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16 アカデミー入学
ヘーベル湖から帰って三日後、待ちに待った錬金服が届いた。
今年の流行は丈の短いワンピースの錬金服だと聞いていたので、そのデザインにして貰い下に体にピッタリとしたズボンを穿く。ズボンの色は藍色だ。

仕立て屋曰く、本来ならば空色ではなくピンクっぽい色がいいらしいのだが、ピンクに染める染料は今は作られておらず、とても貴重なものになっているらしい。
今では貴族や一部の裕福な平民の服にしか使われない、とても高価な染料らしい。
そんな染料、一般市民の私に使えるわけが無い。
今回のこの服の染め具合はとても綺麗なので、コレで十分だと思うんだけどね。

初めての錬金服を着て喜んでいたら、待ちに待った錬金釜等の基本の錬金術道具一式が届けられ、後は入学式を待つだけとなった。






そして、九月一日の入学式の当日。
私は広い講堂のような場所で、他の新入生と一緒にドルニエ校長の挨拶を聞いていた。

「………君たちには実りのある学校生活をして欲しい」

どこの世界も偉い人の話と言うのは長話と相場が決まってるものだ。
ドルニエ校長の話も、多分に洩れず長かった。何人か舟をこぐ生徒も出てきている。

「次はイングリド先生からの挨拶です。イングリド先生、お願いします」
「こんにちわ、新入生の皆さん。今からアカデミー生活における授業の取り方をお話します。寮生や自宅から通っている生徒と、工房を持つ生徒は授業の取り方が異なりますので、良く聞いて間違えの無いように」

イングリド先生の説明を聞いていたら、寮生も工房を経営する生徒も単位制で進めていくらしい。特に寮生は必修単位があるので、その単位は確実に取っておかなければならない。真面目に出ていれば卒業は比較的簡単らしいので、真面目に出ることをお勧めするらしい。
じゃあ、工房生はと言うと必修が無い代わりに、一年に一度、自分が作った道具を一つ提出させられるらしい。それが規定のレベルに達していなければ、即退学と言う厳しいものだった。

他にも寮生も工房生も年に一度試験があり、それで順位が決まり、その順位しだいではアカデミーの上位クラスであるマイスタークラスに進学が可能だそうだ。
毎年、マイスタークラスに確実に進めるわけではなく、選ばれない年もある。真実エリートが進める上位クラスなのだ。

「それでは、奨学金や支援金を申し込んだ方はケルヒャー先生から説明を受ける為に、別の教室に移動します。それ以外の方は解散してよろしい。授業の日程だけは確認しておくように」

ドルニエ校長と比べて、話の長さの割には濃い内容でした。
私は、ケルヒャー先生の姿を探して見つけ、ケルヒャー先生の所へと向かった。

ケルヒャー先生は、一時の間動かずに居てくれ、大体揃ったと思った頃に移動を開始した。
移動先は講堂から大して離れていない30人位が入る教室だった。

「少し長くなるので座ってください」

ケルヒャー先生の後ろから、沢山の袋が詰められた箱を持った人が入ってきた。

「さて、合格発表の後奨学金を申し込まれた方は、4年間の授業料の納付が猶予されます。4年後から払い始めて、4年以内に完済された方は利子など特に必要ありません。それ以上かかる場合は、金額に応じて利子が取られるようになります」

錬金術アカデミーの授業料は年銀貨1000枚である。アカデミーは4年間あるので授業料の合計は4千枚。
一般市民の月給が銀貨200枚程のザールブルグでは、とても高額な授業料だ。
払えない人も多いので、アカデミーには奨学金制度があり、在学中は払わずに済み、卒業した後自分の収入から払っていくことになる。
銀貨4000枚なんて高額だと思うだろうが、有能な錬金術士は年に数千枚の金を稼ぐことが出来るので、生活を圧迫するわけでもない。

