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トキビトシリーズ

金の姫と黒の騎士

作者:空乃智春
「育てた騎士に求婚されています」の番外編2で主人公のミサキが読んでいて、「育ててくれたオネェな彼に恋をしています」の番外編3でトールが読んでいる絵本です。
 トキビトシリーズの主な舞台になっている、ウェザリオという国の建国の物語となっています。単品で読めます。
 むかしむかし。
 まだ、この国が荒れ果てていたころ。
 王族に、金の髪に金の瞳を持ったお姫様が生まれました。
 この国を作ったと言われている『はじまりの二人』と同じ色を持つ女の子の誕生を、両親は大変喜びました。

 この子はいつか、この国の王妃になる子だ。
 そう思った両親は、大人になったら妻にしてくれるよう、姫のいとこの王子に頼みに行きました。

 この国で唯一、姫と同じ色を持つ金の王子。
 彼こそ、娘にふさわしい。
 彼は末の王子でしたが、きっと王になるだろうと、姫の父親は思っていました。

 金の王子には、婚約者がいましたがすでに亡くなっていて、それからずっと側室だけしかとっていませんでした。
「王妃にしてもいいが、この子の名づけ親にならせてくれ」
 どうかうちの娘を王妃にというと、王子はそんな事を言いました。
 親子ほど歳が離れていましたが、自分と同じ金の髪に金の瞳を持った姫を王子は気に入ってくれたようでした。
 姫の両親は喜んで頷きました。

「じゃあこの子の名前は――」
 王子のつけた名前を聞いて、両親は驚きました。
 それはこの国で《全ての終わり》を表す言葉だったからです。縁起でもない言葉なので、普段は口に出す事すらしません。
 けれど、この名前じゃないと結婚しないというので、両親は渋々それを受け入れました。

 思えば、この時には王子はすでに狂っていたのでしょう。
 姫の両親の予想していた通り、金の王子が王位に付きました。
 金の王子は、金の王になったのです。

 しかし、彼は父である前王が亡くなって後、おかしな行動を見せ始めました。
 まず、継母を処刑しました。
 そして兄王子たち。
 次々と、身内を殺して行ったのです。

 けれど、姫にとって金の王は優しい王でした。
 チェスの相手をしてくれたり、遊びにくるたびにお花をくれます。
 時には姫の勉強も見てくれました。
 姫はこの歳の離れた王の事が、大好きだったのです。

 しかし、ある日の事。
 幼い姫は縄をかけられて、両親と一緒に王の前まで連れて行かれました。
 姫の両親は、罪を犯したのだと王は言いました。
 止めてと叫ぶ姫の前で、両親は処刑されてしまいました。

 絶対に許さないと睨み付ければ、王は楽しそうに笑いました。
「ならお前が俺を殺して王になるがいい。ここでずっと待っていてやろう」
 王は姫を国外へ追放しました。
 いつか王を殺して、両親のかたきを取る。
 そして、新たな王になる事を姫は心に誓いました。

 長かった金の髪を切り、名前を改め。
 男として生きていくことを決めた姫は、たどり着いた島国で、国を追われたかつての宰相や騎士団の隊長に出会いました。
 彼らは国を本気で心配している人たちでしたが、王にとっては邪魔な存在だったため、姫と同じく国を追放されていたのです。

 姫は彼らの元で、色々なことを学びました。
 教育が受けられる歳になると、王になるために必要な政治を学ぶため、この辺りで一番栄えている国の学校へ通う事を決めました。
 素性を隠し、男として学校へ通っていたある日。
 姫の元に届いた知らせは、姫が王以外の、最後の王族になってしまったという知らせでした。

 姫を王が探している。早く逃げてください。
 王城に残っている宰相の部下から送られてきた手紙には、そう書かれていました。
 もうすぐ卒業できるという時の事だったので、姫はどうにか卒業まではと思いながら過ごしました。
 その間に追っ手がやってきて、追い詰められてしまいました。

 あぁ、もう死んでしまうのか。
 そう思った時、姫の目の前にふわりと男が現れました。
 何もない場所だったはずなのに、いきなり現れた男は、見たことのない黒の目と黒の髪をしていました。
 彼は姫を襲ってきた刺客たちを、見たことのない剣で切り捨て、地面に座り込んでいた姫に手を差し伸べてきます。

「大丈夫ですか? 襲われていたようですが」
 それが姫と黒の騎士の出会いでした。
 黒の騎士は、どうして自分がここにいるのかよくわからないようでした。
 一緒にこの国に来てくれていた宰相に彼を引き合わせると、宰相は驚いた顔をしました。

