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歌い手カレシと絵師なカノジョ 作者:藤夜アキ
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第百二十話 レイヤーなのかゲーマーなのか

「人には言うなよ。騒がれると面倒だからな」
「有名人なのか?」
 ミシェルが答えるより先に、自分のスマホを颯斗に見せる蓮哉。
「見たこと無い? この子」
 映っていたのは、黒一色の格好のコスプレイヤー。目隠しをした銀髪のキャラで、背中をこちらに向けていたが、臀部を覆う布が無く、しかも太股までの長い革製のブーツを履いているせいで、その部分が過度に強調されているように思われ、直視し辛かった。持っている刀は模造刀のはずだが、コスプレのクオリティの高さ故、直接対峙すれば、その場で斬られそうな勢いだ。
 当然ながら、目隠しのせいで顔が分からない。
「顔が見えてねえのに分かるかよ」
「だよねー」
 続いて見せられたのは、金髪の女の子のコスプレ。カッターシャツの上に、特徴的なピンクのセーターを着ている。音符の髪留めや、音符模様のスカートからして、何か音楽を想起させるキャラのようだ。先ほどのキャラと違って今度は顔が見える。日本人、ではないように見える。そう思ってからすぐ、あ、フレデリカとか言ってたな、と思い出した。元のキャラがどうなのかは分からないが、凄まじい大きさの胸が声高に主張しているのは、セーターが相当な立体感を伴っている所からよく分かった。
「見たことある……気がする」
 外国人レイヤーと言えど、颯斗はそこまでレイヤーに詳しくないし、好き好んで見ているわけでもないから、確かな記憶が呼び出せない。だが、全く見覚えが無い、とも言い切れなかった。
「知ってるはずなんだよねー、絶対」
「なんでだよ」
「誰かさんが少し前までバンバンリツイートしてたからね!」
「は……?」
「最近はリアル嫁にタイムラインも監視されてるから、下手なこと出来ないらしーけど!」
 腹を抱えて笑い始めた蓮哉。そこまで聞いて、颯斗は「ああ……」と理解した。それと同時に、タイムラインまで監視され始めたのか、と同情した。合宿で相対した時には、まともな部分もあるように感じたが、やはり虎太郎にまつわる内容においては、かなり恐ろしいカノジョになってしまうらしい。
 もしや、夕葉とも付き合うようなことになったら、息苦しさを感じることもあるのだろうかと、颯斗は少しだけ心配した。
 夕葉のことを、しろももとしか知らなかった頃には、夢物語のように思い描くだけだった日々も、夕葉として知り、懇意になり始めた今は、無意識の内だけれど、現実味を持った未来のことを考えるようになった。
 少なくとも、茜ほどとんでもないことにはならないだろうと思って、颯斗は意識を目の前に戻す。
「虎太郎がバカみたいに流してきたレイヤーの写真の中に、いたような気がするわ」
「バカ言うなや!」
「そ、この子がフレデリカちゃん」
 相変わらず、虎太郎の発言はスルーされっぱなしだ。
「で、ミシェルのカノジョ、か」
「レイヤーさんの中でも、かなり人気の人だよ、この人。確かに、カレシがいるって分かったら、結構な騒ぎになるだろうね」
 薫はパッと見ただけで分かったのか、レイヤーとしてのフレデリカの立ち位置を付け加えた。
「レイヤーもアイドルも、何となくだけど男の存在って匂わせないよな」
「アイドルは知らねえけど、そんなのは男側の勝手な希望だからな。恋愛禁止とかされてなきゃ、普通に恋もすんだろ」
「フレちゃんがカレシ持ちって知った時には、愕然としたわぁ……。しかも相手がミシェルやろ? なんちゅーか、物凄っい腹立ったわ」
「人の恋愛に勝手に腹立ててんじゃねえよ。ってか、顔だけはまともな女に好かれてんだから、人様の女に色目使ってんじゃねえよ」
 何だかんだ、本当に仲良いよな、と颯斗は二人の様子を見ていた。喧嘩というほどでもないが、言葉で小突き合っている感じが、仲の良さを物語っている気がした。
「意外だと思うけど、ミシェル、フレデリカちゃんにはゾッコンだからねー、突っ込めば面白い話、聞けちゃうかもよー?」
 そうやってほのぼのとしている所に、蓮哉が悪魔の囁きをしてくる。あのなぁ……と思う颯斗でもあったが、その一方で、カノジョのことで熱くなるミシェルというのも見てみたくなって、少しくらい、その提案に乗ってやっても良いかと思った。
「なあ、ミシェル、その、カノジョとはどんな風に知り合ったんだ?」
 普段なら鬱陶しげに話を聞くだけの颯斗がそんな質問をしてきたことを訝しむミシェル。少しの間言葉を発さなかったが、質問自体には取り立てて違和感を覚えなかったからか、口を開いた。
「大学で一緒だったんだよ。それこそ、随分前からだな。あいつがコスプレするより前だからな、レイヤーのあいつに手を出したんじゃなくて、カノジョがレイヤーになったんだ」
