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8 入学試験2
筆記試験が終わったら、広い講堂のような場所に会場を移された。

「助教授のフレッド・ケルヒャーです。今から魔力検査をします。名前が呼ばれた方が順にテストをしてください。テストの結果は、後日郵送でお知らせします」

私たちの担当だったフレッド・ケルヒャー先生?が、そう言うと名前が呼ばれ順番に前に出てきて、魔力を放つ。

「次、エルフィール・トラウム」
「は、はい!」

主人公のエリーが元気良く手を上げて。前に出る。

エリーが集中すると、空気が変わったのが判る。ケルヒャー先生がちょっと目を細め、なにやら紙に書く。

「大した魔力だ。なにかやっていたのかね?」
「い、いえ」
「生来の魔力だけでこの大きさか」

やはり、エリーの魔力は普通の人より多かったようだ。

それ以前にただの村娘だったエリーが魔力の集中が出来て、情報が沢山ある私が魔力の集中が出来ない。

やはり、主人公補正でも入っているのか?

いや、私が無能なんだな、多分。

「次、フレイ・ローゼン」
「はい」

返事をして前に出る。

「始めなさい」
「すいません、魔力を扱ったことがないので、勝手がわかりません」
「珍しいな。ふむ、ちょっと手を借りるよ」

ケルヒャー先生が手を取り、なにやら集中すると私の体の中心がムズムズしだす。

「今、私の魔力で君の中の魔力を刺激した。判るかい?」
「なにかムズムズしますね」
「そのムズムズを外に出すようにしてみたら、今回のテストは終わりだ」

先生が手を離し、私は体の中のムズムズを外に出そうと意識を集中する。

人の倍近くの時間がかかって、私はやっと魔力を捻り出した。

先生は結果を書きとめ、次の生徒の名前を呼んだ。

試験が終わった私はさっさと帰ることにして、筆記用具片手にアカデミーを後にしたのだった。






≪Side other≫

フレッド・ケルヒャーは、ようやくまとまったテストの結果を手に、アカデミーの教授が集まっている部屋へと足を踏み入れた。

フレッドは、この錬金術アカデミーの助教授で、師匠はイングリドと言うアカデミーの中でも優秀な教師だった。

イングリドの教え子の中でもフレッドは優秀なほうなのだが、マルローネやクライス・キュールのような天才的な活躍をした者達に霞んでしまい、今一つ目立たずにいた。

その結果、クライスは早くもアカデミーで教鞭を取っていたにも関わらず、彼は雑用が多く割り当てられた。

今回の入学試験も、そんな雑用の一つだった。

「イングリド先生、他の先生方。試験の結果がまとまりました」
「ご苦労様ですね。さぁ、見せてください」

フレッドは、イングリドたちに結果を渡し、末席の座った。

「今年は非常にレベルが高かったようですね。主席はノルディス・フーバーと言う子ですか。確かにほぼ全教科において優秀な成績です」

計算も錬金術の予備知識でも、高得点をキープしている。

「いつものように上から順番に百人取り、見所のある人物を追加で入れていきます。大体120人を目安にしてください」

先生たちが紙を捲り、選抜作業を始める。

「イングリド先生、ちょっと」

クライスが手を上げた。

「どうました?」
「この、エルフィールと言う子のこの問題の答えなのですが」

そこには筆記試験の最後の問題である、錬金術のイメージについての問題があった。

「光の波が乱舞し、力が注ぎ込まれる、ですか」

イングリドは考え込んだ。確かに、高レベルな錬金術アイテムを作るときに、多大な魔力が使われその魔力が乱舞する事はある。

ただの村娘が高レベルの錬金術を見た事自体珍しいが、その光の波を乱舞を注ぎ込まれると感じ取った彼女の魔力感性に惹かれるものがあったのは事実だ。

マルローネの時もそうだったと、イングリドは思った。

成績は悪かったが、熱意もあり惹かれるものがあった。だから、史上最悪の落第生と言われる彼女に追試をさせ、その結果彼女は一流の錬金術師になった。

「彼女の成績は…悪いわね」

計算は簡単な問題しか出来ていない。錬金術の予備知識もほぼ無いに等しい。

けれど、最後の一問が光っていた。

「魔力は十分すぎるほどありますけどね」

魔力量は普通の人の倍近くあった。

「彼女は合格にしてちょうだい。私が教えます」

イングリドがそう宣言をして、再び他の書類に目を落とした。

「イングリド先生、いいですか?」

フレッドが手を上げて、イングリドが発言を促す。

「この、フレイ・ローゼンなのですが」
「これはまた、歪ですね」

計算は満点、錬金術試験も満点。ただ魔力試験が10点と言う低いものだった。

「ちょっと待ってください。満点がいるのですか!?」

他の先生が慌ててフレイ・ローゼンの書類を見る。

「何かおかしいことでも?」

問題の内容を詳しく知らない者たちが、首を傾げる。

「問題の中にマイスタークラスの優秀な生徒じゃないと解けない問題を、今回混ぜたのです」
「マイスタークラスのですか?」

イングリドが再び考え込んだ。周囲もマイスタークラスレベルの問題と聞いて、口をぽかんと開けている。

「はい。おそらく誰も解けないだろうと思っていました。エリキシル剤のレシピなんてマイスタークラスでも一握りの人間しか知りませんし」
「そんな馬鹿な!?アカデミーに入ったことのない人間が判る訳がない!」
「事実、正解しているのです。薬品名は書いてありませんが、エリキシル剤に必要な精神力を回復させる<ミスティカティ>、傷を癒す<アルテナの傷薬>、状態異常を回復させる<ガッシュの木炭>のすべてを彼女は書いていました」

これに異なる属性の薬品を混ぜる時に使う中和剤を混ぜたら、エリキシル剤は完成する。

「もし、錬金術を習ったことが無いのにこの答えに辿り着いたのだとしたら、彼女もまた錬金術の深淵に至る者かもしれませんね」

イングリドがそう言葉を結んだ。

この事自体発表したフレッド自身、背中に冷たい汗が流れている。

恐るべき天才の発見。もしかしたら、その瞬間に立ち会ったのかもしれない。

「だが、いくら知識や才能があってもこの低い魔力では、高レベルのアイテムは難しいだろう」
「確かに、普通の生徒として無理ですが特別生ならばどうにかなるのではないですか?」

アカデミーでは、マルローネと言う一人の天才が実地試験の中で出した結果から、一部の生徒たちに工房を与え経営をさせながら学ばせるという実地方式で勉強させている。

一部の突出した才能は、平均的な才能の中では学びづらいのだと、彼らは知っていたからだ。

「先ほどのエルフィール・トラウムとフレイ・ローゼンを特別生にします。他にめぼしい生徒はいますか?」

誰も挙手をしない。

「後は普段通り成績順に選び、下から工房を割り当ててください。以上です」

イングリドが席を立ち、他の先生たちが頭を下げる。

フレッドは、他の先生と協議をしつつ残りの生徒を選び出していくのだった。


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