36 錬金術士のお茶会
新しい本を手に飛翔亭に寄って、アルテナの水の依頼を受けてアカデミーに寄った。
手には広場の花売りが売っていた花が握られている。
「アイゼル」
今日の目的の人を見つけて、駆け寄った。
「あら、フレイ。少しはましな顔色ね」
「この間心配かけてごめんね。これ、お礼」
アイゼルに小さな花束を渡して、礼を言う。
「私は今から暇だけど、フレイはどう?」
「今日の予定は全て終わったから、時間はあるよ」
「なら、ノルディスも誘ってお茶にしない?」
「いいね。あ、ノルディスだ」
アイゼルがノルディスの方に行き、何か話して戻ってきた。
先程まで機嫌が良かったのに、いささか機嫌が悪くなってる。眉間の皺は癖になるよ、アイゼル。
「駄目だったの?」
「先約があるそうよ。私達だけでいきましょう」
不機嫌なアイゼルに連れられて、私は二回目のアイゼルの部屋訪問になった。
今回もアイゼルは紅茶とクッキーを振舞ってくれた。
なんでも、実家から送られてきたクッキーらしい。
さすが貴族が食べているお菓子だ。とても美味しいし、ナッツやドライフルーツが混ぜられて、日持ちも良いようにしてるし、何より私みたいな素人が作るものと違って、見栄えがいい。
そんなお茶会の会話の種は、最近のノルディスについてだ。
「最近落ちこぼれの工房生とばかり、一緒に居るんですのよ」
なんでも、エリーの採取を手伝っているらしいのだ。
それまで、授業が重なることが多かったのに、最近は重なることも少ないらしい。
まぁ、採取に行ったら素材は手に入るから無駄ではないのだが、私達と違い寮生はあまり遠出は出来ないんじゃないのかな。
必修単位がきつすぎる。
「それだったら、アイゼルもノルディスを誘って採取に出てみたら?」
「え?」
「ザールブルグ近隣の森だったら、そんなに危険は少ないし。あ、でもアイゼルたちの場合は護衛と言うか案内役の冒険者を雇ったほうがいいと思うよ。狼の縄張りとか良く知らないでしょう?」
「そうね。素材も入るし、いい考えかもしれませんわ」
「近くの森は素材的に余りたいしたものないし。新年の休みを利用したらヘーベル湖ぐらいまでは大丈夫だと思うけど」
「フレイは詳しそうね。あなたが案内してくれたらいいんだけど」
「今月はちょっと遠出する予定なんだ」
「どこに行くのかしら?」
「ヴィラント山」
アイゼルがカップを取り落としそうになった。
「いくらフランプファイルが倒されたと言っても、あそこは危険でしょう?」
「だから、今行くんだよ。騎士団が遠征に出ているから、危険度が少ない」
そう言えば毎年この時期でしたわね、とアイゼルが呟いた。
「だから、この時期なんだよね。あぁ、今なら近くの森もモンスターが出ることが少ないから、護衛なしでいけるね」
「早目にノルディス誘ってみるわ」
採取の話が終わると、次は私が持っている本について聞かれた。
「古本屋で購入したんだ。レシピの参考になればいいと思ってさ」
アイゼルはページを捲り、中身を確認する。
「アカデミーに売っている参考書とは随分違いますのね」
「ヒントだけで後は自分で調合の組み立てとかしないといけないけど、他の人には真似し辛いアイテムが出来ると思う」
工房生は私以外にもいる。
しかも、エリーを筆頭に魔力は私より多い人ばかりなので、アイテムの量産性と言う点では劣ってしまう。
ならばどうすればいいか。
他人に真似が出来ないアイテムを作ればいいのだ。
量産性で劣るのならば、多様性で攻める。
これが私の方針だ。
「そうね。私も探してみようかしら」
「この本なんて珍しいものじゃないから、多分図書館にあるんじゃないのかな」
アカデミーの教科書は借主が多いので、なかなか順番が回ってこないが、教科書ではない本は借りれる機会も多いだろう。
「この本はこの本で斬新ですし。ドルニエ校長直筆かしら?」
「さぁ?直筆だったら貴重品だよね」
こっちの本と言うかノートは、まだ私達が知る錬金術の教科書に近いものがあった。
「なんだったら、一昔前に教科書だった本を読んでみたらどうかな?どうせ借りる人は少ないと思うし」
「確かに一から調合法を確立しようと思ったら、時間がかかりますものね」
アイゼルと話していたら、あっという間に時間が過ぎてしまった。
毎回毎回アイゼルから色々ご馳走になっているので、今度は私の家で今回のお茶会を提案してみよう。
それにしても、会話の殆どが流行とかじゃなくて錬金術関連って言うのが、悲しい。
年頃の女の子二人なのだから、もうちょっと会話に花があってもいいはずなのにな。
今後の課題だね。
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