第一話 反乱
この世界に落ちて早3年
こんな場所に居続けている俺にも嫌気がさす
黒いコートが靡く
俺はドアを開ける
ここクォールの中心にそびえ立つ城の頂上に俺はいる
そんな俺の名前は陸乃宮 総也 (リクノミヤ ソウヤ)
れっきとした日本人だ
まぁそれは別として俺がここにいるというのもこの城の主であるクォールの王であるイグリス王に呼び出されたからだ
なにかしたか俺?呼び出される覚えが全くない
ドアを開け放つと部屋の奥にはおっさんがこれまた高級そうな椅子にえらそうに座っていた
大きな広間に装飾された長テーブル
天井にはシャンデリアが、床にはそれは高級な赤い絨毯が敷かれており土足で踏むのもためらうほどの値段である
部屋には何本もの柱が立っておりその間を埋める様に甲冑に身を固めた騎士達が槍を持っている
「ソウヤ・リクノミヤ、入ります」
軽くお辞儀をする。それぐらいで十分だ
「うむ、表を上げてよい」
「・・・してご用件は?」
俺をここに呼び寄せた理由を聞く
「うむ。ぬしもしっておるだろうが最近隣国のルヴァインとフィリメーヌが同盟を結んだそうだ。それについてだが・・・」
そこで俺は手を突き出して話を止める
「はいはい、分かってますって。そんなことぐらいあんたより先に知ってるって」
「それがこの国の王に対する言葉かっ!」
長テーブルに腰掛けていたギリアスが音をたてて立ち上がる
カッと怒ったギリアスの顔に血管が浮かび上がる
ギリアスは俺と同じ将軍職にある中年男だ
見るからに貴族そうな格好をしている
「まーまー。言いたいことは俺に戦の・・・」
「そうだ。今回お前には戦から抜けてもらう」
「そーそー。俺の活躍が・・・へ、抜ける?何故!?」
予想外だ
全回の遠征で軍の指揮に当たっていたのは俺だぞ!?
「ふむ。最近お前が妙な動きをしていると聞いてな」
「は!?俺が何したっていうんですか!?」
ギリアスが誰にも見られない様な静かな笑みを浮かべた
「んー、だから貴様が軍を集めてよからぬ事を考えているのではないかと思ってな。そこで今回は前戦からはずれてしばらく休暇をやることにする。しばらくは自分の城でおとなしくしていろということだ」
ははぁ・・・おそらくゴードンとギリアスあたりが嘘を並べて俺をけ落とすきだな
この国の軍は上から6人の将軍、そして一人につき3人までの副官がつく
そしてその下には軍の小隊長である隊長が数人いて彼等が上の指令を聞いて兵を動かす
その全ての決定権は将軍にあるわけだ
そしてその一人が俺だ
3年前俺がこの世界に来て、実力を認められ、あっという間に将軍職についた俺をよく思わない奴もいる
いわゆる嫉妬だな
まぁ俺に対立する将軍が2人いる。それがゴードンとギリアスだ
だが甘いな。俺なら確実に将軍職からたたき落とすがな
「分かりました。それでは私はしばらく休暇をもらうことにします」
素直に受けておくか。どうせ今回の戦は勝てないからな。それなら早々に前戦からはずれておこう
後悔しろ。俺がいなきゃ絶対にこの戦は勝てないね
さーて、我が城に帰るとでもするか
俺は一礼して部屋を出る
するとそこには同じ将軍のシェルファスがいた
金髪に碧眼はこの国の貴族であることを照明する様な物だ
此奴には貴族の血が流れている。それも純血の
今時純血ってのも珍しい気がするがな
この国には平民と貴族がいるがどうも貴族は平民を見下し平民は貴族を傲慢だといってお互い反発している
この国に平和が来るのはいつの事やら〜
ま、あの王のままじゃ絶対に来ないな
「何してるんだ?」
「あー、ちょっと謹慎にされちまってさ」
