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歌い手カレシと絵師なカノジョ 作者:藤夜アキ
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第四十七話 点と点が繋がる

「鷺沼君――」
 最初、颯斗は話しかけられたことに気付かなかった。昨晩、あれこれ思い悩んでいる内に夜が明け、床についたのは朝方の四時だったからだ。悩みの種は、先日のライブで歌った例の曲を【歌ってみた】として投稿してみたものの、出来具合にどうにも納得が行かず、取り下げてしまったこと。折角のしろももからの提案だっただけに、どうにか仕上げたかったが、いざ収録してみた所、何故かライブで歌った時の昂揚感は無く、満足行かない出来を、無理矢理誤魔化そうとしてみても、歌い手としての矜持がそれを許さなかった。結局、中途半端にしか完成しなかったその動画は、僅か一時間程しか公開されず、一部の熱狂的なファンが聞いたのみに留まった。
 その不完全燃焼がたたって、睡眠時間を欠いた颯斗は、いつにも増して亡霊気味で、何故か、普段なら机に突っ伏して寝倒す昼休みに、廊下に出て、教室の窓ガラスにもたれかかって呆けていた。
「鷺沼君、聞いてる?」
 薫からの二度目の呼びかけに、今度は気付いたものの、薫の方に向けた顔は、中々に酷いそれだった。
「うわ……随分顔色悪いね、大丈夫?」
「あ、ああ……寝不足で……。で、何……」
 颯斗と薫との間に、クラスメイト以上の関係性はこれまでの所無い。
(こいつの名前……何だったっけな……マサキ……? ミサキ……?)
 颯斗からすると、クラスメイトDくらいの存在で、そうなると、名前は記憶すべき対象に無かった。
「もしかしなくても、鷺沼君って――」
 だが、次の一言で、颯斗の眠気はすっ飛び、それはおろか、薫の名字を記憶の深層から(あったことがある意味で奇跡だが)引き上げた。
「歌い手の麗音、だよね?」
「なっ――」
 カマをかけられていたとしても、そうでなかったとしても、颯斗はこれまでの学校生活で、自身が麗音として活動していることが知られるとはついぞ思わなかったわけで、その反応は誰がどう見ても〝なんで知ってるんだ?〟と口にしたも同然だった。
「そうだよね?」
 ただ、そこからの颯斗は、それなりに冷静さを保つことに成功した。もとより、取り乱したりしない性格だし、焦って相手の知らない情報まで漏らしてしまうような馬鹿でもなかった。
 薫の真意を伺いながら、「そうだけど、なんで知ってるんだ?」とだけ尋ねた。
 ともすると、颯斗が望む穏やかな日常が崩れてしまうようなことにもなりかねない。慎重に、薫が接触して来た理由を探るしかない。
「ああ、ごめん、そのことを誰かにバラしたりとか、それで強請ったりしようとか、そういう意図は無いから、安心して良いよ。実はね、昨日、麗お――鷺沼君が上げた動画をたまたま見てね――あ、あれなんで消しちゃったの? まあ良いや、この前ライブで聞いたのと同じ声だったから、もしかして、そうなんじゃないか、って思って、ね」
 薫が話し始めた辺りで、ちょうど二人の脇を、女子が数人通って行ったが、その時に〝麗音〟と呼び切らず、言い換えた時点で、少し、警戒心は薄れた。どうやら薫は、言葉通り、麗音の正体について知ったことを、悪用しようとする気は無いらしいと分かった。
「……で、何の用?」
 夕葉にしてみせようものなら、完全に喧嘩を売っている対応だが、薫は気にも止めなかった。
「実は僕、君のフォロワーのアルデンテPこと、パンドラなんだよ。俄には信じがたいかもしれないけど」
「……『インディペンデンス・デイ』の?」
「そう。いやあ、驚いたよ。まさか同じ学校に、しかもクラスにいたなんて。いつか色々話してみたいとは思ってたけど、直接話せる機会があるなんて、思いもしなかったよ」
「正直、半分くらい信じられない感じがする。実際に中の人、っていうか……活動してる人がいるのは、分かってるんだが。会ってみたら、いるんだな、って思う反面、本当にそうなのか、って、思うって言うか」
「ああ、分かる、分かるよ、その感覚。僕もライブを見てなかったら、ここまで確信は持ててないと思う」
「そうか……ライブ来てたんだっけか」
「うん、そうだよ。でさ、なんで昨日の消しちゃったの?」
 颯斗は意識していなかったが、もう一つの存在が繋がっていたことがそうさせるのか、二人はほぼ初対面と同じくらいの関係だったはずなのに、自然と話していた。
「出来が……納得行かなかった」
「なるほどね……。ライブの時の雰囲気が出せなかった感じ?」
「そうだな……」
「じゃあさ、例えば――」
 それから二人は、予鈴が鳴るまで話し続けた。平穏な日々を送れる代わりに、身近な所で歌や音楽の話が出来る相手は、これまでいなかった。敦とは音楽の趣味が違うせいか、それほど話をしたことはない。ミシェルや虎太郎なんかとチャットで話しても良いのだが、そうまでして、というのが颯斗なわけで、気軽に話せる相手が出来たことは、彼にとって幸せなことだった。
 薫が求めていたのも、一定水準を超えた者との会話だったし、かと言って一方的に利用したい、というわけでもなく、互いに高め合える仲が上手く築けたことは(颯斗がすぐに対応出来たことは、やはり本当に奇跡と呼ぶに相応しいかもしれない)、まさに理想的な展開となった。
 二人の間には、こうして太い繋がりが出来た。
 そして、もうすぐ、この繋がりには、彼女もまた、加わることになるのだった。
ラストのまとめ方が納得行かない……どうしよう。

※もし納得行かなかったら、颯斗みたく消しはしませんが、書き換えるかもしれないです。
消化不良の感じで申し訳ないです。
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