「こやつヨミビトですぞ!」
 宰相は叫びます。
 当時姫の国では、人は死んだ後ヨミの国に行き、そこで生まれ変わると信じられていました。
 しかし、時々ヨミの国からこちらにきてしまう人がいるらしいのです。

 ヨミビトは皆、闇色の瞳と髪をしていて、老いることがない。
 それは、伝説や幽霊話の一種のようなもので。
 本当に存在しているなんて、姫は思ってもみませんでした。

 黒の騎士はいきなりこの世界にやってきて戸惑っている様子で、行くあてもないようでした。
「お前、私の騎士にならないか?」
 腕が立つ事はわかっています。
 彼がいれば、卒業まではここにいられるし、その後の危険も減る。
 何よりも彼が気に入ったという理由から、姫は黒の騎士にそう持ちかけました。

 宰相は反対しました。
 ヨミビトは、死者の国からやってきた者とされ忌み嫌われる存在でした。
 それだけではありません。
 姫の国と険しい山を挟んで隣り合わせには、魔術を扱う大国があり、そこの腕利きの魔術師たちの中にはヨミビトもいるとの噂がありました。
 彼もその魔術師かもしれないと宰相は言うのです。
 けれど、彼には魔術師の刻印も何もなく、魔術なんて知らない様子でした。

 姫は騎士に自分がいずれ王になる存在である事を明かしました。
 金の王を倒して、新しい理想の国を作る。
 その野望をかなえるために、お前の力が欲しいと言えば、騎士は少し迷ったようでしたが、姫に剣を捧げる決意をしてくれました。
「わかりました。ここで出会えたのも何かの縁。この剣をあなたとあなたが作る新しい国のために捧げましょう」
 こうして黒の騎士は、姫の騎士となったのです。

 黒の騎士に守られながら、姫は学校を無事卒業しました。
 それから姫は行動を開始しました。
 祖国に戻り王を倒すために、人を募り、策を練りました。
 追っ手から逃げ、仲間を増やし、時には冒険もしました。

 そして数年が経って。
 姫は力を蓄えて、王都の地を踏みました。
 民はすでに残虐な王を見限っていて、彼らをまとめていた貴族が、姫に力を貸してくれることを約束してくれました。

 いよいよ作戦が決行される日。
 姫は勇敢にも剣を持ち、両親の敵を討つため仲間と共に王城へ向かいました。
 王城の前には兵士がたくさんいて。
 姫は切り進み、黒の騎士と二人で王城の中に入りました。

 不思議なことに王城の中に兵士の姿はなく、そこに待っていたのは仲間の一人でした。
「王はお前には討たせない」
 王に剣を捧げた騎士であり、それでいて民を先導して王を打とうとしている、王の右腕。
 王を裏切って、こちら側についたはずの彼が、ここにきて姫を裏切ったのです。

 彼は姫に有利な条件をつけた上で、一対一での勝負を挑んできました。
 倒せたら王に会わせてやる。
 姫は自分が戦うという黒の騎士を止め、その勝負を受けることにしました。
 しかし結局負けてしまい、気づいた時には黒の騎士に連れられて城の外にいました。

 城を見れば、城は炎に包まれていました。
 姫が手を掛けることもなく、金の王は死んでしまったのです。
 後で聞いた話によると、姫が最後に戦った王の騎士が、あの炎を放って王を倒したとの事でした。

 こうして金の王は倒され、国は滅びました。
 姫は自分の手を王の血で汚すことなく、ウェザリオという新しい国の女王になりました。
 『ウェザ』はこの国の言葉で、風。
 『リオ』は姫の新しい名前である『リオナ』から取って、始まりという意味です。

 新しい風を吹き込むようにという姫の願いどおり、この国は今までとは違う豊かな国へと変わって行きました。
 終わりの名を持つ金の姫は、始まりの名を持つ金の女王になったのです。

 その後女王となった姫は、民をまとめていた貴族に求婚され、彼と結婚しました。
 多くの人に祝福される彼女の側には、黒の騎士の姿もありました。
 子宝にも恵まれ、天寿を全うして。
 最後のその瞬間にも、初めて会ったときと変わらない姿で黒の騎士は彼女の側にいました。

「私とお前で作ったこの国を、私の分まで見守ってほしい」
 金の女王の最後の願い。
 黒の騎士は、それを聞き入れて今でもどこかでこの国を見守り続けているそうです。
 めでたしめでたし。
「育てた騎士に求婚されています」の番外編2と「育ててくれたオネェな彼に恋をしています」の番外編3にて、
この絵本が登場します。
「王子はランドセルな姫の幸せを願う」王子だった前世を持つ先生のお話。

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