185 カスターニェ行き、前日
鍛冶屋から帰った後、私はカスターニェ行きの準備を完成させた。
いつもの旅道具を居間に置いておく。追加で持って行きたいものがあるだろうから、バッグにはまだまだ余裕があるようにしておいた。
「食材は日持ちがしそうなのを入れたし、今回は干したフルーツも入れた。こんなものかな」
ちょうど5の鐘が鳴ったので、洗濯物を取り込んで畳むとしよう。
そして、風呂だ風呂。
話によると、カスターニェではザールブルグのように民営の風呂はないらしい。
むしろ、風呂と言うより水浴びが多いらしい。
まぁ、気温が高い町だから仕方ないか。
イヴァンに聞いた所、『船首像』と言う宿屋では小さいながらも風呂があるらしい。
別料金を取るので、ほとんどの人は水浴びをしに川に行くらしいが、需要はあるとのことで安心した。
水浴びでもいいけれど、やはり数日に一回は風呂に入ってさっぱりしたいし。
一応風呂に入れる事が分かって安心したが、それでも手足を伸ばしてのんびりと風呂に入れるのはザールブルグならではだ。
つーか、私が人の少ない時間帯を見計らって風呂に入っているんだけどね。
いそいそと風呂の準備をしてから、私は風呂に入りに行った。
次の日、私は作った<甘い宝石>のうち一つを使い、シロップを作っていた。
薬の材料にはちょっと悩んだけど、<ほうれんそう>を使用することにした。
一応、HPが回復するから薬の材料じゃない?とアタリをつけたのだ。
そして、その予想は当たった。
一瞬緑色のシロップが出来たらどうしようかと悩んだけど甘い宝石の方が色が強かったのか、綺麗な琥珀色のシロップになった。
「でーきた」
ホクホクとシロップを密封容器に入れて、栓をする。
そして、旅の道具の中へと仕込む。薬は沢山あっても困る事はない。
まだ、昼を回ったところなので、昼食を取り終えた後もう一種類薬を作ってしまうことにする。
最近作ろうと思い立った、新種の傷薬だ。
一応、どんなものを作るかは目星はつけた。
材料もアレで大丈夫だろう。
私は昼食を取りに居間へと向かった。
無事、昼食を取り終わり、私はアトリエへと戻ってきた。
ついでに、材料を地下倉庫から持って上がる。
「植物類にマンドラゴラの根に水、と」
植物類は念の為に複数持ってきてみた。
一応、何種類か同時に作ってみて使用感を調べて見たいのだ。
上手くいけば、今回は新しい傷薬だけ持っていけばいいかもしれない。
まぁ、内服の傷薬はアルテナの水だけなので、それは何本か持って行く予定ではあるが。
予定としては、ミスティカとマジックグラスを試してみる予定だ。
出来れば、他のも試して見たいのだが時間が足りない。
マジックグラスだと確実に作れるのは分かっているので、問題はミスティカだな。
失敗しない事を祈ろう。
私は、マジックグラスを乳鉢に入れて丹念にすり潰し、細かく刻んで蒸留水で数時間煮込んだモノを少量ずつ加えて、伸ばしていった。
徐々に、だが確実に伸びていくマジックグラスを見てほくそ笑む私。
今回作っている<ヒーリングサルブ>と言う傷薬は、錬金術を習うものにとっては初歩中の初歩の傷薬だ。
効果的には、常備薬やアルテナの水より少し劣るレベルだ。
けど、これのいいところは大量に作る事が出来るので、アーランドでは比較的安価で入手出来ていたようだ。
まぁ、マンドラコラの根の入手が、アーランドと比べてちょっと難しくなるから、ザールブルグでは常備薬と比べて高目になってしまうんだけどね。
個人的には、マンドラゴラ系のように役に立つモンスターは増えて欲しいものだと思っている。
うわー、よくよく考えると人間ってホント業が深いなぁ。
無事出来上がったヒーリングサルブを、木で作られた容器に詰めて鞄に入れる。
ミスティカで作ってみるのは明日だ。
さ、後片付けするか。
次の日、ミスティカを使ったヒーリングサルブは無事完成した。
ほのかにミスティカの香りがする傷薬になりました。
うーん、いい匂いだ。容器からでも分かるように、目印を入れておく。
そして、ザールブルグでの調合は今日で終了。
後はゆっくりと体の疲れを癒して、明日に備えるだけ。
いよいよ、カスターニェ行きだ。
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