 どうやら、レイヤーのカノジョがいる、ということに誤解を受けやすいのか、ミシェルは聞いてもいないことにまで答えた。
 チラリ、と蓮哉の方を見ると、(もっと面白いこと聞けよー!)と言いたげな顔をしていて、颯斗はもう少し面白げな質問を探した。
「レイヤーのカノジョがいるってことはさ、ミシェルもコスプレさせられたりするのか……?」
「いや、あいつは自分がするのは好きだが、俺には求めてこないな。しかも、家にいる時はゲーム三昧だからな」
「家?」
「同棲してるんだよ、ミシェルとフレデリカちゃんは」
 付き合う、と言ってもそのレベルなのか、と驚く颯斗。それでいてミシェルと関わってきた今までで、一度もその存在を匂わせなかったのは、ある意味で凄いことだよな、と感じた。ただ単に、颯斗が鈍いだけだったのかもしれないが。
「ええよなぁ、あんな子と一つ屋根の下とか、ロマンスやなぁ」
「そりゃあミシェルも、目の下にクマ作るくらい、夕べもお楽しみだったんだよねー?」
 蓮哉は自分の目元を指差して、昨晩の楽しみを揶揄してみせた。
「寝かせてくれなかったからな……」
 おお……と一瞬静まった室内。寝かせなかったのではなく、寝かせてくれなかった、というのを聞いて、さすが外国人だ……なんて雰囲気が生まれた。
「お前らが期待してるような展開じゃねえからな。朝までスト○ァイに付き合わされたんだ」
 全員が想像していた夜の格闘技の方ではなく、文字通りの格闘技の方だった。
「フレちゃんはめっちゃ強いからな。ネット対戦でも基本高レートの常連やから。どないなゲームやっても全く勝てへん」
「クソ廃人だからな……」
 そう語るミシェルの目には、虎太郎が茜のことを語る時と同じく、光を失っていた。
「撮影の無い日は基本的に昼から朝までゲーム尽くしでな、デートに誘ってもよく断られる」
 昼から朝まで、というのが何ともリアリティに溢れて聞こえる。生活時間が常人とは明らかに違うことを明確に示していた。
「仕事……って、レイヤーってことで良いのか?」
「まあ、金は入るけどな、それ全部ゲームに注ぎ込むから、実質赤字経営だ」
「でもでも、ミシェルが全面的にバックアップしてあげてるんだよねー?」
「まあ、俺が面倒見てやらねえとどうしようもねえからな」
 満足そうに言い切るミシェルの顔を見て、あ、なるほど、と感じた颯斗。まともに働かせて稼がせる、という選択肢は無く、自分の甲斐性で完全に食わせようとするくらい、どっぷりなのが分かった。
「フレデリカさんって、レイヤーなのか、ゲーマーなのかよく分からない人ですよね。ゲーム実況されてるの時々見るんですけど、本職ゲーマーなのかって思うくらい上手いですし」
「そっちは完全に趣味だから稼ぎになんねえんだよなぁ……」
 が、割と全面的に扶養しようとするのは、中々以上に大変なようだ。それでも、仕方ない奴だ、くらいの表情で、こうして男は貢がされるのか、なんてぼんやり思う颯斗だった。それから、またも夕葉のことを思い浮かべて、あいつは金かかんのかなぁ、とか考えた。
「ほら、俺の話もしたからな、そろそろ他のメンバー移れよ」
「んー、まだまだ聞き足りない感じはするけど、そうだね、じゃあ、颯斗は大トリに取っておきたいから――」
「は? どう――」
「薫君、次薫君ね!」
 恋バナ大会のノリは忘れてしまったのか、蓮哉はごくごく自然に薫を指名した。
第百二十話です。
百話からもう二十話も経ったのか、それともまだ二十話なのか、私からすれば、毎回2,000字は書いているので、40,000字超えているという意味では、やっと二十話です。

さて、フリッカがフレデリカであることが前話で示されましたが、皆様、フレデリカがどういうキャラなのか、当てられましたでしょうか?(そもそも質問を出していないのに)
答えはコスプレイヤーでした。
フルネームはフレデリカ・ガルシアです。ミドルネームは考えていません。アイルランド系アメリカ人という設定です。本編には今のところ直接の登場予定はありません、ということでしたが、チラホラ姿を見せる可能性が出てきました。

今回フリッカがコスプレしたキャラは、皆様ご想像がおつきかと思われます。どちらもつい最近出たばかりのゲームのキャラですね。片一方はまさに直近のゲームからです。

元はスピンオフ企画用に用意したキャラだったんですが、何故だか本編進出を半分ほど達成しました。栄転ですね。尚スピンオフ企画は頓挫しております(笑)

さて、前話でも告知しました通り、昨日(3/15)、新連載の恋愛小説「本当の恋は、午後2時のカフェテリアで。」を投稿いたしました。こちらも宜しければお読みになっていただけると幸いです。
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