「謹慎!?王は正気か!?」
「おいおい、あいつが正気な事ってあったのか?」
「む・・・それもそうだな」
俺の全身黒い服を来ている真っ黒な俺とは対照的にシェルファスは全身白色の騎士服を纏っている
剣には金の装飾までしてある。これだけで家一軒ぐらい建ちそうな気がする
さすが三大貴族
「それでお前は何を?」
「陛下に呼ばれてな」
ははぁん、読めたぞ
「あー分かった。じゃぁお前はもし王に何かを頼まれても絶対に断るんだぞ」
「?何故だ?」
「おそらく次の戦の指揮をとれっていうだろう。無理無理。俺が居ないのに勝てるわけ無いって。相手はあのユーリアだぞ?」
ユーリアはクォールを囲む4つの大国のうちの一つである
正直こんな小さな国がかなうはず無いのだ
「正義感が強いからなお前は。だが絶対に断れ。じゃないとお前は将軍職を落とされる。敗戦の責任は指揮官であるお前に押しつけられるだろうからな」
「そうか。考えておこう。お気遣い感謝するぞ我が親友よ」
シェルファスは再び歩きだして大きなドアをノックする
俺は振り向きもせず階段を下りていく
さーて、城でも帰るか
すっかりこの世界になじんでしまった俺が憎い
これではいつか別れの時が辛くなるではないか
今ではこっちの世界で暮らしていて、それも心のどこかではそれでも良いと思う部分がある
それでも俺はこっちの世界に居てはいけない存在なんだと思う
だから帰る方法が見つからない今を安心して過ごしているのかもしれない
俺は偶には城下に降りて市でも見るのも良いと思い市に降りるがとくに欲しい物もなくぶらぶらとしていた
この国にかつての仲間がいないことはもう分かっている
だから他の国との外交を率先して行っている俺は国境の警備の半分を任せてもらっている
そんなクォールとルヴァインとの国境近くには俺の城がある
前領主はあの王にクビにされている。そのおかげで俺がここにいるのだ。その点では感謝感謝
国境に近づくにつれ店の数も減ってくる
そんな市のはずれにある女性が目に入る
シェルファスと同じく金髪で碧眼のすらりとした長身が周りの古ぼけた市とミスマッチである
なんでこんなところにいるんだ?城で待機を命じておいたはずなんだが・・・・
ここから俺の城まではかなり遠い
すると向こうがこちらに気づいたのかササッと姿を隠す
馬鹿が
「オイこら」
「ひゃあぁぁっ!?」
「ひゃああじゃないっ!なんでここに居るんだお前は?」
「え〜っとぉ・・・・それは・・・しょ、将軍こそっ!」
「俺がここにいても何も不自然じゃないだろう。お前こそなんで待機命令を無視してこんな国境近くに居るんだよ?」
「そ・・・れはぁーですねー、えっと・・・・」
はっきりしろよ
「はぁ、もういい。ところでフォークスもそこにいるんだろ?出てこいよ」
俺の後の路地の陰から一人の青年が出てくる
耳が少し長くその耳には金色のピアスをしており青色の服の上に地味な茶色のマントを体を覆い隠す様に来ている
「あは、やっぱり将軍にばれましたか」
「俺から隠れようなんざ100年はやいわ。それよりも・・・」
俺はフォークスののど元に黒い剣を突き立てる
「なーんで副官が2人もそろって城を留守にしてこんな所にいるのか聞かせて欲しいね〜」
ゴクリとフォークスがつばを飲み込む
「相変わらずお早いことで・・・まったく見えませんでしたよ?」
「はっ、この世界に俺と対当に戦える奴は少なくとも10人ちょいしかいないだろうな」
「それでも10人も居るというのは正直恐ろしいですね・・・」
「ところで俺の質問に答えろよ?なぜ副官が2人もそろってこんな所に?」
