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友人
作:亜月 聖



第7章:赤羽由紀の心の闇


物心ついたときから、私には自由がなかった。

「由紀!!何をやっているの!!」
いっつも、そんな言葉でしかられた。起床時間、ご飯を食べる時刻、勉強する時間、ピアノを弾く時間、トイレに行く時間・・・・。
すべて、あの人に支配されてきた。無論、友達なんて、できなかった。あの人が許さなかった。
特に、勉強については厳しく言われた。

「こんな簡単な問題も解けないの!!」
ヒステリックにわめき、私の頬をつねる。私は、痛さに顔をしかめながらも、自分の頭の悪さを呪う。
ご飯を食べるのが、少しでも遅れると、
「何やってるのよ!!このノロマ!!」
と、罵声とちりとりが飛んできた。

でも、決してあの人を恨んだことはなかった。

私は、あの人のことを、愛していた。

母親のあの人を。

高校生になるまでは。


高校生になっても、母の支配は変わらない。すべてを支配されていた。
別に、嫌だとは思わなかった。母が私に厳しいのは自分が悪いからだと、私がきちんとできないからだと、思っていた。

だが、そうではなかったのだ。

母は、私よりも男を選んだのだ。

高校2年生になってすぐのことだった。
いつものように、帰宅した私は厳寒に見慣れない男物の靴を発見した。
不思議に思い、リビングへ行くと見たことのない男性がソファに座っていた。母の姿はない。
「あ、お帰り由紀ちゃん」
男は、私を見つけるとニコッと微笑んだ。まだ30歳ぐらいの人だ。なかなかかっこいい人だ。だが、私にはなぜこの人がここにいるのか理解ができなかった。
「あなたは・・・・・」
「いずれ、この家に住む人間だよ」
「・・・・??」
一瞬、何を言っているのか分からなかった。そのとき、
「由紀!!何でここにいるの!!!勉強しなさい!!2階へあがりなさい!!」
母の罵声が飛んできた。振り向くと、家でしか着ないような服を身にまとった母がいた。
「は、はい!!」
母の勢いのせいで、ついつい私は返事をしてしまった。そして、リビングを出ようとした。そのとき、こびるような母の声が私の耳に届いた。
「ごめんなさいね、あなた。あの子ったら、あなたに失礼なこと言わなかった?・・・ええ、もちろん。あなたが子供嫌いなのは知っているわ。大丈夫。あの子を引き取ってくれるっていう人も見つかったことだし。あんな子、すぐに追い出すわ。そして、あなたと一緒に住むわ」

怒りで、全身が震えた。
なんてことだ。母は、私よりも男を取るというのか。

私は、ずっと母に従ってきたのに。逆らわなかったのに。

母を愛していたのに。

母は、私のことなんてどうでもいいのだ。そんなこと、すっと前から分かっていたはずだった。でも、信じていた。私は、娘なのだから。
娘を愛さない母親なんているわけないと思っていた。

いた。娘より、男を取る母親が。

私は、こんなにも母を愛しているのに・・・。

許さない・・・・。


そして、夏。いつものように、起床すると、リビングで母が待っていた。
「はい。あんたの荷物よ」
そういって、母は旅行バッグを私に向かって放り投げた。
「今日から、あんたはほかの家へ行きなさい。この家はもうあんたの居場所ではないわ」
淡々とはき捨てる母。私の心に殺意が浮かび上がってきた。

せめて、うそでも良いから、あやまってほしかった。理由を母の口から教えて欲しかった。

でも、母は話してはくれなった。

私は、黙って台所へ行き包丁を取った。
「早くしな」
母が、私の背後に立った。私は振り向きざまに、母の腹に包丁を突き刺した。
「・・・・・!!!!!!」
ゆっくりと倒れる母を見ながら、私は思った。
赤羽由紀はこれで終わりなのだと。
母に操られた人生。最後の最後で私は操り糸を断ち切った。
だが、もう操ってくれる人はいない。
糸が切れた以上、もう、動けない。
だからこそ、自分で警察に連絡をしたのだ。









お母さん・・・・・・。












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