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23 疑問
飛翔亭に出来上がった研磨剤を納品に行った帰り、アカデミーによることにした。
買い物は今はまだ参考書や器材を買えるだけのお金が足りないので、することはない。
少し先生に聞きたいことがあったのだ。

先生の部屋に行くと、今の時間は講義が無いのか在室だった。

「先生、質問があるのですが」
「なんですか、フレイさん」
「蒸留水とかって、ヘーベル湖の水じゃないと作れないのですか?」

そう、それが疑問だった。
川の水は生活汚染が入っている可能性があるので、飲用には適していないかもしれない。
その場合でも、人の生活汚水が流れ込みにくい上流の水ならば十分に飲用が可能で、ならば同じ飲用が可能な井戸水でも蒸留水は作ることが出来るのではないか?

実際別のアトリエシリーズでは、井戸水から中和剤の作成が可能だった。

「なぜ、そのような事を?」
「ヘーベル湖の水に何か特別な力があるのならばともかく、そうでないのなら普通の井戸水でも十分に中和剤などが作れるのではないのですか?」

私の言葉に先生は溜息を付いた。

「結果だけをいいましょう。井戸水からでも蒸留水や中和剤の製作は可能です」
「あ、そうなんですか」

どうやら、作れるようだ。
ならば、どうしてレシピに載っていないのだろうか?

「レシピに載せない理由は簡単です。ちょっと待ってください」

先生は戸棚から二本の中和剤(青)を取り出した。

「これは片方はレシピ通りヘーベル湖から作り、もう片方は井戸水から作ったものです。手にとって調べてみてください」

言われた通り、少し垂らして中にある液体の品質と効力を確かめる。

「井戸水の方は品質と効力が低いですね」

ランク的に言うとヘーベル湖の水の方はランクA、井戸水の方はランクDだった。

「その通りです。なぜ、井戸水からの蒸留水がレシピに載らないか。答えは簡単です。品質・効力が低いからです。少し、長くなりますから座ってください。お茶でも入れましょう」

先生に勧められ、私は椅子に座りなんとミスティカティをいただいた。
先生になれるほどのの錬金術士ならば、そんなに難しくないものかもしれないが、まさかこんな高級品が出てくるとは。

「私も昔、周りにある水から中和剤が作れないかと思い色々と試してみました。けれど、どれもヘーベル湖の水以上のモノは作ることが出来ませんでした」

なんでも、ブレンド調合が一般の錬金術士に広まったのは最近の話らしい。
それまでの間、錬金術とは決まったレシピ通り作るのが当たり前だと思われていた。
それは、まだ若い学問だった錬金術が広がっていく為にあえて情報の規制をしたのだと言う。

そうだろうね。リリーの時代にはすでにブレンド調合は確立されていた。
その弟子のイングリド達が使えない筈は無い。
でも、マリーの時代には教えていなかった。マリーの成績が悪いせいで、覚えることが出来なかったのか?
答えは「否」である。

そもそも、ブレンド調合自体が一般ではなかったのだ。
だから、マリーの時にはブレンド調合が無かった。

けれど、錬金術が広がり始めたので、ブレンド調合を解禁したのだと言うのが正解だろう。
ブレンド調合が無いから、品質・効力が上げることが出来なかった。
だから、低品質のモノしか作れなかった。

でも、思うのだ。

「中和剤や蒸留水ってそんなに高品質なのが必要なのですか?」
「え?」
「売ったりするのならば、確かに品質は重要でしょう。けれど、調合に使うのならばそんなに高品質でなくても良いのでは?」

それが私の答えだ。

「そういう考え方もあるのですね」
「まぁ、所詮は実験ですからね。きちんと効果があるのならば問題ないのでは?」

先生は何事か考え始めた。

「あなたは井戸水から中和剤を作ってみたいのですか?」
「出来るなら作りたいですよ。挑戦できるのならば、したくなりますし」
「本来ならば、これはオリジナル調合と言って、もっと上学年に教えられる事です。けれど、あなたには条件付で許可を出しましょう」

まさかのオリジナル調合が解禁だった。

「爆弾類。すなわち、赤の調合は危険度が高いので認められません。それ以外、比較的危険度の低い緑と白と青の薬品以外のオリジナル調合を許可しましょう。ただし、細心の注意を払うこと。そして、出来たものはたまに私にも見せてください」
「はい。ありがとうございます先生!」

破格と言える条件だった。
多少制限が付いたとは言え、オリジナル調合が許可されたのだ。
実はバレなかったらいいやと、オリジナル調合を試そうと思ったなんて欠片も思ってはいませんでしたよ。

「まぁ、あなたの知識なら最悪の事態は起こらないと思いますがね」

先生の呟きは、私には聞こえなかった。
オリジナルアイテム説明

中和剤(低):ヘーベル湖の水以外から作られた中和剤。普通のものより品質・効果は低くなっている。


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