ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
76 日時計の草原2
日時計の草原は、攻略本にあったイラストの通り12本の石柱が時計上に立ち並んだ、緑溢れる草原だった。
その緑の草原の中に、所々赤い岩肌が見える。

「さて、ここはアードラの餌場だから、いつもの採取と一緒と言う訳にはいかないから」

イヴァンから、採取に際しての注意事項が言われた。

「基本的に単独行動はしないでくれ。必ず、俺かアスランと一緒に行動すること。出来れば全員同じ場所で採取して欲しいぐらいだ」
「まぁ、基本的にはそれでいこう。アイゼルとノルディスもいいよね?」
「かまいませんわ」
「僕もそれでいいよ」

6人の大所帯で、私達は日時計の草原を移動し始めた。
所々止まって、石の採取をする。
ノルディスはカノーネ岩をメインに、黄金色の岩と瞳石を集めている。アイゼルもメインは一緒だが、黄金色の岩はさほど興味はないみたいで、瞳石を多目に集めている。
私は、パメラにはカノーネ岩を集めるように指示を出し、自分は瞳石と蒸留石を集める。
黄金色の岩は、ヴィラント山で採取したものがあるので必要ないからね。
あと、所々アザミを採取している。
アザミ茶葉や常備薬で使うので、ストックがあって困るものではない。

でも、やはり全員で固まって行動していたら、効率はあまりよくない。
まぁ、アードラに襲われない為には仕方ないかもしれないなー。

「採取ちょっと、中止。なんか、怪しい動きのアードラがいる」

アードラの動きを観察していたイヴァンが、私達に注意を促す。
私達は、採取をやめそれぞれの武器を構える。
アイゼルとノルディスは魔力行使に有利な木の杖を。私はいつもの鉄杖だ。
ちなみに、私の片方の手は腰のポーチに手を突っ込みクラフトを握っている。

パメラは逃げの体勢だ。妖精は基本的に魔物に襲われても戦わないのだ。
魔物に襲われても、妖精の体格では戦いは不利だからしょうがない。

「くるぞ!」

アスランの声と同時に、上空から二羽のアードラが急降下をしてくる。
人間を襲うアードラは、体格は普通の鳥より大きく、色は青みがかっている。

アードラは、年を取ると体色が青から茶に。茶から赤へと変化する。
青いアードラはまだ若いアードラだ。

しかし、それが単独ではなく二羽。
もしかしたら、番なのかもしれない。

「アスラン、一匹まかせた!」

イヴァンが飛び出し、アードラの一羽と交戦体勢に入る。
こちらはイヴァンに任せていても大丈夫だろう。
もう一羽は私達とアスランで対処することになった。

「先手必勝!」

私が降りてくるアードラに向かって、クラフトを投げた。

パパパパン!

けたたましい音が、草原に響いた。
けど、アードラはあまり気にすることがない。
やはり、クラフトぐらいでは牽制にもならないか。

「ロードブリッツ!」

降りてくるまでの間に多くのダメージを与えたいので、アイゼルの魔法がアードラを打つ。

「シュラオブシュトック!」

ノルディスの魔法攻撃がそれに続く。
さすがに体格が大きいアードラも、二連発の魔法攻撃は効いたらしく少し体がよろけた。

そこにアスランが踏み込み、飛び上がり長剣を一閃する。
少し踏み込みが浅いが、羽は傷つけることが出来た。

アードラは自分の体重を空中で支えることが出来ず、そのまま地面に落ちた。
そして、そのまま地面でもがく。
そこをアスランが首に長剣を突き刺し、トドメにした。

さすがに、アードラも四人がかりだとあっけない。
私は大して役に立ってないけどね。やはり、もう少し何とかしたほうがいいなぁ。
フラム、量産するか。

一匹倒して安堵した瞬間、風が私達の方に吹き抜けた。

「いたーーーっ!」

イヴァンが戦っていたアードラが、この辺り一帯にかまいたちを起こしたのだ。
血が手や足、顔から飛び散る。

「フレイ!」

ノルディスやアイゼルはアスランの近くにいたおかげで、アスランのフォローが入り直撃とまではいかなかった。
けど、私は少し離れた位置にいたので、直撃だった。

さすがに体の部分は防具が厚かったのか、ほとんどダメージはないけど、防具が薄い手足はさすがに無傷とまではいかなかった。
特に顔は無防備だったので、結構深い傷だろう。

たいした顔ではないけど、女の顔に傷をつけて!

