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歌い手カレシと絵師なカノジョ 作者:藤夜アキ
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第六十二話 なんでこんな所にいる

 開け放たれた窓から、颯斗は青い空を眺めていた。ハッキリ分かるしろももへの想い。それが、もう一人に抱く感情の不鮮明さとコントラストを成す。
 けれど、夏の空は、彼の心情に寄り添ってはくれない。
「お、いたいた」
 振り返ると、湊の姿。目線の先、教室の外には、美園と茉莉亜の姿もあった。もう一人見えるが、あれは湊のバンドの本来のボーカルの子なんだろう。
「鷺沼、カラオケ行こうぜ」
「急だな」
「アタシはいつだって突然だぜ」
「もしかして、あいつらも一緒か?」
「もちろん。カラオケ行こうって話したら、お前も誘おうってなってさ」
「な、なるほどな……」
 拒否権があるかを考えたが、無さそうに思えた。
(俺、押しに弱すぎるよな……)
 蓮哉と言い、湊と言い、有無を言わさず引っ張り出すキャラに耐性が無いのは間違いなかった。
「よし、行くか」
 言うまでも無いが、ここまで颯斗は返事をしていない。
 もし、カラオケ以外の誘いなら(このメンバーがそれ以外で誘うことも無さそうだが)断ったものだが、歌うことを持ち出されると、心が動かずにいられない颯斗だった。
 いつも以上に無抵抗な彼の反応を見て、湊は上機嫌になった。
 そんな様子を見て、湊と颯斗の時間を作ろうとしてくれているのか、三人が前を歩き、湊と颯斗がその後ろを少し離れて歩くという構図が、校舎を出た頃には出来ていた。
 普段は積極的に話しかけて来るのに、何故か何も言わない湊。その空気が嫌で、颯斗は話題を探した。
「そう言や……湊のお父さんって、バンドマンなんだよな?」
 以前、そんな風に湊が言っていたのを思い出して、尋ねてみたは良いものの、口にしてから、湊がこの先バンドを続けるのは難しい、とも言っていた気がして、矛盾しているように感じた。
「あー……あれはね。半分嘘って言うか……何て言うか……うーん、どうなんだろ。バンドマンって、どうしてたらバンドマン?」
「え、何だよそれ。って言うかそれを俺に聞くのか?」
「前にアタシが言った家のこと、みんなには内緒なんだよ。あいつらとは、遠慮とか無く付き合いたいのもあって。だから、その、バンドマンってことにしてる。実際、あそこ使って友達と演奏はしてるけど、軽音って言うより、吹奏楽に近い感じだし。ドラムセットはうちのじゃなくて、茉莉亜が持ち込んでる奴だしな」
「なるほどなぁ……でも、だったら湊のも許してくれたって良さそうなのにな?」
 茉莉亜が以下の下りは聞かなかったことにした。持ち込んでいる姿を想像しようにも出来なかった。
「あたしのはチャラチャラした奴だと思ってる。小説は良くても漫画はダメだって言うし」
「硬派だな……」
「そうそう。もうカッチカチだよ、あの頭」
 前を歩く三人は、二人がどんな会話をしているかに意識を向けていた。
「鷺沼君、『許してくれたって良さそうなのにな?』とか言ってるよ。もしかしてあれ、そういう関係になることを、って意味かな?」
 聴力に自信のある(あくまでも自称)美園が言葉の端々をかろうじて聞いて伝えるものだから、湊と颯斗の関係は、三人の中では全く違って理解されていた。
 今日のカラオケで二人の関係を深めようと、それ以降の会話は聞くこと無く、三人は一足先にカラオケ店へ急いだ。
 そんな企みがあるとはもちろん知らない二人は、それからは何気無い話をしながら、ゆっくり後を追って店内に入った。三人の待つ部屋の番号を聞いて、いざ、扉を開けようとする段階になって、颯斗はようやくある事実に気付いた。
(男、俺一人じゃ……)
 ライブの練習をし始めの頃は意識していたが、それも日が経つと慣れてしまって、特に感じなくなっていたが、狭い密室で、となると話は別。俄に緊張感が高まるのを感じた。
「あ、そ、そうだ。飲み物、何が要る? 俺、取って来るよ」
 明らかに動揺しているのが丸わかりな感じだったが、颯斗に気のある湊は、それを気を利かせた、と取ったようで、カルピスを頼むと先に部屋に入った。
(落ち着け、落ち着け……。今までだって普通に話してたんだし、そんなに意識することは無いよな)
 深呼吸して、そう言い聞かせていると、サーバーの所に着く頃には、緊張は上手くほぐれていた。自分以外が全員女子だと言っても、別に歌うか歌っているのを聞くだけだし、緊張する要素が無い、と冷静に考えて、二人分のカルピスを注いだ。
 そして、和らいだ表情で今度こそ部屋に向かおうとした瞬間だった。
「あれ、颯斗じゃねえか」
「お、どないしたん、こないなとこで!」
 見間違えようにも見間違えられない、異常に目立つ二人組が、目の前に立っていた。
 気のせいです人違いです、と言いたげな顔をして切り抜けようとした颯斗だったが、二人にしっかり進路を妨害される。
「なんでこんな所にいるのか……聞きたいのは俺の方だよ……」
 緊張は完全に消え去ったが、新たに降って湧いたのは、確実に予想される波乱の展開への、大きな大きな不安だった。
やっっっと虎太郎が出せました!
あれ? 虎太郎が出るのはもう少し先だと思っていた? という皆さん!
ここに虎太郎が出る意味もちゃぁんとありますから!
あ、虎太郎推しなんです、藤夜は!
なんかかわいいでしょ! だんだん好きになって来ちゃうでしょ!
あはは!(疲れています、多分)
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