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歌い手カレシと絵師なカノジョ 作者:藤夜アキ
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第七十七話 二人のゲスト 後編

「『今回ゲストとして来て下さったのはどういう理由でですか?』」
 一同が(当てさせるつもりは最初から無いんだろうな……)と思ったのは、最早言うまでも無い。
『えーっとー、実はぁ、この中に会ってみたいなぁ、って思ってた人がいてぇ、それでぇ、お誘いにOKしたんですぅ』
 割合冷静に状況を見ていた颯斗は、ゲストの話し方がブレブレなのに気付いた。どうやら、彼女は蓮哉の茶番に付き合ってあげているらしい。
「ほうほう、そうなんですね! 『では、その会ってみたいと思っていた人、というのは誰でしょうか?』」
『えーっとー、それはやっぱりぃ、おせんべさん、です♡』
 茉莉亜と趣味が同じなんだろうか、と考えた颯斗。ただ、蓮哉の遊びに付き合っているだけなら、実際どうかは知らないが。
「はい、では質問はここまでです! 皆さん答えを予想して書いて下さいねー」
 これまた用意周到、詩織がスケッチブックとペンをそれぞれに配った。
「こんなんで分かるわけねえだろ、虎太郎が良いって言ってるサイコな野郎だろ?」
「虎太郎はともかく、さすがにそれはゲストに失礼なんじゃ」
「おいコラ聞こえてんぞそこぉ!」
 四の五の言いながらも、各自答えを書き終える。と言っても、誰一人としてまともに考えた者はおらず、自分の知っている女性歌い手の名前を適当に書いただけだ。
「はい、皆さん書き終えたみたいですので、一斉に答えをどうぞ!」
 どこからともなく〝ジャジャン!〟というSEが聞こえた。そういう雰囲気だと察して、全員が渋々スケッチブックを蓮哉の方に見せた。
「なるほどー、答えが分かれましたねー。ですが、残念! この中には正解はありませんでした! しかし! セカンドチャンスです! 初めの一文字を教えちゃいますよ! では、お願いします!」
『えーっとー、一文字目は、〝ほ〟です』
「聞きましたか皆さん! 〝ほ〟ですよ! それではもう一度答えを書いてみて下さい!」
 ようやく少しはまともなクイズっぽくなったな、と颯斗が思っている傍で、若干一名、この茶番の真の目的に勘づいた者がいた。
 そう、ミシェルだった。彼には、ゲストの正体が分かってしまった。この企画は、やはり、他の誰でもなく、虎太郎を嵌めるためにあった。実を言うと、虎太郎を嵌めるという計画そのものは、合宿より先に聞かされていた。ちょっとしたイタズラをしてやりたいから、協力して欲しい、と頼まれ、虎太郎の行く末が不遇になることは、承知の上だった。だが、具体的な内容に関しては、彼にも知らされていなかった。
 それが今、分かってしまった。しかも、ちょっとしたイタズラ、のレベルではないことも。同じく虎太郎もその正体に気付けるはずだが、事前に為された質問の答えのせいで、どうやら冷静な判断が出来ていないらしく、全く分からない、といった様子だ。
(的を射ない質問は、このためにあったのか……!)
 蓮哉はクイズを出したかったわけでは無く、いかにして、そのゲストを驚愕の形で虎太郎の前に登場させるかが、当初からの狙いだったのだ。
「さて、皆さん書き終わった様子ですね、では、再び答えをどうぞ!」
 答えが分かっていながらも、ミシェルは思いつく別の解答を見せた。虎太郎のためを思えば、ここで答えを明かしてしまうべきだったのだろうか。いや、おそらく、蓮哉は答えが出ようが出まいが、自分のシナリオに巻き込んでしまう気なんだろう。あるいは、既に計画は完了しているのかもしれなかった。質問の段階で、虎太郎に良い印象を与え、驚愕の種明かし。最早ミシェルには、どうすることも出来なかった。
「おーっと、今度も色々な答えが見えましたねー、と言うか、〝ほ〟から始まる歌い手さん、こんなにたくさんいらっしゃるんですねー。でも、残念ながら今回も正解は出ませんでした……ではここで、更なるチャーンス! ここからは、ボイスチェンジャー無しで、生の声で喋ってもらいます!」
「おお! どんな声なんやろ!」
 ミシェルには嫌な予感しかしなかった。
「この声でも、カワイイ、って、まだゆうてくれるやんなぁ?」
 聞こえたのは決して高くはない声。落ち着きのある、可愛い、とはまたいささか異なる趣がある声だ。
「は……?」
 それを耳にした瞬間、虎太郎の顔からは、見る見るうちに血の気が引けて行った。その表情は、これまで誰も見たことの無いような、恐怖に顔を引きつらせたものだった。
「なあ、聞いとるん?」
 ねっとりと、まとわりつくように。
「こ た ろ う?」
「おや、おせんべさん、答えが分かったような顔をしてますね、それでは、答えをどうぞ!」
 お前は鬼か、とミシェルは思った。
「あ、あ……茜……?」
「せや、うちや」
 スクリーンの向こうにあった影がバッと立ち上がったかと思うと、その脇から出て来たのは、怒りに顔を引きつらせた、いかにも気の強そうな女性だった。
お待たせしました、続きです。
卒論で忙しい、という理由でお休みをいただいているわけですが、お休みすると途端にペースが乱れる、というか、良くないですね。
そんな中でも、日々コンスタントに読んで下さる方がいらっしゃることに気付いて、どうにかこうにか、二日に一回は今は無理だとしても、出来るだけ日を空けずに続きを書けるようにしないと、と思い至ったのと、加えて今日は大好きな『東京喰種』の新刊の発売日だったので、読んでいる内に創作意欲が湧いて来た、そんな感じです。

今回の合宿の一つ目のテーマが、虎太郎いじりです。というためだけの三話でしたが、これからが本番です。

先日、30000アクセスを超えまして、今作が楽しめていただけているのかな、とより実感出来た次第です。来月の中ごろが卒論の提出日ですので、それまでは少し投稿ペースが落ちますが、もちろん続けて行きますので、どうかよろしくお願いします。
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