私は怒りつつ、クラフトを取り出し次から次に投げていく。
一発では大した威力がないクラフトでも、一度に大量に投げたらさすがに効くだろう。
何発かは当たらなかったが、空中で爆発してアードラを自由に飛べなくする。

「うわ、あぶなっ!」

イヴァンが慌てて距離をとる。

「距離をとる前にさっさと殺してよ!」
「無茶言うなぁ。まぁ、いいや」

距離をとったかと思ったイヴァンが再び突っ込み、キレイに羽を斬り飛ばした。
斬ると言うより叩き斬ったと言う方が正解かもしれない。

その瞬間、アードラは絶命した。

「フレイ、早く手当てしなさい!」

アイゼルがアルテナの水を片手に、慌てて駆け寄ってきた。

「あー、結構痛い」

戦闘の高揚感が抜けると、余計に痛く感じる。
アイゼルから、アルテナの水が渡されて、しぶしぶ飲む。
ううう、やはりあまり美味しくないなぁ…。
けど、威力は確かなもので、手足の傷はうっすらとしたものしか残らなかった。
後は自然に消えるだろう。

「まだ、傷は残っていますのね。ノルディス、塗り薬はありませんの?」
「さすがの僕も<アルテナの傷薬>までは無理だよ」
「あ、塗り薬なら自分で持ってきてるよ」

そう行って、ポーチから常備薬を入れた入れ物を取り出す。

「イヴァンも怪我をしているだろうし、これ塗ってれば?」

蓋を開けると赤い塗り薬。

「毒々しいですわね」
「すごい色だね」
「……これ、塗るのか?」
「効果はあると思うわ」

まず私が塗ってみる。
うん、伸びはなかなかいい。
顔の傷の部分に塗りこむと、さすが効能は確かだった。

アルテナの水だけでは消えなかった傷が、消えていく。
ついでに、手足の傷にも塗ってそちらの傷も消してしまう。

ソレを見て、イヴァンも薬を塗る。
僅かに負っていた傷が見る見る間に消えていく。

「凄いね。アルテナの水と同じぐらいの回復力か…」
「うん、思ったより回復したね」

アルテナの水は、基本服用だからなぁ。
塗り薬の常備薬とアルテナの水を併用したら、大体の傷は消えるだろう。

「フレイ、それ量産できる?」
「量にもよるけど、出来るわよ。材料は簡単に手に入るものばかりだし」

アザミと蒸留水だからねー。
アザミなんて、この日時計の草原に沢山生えているし。

「じゃあ、いくつか作ってよ」
「一つ40ね」
「随分と安いですわね」

正直激安だろう。

「家族価格だからね。実際に売ったら、2倍は取るわよ」

それでもかなり安いだろう。

「アルテナの水より安いよね」
「材料が材料だからね。ほら、此処に生えているアザミは、この薬の材料の一つだよ」

私の言葉にノルディスが反応した。
薬の調合に意欲を燃やしているノルディスならば、きっと反応するだろうと思っていたよ。

「確かに、色はこの花の色だよね…」
「レシピは教えないよ?
 後は自力で構築してよ」

そこまで親切ではない。

「うん。何度か試行錯誤をしてみるよ」
「頑張って。まぁ、アルテナの水があるから、需要があるかは怪しいけどね」
「アルテナの傷薬を使わないといけないかもしれない傷を、アルテナの水と併用して治すことが出来るなら、需要はありそうだ」

あぁ、そういう考え方をすればいいのか。
まぁ、ノルディスの調合速度に少し恐れを抱いたのも確かだし。
あまり、先に進まれると学年末の試験の時に一位が取れなくなる。
一度ぐらいは一位を取ってみたいし。
後になればなるほどエリーに取られる可能性が高いしなー。

