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転生したので、役職がフリーターから仲間と戦う召喚士になりました 作者:礼状

01. 出会い篇

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01-03 拭えない疑惑

大牙猪から3人の親子を助け出した亮太とマリナは彼等が住んでいると言う山から少し離れた海沿いで、日本で言う所の愛知県の知多郡南知多町に似ている場所に位置する8件の漁師小屋を連想させる木製の家が建ち並ぶ小さな村にお邪魔させて貰える事となった。

「波の音がしていたからもしやとは思っていたけど、森を抜けたらいきなり海岸が広がっているとは……」

亮太はキラキラと太陽の光を反射させている透き通った綺麗な海を眺めつつ、無事に山道を下山し終えた事と地元の同じ人間と巡り会えたこともあって緊張から解放されていた。

「気を抜くにはまだ早いわよ。私達の目的はここに住んでいる人達を大陸外からくる予定の侵略者達から守ることなんだから」

そう言いながら亮太の右側で肩を並べて歩いているメイド犬マリナはあくまで警戒を緩めずに辺りを見渡しながら着いてきている。そのプロ意識の高さに亮太は仕事人としてベストを尽くそうとしている彼女に好感を持ち、気付けばついつい優しく頭を撫でていた。

「ありがとうなマリナちゃん。君がいたから俺はここまで無事にこられたよ」

「キャア?! い、い、い、いきなり何するのよ?! びっびっくりしたじゃない!」

顔を真っ赤にさせて慌てるマリナのその姿に亮太は可愛い子供を見たときのようないとおしさを感じたため、ついつい優しく頭を撫で続ける。

「まあまあ! これも感謝の形だから許してくれよ。よしよし」

「なっ、何が感謝の形よ! こんなに髪の毛をくしゃくしゃにして……もう!!」

そんな遠目から見たら照れる妹と褒める兄という仲の良い兄弟の様な二人を先導する形で前を歩いてくれていたイズルハ親子が後ろに振り向き声をかけてきた。


「ささっお二人さんここが俺達の家だ、生憎(あいにく)お客さんをもてなせる物は飯ぐらいしかないからせめて御馳走させてくれ」

そう言って親父さんが案内してくれたのは江戸時代の長屋を思わせる屋根つきの木製のプレハブ小屋であり。木製の引き戸を開けると入って左手に石で作られた床の上に設置された昔ながらの薪で火を起こす釜や、洗面台などが設置されているキッチンが目に入る。

そして、床から一段高い位置に玄関と居間とを区切るために備えられた左右それぞれ二枚ずつ障子(しょうじ)を使用した扉を開けると、そこには旅館の一室を連想させる18畳の畳張りの広い部屋が広がっており。

部屋の手前には家族5人以上で一緒に食卓を囲える様な木製のテーブルと削った木を編み込んで作ったであろう丸い座布団が4つ置かれていた。

「どうぞご遠慮なさらずに御上がりください! 直ぐに食事の支度をさせて頂きますので!」
「ありがとうユリちゃん。じゃあお言葉に甘えてくつろがせて頂こうかマリナちゃん?」
「そうね、それじゃあ失礼させて頂きますね」

そう言って昼食の準備に意気揚々と取り掛かるユリに感謝しつつ二人は玄関で靴を脱いでから居間に上がらせて貰い、テーブルの左側にある座布団に亮太達は腰を落ち着かせ。
そして二人に向き合う形で家主である親父さんとその息子さんが警戒しているのか、緊張した面持ちで座る。


「改めて俺の名前はシゲル。そしてせがれのショウタと娘のユリを猪どもから助け出してくれたことに感謝する!」

そう言って二人は頭を深く下げて礼をし、再び顔を上げて亮太を見据え直す。

「いえ、私達も旅の途中でたまたまシゲルさん達が教われている所に遭遇しただけの事ですので、余り気になさらないでください」

その言葉を聴いて二人は再び頭を下げた後にずっと気になっていたことを亮太に尋ねる。

「そう言えば、亮太くんは召喚士と言うこの大陸では聞き慣れない職業を役職としておられる様だが、何の目的でこの大陸に来られたのか出来れば聴いても良いか?」


その何とも返答しがたい質問を受けた亮太はちらりとマリナに視線を向け、それに気付いたマリナはゆっくりと説明を始める。

「私達がこの地に来たのはこの大陸から海を隔てた南の大陸を支配している者達が、この大陸に軍隊を上陸させてこの地をも支配しようとしていると言う情報を得たため。この大陸をその支配から守るために派遣された勇者なのです」

