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歌い手カレシと絵師なカノジョ 作者:藤夜アキ
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第七十六話 二人のゲスト 中編

 扉の先にはセミロングの髪をした少女がいた。
 その姿を見て、蓮哉以外は目を丸くした。
「えっ、モ、モミちゃん!?」
 真っ先に声を上げたのは恵実。
 肯定するように、彼女はそっと微笑んだ。
「ということで、一人目のゲストは氷雨モミちゃんでーす!」
「ア、アマチュアやないのに、こないなとこおってええんか……?」
「オフなので大丈夫なんです。逆に言えば、氷雨モミとしての活動ではないので、樅山詩織として、プライベートでの参加です」
 誰に向けたわけでもない虎太郎の疑問に、さっと答えて見せる詩織。
「あ、そんな入口にずっといるのも暑いでしょうし、どうぞ皆さん、中へ」
 詩織に誘導されて、別荘のリビングに移動する一同。海が一望出来るテラス付きで、自然光が優しく部屋を照らしている。白いソファや透明のローテーブルが、一般家庭との違いを印象付けているように感じられた。
「そんなわけだから、ツイッターで呟いたりする時は、モミちゃんが身バレしないようには気を付けてね」
 全員が腰を下ろした所に、飲み物を振る舞いながら蓮哉が説明する。
「ゲストにしては大物過ぎる奴だな……。メジャーデビューしてる奴を連れて来るって、お前も良い度胸してるよな」
「そんな、メジャーデビューしてるって言っても、皆さんとそれほど大差無いですし、活動歴から言ったら、ハンニバルさんやおせんべさんの方がよっぽど長いじゃないですか」
 蓮哉に向けて放った言葉だが、今度もまたサッと拾ってミシェルに投げ返した詩織。物怖じしないタイプなのか、そのたたずまいのしっかりしている様子に、一同はすっかり関心して、下手に距離を置くのをやめた。
「もう一人も大物だったりするのか?」
 ただ、颯斗はそれほど興味も無いのか、もう一人の方を気にしだした。
「さあ、どうかなー?」
「もったいぶるなよ」
「お楽しみは分けるべきだと思ってね! でも、そうだね、もったいぶるのもアレだし、モミちゃんのサプライズは十分成功したから、もう一人も紹介しちゃおうか――と見せかけて!」
 そう言ってすぐ、蓮哉はすっと人差し指を天高く突き上げた。
 それを見て、詩織がどこからともなく移動式のスクリーンを運んできた。その後ろにパイプイスを持ってきて置くと、蓮哉がどこかのスイッチを押してカーテンを閉めた。急に部屋が暗くなったが、詩織がライトを付け、スクリーンだけが照らされる状況を作った。自然と全員の視線がそこに集まる。
「じゃあ、二人目のゲスト来てもらって、みんなに当ててもらうことにするね! 題して、『私はだあれ? 歌い手のみんなで当ててみて! クーイズ!』」
 生き生きする蓮哉を見て、げんなりするミシェルと颯斗。恵実と虎太郎は対照的にそのノリに乗れるのか、ワクワクしてスクリーンの方を一心に見つめ、海奈はと言うと、一人楽しそうな蓮哉を瞳に映して優しく微笑んだ。
「それじゃあモミちゃんに呼んで来てもらうから、みんなは僕が良いって言うまで目を瞑っててね」
 言われる通りに目を瞑る一同。少しして蓮哉が「ん、もう良いよ、みんな目を開けて」と口にして、目を開けると、スクリーンの向こう側にイスに座る人影が見えた。
「よーし、では一問目! 『あなたは男性ですか? 女性ですか?』」
『えーっとー、オンナノコ、です』
 聞こえて来る声は機械を通した声で、安物のボイスチェンジャーを使っているのが丸分かりだった。このためだけに蓮哉が用意したものだが、出来る限りエンターテイメント感を演出しようとするその姿勢に、最初はあまりやる気の無かった颯斗やミシェルも、ゲストの正体に多少なりとも興味を示してやろうと思った。ただ、その質問に関しては、最初にもう聞いていただけに、必要なのかよ、とツッコんだのは言うまでも無い。
「ここまでで分かった人ー挙手ー」
「分かるわけねぇだろ」
「あはは、だよねー、それじゃあ次、二問目! 『この中であなたの好みのタイプの男性はいますか?』」
『えーっとー、おせんべさん、かな』
「ほ、ほんまに!? っしゃ見てみぃお前ら! 俺がええって言う女子もちゃんとおんねんで!」
 ガタッと立ち上がって勝ち誇る虎太郎。
「はーい、次々ー、三問目でーす!」
「何らかリアクション取ってーな司会さーん!」
 が、あっさり流される。
「『この中で一緒に歌ったことのある人はいますか?』」
『えーっとー、この中には、いない、です』
「そんなら当てられねぇんじゃねぇの?」
「そうですかー、では次の質問行きますねー」
「完全スルーかよ」
「『寝る時の服装はどんな感じですか?』」
「それで分かるわけねぇだろ!」
『えーっとー、下着だけ、ですか、ね……恥ずかしい』
「何なんこの子!? ごっつエロいやん!」
「何なんだよこの茶番企画……」
 各々反応を見せつつも、頭の中で想像して少し興味をそそられた男子陣。女子陣はと言えば、暑い日はそうもしたくなる、なんて割とあっさりした感想を抱いたものの、もちろん口には出さなかった。
「では続いて第五問!」
 当てさせる気がまるで見えないクイズ企画は、まだまだ続く様相を見せる。
シリアスかネタか。
そればっかり!
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