと残ってくれ。すぐ終わるから
名簿を取り出して4人を呼ぶ
ざわざわとした中でもしっかりと声が届いたのか4人は同時に振り向いた
脚を止めて4人はソウヤの前に集まってくる
「悪いな。時間はとらせないから」
そう言ってソウヤは4人を目の前に並ばせた
まず、順番的には彼等2人は最後に回した方がいいだろう
ソウヤはちらりとマグリス兄弟を見るがすぐに視線を正面に戻す
「じゃぁとりあえずここに残ったのはちょっと話があってだなぁ、とりあえず一人ずつ隣の大広間に戻って欲しい。まずはお前」
一番近かったシリカに声をかける
先ほどの試験会場になった部屋に彼女を通す
ソウヤはドアをくぐりイスに腰掛ける
シリカもその前においてあったイスに座り手を膝の上にのせ視線をソウヤに向けたが0、5秒でそらした
いや、そらさなくても良いんだが・・・
「話って何でしょうか?」
持っていたつぎはぎの袋をイスの横に置く
ふむ・・・
「それ、何が入ってるんだ?」
突如聞かれて彼女は不意をつかれて慌ててソウヤに目線を戻し答える
「えっと、着替えとかサイフとか生活を最低限するためのものです」
「ほう?そりゃまたなんで?」
まぁ分かっているから引き留めたのだが確証は無かったからな
「えっと、うちは貧乏で・・・母も父も病気で亡くしたんです。いろいろとバイトとかもしては見たんですけど・・・私の住んでいるところは治安が悪くて、それに私不器用で・・・それで昔お父さんに少しだけ教えてもらった剣を使って仕事をしようと思ったんです。それくらいしかおもいつかなかったんです」
「ふむ、それでか。でもそれなら別にクォールじゃなくても良かっただろう。お前の国の試験でも良かったんじゃないのか?たしか北東の国のガストレルだったか?」
「な、なんでそれを!?」
うん、まぁそんな反応だと思ったよ。予想通り
「なんで笑ってるんですか?」
「いや悪い、予想通りの反応をしてくれたおかげでな。んー質問に答えるとな、まずその目の色だな」
少女はハッとした様子で右目のまぶたに触れる
「その赤色の瞳、ガストレルだな。にしてもよくこんな所まで来たな。エリオルトを抜けてきたのか?」
「いえ、エリオルトは今ガルトニールとガストレルに睨まれているんで少し遠回りですがルヴァインを迂回してきました。あと質問に答えるとガストレルでは女は無理だって言われて追い払われて、道中のルヴァインではちょっと問題を起こしちゃって・・・」
そういってシリカはうつむいた
触れられたくない・・・って感じだな
だからあえてソウヤにもその辺には深入りしないでおいた
「そうか。じゃぁそろそろ本題に入ろう。一応ここに残ってもらったのはだな、お前、ちょっと生活が苦しいみたいじゃないか?」
ぱっと見でも服はつぎはぎだらけだしズボンの裾もボロボロで持っている袋は元の布が悪いのか色が一部抜け落ちていたり色あせていたりとあまり普通の生活を送っているとは思えなかった
「あ、やっぱりばれますか。そうなんですよね。私貧乏で、どんくさいしお金がもう殆ど残ってない・・・って何ですかその手?」
シリカの目の前にはソウヤが握り拳を胸の前に突きだしている
「ほら、手だせ」
シリカは言われるがまま手のひらをソウヤの拳の下にもっていく
するとその手のひらにズシリと重い感覚が伝わった
手のひらの上には何枚かの金貨がキラキラと輝いていた
「あの、これ・・・」
