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歌い手カレシと絵師なカノジョ 作者:藤夜アキ
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第五十七話 君と同じ

〝ありがとうございます。あ、もうすぐ学校始まるので、コンタクトを送るのは、またお昼休みで良いですか?〟
 颯斗は〝急がなくても、いつでも大丈夫ですよ〟と送ると、スリープモードにすることなく、携帯を机の上に置いて、顔を上げた。
 どんどんと近付いて行く、二人の距離。それが嬉しくもあって、けれど、何処か不安でもあった。〝何か〟を期待してしまいそうで。ネットの持つ力を信じている一方で、だからこそ生じる切なさを、無視出来なかった。
(今度は――違う、違うはず)
 微かに痛みを覚えた。それ以上、考えなかったけれど。
 青さの増す空の色を、明るい色だと見るか、暗い色だと見るか、どちらにでも傾きそうな心境だったから。
 チャイムが鳴り始めてから、一限目の国語科の教師が慌ただしく入って来た。
 どうせすぐ寝てしまうだろうし、忘れられる、そんな風に思って、颯斗は思考を捨てた。昼休みになれば、良い出来事も待っているだろうし、なんて、期待して。あんな風に書いたけれど、きっと、しろももは昼休みにコンタクトを送ってくるだろうと分かっていた。
 そして、その予想は当たっていた。
 昼休みが始まってすぐ、しろももからコンタクトが送られて来た。
〝麗音さん! しろももです!〟
〝承認しましたよ。よろしくお願いします。スカイプだと気付かないこととかもあるので、今後急ぎの用事があったりしたら、先にツイッターで声をかけてもらった方が確実だと思います〟
〝分かりました!〟
 一つだけ持って来た菓子パンをかじりながら、颯斗が携帯の画面を見つめていると、敦が寄って来た。
「颯斗が昼休みに起きてる、珍しいね」
「今日は起きてたい気分だしな」
「それ、一年に何回あるんだよー」
「そうだな……五回くらいか?」
「折角だから数えとこう」
「絶対忘れてるだろ……」
「まあ、そーだろうね」
 このまましろももと話をしようかと思っていた矢先に敦が来たことで、颯斗は少しだけ残念に思った。それでも、敦をないがしろにしたいとか、そういう気持ちは湧かなかったし、逆に、あまりがっつかない方が、距離感として良さそうだとも思えて、敦と昼食を取る(と言っても、もう菓子パンはほとんど食べ終わっていたけれど)ことにした。
 が、
「おーい、葛西、軽音部の奴らが呼びに来てるぞー」
「あ、やべ、忘れてたわ。ごめん、颯斗、ミーティングあったの忘れてたから、行って来る。お昼一緒に食べるのは、また今度で! って、次来たときは寝てるかもしんないけど!」
 ぴゅーっと行ってしまった敦。きつい風が吹き抜けて行ったような感じだった。
 ふう、とため息をついてから、画面が付けっぱなしだったことに気付いた。
 画面には、
〝そう言えば、麗音さんって、どういう学生さんなんですか? あ、どういう、って言うのは、大学生とか、専門学校生とか、そういう感じのです〟
 と送られて来ていた。どうやら、しろももも颯斗と同じで、もっと会話したい様子だ。
 五分ほど経ってしまっているが、今返信しても、まだ返って来るだろうか? 僅かな時間の隔たりでも気になって、不安を覚えた。相手が目の前にいないと、その辺りはどうしても困ってしまう。
〝高校生です〟
 しろももになら、明かして良いと思った。いや、知って欲しい、そんな気持ちがあった。ただ、向こうが年上なら、ひょっとすると相手にしてくれなくなるんじゃないかと思って、自分から積極的に告げようと思ったことは無かった。
 どうやら、しろももも同じく画面をそのままにしていたのか、颯斗がメッセージを送り終えてすぐ、〝入力中〟と表示された。
 有名な絵師は、中学生から社会人まで、幅広い層がいるし、学校がある、とだけ分かったおかげで、社会人は候補から外れたけれど、いったいいくつなのか、まるで想像がつかなかった。画風が大人びているとは言っても、プロフィールを見てみたら〝JC3〟とか書かれていた、なんて話はよくあるし、しろももが年下である可能性も多分にあった。
〝えっ、麗音さんも高校生なんですか?( ゜Д゜) 私も高校生なんですけど……。え、高校生であんなに人気歌い手って……凄くないですか、本当……ちなみに、何年生ですか? 私は高2です!〟
 どんな奇跡があるんだろう、なんて思った。別に、颯斗に年齢による好みの違いなんて無かったけれど、同い年であることが、安心感と親近感を覚えさせた。
〝俺も高2です。同い年だったんですね〟
 しろももが、ぐっ、と身近な存在に思えた。それと同時に、自らと同い年で、あんなに麗しいイラストを描ける腕を持っていることに、素直に尊敬したし、その凄さに憧れた。
〝お、同い年……! なんか、嬉しい? です。麗音さんとの距離が近付いた感じがする、って言うか〟
〝そうですね。あ、同い年だったら、タメで良いですよ。苦手だったら、別にこのままで大丈夫ですけど〟
〝う、うーん、麗音さんにタメ口……その方が親しい感じにはなりそうですけど……な、なんか、恐れ多くて、自信無いです(._.)〟
〝意識して、って、逆に難しいかもしれないですね。自然に出るようになったら、で行きましょうか〟
〝それが良さそうですね!〟
 同い年だと分かってからの、画面を見つめる二人の表情は、見事なまでに同じ、優しい顔だった。
 二人が、唯一心から優しい気持ちで接することが出来るのが、それぞれで。その時の姿勢は、創作に向き合う時のそれと、どこまでも、同じだった。
 大好きなものに打ち込んでいる時の、それと。
今日は余裕を持って書けました。
顔文字を使うことに、幾らか抵抗はあるのですが、媒体がツイッターやらスカイプなのに、何も使わないのは逆に変だろう、ということで、うるさくない程度に使っています。本当は、もう少し可愛い奴を使いたいんですが、文字化けしかねないので、基本的にはどのような端末で見ても化けないような、標準的な記号のみを使った顔文字だけを使うことにしています。
そうすると、凄く女子力出ないんですけどネ。

絵文字とかも使ってみたいくらいなのですが、さすがにそれは出来ないですし、その辺りは、脳内補完して下さるとありがたいです。
漫画に出来たら、その辺りもリアリティ出せるんだけどなぁ、っていう、残念さがあります。

いつか漫画も描けたら良いですね。
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