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歌い手カレシと絵師なカノジョ 作者:藤夜アキ
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第百十九話 気ぃ付いたら香川

「何や、また始まったで」
「合コンとかにいたら盛り上がる感じだな」
「俺はもう帰りたい」
「あ、いつもこんな感じなんだ?」
 三人のハイライトを失った瞳を見て、薫は蓮哉のノリの受容具合をすぐさま察知した。
「それじゃあ、まずはヤンデレめんどくさい系女子に絡まれてる色黒関西弁男子こと、おせんべさーん! あなたの恋愛トークからカモーン!」
「しばいたらええんか、ツッコんだからええんか、無視したらええんか、どれなんやろ」
「諦めてやる、が正解なんじゃねえか、今までもそうだっただろ」
 虎太郎の選択肢は、どれを取っても最終的には蓮哉の思い通りになりそうだとしか思えず、ミシェルも下手に逆らわない方針になっているようだ。
「なんで人様の女そないぼろくそに言われて参加せなあかんねん……」
「ってか、怒らねえんだな、ぼろくそ言われてんのに」
「半分くらい当たってるしなあ」
 まあ、俺も否定はしねえよ、とミシェルは思った。
「ほれほれ、はよ答えてくりゃれー」
「蓮哉、関西弁下手やなぁ。ってか、マイクで言わんでええやろ、普通にやるわ」
 蓮哉にマイクを渡されるも、それはテーブルに置いて、ため息を一つ吐いてから、虎太郎は蓮哉の思惑についていたって冷静に尋ねた。
「ってか、何話したらええんや」
「え? 恋バナだよー?」
「恋バナ言うたかて、女子とちゃうんやから、思いつかんわ」
「うーん、なるほどねー。それじゃあ、五組の中谷さんは、どう?」
「中谷かぁ。あの乳ええよなぁ。て、中谷さんて誰やねん」
「おー、これが関西人のセルフツッコミぃ……。イイネ!」
 合宿と違って茜がいない分、虎太郎が蓮哉のノリに合わせられるだけの余裕を持ち合わせていて、ミシェルも眠たさのせいかローテンションになっているおかげで、トークの暴走列車は止まる気配が無い。
「帰って良いか、これ」
「まあまあ。まだ来たばっかりなんだし」
 薫になだめられて、何とか残るつもりになっているものの、颯斗は気怠さマックスだ。
「それは冗談としてさ、虎太郎的にはあの手練れのヤンデレさんとどうなのよ」
「どーせ聞かんかったって知ってるんやろ? 風邪から復帰した後、香川旅行に連れてかれたん」
「いやぁ、知らないなぁー」
 明らかにそのニヤニヤ顔は知っている顔だったが、その話をより詳しく本人の口から聞きたい、という様子で、虎太郎は唸りながらも話すことにした。
「風邪も治りかけの頃やったかな、茜、うどん食いたいて急に言い出してな――」
 そう言った直後、身震いした虎太郎。ついさっきまで健康的だった顔色が、唐突に青ざめていた。
「気ぃ付いたら香川やった」
 二コマ漫画か、と誰もがツッコミたくなったが、虎太郎にツッコむのは中々ハードルが高く、心の中で留めるに終わった。それより、その異様な展開の内実の方が、よっぽど気になったが。
「何々、盛られたのー? まーさかぁー」
「その、まさかや……誰や……あいつに何仕込んだんや……」
 みるみる血の気が失せていく虎太郎を見て、全員が(マジなんだな……)と同情し、それと同時に茜を恐れた。薫は茜のことをさっぱり知らなかったが、それだけに、恐ろしい人、というイメージが先行し、余計に恐れが募った。
「香川旅行自体は良かったんやで。うどんもごっつ美味しかったし。せやけど、所々思い出せへん所があるんがな、怖いんやわ……」
 合宿から今日までは、一ヶ月ほどしか経っていないはずだが、その僅かな時間で二人の関係がどこまで進んだのか、そのおどろおどろしい闇に踏み込もうとする者は、この場には誰もいなかった。
「その内結婚届に捺印してそうだねー、無意識に」
