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22 次回の採取
研磨剤はフェストを細かく砕いて作ることが出来る、モノを削って磨く粉のことだ。
細かく砕けば砕くほど綺麗に研磨ができるのだが、とにかくフェストを小さくするのに時間がかかる。

おろしたての乳鉢に木の棒で叩いて荒く割ったフェストを少量入れて、根気良くすりつぶしていく。
特に技術などは必要ないし、魔力も最後に少量注ぐだけだ。
けれど、この細かく均等に砕くというのはとにかく力を使う。

おそらく全てが終わった日は、筋肉痛は確実だろう。
錬金術もなかなか体力勝負だ。

フェストを砕いては乳鉢で粉々にし、余計なゴミを筆で取り除く。
そんな事をしていたら、日が暮れて明かりをつけないと調合が出来なくなったので、調合をいったんやめた。
手元が暗いとゴミが見え辛い。
飛翔亭に自分で作ることの出来る最善な品以外は渡したくない。
それがきっと、仕事を請けるという責任だと思う。


一回体を伸ばして食事を作ることにした。竈に火を入れて、ロウソクに火を点す。
薄暗い明かりだが、これで十分だ。手早く料理を作り、食べてしまう。

「フレイ姉ー、はらへったー」

アトリエのドアを開けて、イヴァンとアスランが乱入してきたので、沢山作っておいた余りを出してやる。

「イヴァン、10日以降仕事が入ってない日ある?仕事を頼みたいんだけど」
「13日までは仕事が入ってる。それ以降は大丈夫」
「じゃあ、14日の日から一週間から十日ばかりいいかな?」
「判った。予定入れておく」

私の方を見向きもせずに料理に集中しているイヴァン。
いつも思うのだが、イヴァンの食べ方は豪快だ。次から次で休む間もなく口の中に食べ物が消えていっている。
ちゃんと味わっているのかと思うが、これで中々味には煩いのだ。

「14日からか。俺も一緒に行こうか?」
「休みがあるの?」
「来月は巡回期間だから、休みがなさそうなんだよ。暇なやつから休みをまとめて取る様にしてるんだ」
「だったら付いてきて欲しいな。ヘーベル湖から足を伸ばしてストルデル川まで出たいんだけど」
「大きな街道はないけど、道自体はあるよ。それを通れば問題ないと思う」

イヴァンも通ったことはないが、そういう道があることは知っていたらしい。

「今度詳しく聞いておく。あとアスランは馬は連れてくるのか?」

そう、忘れていたが騎士には馬が必須なのだ。
アスランも騎士見習いではあるが、一応数人に一匹の割合で馬は支給され、面倒は自分で見ているらしい。

「必要なのか?」
「馬があれば移動スピードが上がる。フレイ姉も頑張っているけど、やっぱり遅いし」

そりゃあ、冒険者や騎士として体を鍛えている人間と、一般人を比べないで欲しいものなのだが。

「だったら連れて行くよ。帰りは荷物を積んで帰ってもいい」

それだったら余計に採取が出来そうだ。布袋を多めに持っていくことにしよう。

「皆で遠出なら携帯食料だけじゃなくて、他にも持っていくか。日持ちがしない食べ物は駄目だけど、干した果物とか木の実とか。あぁ、うにを持って行って焼きうにでもしようか」

ザールブルグで何がびっくりしたかと言うと、栗の事をうにと言うのだ。地方では普通に栗と言うらしいので、ザールブルグ近郊のみの方言なんだろうな。

「では、14日の朝ここに集合。各自忘れ物はないように。おやつは銀貨30枚まで。ランドーはおやつに含まない」
「おう」
「了解」

なんか、採取と言うより家族旅行という気がしてきた。





14日までに全ての仕事を終えようと、私は調合に専念した。
研磨剤を三回分作り、あわや筋肉痛で動けなくなりかけるとなんて愉快な事をしつつ、依頼で放出してしまった中和剤を調合する。
それとは別に中和剤(青)六回分のヘーベル湖の水を使って、蒸留水を作ることにした。
これで、今家にあるヘーベル湖の水は全て使い果たしてしまうことになる。

ゆっくりとだけど丁寧に何度もろ過をしながら、魔力を注ぎ込んでいく。
魔力の量は中和剤と変わらない。ゆっくりと魔力を水の中に溶かし込んでいくと、十分きれいだった水の透明度がさらに増したように思える。

一息ついて、トーン茶にミスティカを少量混ぜたものを入れる。
魔力不足を補う為に、魔力の回復があるミスティカは常用的に体の中に入れるようにしている。
食事に混ぜたり、お茶に混ぜたりして積極的にミスティカを取ることで、なんとか魔力切れは起こしてはいない。

実際何度も調合しているせいか、魔力の底が少しだけ上がったように思える。
多分、錬金術レベルが上がりMPが上昇したのだろう。

ゲームではないから、詳しい数値は判らないのだが一回に調合できる量が増えている。
これなら、少しレベルの高い調合をしても大丈夫そうだ。

実は試してみたい調合があるのだ。
一番調合したいのは、身を守る武器になる爆弾なのだが、今の私のレベルでは無理なので傷を負ってもすぐに回復が出来る回復薬〈アルテナの水〉を調合してみたい。

アルテナの水は調合レベルは中和剤より難しいが、調合レベルが上がった今ならば何とかなるだろう。

そう計算をして、この間買っておいたほうれんそうを取り出す。
ある程度小さくほうれん草を刻み、中和剤を注いでいく。中和剤とほうれんそうを良く混ぜたら、少量ずつ蒸留水を足していくのだ。
この加減が難しい。一気に水を足すと効力が低いアルテナの水にしかならない。
少しずつ足して混ぜていくことで、ほうれんそうの回復力が蒸留水と混ざり、飛躍的な上昇をとげるのだ。

それはもう細心の注意を払って、注ぎながら混ぜていたが、本来ならば薄いグリーンになるはずの薬が、なぜか黒くなった。

「あ、これが失敗か」

ゲーム内でよく見た産業廃棄物が出来上がった。
一つ銀貨10枚もしたほうれんそうを駄目にしてしまったと、がっくりとしながら後片付けをする。

できれば、もう一度ぐらい実験をしてみたいところだが、蒸留水の在庫がないので不可能だ。
どうやら、今回の旅にはアルテナの水を持っていくのは諦めたほうがよさそうだ。

「また次回がんばろ」

なんかどっと疲れたので、今日はもう寝てしまうことにした。
決して不貞寝なんかじゃない、うん。
簡単アイテム説明

フェスト:白くて固い石。川に良く落ちている。
研磨剤:品物をピカピカに磨き上げることが出来る。金属には使えないらしい。
アルテナの水:一番最初に作ることが出来る傷薬。簡単な傷ならコレで治る。
うに:栗


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