「えっとー・・・その、将軍が留守の間にですね、お客があったんですよ」
「あ?客?」
予想外の答えに驚き俺は剣を引いて鞘に収める
「はい。ほら、将軍がいつも私たちに言っていたじゃありませんか。将軍に会いたいと言っているとても強い方々が居たら絶対に合わせろって・・・」
あぁ、いっていたな。と俺は思う
もしかしたら誰か俺の場所を見つけた仲間が訪れるかもしれないと思って副官や門番にはそう伝えてあった事を思い出す
「それでですね、来たんですよ。一人女性が・・・めっぽう強い二刀流の使い手が・・・それで向こうは知り合いだと行ってくるものですからこれは合わせないといけないと思いましぃってえぇえっ」
俺はとっさにフォークスの肩に手を置き揺さぶる。自然とその手に力が入る
「だれだそいつは!?」
「えーっと・・・その・・・それで私たちが将軍に合わせようと思い案内しにきたわけですよ。ほら、私たちじゃ相手にならないのくらい分かるんで・・・」
その瞬間、長年培ってきた勘が剣を抜けと言う
その勘に従いフォークスを揺さぶっていた手を剣に回し、剣を抜き振り向くと目の前には剣が
ガガッ
その剣を受け止める
脚に力を込めて剣を持つ手に力を入れ、そして一気に払う
刃を返してそのまま横になぎ払う
その剣を持つ手にいつもの何十倍もの重さが加わる
俺が顔だけを後に向けると俺が振るった剣の上には一人の少女が右手の袖から飛び出している刀身を俺の頭に突きつけている
「・・・・お見事。だけどまだまだだな。うん、癖が抜けてないぞ」
俺は空いていた左手を彼女に向ける
すると剣の上が爆発した
煙が当たりに立ちこめる
「威力は落としたから」
煙が晴れると地面には先ほどの女性が大の字になって地面にキスをしている
見た目では大して俺と年齢は変わらない
黄色の髪を後で束ねてポニーテールにしており服の袖からは刀身のみがでている
「やぁフリージア。あえて嬉しいよ」
「ぬぅぅぅぅぅーっ!!ペッペッ・・・土入ったじゃないの、口に」
すると彼女の姿が消える
「わかんないかな」
周りから見ると2人とも消えてしまっていてその場には2人の副官しか居ない
ただ何度も聞こえる剣と剣がぶつかる音とちらほらと現れる火花だけが彼等がまだその場にいることを表している
そして何度か剣のぶつかる音が鳴り、そのあと2人の前に突如彼等が現れる
「フッフッフッフッフ、まだまだだな」
女性は右手を突き出しており剣がギラリと太陽の光を跳ね返してい。その懐に立つ陸乃宮は首元に剣をかざす
「俺に勝とうなど100年はやいわ」
「あはは・・・そうみたいね」
彼女はそう言ってカシャンと音をたてて剣を袖の奥に隠すと手をだした
フォークスはその理屈がどうしても分からず頭をひねっていた
そしてもう一人の副官のセレアは町中で斬り合いを始める方がどうかしている。と言いたげな顔でこちらを見ている
「してお前なんで俺の居場所分かったんだ?」
「んーと、まず一つ目はあんたの国の隣の国、ユーリアに落ちたから。情報がちらっと耳にはいったもんでね」
「で、二つ目は?」
「それはアレだよ。あんたの本名を知っていたのが私だけだからだよ」
こっちの世界では俺は自分の本名を名乗っていた
故にクラスメイトであった此奴だけが俺を見つけ出したと言えるだろう
「追討者ともあろう者が3年もかかったのか」
「流石にここは広すぎるわよ!それにまずは自分の立場を良くしておくのに専念していてね。ほら、立場良い方が動きやすいしね。現にここに居るのも将軍の特権だしね」
「お前も俺と同じか・・・ところで俺以外の誰かと会っているのか?」
