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Another World
作:北斗



実力主義



「じゃあ行くよ♪」

目の前に立つ少女の姿をした悪魔は顔を緩めることを止めない。



さぁ、覚悟を決めろ



今こそ力を見せるとき



おれは刀を持つ手に力を入れ直し、静かに構える。

だがそこである異変に気づく……

対峙する少女は手には何も持ってない。

「どういうつもりですか。早く刀を持ってください」

本当に闘う気があるのだろうか。
こっちの気が狂ってしまう。

……気が付くと何でも直ぐにあの人のペースだ。

不思議な人だ。
…そして面倒な人だ。


「大丈夫♪僕は元から刀なんて使わないんだ♪刀なんて物騒じゃん?」

さて、おれは聞き間違いをしたのだろうか…

刀なんて物騒!?じゃあ何故貴方は其処(四大聖天使の地位)にいる!

不可思議な回答とその疑問に思わず相手を睨んでしまう。

そんなことはお構い無しに、相変わらず少女は何の悪気もない笑顔を向けていた。

「そ・れ・に♪僕に攻撃を当てるなんて無理、無理♪」

「…っ!?(この小悪魔、言わせておけば…)」

恐らくおれは今まで見せたことないぐらい物凄い勢いで睨みを利かせているだろう。

この時点ではすっかり相手が四大聖天使と言うことを忘れかけていた。

そんな時に不意に場外から声が飛んできた。

「あぁ、一応言っておくが、凛はスピードだけならおれらの中でも一番速いからな」

一気に冷や汗をかいた気がする。

……國山さん……そういう情報は早くください……

ついさっきまでただの生意気な少女と思ってしまっていた脳に、四大聖天使という巨大な壁と威圧感を呼び起こし、再認識させられる。

その認識が生まれると同時に押し寄せる極度の緊張…不安…

だが迷っている暇などないだろう


何を迷うか


もう決めていただろう


そう、おれはやれることをやるのみ!

「浅原夏屶…行きます!!」

おれは何の躊躇もなく、一気に間合いを詰める。
これまで同様、直線的に、最短を通って…次の瞬間には目と鼻の先に標的はいる。


……はずだった


おれが飛込んだ空間には既に何もなく、自身が目標としていたものは後ろにあった。

「…ちっ」

やはりそんな簡単にはいかないか。

標的を確認する為に振り向くが、目に入ってくるのは虚無という光のみ。
気配はまた違う場所にあった。



……速い



左…後ろ…否、前か!?

脳が認識し、判断するよりも早く体を動かそうとするもその先は何も無い空間があるだけになる。

周りの空間の速度からして自身が遅くなっているわけではなさそうだ。

今まで経験したこともないこの景色はもう異常としか言い表し様がない。

(力が違いすぎる)

そう、力の差は歴然すぎる。

それでも…

(諦めてたまるかよ!)

右の地面を蹴り、前に来る…が、急激に方向を変え、再び右へ…今度はただ一周回るだけ…
攻撃を仕掛けてくる素振りは一向に見せない。

何を考えているのかわからない。

浮かんでくる疑問に似合う答えを探しては当てはめてみる自問自答を繰り返しながら、忙しく動く標的をひたすらに目だけが追っていた。

演習場には周りに試合を見届ける観客、試験監の姿。中央には一人の少年がただ立って居る他は何も見えない。

そんな中で、ごく一部のものにしか存在すら分からないようにしているもの…
先ほどまで演習場に姿が見られた少女は、これもまたごく一部のものが気付く程度ではあるが、明らかに冴えない表情をしていた。

「…っ(ぼ、僕が目で追われている!?流石は夏屶くん…でも…)」

少女は突如行動を変えた。

「っ!?」

まさに突然で、一瞬だった…
目では追えた、脳でも認識は出来た…

ただ……肉体が反応出来なかった。

「僕の勝ち♪」

姿をはっきりと現したこの小悪魔は満面の笑みを溢していた。

(やはり何も出来なかった…)



そして、國山さんが試験の終わりを告げた。

「それでは、今回の認定試験の結果を発表することにしよう」

また早いこと…

此処の人達にはおれらの常識が通用しないと思わせられる。

隣にいる美沙は目を輝かせて次に来る言葉を待っているようだ。

「青葉一稀、新橋霞、川口美沙、浅原夏屶…それぞれは我ら四大聖天使直属の部隊戦士となってもらう!」

ちょ、直属!?

頭を何かで思いきり殴られたようだ。軽く…いや、非常に混乱している。

いくら何でもそれはやり過ぎだろう…

それぞれ宮下さん、小野沢さん、凛さんの部隊に。
おれは國山さんの部隊らしい。


ひどく困惑し、誰一人として口を開けないおれらに対して、例の小悪魔はまた騒いでいる。

「駄目!てかヤダ!夏屶くんは僕の部隊にして!」

「凛!個人的感情でものを言うな!」

「惇の分からず屋!頑固オヤジ!か弱い乙女の一生に何回もする命を賭けない頼みを断ると言うのか!?」

いやいや…國山さんは外見的にも内面的にも明らかにオヤジって感じではないだろ…
てか、重要でも何でもないめちゃくちゃ普通の頼み事じゃねぇか!

やっぱりあの人は面倒だ…國山さん達はずっと相手をしてきたのだろうか…

「はぁ……仕方ない、浅原は凛の部隊にしてやろう。代わりに川口はおれの部隊にする」

國山さんが折れた…と言うより面倒を避けたって感じか。

これで凛さんは満足して落ち着いたみたいだ。



………!?



凛さんの部隊ということは……

面倒なことになりそうだ…


浅原夏屶…頑張ります


夏「國山さん…あんなに簡単に折れないでくださいよ」

惇「仕方ないだろ。あれ以上は面倒なことになる」

夏「國山さん達も大変なんですね」

惇「慰めはいらんぞ?」

夏「慣れてますでしょ?」

惇「慣れる慣れんの問題ではない。適応しなければこっちが持たん」

夏「なるほど…」

惇「浅原!」

夏「は、はいっ!」

惇「頑張ってくれ」

夏「……はい」











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