wish for22:突然の訪問。読めない展開。
「ねぇ、お母さん」
「なぁに?」
「外…誰か居ない?」
「えぇ?どうして?」
「足音が…」
「足音?そんなのした?」
「したの。私の部屋の前で止まった…」
「あら。じゃあ、由李の噂の彼かしら」
「な…っ違うよ!!…多分」
「どうして?」
「だって、凄い大勢の足音だったもの。憂灯君なら、1人の筈でしょ?」
「ユウト君て言うのね。由李の彼は」
「ぁ…ぅん…」
「ふふ。じゃ、ユウト君だって期待して…開けてみるわね。ドア」
「うん…」
由李の母親は、閉めていた病室のドアを開けた。
ガチャッ――
「まぁ…」
由李の母親は、驚きの声を上げた。
それはそうだろう。
部屋の外に立っていたのは……………
「あ…初めましてっ」
「今日はっ」
「初めまして」
「初めましてっ」
「今日は…」
「初めまして」
「初めまして」
7人の美少年。
…まぁ、多少語弊があるのは勘弁していただいて。
「初めまして…。えっと…由李のお友達かしら?」
「あ…俺です。コイツらは…付き添いっていうか…」
「俺も、一応逢った時あります」
「まぁ…よく似ていらっしゃるのね」
「俺ら双子なんで…」
「兄の榊城 憂灯です。一応、此処の息子です」
「弟の秀統です。父から由李さんの話は聴かせていただいてます」
俺と秀統が自己紹介をした時、由李の母さんの様子が一変した。
由李に似た、漆黒の瞳が濡れてる。
その人はハンカチを取り出して、目頭を押さえた。
「大丈夫ですか?気分でも…」
俺が傍に寄ると、由李の母さんは弱々しい声で言った。
「いいえ…違うの…。ユウト君…よね?由李から聴きました…」
「え…?」
「由李とお付き合い…してくれてるんですって?」
「あ…はい…」
「母親の私が言うのも、可笑しいですけど…ありがとう」
「いや…そんな…」
「由李…最近、楽しそうなんです。病気なのに…学校に行ってる時よりも楽しそうで…。きっとユウト君のお蔭です…」
「いえ…俺は、別に…」
「これからも…由李をお願いします…」
「はい…」
俺は由李の母さんを外のソファに座らせた。
「由李、逢っても大丈夫ですか?」
「えぇ…是非逢ってあげて頂戴…。私は、もう帰るから…」
「そうですか…。気を付けて下さい」
「ありがとう…。それじゃ…ごゆっくり…。由李に宜しくね…」
俺は、由李の母さんを見送った後、由李の部屋に入った。
中では、俺以外の奴が入って由李を見ていた。
「憂灯君…?」
俺が入って来たのにすぐに気付いた由李は、俺を呼んだ。
多分、この状況に戸惑ってるんだろう。
そりゃ、これだけ知らねぇ奴が来たらビビるよな。
しかも、男ばっかだし…。
俺は由李の傍まで行って、手を取った。
「今日は、学校の連れと来たんだ。後、俺の弟も」
「秀統…さん?」
「そう。秀統」
俺は秀統を呼んだ。
秀統は、遠慮がちに由李を見つめた。
まぁ…眼ぇ見えねぇからなぁ…。
秀統も、顔合わすのは初めてだろうし…。
けど、すぐに秀統の視線は優しいものになった。
流石、将来医者志望。
ちゃんと優しく接してやらねぇと駄目なんだよな…。
「由李ちゃん?初めまして。憂灯の弟の…」
「秀統さん。初めまして。磨代 由李です」
由李はにこっと笑って、秀統に自己紹介をした。
途端に、部屋の中に張り詰めていた空気が緩む。
由李の笑顔は…なんか安心すんだよな…。
それは、俺だけじゃ無くて。
多分、南音達もそうだと思う。
どう接して良いのか、判らなかっただろうから。
