挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
歌い手カレシと絵師なカノジョ 作者:藤夜アキ
108/156

第百八話 君が気になる

 夕葉はチラチラと目だけを動かしては、颯斗が夏休み前と変わらない様子なのに不満を募らせた。自分だけが意識しているみたいな、そういうのには納得いかなかった。どうあっても、彼女が好きなのは、颯斗で、ムカつく所とか、認められない部分を抱えている颯斗だから。
 一限目も二限目も、隣の様子が気になってまるで授業に集中出来なかった。
(何やってんだあたし……)
 授業を真面目に受けない颯斗が苛立って仕方なかった、そんな頃の夕葉は、もうどこにもいない。むしろ、颯斗に心を乱されて、自分が授業を真面目に受けられていない。
 そのイライラを颯斗にぶつけてしまいたい、そう思う自分もいて、その度に自己嫌悪に陥ってしまう。
「体調、悪いのか?」
 そうやって突っ伏している姿を心配して、颯斗が声をかけてくる。
「何でもないし。構わないで」
 学校という、それまでの時間を引き継いだ空間にいることで、つい以前のような口のきき方をしてしまう。やってしまった、と思うも、反射みたいな感じだから、止めようが無かった。
「学校じゃ今まで通りが良いってことか?」
 おかげで変な誤解を与えてしまった。せっかく近くにいられるのに、一番一緒にいられる場所にいるのに、そこでは関わらないなんて、バカすぎる。
(と言うか、通話じゃあんな必死になったくせ、ここであっさり引くとか、何考えてんの)
「そんなわけないじゃん」
 仕方なく、顔だけを颯斗の方を向ける。
 パッと視界に映った顔に――どぎまぎする。
(ああもう! 何なの、この気持ち! やりづらい!)
 麗音に惚れ込んだ分の想いが、そのまま颯斗になだれ込んでしまった上、少し前には少なからず颯斗自身にも魅力を感じる部分はあったせいで、今の夕葉はつまるところ、颯斗にべた惚れしている状態だ。
「じゃあ何なんだよ。なんでそんな噛みついてくんだよ」
 その機微がまるで分からない颯斗の鈍さが逆に腹立たしくて、でも、一回その自分をときめかせる顔をそっぽ向けろとも言えず、夕葉はまた顔を伏せた。
「そんなすぐ仲良く出来るかぁ……」
 むしろ、颯斗がこれまでも仲良かったみたいに接せる理由が彼女にはまるで分からなかった。
「じゃあ、どうしたら良いんだよ」
「そんなの自分で考えて」
 思わずため息をついた。
 仲良くなりたい。恋し合う男女のように、ドキドキしながらも、ちゃんと向き合いたい。でも、一目惚れで奇跡的に上手く行った恋なんかじゃないから、これまでの時間とこれからの時間とのミスマッチのせいで、素直になりたくてもなれない。これじゃ嫌われてしまうんじゃないか、そんなことも考えたりして、また苦しくなってしまう。
「まあ、慌てる必要も無いか。アメリカ行ったりもしないしな。俺が話して良くなったら言ってくれよ」
 伯母さんの家に住まわせてもらえるようになったことは、既に伝えてあったが、そのことが別段これからの時間をたくさん共有できる、みたいなニュアンスで伝えたわけでもないし、それをそんな風に解釈されて、夕葉はまた悶えざるを得ない。何だか翻弄されてばかりなのが良い加減嫌になった彼女は、背筋を立てて、立ち去ろうとする颯斗を呼び止め――
「良い。頑張るから。は、話しかけて。そ、その、悪目立ちしないくらいに」
 真っ赤な顔で言い放った。
「やさしく受け答えしてくれよ」
 大変そうだ、とはにかみながら返す颯斗が、たまらなくかっこよく映って、それがまた複雑な感覚で受け止められて、夕葉は思わず教室を飛び出た。これ以上見つめていたら、どんな妄言が飛び出したものか分かったものじゃない。
 夕葉がどうして出て行ったのか分からない颯斗は、きょとんとしながら首をかしげた。
 その一部始終を見ていた敦は、いてもたってもいられず颯斗の方へ近付いていき、両肩を掴んで揺らしまくった。
「何、何があったのお前ら!?」
「ちょ、待っ、や、やめろっ、酔う、敦、ストッ――」
 散々揺り動かされ、若干気持ち悪くなりながら、颯斗はぼんやりとした返事をした。夏休みの間に見直すきっかけがあった、程度に。
「そ、それだけここまで仲良くなれるかな!?」
 ごもっともな反応に困った颯斗だが、冷静に誤魔化し続ける。
「し、知らないっての。俺は元々そこまで嫌ってないしな……」
「う、うーん、これは大事件だ。藤川さんにも報告しなきゃ」
「なんで藤川が出て来るんだよ」
 夕葉と美陽の仲はよく知っているが、美陽と敦の仲については無頓着で、夕葉との関係性の変化を伝えようとする行動の意図が読み取れない颯斗だった。
「え? なんでだろう? 自然に?」
 屈託のない笑顔で答えられると、はぁ、と怪訝そうに頷くしかなかった。もしかして、とも思ったが、残念ながら自分以外の色恋沙汰には関心が持てない颯斗は、それ以上の追求をしなかった。
 変化を夏がもたらしたのは、どうやら颯斗と夕葉だけには留まらない、のかもしれない。
(で、実際どうやって接していきゃあ良いんだろうな)
 まだまだ前途多難な予感しか無い二人の行く末。
(まあ、何とでもなるだろう)
 楽観的と言うか、むしろ考えたがらない颯斗なら、割と本当に何とでもなる、のかは、誰にも分からない。
 けれど、運命というものがあるなら、二人は今、良い方向に転がっている、それはきっと、誰もが認められるはずだろう。
疲れて来ました、三日目です。
だんだん何書いてるのか分からなくなって来るんですよね、もしかしてこれ、良くない?(笑)
でもこうでもしないと割と進まない気もしますよね。大変で御座る。

今日は海奈の設定を公開しました。
こちらからどうぞ。
(http://tohya-aki.hatenablog.jp/entry/2017/02/22/215932)
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