第弐拾四話 良組・めいコンビ
前方の黒い塊を見据える。腕をやたらとブンブン振り回してはいるが、あの程度なら何とかなりそうだ。そんなことを考えつつ相手との距離を測ってから、タンッという音と共に地面を蹴った。
「なっ、バカ、飛び込むな!!」
後ろから何か呼びかける声が聞こえたが、とりあえずスルー。軽いフットワークで腕の猛襲をかいくぐり、右腕に自分の魔法、青白い斬撃を纏わせた。初めの頃は鳥の形をさせて飛ばすしかできなかったが、少し扱いに慣れてきた今ではこんなことだってできる。
最後に振りおろされた巨大な腕の下をくぐり抜け、目の前に黒い表面が見えたところで一瞬止まり、両足を地面につけ、姿勢を整え……
「テイヤッ!!」
右腕をまっすぐ突き出した。体重の乗った打撃は、斬撃の力を上乗せし、鋭く突き刺さる。
ズドンッという鈍く大きな音を残し、黒い巨体は数メートル吹き飛んだ。
「……もう一度聞くけどな、テメェ、一体何者なんだ?」
「……偽者?」
「誰のだ!?」
「ほらほら、漫才なんかしてていいの? アイツもう動き出してるわよ」
「テメェがさせてんだろーがぁーっ!!」
……と、こんな会話をしている間に、黒い塊から無数の足が生え始めていた。そろそろ、“ばけもの”とでも呼んだ方が良いだろう。とりあえず、さっき思いっきり理不尽を叫びに託していた……
「……あー、ウニ頭?」
「んでいきなり何を言い出してんだよテメェは!?」
「いや、名前を聞いてなかったなぁ、と思ったからとりあえずねぇ」
「とりあえずで他人の心をえぐるなぁっ!! ……ぜぇ……ぜぇ……もう止めてくれ……今日一日で喉がつぶれそうだぜ……」
“とりあえず暫定ウニ頭”は、喉に片手を当てつつしゃがみ込み、地面にもう片方の手をついた。すると、その周囲に高さ1メートルくらいの土の柱が6本出現する。
「まあいい、次は私の番だぜ……喰らえ、六連ミサイル!」
掛け声と共に、柱は火を噴き、地面から離れて飛び出した。一旦垂直に上昇した後、足を完成させて走りだした黒い化け物に向かって降下。そして接触、んでもって爆発。黒いヤツはまたも吹き飛ばされていったのであった。ここまでくるとそろそろ哀れである。
しかし、吹き飛ばされてもなお、向こうのほうで再生しているのが見えた。まだまだ大丈夫なようだ。
「しぶといわねぇ……タコ殴りにすれば良いんじゃなかったの? 効いてないっぽいけど」
「そのうちエネルギー切れかなんかで停止すると思ってたんだけどな。どうもそう上手くはいかないらしいぜ。……ああ、ちなみに一応攻撃は効いちゃいるから安心しろ。痛みとかを感じてないってだけだ。……多分」
「……女の子を安心させるときに、“多分”なんて言葉使っちゃ失格ねぇ」
「生憎、自分よりケンカ強そうなヤツを安心させる筋合いはねぇからな」
「ふーん……で、そんなどうでも良いことは置いておいて、」
「(テメェが話振ったんだろーがっ)」
「(まあまあ、そう怒らない)」
もう叫ぶのが辛くなってきたため、心の中で軽くツッコミを入れておく貴斗。そして何故かちゃっかり聞いてる朝美。
「で、どうにかしないとねぇ、アレ」
「……なんだ、言いたいこたあるがまあいい。とりあえずあの黒いのだな。まぁ、策はあるぜ。……乗るか?」
「他に選択肢があるの?」
「もちろんねぇよ。……つーことでこれも協力決定だ。今から作戦話すから、よく聞いとけよ。まずは……」
「とりあえず逃げるべきね。このままここにいたら潰されるわよ」
「……確かに。一度ぶっ飛ばすなり逃げるなりしたほうが良さそうだな。……再生早くなってきてるし、逃げるか」
見れば、すでに復活した黒いヤツが、性懲りもなくこちらへ向かってきている。それにしても……
さっきから黒いヤツとか再生とか聞いていると、どうもあの生命力の強い“頭文字〈イニシャル〉G”が頭に浮かんでくる朝美であった。
…………
町の中で暴れていた怪獣たちの動きが止まった頃、それを見計らって救助隊が町へ入ってきた。救助隊とはいっても、町の住民や通りすがりの旅人たちの中から有志が集まり、町に取り残されていた人々を助けようとしている集団である。
彼らは、逃げ遅れて崩れた建物に閉じこめられた人などを救出してまわっていた。つい先程爆音が聞こえてきた時計台方面以外の場所を、しらみつぶしに探索していく。
そして一際激しく破壊されている北よりの広場で、3人の人間が倒れているのを発見した。
……ただ、不思議と怪我人が少ない中で、この3人の内2人の怪我の度合いは尋常ではなかった。逃げ遅れた人々の中で一番ひどい怪我をした者でも、瓦礫につまづいて転んで足の骨にひびが入った程度。それなのに、その2人はまるであの怪獣と戦ったのかと思わせるような大怪我を負っていたのである。
一体、ここで何があったというのだろうか。
石コロ防衛本部事務所
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