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26 考察
昨日のエリーの恐怖から、私は夜中に夢にうなされ寝不足になった。
夜が暗いせいか、ホラー的なものは本当に怖いのだ。
昔はこんなに怖がりじゃ無かったのになぁ…。



結局夜はあまり眠れなかったので、普段より早起きをして軽い朝食を取り、調合をすることにした。
井戸から水をくみ上げ、蒸留水を作ってみることにした。
何度も何度も水をろ過器にかけ、魔力を通していく。すると、やはり品質が低いものの蒸留水が出来上がった。

一日で作れる量だけ作ってしまうと、飛翔亭に仕事聞きに行く。
毎月1がつく日に、依頼を入れ替えているのを知っていたからだ。

「マスター、こんにちは。何か依頼ありますか?」

そう尋ねると、マスターは私が出来そうな依頼の束を渡してくれた。
それを捲りながら、ある事に気付いた。

「随分と魔法の草の仕事依頼が多いですね」

私が簡単に気付いたように、魔法の草の依頼が多かった。
この依頼の束の七割が魔法の草だったのだ。

「最近、近くの森で魔法の草を根こそぎ採っていく馬鹿がいるらしい。それで、魔法の草が取れなくなって、品薄になってるんだよ」
「……へー」
「まったく、どこの馬鹿だ。採取のイロハも判ってないとは」

おそらく、昨日のエリーが原因なんだろうな。
私がいた場所の魔法の草も根こそぎ採っていってたから。

「これって保存用に乾燥させた魔法の草でもいいんですか?」
「あぁ。生で欲しい場合はちゃんと書いてるから、それ以外は乾燥したものでもいいな」
「だったら、これだけ受けますね」

いい機会なので、魔法の草の大量依頼をある程度受けることにした。
ヘーベル湖でも魔法の草は取れるので、ついでに採ってしまえばいい。
それに、どの依頼も結構金額的に美味しいのだ。
困っている人には悪いが、これを機会にお金を稼がせてもらおう。

「期日が厳しいのもあるが、大丈夫なのか?」
「家にある魔法の草を全部放出しますから、期日については考えなくてもいいです。今から取りに帰ってきますね」

私は一旦家に戻り、地下から大量の魔法の草をカゴに入れ飛翔亭に届けた。
マスターはそれを受け取ると、手早く依頼別に分け、依頼済みボックスの中に入れてしまう。

「ほら、今回の報酬。額が額だから落とすなよ」

総額銀貨1780枚。魔法の草だけで、暴利もいい所だ。
昨日の恐怖と今日の寝不足を差し引いても、十分に得したといえるだろう。
帰りにアカデミーに寄って、欲しかった本を買ってしまおう。

思わぬ臨時収入に、使い道の夢が広がるのだった。




アカデミーで欲しかった参考書を購入した。
念願の火薬の本だ。これで、爆弾に手を出せる。

機嫌よく本を両手で抱き寄せ、家に帰って早速読もうとアカデミーを後にしようと思っていたら、少し離れた場所でノルディスが誰かと話していた。
声をかけようかと思い、近付こうとしたとき気付いた。
ノルディスが誰と話しているか。

昨日の恐怖と今日の悪夢を思い出してしまい、思わず私の足が止まった。
私の足が止まっている間に、話は終わりエリーはノルディスに手を振って別れた。
私は、ノルディスに近付き

「ノルディス、今の人って…」
「あぁ、エリーのこと?エリーは君と同じアトリエ生なんだ」
「あ、そーなんだ。なんか、真剣そうに話してたけど、何かあったの?」
「……エリー、中和剤の調合が上手くいってないみたいなんだ」
「中和剤の?」

私の言葉にノルディスは頷いた。

「でも、中和剤って一番最初に習うものだから、そんなに難しいわけじゃないでしょ?」
「エリーも一応作れるみたいだけど、どうも品質が低いみたいで、そのせいで仕事も上手くいってないみたいなんだ」
「品質って…」

教科書通りのレシピで、普通にAクラスの中和剤が作れる筈だ。
レシピをいじくるなんてブレンド調合が出来る人以外行えないはずで、学校が始まったばかりのエリーには当然無理だ。

ならば、調合時に何かが間違っているのだ。

「僕もそう思ったんだ。でも、聞いた分には手順に間違いは無いんだ」

手順に間違いは無いのか。
まぁ、参考書に判りやすく書いてくれているからね。

「手順じゃないのか…」

だったらなんだろう?
自分たちの最初の調合を思い出してみる。
あの時、私たちの手順には何も変わりが無かった。けれど、出来上がりは三人とも違った。
それは、なぜか。

「魔力の込め方じゃないの?」
「込め方?」
「うん。私の想像だけど、エリーはおそらく魔力を込めすぎているのだと思う」

私が出した結論がコレだった。
エリーは常人の倍、私の6倍の魔力の保持者だ。
魔力は多かったら自分で認知するのも難しい。ならば、扱うのはもっと難しいのかもしれない。
決まった魔力を決まった分だけ調合したものに注ぐ。それが出来ていないから、エリーの中和剤の品質・効力が低い。

「だったら、僕たちに出来ることは」
「そのエリーって子に先生に一度きちんと師事して、魔力の注ぐ量の調整を教えてもらった方がいいと思う」

だから、イングリド先生は中和剤の講座を開いたのだろう。
優れた魔術師でもあるイングリド先生は、エリーがこのような状態に陥ることにあらかじめ予想が付いていたのかもしれない。
もしかしたら、過去にイングリド先生自体が体験したことなのかも。

「じゃあ、明日にでもエリーに教えてくるよ。ありがとう、フレイ」
「うん。問題が解決する事を祈ってるわ」

近くの森の魔法の草の為にも。


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