「同じってあんたも将軍の地位にいるの?やるじゃん。いや、あんたが最初だけど?」
ふむ、ということはまだ他の連中はユーリアとクォール以外に飛ばされたらしい
そこに副官が割って入ってくる
「ちょっと将軍!話がまったく分からないんですけど〜」
「そうですっ!分かる様に話してくれても良いじゃないですか!」
「あれ?話が分かってないってことはあたしが何者かもあんたがこの世界の人間じゃないって事も話してないの?」
「ん、ああ。妙に騒ぎ立てられたりしたくないし。どうせ信じて貰えないだろう」
副官2人が口をぽかーんとあけて固まっている
「もっ、もしかして将軍は・・・・天人なのですかっ!?」
セレア、声がいつもと違うぞ
ちなみに天人というのはこの世界で言う俺達の事をさすそうだ
俺達が来る前に一人の偉大なる予言者が俺達が天から振ってくると言ったらしい
で、空から降ってくるということで俺達は天に住んでいたという意味で天人と呼ばれる
確かに俺達はこっちの世界に来たときに遙か上空で散り散りになってしまったがその日まで彼は予言していたらしくほぼ大陸中の生き物は空を見上げていただろう
そのせいか俺達のことが天人として広く知れ渡ってしまったのだ
それが俺だとばれているかどうかは別だが
「こっちの世界ではそう言われるらしい。お前はもうばらしたのか?」
「一部にだけね。十分地位向上に役にたったわ」
ふーむ
「な、なぜ教えてくれなかったのですか!」
「だってお前等口軽いだろう」
そう。こいつらは口が軽い
とくにセレアだ。おそらく今日中に俺が天人だと俺の領地の城に知れ渡るだろう
「とにかくだ。おい三幅、なんでこっちに居るんだ?特権とはいえそう簡単に他国の領地に入れるのか?」
「っていうかこっちでその名前使いますか・・・別にどっちでも良いけどそれならこっちじゃ私はリクヤでとうすから。んで質問に答えるけどそれはだね、私がユーリアの使者だからです」
服の内側からごそごそと紙を取り出す
「はいこれ」
「あ?なんだこりゃ?」
そこには長々しい文章で、しかももの凄く遠回しに同盟を結べと書いてある
同盟・・・か
ふと考える
この文章ではクォールが小国であること、そして同盟を結ぶのが得策と書いてあるのだ
ふむ・・・
「まぁ同盟自体は悪い話ではないな。こちらが小国だから向こうもなめているな。これではまるでこちらがそちらと手を結ばせようとしてるって事だろう」
「ん、そうなるね」
「だがこれではこちらが向こうに同盟を結んで欲しいと言う形となる。こちらとしてはそちらが同盟を結びたいという形にもっていきたいわけだ。まぁ意地なんか張ってる場合じゃないんだがな」
「それは一将軍としての考え?それともあんたの考え?」
「将軍としてだ。少なくとも俺はこの国に落ち、助けられ、拾われた身だ。だが俺にはこれを決める決定権はない。将軍にはそんな権利はないんでな」
「難しいなぁ。まぁもともとあんたに渡す手紙じゃないからね。それにあんたが言う様に意地張ってる場合じゃないのよね」
そう。最近はどうも隣国の様子がおかしいことには気づいている
どうやらどの国も戦に向けての準備をしているとかどうとか
だがどうも我が国だけは一歩出遅れる感じである
王はどうやら保身を気にしている様である
戦ともなれば必ず兵がいることになる。流石に現在の軍の人数だけでは近隣諸国との戦闘で大敗するのが目に見えている
故にどうしても兵を集めなければならなくなる
むやみやたらと一般市民から兵をかき集めるとそれはもう市民も黙ってはいないだろう
ようは王の座を降ろされたくないばかりに確実な証拠が無い限り兵を集めようとしない