「気にしないでいい。返せとは言わないし給料から引くわけでもない。なぁに、俺の懐は暖かいから大丈夫だ」
「で、でもっ!こんな大金・・・」
「たいした金じゃないんだ。好意は受け取るためにあるんだぞ」
しつこいなぁ
気にしないでいいって言っているのにまだシリカはソウヤに何か言おうとしている
「もういい喋るな。あと話はもう一つあるんだが・・・」
「何でしょうか?」
よし、これで一応金の話からそれたから返してこようとはしないだろう
「うん、ちょっと気になるところがあってな。お前魔法使えるか?」
「へ?魔法ですか?無理です無理です!そんな、私には才能もないし・・・」
顔の前で両手をぶんぶんと降りながら否定するシリカ
「いや、お前には才能がある。俺には分かるんだがお前には魔法の素質がある、うん」
「あの、何で分かるんですか?」
不思議そうに聞いてきた
「お前なぁ、無意識でアレなのかよ。俺が見込むだけあるなうん。よし、そうだなそのうち魔術関連の先生連れてきてやるよ」
「先生?」
「ああ。俺も少しだけこっちの世界の魔法をならったんだが、その時の俺の先生だ」
「しょ、将軍の先生・・・」
あれほど凄い動きを見せられたこの将軍の先生・・・想像がつかない
シリカはゴクリと生唾を飲み込んだ
「まぁちょっと種族が違うけどその辺は気にしないで良い。お前はいいとこ秀才クラスに入るわけだし戦力にもなるわけだから、大事にあつかわんとな。ってことで近々あいつを呼んでみるからしっかり学ぶんだぞ」
あいつとは誰のことか気になったシリカではあったがその辺は後々分かることだろうとは思うのであえて深くは追求しなかった
「以上で話は終了だ。あ、出て行くときリューン読んでくれ」
結局シリカはポケットに金貨数枚を押し込んで自分には本当に魔法を使う才能があるのか気になったまま部屋を出た
シリカは部屋を出て数秒後に今度はリューンが入ってきた
「おう、其処座ってくれ」
リューンは少し硬くなっているようで動きがぎこちなかった
それこそ右足を出して右手を降り出していた
「硬くなるな。たいした話じゃない」
「はぁ・・・」
それで少し気がゆるんだのか肩をほっとなで下ろす
リューンは皮の服で剣を背負っていた
たいした大きさでは無いものの腰にさすとおそらく地面に当たってしまうのだろう
剣をイスに立てかけるとソウヤは話を始めた
「ところでお前、さっきのシリカの彼女?」
「ばっ、違いますよ!!」
あら、全力で否定されたよ・・・自信はあったんだが・・・
「にしては仲がよかったな?」
「いや、まぁ知り合ったのはついさっきなんですけどね。一応出身が同じって事もありましたんで」
そう言えば彼の目も赤いことに気づく
「ほぉ、偶然ってあるもんだな。まぁいいや本題に入る。その剣の事だ」
「剣・・・ですか?」
彼は首をかしげた
「これ普通の剣じゃ無いんですか?」
そう言ってリューンは椅子に立てかけた剣の柄に触れる
「ああ。それは一体何処で手に入れた?」
「これですか?えっと確かガストレルとルヴァインとフェーミリアスの国境にある鳳来の森です。あ、僕そこのガストレル領に住んでたんですけど空から突然落ちてきまして」
ガストレルの東側は4つの国からなる半島がある
鳳来の森はたしかガストレルの南にあるルヴァインと東にあるフェーミリアスとの国境にまたがる大きな森だ
そこに識の、夢幻神楽歌が降ってきただと?だとすると識はガストレルとルヴァインを飛び越えてホルオール半島に?