 無意識に、という部分を蓮哉が強調すると、虎太郎は諦観した様子で「そうやな……」とだけ返した。その姿があまりにも健気で、これにはさすがの蓮哉も少し謝りたくなった。
「け、けどさ、茜さん、美人だし、普通に考えたら、喜ばしい展開じゃないのー? 羨ましがられたりしないー?」
「まあ、顔はええし、スタイルもええし、声もキレイやし、手ェも足もキレイやし、肌もわりかし白いし、上物や思うんやけどな?」
「見事なまでに性格関連のワードが一つも出ねえな」
「性格まで良かったら、逆に虎太郎と不釣り合いすぎるだろ」
「ああ、なるほどな、颯斗にしては的を射たこと言うじゃねえか」
「おいこらそこ! 茜はdisっても俺disったら許さへんぞ!」
「茜さんは良いんだね……」
 歌い手たちがわいわいやるのを、羨ましくも思う薫だったが、颯斗と繋がれたことをきっかけに、他の有名歌い手を三人も前にして、同じ空間にほぼ対等にいられるだけで、今日としては十分すぎるほどの成果だった。いずれこの三人ともコラボ出来れば良い、そんな風に考える薫は、実にしたたかだ。
「あんな、茜のことポンポン好き勝手言うけどな、あれでも可愛いとこあんのやぞ」
「想像つかねえ……」
「あいつ猫舌やからな、うどんふーふーしながら食うんやけどな、そのやり方がごっつ可愛いんやわ」
「んだよ、ただのノロケじゃねえか」
「これは虎太郎ドン引きだねー」
「結局好きなんだな」
 三人に立て続けに非難され、これには虎太郎もカチンと来たのか、「ほんならお前らの話もちょっとはしたらどうなんや!」と矛先が向けられた。
「ではではー、割と謎多き銀髪ハーフのイケメンことハンニバルさーん、お次お願いしまーす」
「そのノリは必須なのか。謎にしてる気はねえけどな」
「ではまず、五組の中谷さんは」
「そのノリも要らねえよ。何だ、フリッカとの最近の出来事でも話せば良いのか?」
「フリッカ……?」
 そう言えば、ミシェルのそういった話はこれまで聞いたことが無かったな、と思う颯斗だった。見た目から思わせるほど浮ついているわけでもなく、むしろ硬派であることは知っていたが、特定の相手がいるとして、それがどんな人なのか、颯斗には想像出来なかった。
「あー、颯斗は知らないんだねー。もちろん、アルデンテ君も」
「薫で良いですよ。アルデンテはちょっと」
「あ、ごめんごめん。フリッカってのはね、ミシェルの彼氏でー」
「なんでお前が説明してんだ。しかも嘘教えてんじゃねえ。おい、お前らもそういう顔すんな。フリッカってのはな、フレデリカって女の名前の愛称だ」
 一瞬、あ、それであまり何も言わないのか、と納得しかける颯斗だったが、さらっと蓮哉が嘘を交えていたことに気付かされ、危うく信じかけた自分を諫めた。
男子五人が生き生きと掛け合いをしてくれている、そんな回になりました。
普段、目立って話の筋が途切れない場合は続けて書くのですが、更新頻度を守る都合上、文字数はある一定の範囲内に収めないと、下手に前例を作ってしまい、何だかサボっている感じが逆に出てきてしまうので、今回はキリの良いところを探して切りました。最近、文字数が以前より増え気味で大変です(笑)

今日は珍しく朝早くに書きました。早朝テンションだからこそ書けたのかもしれません。二時間くらいしか寝てなかったので、深夜テンションと変わらないかもしれません(笑)
落ち着いてはいたはずなので、暴投にはなっていないはずですが、いつもと違う感覚でしか書けないものもあると思うので、この男子会ではアリなのかもしれません。

明日、新連載を始めます。大学生の恋愛を描いた、今作のようには長くない、短めの連載にするつもりです。
イケメン過ぎて、高校で目立ちすぎて疲れてしまい、メガネをかけたりしてひっそりと生きている男の子と、クールビューティーな先輩とのカフェテリアでのほのぼのとした恋愛小説です。
6日に1回更新を予定しているので、更新ペースは本作に比べて遅めになりますが、どうぞそちらも読んでいただければ幸いです。
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