俺の軍には平民が多く集まる傾向がある様だ
将軍の元には軍という組織がある
王の次に戦を任されるのが将軍、その下には各将軍が持つ軍がある
これは一つの国の軍隊というよりその将軍がもつ軍隊という言い方の方がいいだろう
故に王の直接の命令を聞くのは王下聖剣騎士団とその志を同じくする人間のギリアスとゴードンの軍となる
この世界には人間以外にもいろいろな人種がある
まず人間。多種多様の文化や考えを持ちそれなりに高位にあたる人種だ
そして次にエルフだ。エルフは見た目は人間と変わらないが唯一違いがあるとすれば耳だろうか
その尖った耳にはその地域ごとに耳に付けるピアスの色が違うのだという
頭がよく、生まれたときから大量の魔力の器を持つという
魔力の器とは、体内に魔力を溜めるための最大量だ。故にその魔力の器に魔力がたまり、魔法などを使うことによりそれを消費する
魔力は時間がたつか専用のアイテムを使うことで回復することが出来る
そして獣人。かれらは大抵が犬や狼、ライオンといったごつい感じの人種である
形は人型だが顔や体毛といった見た目でその違いがわかる
その数は全回の大戦により数が大きく減ってしまったがその力だけは人間やエルフの比ではない
ドワーフは元々人間だった者が住む場所を地底に変えてそれに適応した種族である
力が強く、暗闇でも目が良く利くため地底探査のチームなどに組み込まれることもある
大きさでいえば大人の人間の半分ぐらいである
頭がそれほど良くは無いがそれをパワーで補っているがそれでも獣人には届かない
最近は数が減少しており彼等の集落の入り口を見つけるのも大変である
彼等は巨大な山に穴を迷路の様に掘ってその中で暮らしている
最後にオーク。彼等は人型をしており耳もエルフの様に長いのだがその皮膚の色は黒い紫色をしていることでどちらとも違うといえる
ずるがしこく数こそは獣人より多いが他の種族から嫌われているため他の種族との交流が少ない
戦闘には向かないため全回の大戦ではその身をひっそりと隠していたため獣人ほど数が減らなかったのだ
しかも獣人はほとんどが闘いを好むため進んで戦闘の最前線に立った。そのためその数の減少を加速させたのだ
それを理由にしているかどうかは知らないが獣人は他の種族を嫌っている。ちょうどオークと逆の立場だ
今では希少種とされている
将軍の一人であるファントスもその一人で獣人でもある。王のお気に入りというのはまさにそう言うところにあるであろう
戦いを進んで行う彼の姿がどういうふうに写っているかは知らないがそれが安心とかにつながっているのだろう
もっとも俺はもう少しこの世界と違う人種を知っているのだが・・・これは人と呼んで良いのか分からないのでここでは伏せておこう
「意地を張っているかどうかは王に聞け。すぐに同盟を結びたいというだろう。こちらには力がないからな。向こうの思うつぼだ」
「ならありがたくそうさせてもらうわね〜」
そう言って俺から紙を取り上げて再び服の内側にしまう
「まぁそれはいいんだが・・・今から会いに行くなら俺も同席しよう」
あらなんで?という顔をしている
「理由はまぁたいした物じゃないんだが、我が親友を我が反乱軍に入れてやろうと思ってな」
「なに?反乱でも起こす気?」
「はっ、今の国王じゃ反乱起こされても仕方ないが・・・結果的にはこっちに有利になる。これで無駄な戦争をしなくてすむからな」
「まじ?それはそれでこっちにも影響がでそうねー。だってそうでしょ。同盟を結ぼうっていうのにそっちの国王がしんだら私はどうするのよ?」
