あらあら、今日もアリスはお茶会かしら。折角私が会いに来たというのに。
仕方がないので私はアリスを探しに、お気に入りの鎌を持って歩き出した。
やっぱりアリスはお茶会だったのね。白いテーブルとイスに座っている姿がひどく愛らしいわ。
その隣には眠たそうに目を擦るネムリネズミと、二人にお茶を渡す帽子屋。アリスはお茶を飲むと、帽子屋に笑顔を向けた。
…許せない。アリスの笑顔は私だけのものなのに。帽子屋ごときに与えられて良いものではないのに。
私は鎌の柄をギュッと握ると、にこやかにお茶を楽しんでいる三人に向かって歩き出した。
「アリス」
彼らの前に立ち、一言だけ呟くと彼らは全員弾かれたように立ち上がり、その場から離れようとした。
――決して逃がさないけれど。
まずは帽子屋。アリスに笑顔を向けられていることが何より許せない。だから首を狩ってしまいましょう。二度とアリスの笑顔が見れないように。
鎌を振り上げた瞬間の帽子屋の顔は何とも言えない表情だった。恐怖、戸惑い、そんなものが入り交じったソレは大嫌いだった帽子屋のものだというのに、私の大好きなものだった。
ブシュッ、という音と共に帽子屋の首から上は地面に落ちた。残った体からは血が勢いよく噴き出している。近くにいた、私とアリスはその血をモロに被ってしまった。自分にかかると、うっとおしくて仕方なかったけれど、血塗れのアリスは私の気分を高揚させてくれた。
あぁ、アリス。貴女には紅がよく似合うわ。だから紅の女王である私の側が貴女にとって一番相応しい場所よ。
でもその身体は私の側にいるには大き過ぎるの。常に一緒にいるにはもっとコンパクトなサイズじゃないと。
だから、貴女の首を狩らせて頂戴。帽子屋の首と違って貴女の首は丁寧に扱うから。毎日髪を梳かして、お化粧をしてあげる。貴女のその可愛らしさが失われないようにちゃんとしてあげるから。
ニッコリとアリスに微笑みかけると彼女は、ヒッと息をのんだ。腰が抜けて立てないのか、私が一歩近付く度に必死の形相で後ずさっていく。
安心してアリス。痛い思いなんてさせないから。
私は鎌を振り上げ、下ろした。
「キャアアアァ!」
ある学校の昼休みのことだった。お嬢様学校であったその場所で惨劇は起きた。一人の女生徒が、二人の同級生を殺したのだ。
首を鎌で切り落として。
現場にいた被害者二人の友達は警察にこう語った。
「く、紅さん、入学したときから、お、おかしかったんです。有栖川さんの、ことをアリスって呼んで、いつも一緒にいた私と水口さんのことを、それぞれ、ね、ネムリネズミと、帽子屋って呼んで。それで紅さんは、ど、同性愛者か知らないけど、有栖川さんが好きだった、みたいで一緒にいる私たち、特に何故か水口さんを嫌ってた、んです。だ、だからあまり彼女に近付かない、ようにしてたのに、なのに、昨日…」
警察は加害者に精神異常が見られるか確認した上で、慎重に調査していくと述べた。
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