それに、だ。在学中に色々と依頼を受けてお金を溜め、卒業と同時に完済してしまう人も多いのだ。

確かに一般的に見れば高い授業料も、得られる知識を使えば十分に完済可能なのだ。

「成績優秀者でマイスタークラスに進まれた方は、授業料を免除されますので、返済ではなくそちらを目指されるのも良いでしょう」

いや、マイスタークラスに入るより返済をしてしまう方が簡単だと思う。

「奨学金の説明は以上です。援助金を受け取る方以外は帰ってよろしい」

ゾロゾロと教室から出て行くのは、工房生以外だろう。
工房生は、これから支援金の説明になる。

支援金とは、工房を開くにあたって用意されているお金だ。
アカデミーと違い、アトリエでは調合道具が基本的なものしか用意されていない。
参考書も図書館の参考書の優先閲覧権は、寮生にあり工房生はほとんど閲覧する機会は無い。

ならば、どうするかと言うと、自費で購入するのだ。
自費で購入して、調合できる品を増やしていく。

寮生は自室で調合する品の材料はある程度支給されるが、工房生にはそれがない。

大幅な自由と引き換えに、設備の拡張やレシピの充実などは自力でしなければならない。

寮生は、基本的な食事は食堂で無料で食べれるが、工房生は全部自腹だ。

だから、支援金が渡されるのだ。

元手が無い状態では、最低限の参考書も揃える事は出来ない。
最初にある程度の資金を与え、円滑に勉学をするようにしてくれているのだ。
その額最高で銀貨3000枚。

その金額は卒業後に返済となる。
奨学金とは違い、マイスタークラスに進んだとしても免除されることは無い。
文字通り借金だ。

「名前と希望の額を言い、引き換えに受け取るように」

皆、我先にと名前と金額を言い、銀貨を受け取っていく。
その中には、エリーの姿もあった。

私は、一段落した頃を見計らって、

「フレイ・ローゼン。3000枚を希望します」

と、ケルヒャー先生に告げた。
ケルヒャー先生が、ずっしりとした銀貨を渡してくれたので、両手で受け取る。

「今日は売店は開いていますか?」
「あぁ、この時間から開いている筈だ」

ケルヒャー先生にお礼を言うと、私は一路売店へと向かった。
こんな大金を持っているのは怖いので、さっさと使ってしまうに限る。




売店に向かうと、工房生が参考書に群れていた。
最初から全資金を参考書につぎ込む馬鹿もいた。参考書だけ買っても、調合機材がないと調合できないことに気付いていないのだろう。

参考書のあまりの人の多さに、機材売り場へと足を運ぶ。
買うものはもう決めているので、後は買うだけだ。

「カゴと乳鉢とろ過器下さい」

売店を手伝っていた生徒が、びっくりしたように私を見た。

「よく最初の方で使われる道具が判ったわね?身内に錬金術士が居たの?」
「いえ。予算範囲内の金額で決めて、よく使いそうだと思ったから決めました」
「そうね。カゴは一回に持って帰れる量が増えるから、必須よね」

生徒の言葉に、参考書を買っていた生徒が慌ててこちらを見た。
皆、我先にカゴを取ろうと殺到してくる。

「はい、商品」

手伝いの生徒が、手早く品を詰めて渡してくれた。私は受け取ると、人が減った参考書売り場へと足を運ぶ。

「初等錬金術講座と中等錬金術講座を下さい」
「はい、どうぞ」

ゲーム内で売店に居たルイーゼが、私に参考書を渡してくれた。
銀貨を渡し、おつりを受け取るとふとおつりの中に見慣れないお金が混じっている。

これは確か…。

「あの、すいません。おつり間違えてます」

金色の金貨を摘み、ルイーゼさんに手渡す。

「あら、人が多いから間違えたわ。ありがとう!」
「いえ。では」

正直シグザール金貨を売ると銀貨1000枚の高額になるから、一瞬ネコババしたくなったのき秘密だ。
けど、ルイーゼと仲良くなることで入手可能な参考書もあるのだ。
この程度の金額は必要経費だと思うことにする。

本当、序盤の1000枚は大金なんだけどねぇ。
高額な器材が一つ買えるから。

遠心分離機早めに欲しいなぁ。



結局、今日私が買った品物の合計金額は2940枚。貰った支援金の大半を使い果たしたのだった。
早目に飛翔亭で依頼を受けないと、飢え死にすることになりそう。


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