165 売約済み
レオンを送り出して、私はお茶の後片付けをしていた。
イヴァンも手伝ってくれる。
「せっかくタダでいいって言っていたのに、結局お金を払ったようなものだったねー」
私がレオンに払ったお金は、青銅の盾を作るにしては金額は多かった。
普通に渡しても受け取らないので、これから一時の間は依頼の金額に+αを払って調整しようと思っているのだ。
どうせ、レオンのことだから渡された袋をそのままラインハルトさんに渡すと思うんだよね。
カリンも似たような事をしていたし。
あの夫婦って、財布の紐を握っているのは旦那さんの方なんだ。
「あんたさ、技術職の人間がタダだからと言って技術料を払わないわけにはいかないでしょうよ」
むしろ、技術職だからそんな事は出来ない。
私も技術職だからこそ分かるんだよね。その技術の貴重さと習得するだけの困難さが。
錬金術はまだ低レベルだからあまり感じないが、レベルが高くなるに従って技術的にも難しくなると思うし。
「ふーん…」
イヴァンは理解したのかしていないのかは分からないが、頷いた。
それに、一番大きいのはこれからもカリンの鍛冶屋とはいい付き合いがしたいのだ。
小金を惜しんで、関係が悪化するほうが困る。
「イヴァン、その剣に不満はある?」
「ないよ?
普通に売っている長剣より丈夫そうだし、切れ味も良さそう。しかも、きちんと腕の長さに合わせてくれているから、振り回しやすそうだし」
あれだけの短い間に、それだけ分かっていたら十分だよ。
さすがは武器を日常的に扱う冒険者、と言った所か。
「でも、フレイ姉いいの?
これ、結構高かったでしょ」
「普通の長剣を渡しても、すぐに壊されたほうが高くつくわよ。とにかく丈夫がコンセプトらしいから、あんたにはピッタリよ。4月のカスターニェ行きに間に合って良かったわ」
「うん。ありがとうフレイ姉!」
それから、私はイヴァンを引き連れて飛翔亭に商品の納品と、4月から少し遠出をするので2ヶ月ほど帰ってこない旨を伝えた。
一応予定では、5月末に帰ってくるので、4月は1日に納品して、次の納品は5月の終わりになる事を伝える。
少しフレアが困ったような顔をしたので、理由を聞くと、
「フレイちゃんとやエリーちゃんの指名の依頼が来てるのよ」
「いや、指名されても受けれるかどうかは判らないじゃないですか。うわっ、物の見事に食べ物ばっか」
見せてもらうと、創立祭で出したタルトの依頼が多かった。
「ちょっと準備とかあるから、依頼は今月は簡単な依頼しか受けれないんですよ。自分の勉強もありますし」
「フレイちゃんって、あまり意識していなかったけど、まだ学生さんだったのよね」
「なんだと思っているんです」
「あれだけ色々と調合できるから、一人前の錬金術士だと思っている人が多いのよ」
創立祭で展示品を出したのだから、学生だって気付きそうなものなのになー。
多分、色々と情報が錯綜しているんだろ。
「それと、フレイちゃんが創立祭で出した飲み物だけど、ウチで扱わせて貰えないかしら?」
こちらが本命の依頼だろう。
おそらく、更なる顧客アップを求めて、フレアがそう言ってくるのを私はある程度予想していた。
「すいません。あの二品は、もう売る先が決まっているんですよ。さすがに、似たような商売をしている所に同時に卸す訳にはいきませんし」
それこそ、論理的な問題だろう。
「えっ、もう決まっちゃってるの?」
「えぇ、すいません」
正直、飛翔亭の一人勝ちと言うのも面白くないし。
私のせいで友人の店が潰れるのもいやだ。
「それじゃあ、タルトの方は?」
「アレはですねー、日持ちがどれもしないんですよ。だから、定期的に店に卸そうと思ったら、専属にならないと無理ですー」
タルトばかり調合していられるか。
「そう。それは、残念ね」
フレアがガックリと肩を落とした。
それに、デュオにあまり酒場に関係の無いものばかり売るなって釘を刺されたしね。
あぁ、そろそろお酒の発酵具合を確かめておこう。
正式な依頼ではないが、カスターニェに行くまでに渡せるのならば渡しておいた方が良いだろう。
私は依頼の品を渡すと、食料品を買い込んでアトリエに帰還した。
今晩の夕食は、魚にしようと思ったんだよね。干物だけど。
旅の時の干し肉の種類をちょっと増やしたかったし、ちょうど良かったんだよね。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。