「じゃあ、少し採取させて貰うね」

ノルディスはいそいそとアザミの採取を始める。

「私も少し摘ませていただきますわ。他にも使い道がありそうですもの」

アイゼルの舌だったら、アザミティー飲まれたらもしかしたら、材料に気付くかもしれないなぁ。

2人がアザミの採取に勤しんでいる間に、私とイヴァンはアードラの解体に入る。
これだけの大きさのアードラだ。かなり食べ応えがあるだろう。

「フレイさーん、もう大丈夫ですかー?」

草の中に隠れていたパメラが、静かになったのに気付いて寄ってきた。

「うん、この辺りでなら採取を続けて…って何持っているの?」

パメラの手には一度だけ見た事のある、黒い鉱石。

「あの、あっちの方にいくつか落ちていたんですが…。とりあえず、使えそうだと思って取ってきたんですよ」
「イヴァン、解体ちょっと一人でしてて!
 羽は全部この袋に入れて!
 アスラン、ちょっとついてきて。アイゼル、ノルディス、グラセン鉱石があった!」

グラセン鉱石の言葉に、アイゼルとノルディスは素早く反応して駆け寄ってくる。
私は三人と一緒に、パメラに案内してもらいグラセン鉱石のあった場所へと案内してもらう。

案内された場所には、確かにいくつかの黒い鉱石が転がっていた。
それを三人で拾い、平等に別ける。
皆、ほくほくした顔をしていた。
貴重なグラセン鉱石が、複数入手出来たのだ。
グラセン鉱石を取りに来る人が多いヴィラント山では、考えられない程の量だった。
三人で分けても、一人3つは入手できたのだ。

「これだけでも、今回の採取は大成功だよね」
「えぇ。まさか、グラセン鉱石が手に入るなんて…」
「イヴァンに武器、作ってあげたいなぁ…」

おのおの手に入れたグラセン鉱石を大事にしまい、元の場所に戻った。
イヴァンが一匹目の解体を終えていた。
内臓はその辺に放置し、羽は私の指示通り袋に詰めてくれていた。
そして、二匹目の解体に入る。

私は、渡された羽の入った袋の中から魔力の帯びた羽を探す。
うん、何枚か魔力のある羽がある。
魔力のある羽を別の袋に入れる。
普通の羽は、錬金術に使えなくても布団には使えるからね。

「フレイ、肉はどうする?」
「パメラにザールブルグにまで運んで貰うわ。それだったら、腐らないし。んで、飛翔亭に持ち込んで売りさばいてもらうわ」
「妖精って、便利だよなー。普通だったら、鮮度で買い叩かれるのになぁ」

確かに妖精のフェーリング陣は便利だと思う。

「まぁ、全部は売らないけどね。今日の夕食に少し食べてもいいし」

新鮮なアードラの肉だ。
さぞかし、美味しいだろう。

「アードラは年取った肉の方が美味しいんだよな。脂がのってて」

冒険で何度かアードラを食べたことのあるイヴァンの言葉だ。

それから間もなく、もう一匹のアードラの解体も終えた。
羽の一部を貰い、肉を今晩の分だけ貰いパメラに託す。
パメラの籠は、半分ぐらいのカノーネ岩と半分の肉で埋められた。

「こっちの塊を飛翔亭に持ち込んでね。価格は言い値でいいわ。あと、今晩どうする?」
「ポポロもいるから、ザールブルグにいます。ポポロも一人で寂しいと思うし」
「蜂蜜食べ過ぎていないか、確認しててね」
「はい!それじゃあ、フレイさんお先に失礼しますね」

パメラがフェーリング陣を起動し、その中に消えた。

「んじゃ、そろそろ帰ろうか」

アザミを摘んでいた二人に声をかける。
2人の籠はそろそろいっぱいになりつつあった。

「そうですわね。ノルディス、行きましょう」

アイゼルとノルディスがこちらに駆け寄ってきた。
そして、私達は日時計の草原を後にした。

沢山の素材と共に。
簡単アイテム説明
アードラの羽:アードラと言う鳥型の魔物の羽。錬金術には魔力を帯びた物を使う。
蒸留石:沢山気泡があいた岩。簡単なろ過が出来る。
瞳石:水晶が混じった岩。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。