「その辺は何とかなるだろ。こういうめんどくさい物事は三楽か霜雪にでも押しつけてしまいたいんだが・・・」
「あー、そういやそんなのも居たね。あの2人は神謀と神童だからね。そうかー、彼等も来ていたんだったわね」
そういってフリージアはどこか空の果てを見つめる様に顔を上に向ける
「みんな・・・あえるよね」
「あぁ。っと・・・その前にやることがある」
「何?」
フリージアが顔をこちらに戻すと同時に俺は剣を引き抜く
「俺の考えが正しければまだこの世界は・・・」
俺は地面に剣を突き刺す
石が真っ二つに裂け、その間に剣が突き刺さっている
「まだ俺達が帰る事が出来る様になっている」
「どういうことよ?ここはネットじゃ無いのよ!?」
「ふむ・・・だがそれ以外にここがどこだかお前に分かるか?誰かの脳内の妄想ワールドに来たわけでも、俺達が死んだわけでもないんだぞ?」
それは百も承知だ、という顔をするが
「でもでもっ、ここはほら、地面だって家だって雲だって、ポリゴンやCGじゃ無いのよ?インターネット上じゃないのは誰だって分かるわよ。ここは何処なのよ!?」
「いや、俺の予想で行けばここはインターネット上だ。おそらくこれはシステムどうこうの問題じゃない。そんなもの完璧無視の領域だ」
「そんな。どいうこ・・・」
フリージアが言葉を返そうとした瞬間にカシャンと音をたてて袖から剣が飛び出る
リクヤも剣を地面から抜き去る
「どうしたんですかしょうぐっ」
セレアの口を左手で押さえる
「ほほぉ・・・俺達が狙いだなこりゃ」
「いやいや、私の持ってる手紙かもしれないよ?ほら、何処にだって同盟を邪魔したい奴ぐらいいるでしょ」
俺は目を閉じて神経を集中させる
暗闇の中にぽつり、ぽつりと小さな火が立っていく
そしてまた一つと増えていくうちに辺りには沢山の赤い火が立っている
「赤・・・戦闘意識が高まってるな。15いや20か?」
俺は地面に手をつける
ふむ・・・ほとんど弱い波動しかはなっていないところをみると・・・たいしたことはなさそうだ
「俺が行こう」
「あらそう?じゃぁまかせまーす」
フリージアは地面に腰を下ろすと剣を再び袖に隠す
「目標10秒だな」
「おっけい!じゃぁしっかり数えて待ってるから。いーちぃー」
その瞬間に彼の姿は消えていた
「わ、我々もっ!」
多少の殺気を感じ取ったのかセレアとフォークスが同時に剣を抜こうとする。がそれをフリージアが止める
「やめときな。あんた等が出る頃にはもう終わってるわよ」
そういって再び数を数え始めた
6秒ぐらいたってやっとこちらにも変化が分かる様になってきた
辺りでドサッ、とか音がし始める
一番分かりやすかったのはその1秒後に頭上の屋根から男が落ちてきたときだ
「きゅ〜ぅ、じっ!!」
そう言ったときに再びリクヤが再び副官二名と地面に座ったフリージアの前に現れた
「おっしゃーセーフ」
そう言って剣をしまう
何があったのかは知らないが黒いその剣に血が付いていないところを見ると人を切ったというわけではなさそうだ
「お疲れ。どうだった?」
「おそらく他国のスパイってとこだな。人間とエルフの混合部隊、大してレベルも高くないからすぐ終わった。ん?どうしたお前等。口ぽかーんとあけやがって」
そう言ったが彼はほとんど気にする様子もなく
「さて、もう一度城に戻りますか。積もる話はまた今度な」
城の前には門番が立っている
甲冑に身を固め、その槍で門の前をクロスするようにして道をふさぐ
「おつとめご苦労さん。さっき出たばっかりなんだが通してくれ」
すると2人のうち一人が
