225 ミケーネ島7
海から上がるとドナーンはすでに片付いていた。
「あ、フレイ。大丈夫だった?」
ドナーンの解体をしながら、エリーが話しかけてきた。
血を洗い流す為か、海の近くで解体している。
「ただいま~。もう、びしょびょだよ。最悪~」
ズルズルとローレライを引き摺ってあがってくると、ハレッシュの顔が引きつった。
「フレイ姉、それ戦利品?」
「そそ。エリー、喜べ。品質の高いローレライの鱗が手に入るわよ」
「ほんと? やったね!」
手を打って喜ぶエリー。
私は、ナイフを取り出して鱗を一つ一つ取っていく。
並に浚われないように、ピピンに回収を頼む。
鱗はあっという間に取り終えた。その中から品質順に袋に分けていれる。
本当はもう少しエアドロップがあれば、ついでに海中の探索もしてみたかったんだけどね。
「鱗だけでいいのか?」
「いや、さすがに人型のモンスターの肉は食えないわ。けど、ローレライの肉って食べたら不老不死になれるって噂があるのよね。試してみる気ある人いる?」
全員首を横に振る。
むむむ。ならいいか。
私は海にローレライを投げ入れる。
後は、海が解決してくれる。海は全てを飲み込む一種の墓場だからだ。
「さて、と。エリーの方はどうだった?
タン取れた? 皮は?」
「タンは取れたけど、皮はむりぃぃぃぃ。やっぱり、フレイのあのアイテムがないと難しいみたい…」
やっぱり、魔法のアイテムを使わないと無理かぁ…。
「しゃーないか。タンはエリーが持って帰りなよ。これ、賢者の石作成に使うから」
「ううう…果たして作れるようになるのだろうか?」
それを言ったらおしまいだよ。
「挑戦する前からやる気なくしてどーすんのよ。使わなくても、売ればいいんだから…って、ルーウェンさん。よくよく考えたら、ドナーンの肉が硬いのって焼くこと前提ですか?」
「当たり前だろう。旅先でのんびり煮込み料理を作る奴はいないぞ」
あー、それだったら食べる前提条件が変わるじゃないか。
「ふむ……。エリー、肉ちょっと見せてよ」
「え? 固いんでしょ?」
「うん、ちょっと挑戦してみる。人の評判で判断しないで、自分で調理して決めてみるよ」
「ねぇ、実はフレイ料理人とか言わないわね?
どー見ても言動が料理人…」
そうかな?
私としては当たり前の事だと思っていたんだけど。
私はエリーのドナーンの舌と、切り分けた肉を塩に漬け込んだ。
これが竜の肉や竜の舌だったら、塩漬けしなくても腐らないんだけどね。
さすがに亜竜レベルでは、腐ってしまうようだ。
もう少し竜に近かったら別なのかもしれないが。
「それにしても、よくローレライに引きずり込まれて無事だったな」
ハレッシュがルーウェンの肩を叩く。
「俺も正直もう駄目かと思ったよ。意識が遠のく中、ローレライの歌だけが聞こえてさ。正直、意識を取り戻した瞬間、フレイの顔が間近にあってびっくりした」
「よく、息が続いたよな」
「それは、フレイ姉の調合品だよ。俺もこの間体験したから知ってる。それ、使ったんだろ?」
イヴァンの言葉に私は頷いた。
「足りて良かったよ。ルーウェンさんが使ったのが最後だった。決着つかなかったら、ケツまくって逃げようって思ってました」
私が笑うと、皆笑い出す。
その中、何かを思い出したかのように弾ける様にルーウェンが私を凝視した。
どうやら、私が何をしたか分かったようである。
手で唇を押さえ、頬が少し赤い。
私は唇に1本だけ指を立てて、唇の動きだけで「秘密」と伝える。
少し狼狽したルーウェンだが、しっかりと頷いてくれた。
どうせ海の中で誰も見てないのだ。
なかった事にしてしまえ。
でないと、絶対煩いから。
私はチラリとイヴァンの顔を盗み見て濡れている服の裾を絞ったのだった。
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