レイピア使いの彼女が唯一持っていた大剣、夢幻神楽歌は今彼女の手には無いと言うことか。全部手放していないといいんだが
爆発の時、彼等が所持していた武器の半分はおそらくこの世界に散らばっているだろう
それというのもあの中で突如武器が自らの周囲に現れ浮遊しはじめたのだ
ソウヤは偶然近くにあった夕闇を手に取ったから良かったもののその他の武器は全て爆発と共に飛ばされてしまったのだ
いや、だがあの爆発は東と西、北への威力は弱かったからおそらく彼女は其処まで飛ばされてはいないだろう
3年前のあの日、皆と散り散りになってしまった場所、ガルトニールとユーリアの国境上空
爆発によって飛ばされたソウヤはちょうど北東に向かって飛ばされてしまった
その瞬間に分かったのだがおそらく爆発の瞬間のエネルギーにむらがあったのかそれぞれ飛んだ距離とスピードがバラバラであった
視覚でも確認できたがエネルギーはぐるぐると渦を巻いて球形を保っていた
おそらく一番エネルギーのたまっていなかった場所にエネルギーが流れ込もうとして流れが生まれたのであろう
一番エネルギーがたまっていたであろう反対の西側にいた数人はおそらく遠くまで飛ばされてしまい逆にエネルギーのたまっていなかった南側に飛ばされた者はおそらくユーリア等に飛ばされたのだろう。だからフリージアはもっと遠くの南方の国には飛ばされなかったのだ
北側はおそらくガルトニールを飛び越してエリオルトとの国境にある北の山脈の向こう側まで飛ばされていることだろう
ソウヤは例外で球形の北東側の其処の方に漂っていた
だからおそらく距離とスピードが乗らずに近国のクォールに落ちてしまったのだろう
その時に天から来た人々という意味で俺達は天人と言われその時の出来事を天翔け(あまがけ)と呼ばれる様になった
となると剣が鳳来の森までしか飛んでいないということは剣より重い識はおそらくルヴァインに落ちているだろう
「そうか。これ、お前振れるのか?見たところお前のアビリティはその剣のアビリティに届いていないぞ」
アビリティはこの世界で言うレベルの様なものでこの剣を使いこなせる様になるにはレベルが最低160を越えていないといけない。が、彼のアビリティは55。105レベも足りない
「うん。僕は流石に将軍みたいに早く走れないし力も無いから小さい剣振るうより剣の重さで相手をきろうかなーっと・・・」
はぁ、馬鹿か
「あのなぁ、それじゃぁ剣を降る前に斬られるぞ。自分に合った剣を使え。ちなみに此奴は俺が没収な。これからは城に置いてある剣を使え。これは俺が直々に持ち主に返す」
「そんな〜。いつかアビリティが届くかもしれないじゃないですか〜。っていうか本当に持ち主しってるんですか?」
「馬鹿、そんなもの1、2年鍛錬したところで此奴は扱える様な代物じゃない。ちなみに持ち主は俺の知り合いだから問題ない」
「わかりました。将軍に従います」
「素直でよろしい。じゃぁ変わりといっちゃ何だがお前にいいことを教えてやる。耳貸せ」
リューンは立ち上がって耳をソウヤの方に向ける
その耳に向かってソウヤは何かをつぶやく。それと同時に目の色が変わるリューン
「ほっ、本当ですか!?」
「嘘言う理由が無いだろう。一応俺も忙しいから一週間に1回あれば良いほうだと思え。識の剣を見つけた礼だ」
「あ、ありがとうございますっ!!」
ぺこりと頭を下げて足早にリューンは部屋を出て行った
その後にマグリス兄弟が入ってきた
さて、こっからは仕事の話だな
ソウヤは椅子をもう一つ引っ張ってきて並べた
が、2人は無視して立ったまま話をする様だ
「よっし、じゃぁ話をしようか。いろいろと聞きたいこともあるしな」
「はは、どうぞどうぞ、何でも聞いてくださいよ」
カイトがそう言った
「お前達、ガルトニールの間諜だろう?」
びしっと2人が固まった
やっぱりな・・・
「まぁまぁ、とって食おうってわけじゃないんだから」
と言ってみるも2人は今だに体の緊張が解けていない
「ん〜。何でって顔してるな。あたりまえだ。俺がこの国に不法侵入者を逃すわけが無いだろう」
そう言ってソウヤはポケットから先ほどの写真を取り出す
そこには国境を越えようとしている2人が写っていた
「爪が甘いな」
そう言い捨ててソウヤは椅子に座り脚を組む
「どうする気ですか?」
「ん?」
「拷問するか殺すかのどちらかでしょう?」
カイトは妹の前に立ってソウヤを睨んでいる
「どうもしないって。ただな〜一応お誘いだ。こっちに寝返らないか?」
カイトはうつむきルナがその横までやってきて何かを言っている
「別にお前等を殺しはしない。ガルトニールの兵は大抵無理矢理徴兵された者だからな。向こうは政治とかも酷いんじゃないのか?」
「新しい王に変わってからも大して前と変わらないさ。もっとも反抗した人は殺されたけどな」
ぼそりとつぶやいてカイトは椅子に座った
その横に膝をついてルナがカイトをのぞき込んでいる
大丈夫だ。そう言ってカイトは再びソウヤを見た
「で、なぜ寝返ると思ったんだ?じゃなきゃ俺達を殺しているだろう」
「いやなに。お前等にも素質はありそうだと思ってな。ほら、お前等と一緒にいたあの女の子。彼女もけっこう素質を持っているんでな」
いやー俺ってやっぱり見る目があるなぁとか言って笑い出す
「それだけですか?」
「何だよ。俺はお前達を助けようと思っている。お前等を繋ぎ止めているのは何だ?」
「繋ぎ止める・・・もの・・・」
そうだよ、一体何に僕は執着しているんだ?