「ギリアス様、ゴードン様のめいによりそれは出来ない」
むっと顔をしかめる
「あ?そういやお前等、甲冑からみてギリアスの者だな?」
たしかにここを出るときは銀色の甲冑に身を固めた騎士だったはずだ。だが今俺達の前にいるのは銀色の甲冑に青いスジが入ったギリアスの部下だ
「・・・どけ、気が変わった。どかないならお前等を殺す」
目つきが変わったリクヤの顔は2人の甲冑騎士以外に見えていない
「そ、それはいくら一将軍のあなたでもあ、主のめいを無視すr・・・」
2人はそこまで言ったところで地面にバタリと倒れた
「よし、いくぞ。まぁ俺の予想ではもう王は死んでるがな」
その言葉に一番驚いたのはフリージアだ
「ちょ、それって同盟結べないじゃん!どういう面して帰ればいいのよ〜」
「ふん、しるか。こちとら驚きだよ。まさか2人がここで裏切ったとはな。予想ではどこか他の国と同盟を結んだ後に殺すとふんだんだが」
これで王の座が空白となった
「それよりも・・・シェルファスが心配だな。あ、お前等2人は帰っていて良いぞ」
そうつぶやいて彼はその場から姿を消す
それを聞いて固まる2人
「2人ってことはあたしは自由なわけね」
そう言ってフリージアも姿を消した
城の前に立ちつくす副官2人は
「どうします?」
「むぅぅっ、ここはついていって加勢と行きたいが将軍命令じゃ・・・・」
そうして2人は結局命令に従い、リクヤの城に帰ることに決めたのだった
「おじゃましまーす」
再び先ほどの大ドアを開け放つリクヤの目の前では騎士達が斬り合いをしていた
甲冑の色を見る限りシェルファスの騎士達にギリアスとゴードンの騎士が襲いかかっている
「ふむ・・・肝心の大将が居ないな」
将軍3人と王もここにいると思ったんだが・・・おそらくシェルファスが王を逃がしたのだろうか
単身で来ていた俺と違って他の将軍はしっかりと騎士を連れてきている様だった
まぁそれが普通なんだがっ!
リクヤは剣に手をかけ抜きはなつ
ガガガンッ!
バタリバタリとシェルファス以外の騎士が倒れていく
「お勤めご苦労さん。ところでこの何も知らない俺に状況を教えてもらえるとありがたいんだが」
そういうと一人の騎士が出て来た
「危ないところを助けて頂きありがとうございます。リクノミヤ将軍が立ち去った後、我が主が部屋に入って対談中、ギリアス将軍とゴードン将軍の騎士が部屋になだれ込んできて・・・まさかあのお二方が裏切りをっ!」
ふーん、まぁここまでは予想通りだな
床に倒れている騎士の中には王直属の騎士が倒れている
元々部屋に居た騎士達だ
まったく・・・やっぱりあいつは見る目がないな。いや、俺とシェルファスが将軍の地位にいるからそうというわけでもないのか
「で、その将軍と王様は?」
「そ、それが王の首は取られ、我が主は逃げ出したお二人の将軍を追って部屋の外へ・・・」
「ふむ・・・」
王の座は空白か
もう少し早く行動に移すべきだったか
「お前等どうする?ついてくるか?」
騎士達は互いの顔を見て一斉に頷く
「我々はシェルファス将軍に使える身。あなた様がその味方というならあなたの指示に従います」
騎士達は膝をつき俺に忠誠を誓う
「よく言った!!それでこそあいつの部下だ!じゃぁあいつ等を探しにいくか」
部屋は騎士達の声でうまった
一方シェルファスは城の中腹にいた
長い廊下を前方を走る2人の後を追う様に走る
その差はいっこうに縮まらない
くっ・・・
王の首はギリアスにとられさらにあの後大量の騎士が流れ込んできて何とか抜け出して彼等を追ったのだがこれはどういう事だ!?
王の座につきたいから首をとったのでは無いのか!?
