ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
11 装備選び
飛翔亭での食事の次の日、私はイヴァンに武器屋へと連れてこられた。

武器なんてただ選ぶだけかと思ったけど、ちゃんと個人に合わせて調節をしなければいけないものらしい。

アトリエの世界に来てから驚くことに、市販の品物が少ないと言う事。

服なんて基本オーダーメイドである。私達みたいな一般市民は基本古着だ。

特に子供の服なんて1年着たら着れなくなるから、古着は結構出回っている。

錬金服も最初は古着を探すつもりだったが、ジークおじさんが張り切っているので新品になるだろう。

実はオーダーメイドなんて始めてだったりする。やはり、市販品と比べて着心地がいいのかなぁ。


武器屋の内部は、壁に色々な剣や槍などがかけられてあり、それはもう物々しかった。

「おう、坊主。この間の剣がもう駄目になったのか?」
「さすがの俺も一ヶ月で剣を壊さないってば。姉ちゃん、この人が、この店の店主の……えーと、ハゲハルトさん!」
「誰がハゲハルトだ」

武器屋の親父がゴツリと拳骨を落とすが、そんなに怒ってないという事は、きっといつもこんな感じなのだろう。

「弟がすいません」
「いや、いつものことだからいいって事よ。ほんっとーにいつもの事だから」
「本当にすいません」

何回も武器屋の親父さんに頭を下げる。イヴァンは家の外に居る間、どれだけ多くの人に多大な迷惑をかけているのか、気になってしまう。

下手したら謝罪行脚をしなければいけないかもしれない。

「んじゃ、鎧でも新しくしにきたのか?」
「違う違う。ねーちゃんの装備を見に来たの」

イヴァンは杖の所にいき、一本一本手に取り確かめている。

「はー、この嬢ちゃんの武器をか?」

親父さんが私の姿を上から下まで確かめるように何度も見る。

「武器の扱いに精通しているって感じでもなさそうだけどな」
「うん。ねーちゃんはド素人。けれど、外に行くのに必要だろ?」
「まぁ、遠出をするのならそうだな。嬢ちゃんの体格ならば、短剣か…あぁ、坊主が見ているのは杖か。杖なんかもいいかもな。魔術は使えるのか?」
「戦闘に関してはド素人だって言ったでしょー」

イヴァンが一本の杖を私に差し出す。握ってみろって事なのだろう。

木で出来た杖の先端に鉄で補強をしてある物だった。確かにコレで殴ったら痛そうだな、と思った。

握ってみると少し握りが大きかった。これで杖を振るったらすっぽ抜けそうだな。

親父さんが杖を私の手から取り上げて、元にあった棚に戻す。

「あー、だからさっきから媒体以外の杖を見てるのか。それじゃあ、木以外の素材がいいかもな。木の素材で作られた杖は、大体が魔術の媒体用だから」
「ねーちゃんは力が無いから重いのが持てないんだよ」

女の子の平均ぐらいの力はあると思うのですが?そりゃあ、近所のおばさん方と比べたら、貧弱といわれるかもしれないけれど。

「坊主の馬鹿力と比べたら、誰でも貧弱になるさ。おい嬢ちゃん、これを握ってみろ」

親父が渡したのは華奢な作りの金属製の杖。

「魔術師ならグランツ銀なんかがいいのだろうが、これは唯の鋼製だ。これだったら値段もそこの木の杖と大して変わらないし、重さも細く作っているから大して差はないだろう。硬さも鉄と比べて大分硬いし、鉄と違って錆びづらいから手入れも楽だ」

握ってみると、確かに先程の武器よりかはしっくりくる。

「問題はねーみてーだな。本当はグラセン鉱石で作った武器がいいんだろうが、あれは高いからな」
「グラセン鉱石製の武器なんて、一本銀貨1000枚以上だろ?買える訳ねーよ」

親父さんは私から武器を受け取ると、握りの部分に滑らないように布を巻いてくれる。

「後は鎧か。予算はいくら位だ?」
「杖と合わせて250ってとこ」
「だったらこの服だな。ある程度の防刃製を持ってる」

親父さんが鎧の中から一枚の服を取り出して渡してくれた。

その服は薄いブルーの上着と、膝丈ぐらいのズボンだった。

「魔術師用だから体力の無い人間でも大丈夫だ。そっちに試着室があるから合わせてみな」

私は、服を抱えて試着室で着替える。見事にぴったりだった。サイズなんて言ってないのに、よく判るものだ。さすがはプロだな。

「サイズはいいな。動きにくくないか?」
「袖の部分が少し長いかな」
「それは直してやる。丈も問題ねーな。運が良かったな。魔術師の子供用だ、それ。子供用の防具なんて、中々置いてないから貴重品だぞ」

服を脱いで親父さんに渡すと、長かった部分を折り曲げ、作業台らしき場所に置く。

「今は依頼が詰まってるが一週間以内に直しておいてやる。一週間後に取りに来い」
「じゃあ、料金はその時持ってくるからなー」
「おー。他にも野営に必要なものをきちんと買い揃えてやんな」

用は終わったと、私の手を引っ張り店を出て行くイヴァン。

親父さんはそっけなく手を振りながら、奥へと引っ込むのだった。




武器屋から雑貨屋をハシゴして、旅に必要な細々としたものを色々と買い揃えた私たち。

料金を払おうとしたら、イヴァンがその前に払ってしまう。

「思ったより防具に金がかからなかったら、俺が払うよ」

そう言って私が差し出す金も受け取ってくれないから、アカデミーに入学する前に一度遠出をして、報酬としてお金を渡したほうがいいのかもしれない。

そんなことを思いつつ、7月も終わりに近づくのだった。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。