早く逃げ出したいと思っていたんだぞ!なのに何かが、何かが心の奥で自分をガルトニールに繋ぎ止めようとしている
何かが自分を待っている気がする
「いや・・・・違う。僕は・・・・きっと・・・」
「もしかしてレイお兄ちゃんのこと?」
「・・・・それかもしれないな」
2人の悲しそうな顔を見てソウヤの顔は険しくなる
別にレイとかいう奴を知っているわけではないし、知ろうとも思わない
「そうか。兄貴が待っているのか。そうだったか、それならこちらが悪いんだろうな」
そういってソウヤが誤ろうとするのをカイトは慌てて止める
「ちょ、違いますって。一応レイ兄さんは俺達の兄ですけど・・・もう行方不明になっているんですから」
「行方不明?」
「はい。とても強くて、かっこよくて、俺達なんかがかなうはずも無かった兄が突如喪失したんです。ですから、きっといつか戻ってくると思うんですよ。得に妹が」
「あたりまえだよっ!」
「だから、別に兄はガルトニールで待っているって事はないと思います。いたにしてもこんなに長期間家を空けていると言うことはこれからも変わらないと思います」
「ふむ。それでどうするんだ?」
「もちろん裏切ります。本当は戻って報酬金だけもらって国を出ようと思っていたんですけど」
「良かったな。戻ったら殺されてたな」
えっ!?と2人の声が重なった
「お前等なぁ。裏切るかもしれない奴をわざわざ軍に入れた理由がわからんのか?」
「どういうことですか?」
「ようは国から出ようとする奴は反乱者だろ。俺ならこうするね。使い捨ての兵士にするか殺すかのどっちかだ。ただ殺すにしてもそれだと国民の支持が得られないだろう」
「はい。ですがもうあの国は国民から見放されていますよ?」
「一部のな。おそらく徴兵を進める地域のみだろう。だから反乱は国中ではなく一部の地域でおこっただろう」
あっと声を上げる
そうだ。今思えばおかしいことに気づく
「一部を切り捨てて兵にする。反抗するものはおそらくすでに動きを悟られてある仕事に就かせた。ちゃんと他国の情報を求めさせるように大金を俸給としてな。お前等もその金欲しかっただろう」
「あはは、否定はしませんね。あんなに貰えるなんて夢の様でしたから。でもその仕事が間諜なのは・・・?」
「言っただろう。殺すなら自らの手を汚さずにって奴だ」
「なるほど。所詮僕らはなれているわけでもないし見つかって捕まるのは当然。殆ど密偵や間諜は捕まって死刑ですからね」
「分かったか。後はその噂が広まらない様に他の地域や貴族のために治安を良くしたりすれば手を汚さず波乱者を消せるだろう」
「なるほど。将軍頭良いですね」
「あたりまえだろう。すでに殲滅された反乱軍はおそらく支持を得ようとしていない場所の平民への見せしめだろう。反乱するものが増えない様にするために」
「どうするのお兄ちゃん?」
「分かりました。裏切ります。裏切って僕たち2人はクォールにつきます。それでいいなルナ?」
「うん!」
ニコッと笑顔を見せたルナを見てソウヤもフフッと笑った
立ち上がって2人を見下ろす
「なら決まりだな。お前等は天才魔法使いに希少な召還士だ。自然と地位はあがるもんだ。じゃぁ話は終了だ」
よろしくお願いします!と2人は同時に頭を下げた
そう言ってソウヤは頭を下げた2人の肩をポンと叩いて先に部屋を出た
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