だが彼等はずっと城の出口に向かって走り続けている
すると道が二つに分かれている
一方は下に降りる階段
そしてもう一方は上へと続く階段
2人はそこでバラバラに動く
どちらを追う?ここは王の首をとったギリアス殿を追うのが先か・・・
シェルファスは下の階段に向かって突き進む
「そんなに慌ててどこ行くのおっさん?」
階段の踊り場から下を見下ろすとそこには小さな少女が立っていた
黄色い髪が目立つ少女は仁王立ちでギリアスの前に立ちはだかっている
「あのさー、私ユーリアの使者なんだけどさぁ、同盟のことで話があってきたのにこの頭だけのおじさんが居ないと話が出来ないんだけど」
もの凄くイライラとした口調でギリアスに言う
ギリアスの片手には剣、もう片方には王の首を持つ
「あのさぁ?分かってる?私これじゃ帰れないんだけど・・・」
「なんだおまえは?あ?お前のことなんかしるかっ!死ねえぇぇっ!!」
剣を振りかぶったギリアスは思いっきりその剣を振り下ろす
「あぶないっ!!」
そう言おうとしてギリアスに駆け寄ろうとしたが
「遅いって」
少女はいつの間にかシェルファスの後ろに立っていた
ギリアスはぴくりとも動かない
ふり返ると少女の服の袖から剣が出ている
しかもその刀身には真っ赤な血がべっとりと付いている
「きったなぁ」
ギリアスがゆっくりと口を開くが
「き、きさまぁ・・・」
そこまで言ってギリアスの首がズッとずれた
それと同時に背中に何本ものきった後が現れ血が噴き出す
両手両足がバラバラに地面に転がる
最後にギリアスの頭が階段をゴロゴロと落ちていった
この少女は恐ろしい
剣を抜く瞬間も、切っている瞬間もその目で捕らえることが出来なかった
この子は一体・・・
「で、あんた誰?」
その言葉でハッと我に返ったシェルファスは
「私はこのクォールの将軍の一人、シェルファス・ロルワート・アコートだ」
「へぇ、ミドルネームがあるって事は貴族さんか。私はとりあえずフリージアって呼んで。とりあえずユーリアの使者で同盟の話を持ちかけに来たんだけど・・・状況がねぇ・・・」
床に転がった2人の首を見つめる
それはお気の毒に
そう思ったが口には出さなかった
「そうか。今はこの国に王は居ない。というわけで同盟の話はまた後で頼む。今は逃げたもう一人を追いかけないといけ・・・」
「あぁ、そいつなら・・・」
「ん?」
「そいつならリクヤが・・・あーこっちじゃリクヤじゃ通じないんだった。ややこしいわね。えっとソウヤが殺したわよ」
は?今この少女は何と言った?ソウヤが殺した?なぜ分かる?
「何故分かる?」
「んー、まぁ強いて言うなら『気』ってやつ?えーっとこっちじゃ何て言うんだっけ?」
「まさかシグンスの事か?」
「そうそうそれそれ」
驚いた。この少女は見た目私より年下なのにシグンスを使えるのか
シグンスとはまた言葉で言うと難しいのだが一応魂や気持ちの痕跡や命の波動的なものを感じ取ったりする事を言う
もっともそんなのを使えるのはそう多くはない
使えるのはよっぽど上達した達人か天賦の才を持つ者かぐらいだろう
「あなたは私よりも力が上と見る。だがまず同盟の話を今すぐにすることが出来ないことをお詫び申し上げる」
そういってシェルファスは剣を鞘にしまい頭を下げる
「いいって。どうせシャスラにしかられるだけだから」
少女も剣についた血を振り払うと袖に剣をしまった
「それにしてもあなたはとても強い。もしかしてもうソウヤと手合わせしたのか?」
「あぁー、うん。まぁね、私の負けだけど」
目の前でその姿を消すほどの素早さと力を持つ少女すら彼は倒してしまうのか
考えるたびに彼が敵でないことを喜ぶ
敵にすると恐ろしいが味方にするとこれほど頼もしいものはない
「ではまず彼と合流しましょう。話はそれからでしょう」
そう言ってシェルファスは階段を上っていく
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