由李の笑顔は、南音達の緊張も解した筈だ。
「ねぇ、憂灯君。他にも居るんでしょう?」
由李は、おもちゃを買って貰った子供のようにはしゃいで、俺に「紹介して」と頼んだ。
由李の希望通り、俺は呼んだメンバー全員を有里に紹介した。
「龍偉。こっち来て」
「ん」
「橘川 龍偉。俺と秀統の幼馴染みたいなもんかなぁ。去年までは、一緒のクラスだったんだ」
「由李ちゃん?橘川 龍偉です。宜しく」
「由李です。こちらこそ、宜しく」
「後はー…あ、香。臣っ」
「俺もなん?」
「何で同時なの?」
「良いからっ。来いよ」
俺は香と臣を呼ぶと、由李の傍に立たせて、由李の手にソイツらの手を触れさせた。
「ちょ…っ憂灯君!?」
「えぇぇぇー…」
流石に、香でも慌てるか。
臣とか、言葉になってねぇし。
けど、由李は俺の意図を理解ってくれたみたいだった。
そっと、2人の手に触れる。
ちょっとムカつくけど、此処は怒るトコじゃないから。
つーか、させたの俺だし。
けど、やっぱ…由李は違う。
香も臣も見習えよな。
「2人とも、私と同い年なんだね?」
由李は、俺に向かって微笑んだ。
そう、俺が2人を同時に呼んで手を握らせたのは、由李に同期の奴って知って欲しかったから。
由李は、2年学校に行ってない。
同期の奴も…あんま来ねぇだろ。
2年も入院してると。
だから、少しでも判って貰おうかなー…と思ってな。
まぁ、当の本人2人は固まってるけど。
その2人は、由李の言葉に驚いたみたいだった。
「え!?由李ちゃん、俺らと同期なの?」
「嘘やん…。俺、まだ下かと思たし…」
「臣〜?俺の彼女はガキっぽいってか?」
「や、そういうんや無くてっ。ちょぉ、憂灯君睨まんといてぇ…。怖いし…」
「あははっ。でも、看護士さん達にもよく言われるしっ。気にしないで?ぇっと…」
「臣。内谷 臣や」
「臣君。で…こっちが…」
「金十 香。宜しくね、由李ちゃん」
「宜しくっ」
これで、由李と初対面の奴の紹介は済んだ。
後は――………南音と汰河と士なんだけど…。
やっぱ、気まずいしなぁ…。
まだ南音と汰河は良いけど…。
俺が考えていると、由李が俺に言った。
「後の人達って、前にも来てたヒト?」
「あ、あぁ…そうだけど」
「そっかぁ。あ、私、この間憂灯君の事喋ってた人と話したいんだけど…。良いかなぁ?」
「士と?」
俺は、由李の意図が読めなかった。
何故だろう?
何で、由李は龍一と話したいって言うんだ…。
「2人で…ねっ。駄目?」
「や、別に良いけど…」
「やたっ。じゃあ…少し2人にして貰っても良い?」
「判った。士」
俺が士を呼ぶと、士の肩が少し動いた。
由李の笑顔も、士には無駄だったみたいだな…。
まぁ、当然だけど。
俺、ぶっちゃけまだ士の事許してねぇから。
場の空気読めねぇのは、士の良いトコでもあるけど、でも、最悪の短所でもあるんだよな…。
「コイツだよ。緒河 士。んじゃ、俺らは外で居るから。士、話終わったら呼びに来いよ」
「判った…」
士は小さく呟いて、俺の座っていた椅子に座った。
南音と汰河が、心配そうに士を見つめる。
俺は、由李を見た。
由李も俺を見ていた。
視線が合うと、由李はふわりと微笑んだ。
「心配しないで…?」
そう、言ってるみたいに。
俺は、由李の笑顔を見て、秀統達を外に連れ出した。
部屋には、由李と士。
この、2人だけになった。
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