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歌い手カレシと絵師なカノジョ 作者:藤夜アキ
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第八十一話 チーム颯斗は五里霧中

 そのままでは得票に結び付かないと判断した颯斗は、やむなく真っ当な方法で闘うことに決めた。とは言え、蓮哉が手を抜くことは無いだろう。そのまま挑めば、負けるのは間違いない。だが、奇をてらったところで、創作料理を日々作っているような者ならいざ知らず、平々凡々な食事しか作ったことの無い颯斗では、戦力にならない二人がいることも相まって、ロクなことにならないだろう。
「勝ち目無いよな……」
「そんな、颯斗、まだ闘いもしてないのに諦めるなんてダメだよ!」
「せやで、颯斗。やってみなわからんやろ?」
 俄に盛り上がりを見せんとする車内。
「いや、何良い雰囲気作って誤魔化そうとしてんだよ」
 が、あっさり颯斗にぶった切られる。
「目下の課題はお前らなんだよ……」
「で、でも、ほら、私だって、タマネギの皮なら剥けるよ!」
「幼稚園児でも出来るだろうよ」
「は、計れる! お水の量とか計れるよ!」
「あーはいはい、凄い凄い」
「もー! それだって大事な作業なんだよ?」
「なら、剥いたタマネギを丸ごと茹でて、茹でタマネギだって出してみたらどうだ?」
「そんなの料理じゃないよー!」
「俺が言いたいのはそういうことだ」
 うん? と疑問の顔を浮かべる恵実を見て、はぁ、とため息を漏らす颯斗。
「あのなぁ、作業を分担するにしたって、その言い草だと切ったり炒めたり出来るわけじゃなさそうだから、実質二人は棒立ちで見てるだけになるだろ。一人で出来ないわけじゃないが、それだとチーム戦の意味が無いからな……何を任せたら良いんだか」
 チーム戦、とは言われたわけでは無いため、二人をまったく使わずとも良いのだろうが、その場合は間違いなく蓮哉がその部分を突いてくるだろう。ひょっとしてくじに何らかの操作が為されていたのかもしれないが、今さらそのことを追求することも出来ないため、現状を打破する手法を見出す以外に、最善の手は無かった。
「俺らでも出来そうな料理、無いんか?」
「ポテトサラダとか、まあ混ぜていくだけだからな、出来そうな気はするが……」
 何故か、大惨事になりそうな未来しか見えて来なかった。どうしたらそうなるんだ、というような事態が、割と平然と起こる、それが料理が苦手な人のイメージで、多分、それなりに合っている。
「うなってるだけじゃどうしようも無いから、とりあえず、何を作るか考えるしか無いな」
「私はねー、ハヤシライスが食べたい」
「俺はお好み焼きやな」
 自分たちで作らなければならない、ということを完全に意識していないだろう、完全に今自分が食べたいものをリクエストするようなチョイスに、改めて頭を抱えさせられる颯斗。
「んー、どっちも難しくは無いんだが、どうにも上手く仕上がるイメージが湧かないんだよな……。多分、お前らは見てるだけになる」
「そんなこと言うならさー、颯斗は何だったら良いと思うの?」
「そうだな……まあ、その二品のどちらかを作って、もう一品付け添えを作るのを、二人に任せられたら、とは思う。失敗のしようの無い奴を、だな。けど、何かそれもミスる気しかして来ないんだよ……」
「颯斗、俺らを舐めすぎなんとちゃうか? 出来へん言うたかて、砂糖と塩とを間違えたりせえへんで?」
「そんな漫画とかアニメのレベルの間違いをするとは思ってないから。普通に作業の順番を間違えたり、入れなきゃなんないものを入れ忘れたり、火加減の調整をミスったり、そういうのをやりそうだと思ってるんだよ……」
「私ならやりかねないね!」
「そう言や、高校の調理実習の時、何やったか忘れたけどえらいやらかしたなぁ」
 平然とそんなことを言う二人に、いよいよ不安しか残らなくなって来た。もうこうなれば、料理を全くしない人が、〝料理〟だと言い張れるようなもので挑むしか無い。追い詰められた颯斗には、それくらいしか思い付かなかった。そう、空けて、取り出して、盛り付ける、で済むようなものである。もちろん、メインメニューがそれだと話にならないから、デザート、という形で。
「付け添えじゃなく、デザートにする。ハヤシライスを作って、それに合うようなデザートを考えたら良い」
 いつに無く、真剣に考える颯斗の姿が、そこにはあった。

「いやぁ、本気になる颯斗を見るの、楽しみだなぁ。歌以外でそんな顔をするの、多分に滅多に無いでしょ」
 蓮哉は心底楽しそうな声で言った。
「蓮哉、お前やっぱり、あのくじに細工したりしてたのか?」
 まさかな、とは思ったものの、こいつならやりかねねぇ、という思いも、ミシェルの中にはあった。
「いや? あのくじは至って普通のくじだよ。ね? 詩織ちゃん」
「はい。あれには何の仕掛けも施されてませんよ」
 別荘に着いてからずっと、詩織と蓮哉のやり取りを見せつけられていた(と、少なくとも海奈はそう感じていた)海奈は、もやもやした気持ちを溜め続けており、折角隣に座れたにも関わらず、いまだ詩織に話し掛けようとする蓮哉に、何と自分から話しに行く、という勇気を見せた。
「じゃあ、偶然であんな結果に?」
「結果は、ね」
 意味深に言う蓮哉が、またかっこいい、とか思いながら、海奈は質問を重ねる。
「どういうこと?」
「つまりね、誰が颯斗とチームを組むことになっても、僕が颯斗の料理が得意なことをバラすつもりだったから、結果的にみんなそれが気になって、颯斗以上に目立って料理しよう、とは思わなくなる、ってこと。まあ、あんな組み合わせになったことで、僕の予想を遥かに上回る面白い展開になってくれたんだけどね」
 蓮哉が海奈の方を向いて答えるものだから、海奈の心はどこまでもときめいて仕方なかった。その様子をフロントミラーでちらりと確認したミシェルは、彼女の気持ちに気付いている蓮哉の振る舞いに、依然納得し切れない気持ちを抱いた。その一方で、最も蓮哉を喜ばせるような展開を用意した運命というか神様というかに、並々ならぬ恐れも抱いたのであった。
二日に一回のペースでこれを書いていた数ヶ月前の自分って凄いなって思います。もっと休みたいです(笑)
でも、合宿編は本作にとって非常に大事なイベントをいくつか挟みながらも、かなり長くなる気がするので、間を空けると読者も作者も苦しいことになりそうなので、とりあえず合宿編終了まではさーっと走り抜けたいです。
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