(え、勇者なんて初耳なんだが……)と亮太が心の中で呟いている間に、その話を聴かされた長男のショウタは左手を握り締めて、怒りを納めながら自分の思い当たるふしをつぶやく。

「……実は俺、漁師のおじさん達が最近南の方から不審な大型の船が度々来ているのを目にするようになったって話を最近聴いたんだ……。まさかそいつらが俺達の島を!」

「落ち着けせがれよ! まだそうと決まった訳では無いだろうが。亮太殿、その話はまだ他の誰にも話してはいないんだね?」

「はい。丁度我々が来たのが今日でしたので、この話をするのはシゲルさん達が初めてです」

その言葉を聴いてシゲルは頷いたかと思うと手元に帰宅してからも持ち続けていた石槍を突然亮太の喉元へと突き出す。

「なっ……あっ?! いきなり何を!?」

その突然向けられた敵意を受けて思わず悲鳴に近い言葉を吐き出す亮太であったが、目の前で槍を突きだしているシゲルは嫌に冷静であり、言葉を返す。

「……あんたらが侵略を企てている南の大陸の者ではないのか?」
「ちっ、違います! 俺はシゲルさん達が暮らすこの大陸を南の大陸の奴等から守るために派遣された者です!」

「……ほう、その態度嘘ではなさそうだ。ならば誰に頼まれてやって来た!? お前さんが南の大陸の奴等のようにこの大陸を狙う他の大陸の者であるという事でもおかしくはあるまい!!」

シゲルは依りいっそうの情報を聞き出すために槍を亮太の喉元へと更に食い込ませ、先端が軽く刺さっている喉からは小さく血が滴り落ちる。

そんな突然始まった言い争いの声を聴いて、昼食の支度に追われていたユリが慌てて居間へと入って来る。

「お父さん?! 亮太さんに何て事をしているの?! 何があったかは知らないけどこんなことはやめてよ!」

ユリはそう叫びながら二人の間に割って入り、真ん中から伸ばした両手で槍を掴んで槍を取り上げようと力を込めて頑張るのだが非力な少女の力では鍛え上げられたシゲルの立派な腕に握られた槍はびくともしない。

「ユリ、下がっていなさい!!! この男どうやら他にも隠し事をしているようでキナ臭い!! この男が村の命運を左右する力を持っている事はユリも見ていただろ?!」

「でも……お兄さんは私達を助けてくれたよ!?」

「それが私達を油断させる為の手段だとしたら私達はまんまと騙されている事になるだろう! 相手を油断させて隙を突くのは狩の基本だとユリにも教えただろ?!」

「そんな……お兄さん……。私達を騙していたの? この飴もやっぱり餌でしか無かったの……?」

父シゲルの説得により、亮太達の味方で居てくれたユリは最悪の事態に自分達が巻き込まれている事を少なからず感じたために涙目になりながら槍から手を離して後ずさる。

「ちょっと待ってくれ! 俺達は本当にこの村も大陸も支配したいとは考えていない! ただ身勝手にこの大陸を攻め混もうとしている南の大陸の奴等が許せない事と、皆を守りたいだけなんだよ!!! 信じてくれよ!!!」


亮太にとっては守りたいと思う人達に信じて貰えないことは猪達に襲われる以上の危機的状況であり。悲しいことに神様に雇われた転生者と言う余りに現実離れした立場的故に、迂闊に身分を明かす事が出来ず。

ただただ信じてほしいとお願いする事しか出来ない亮太は更なる疑惑の目が向けられてしまう。


「ちっ……やはりこやつはくせ者以外の何者でも無いようだ! 今一思いに……」

そう言い、シゲルが槍を持つ手に力を入れて亮太の喉を一突きにしようとした為にユリが悲鳴を上げ、隣でその様子を息を飲みながらショウタが見ていたその一瞬。

「どうやら今は理解しては貰えなさそうね……」

亮太の喉を貫かんとしていた槍は真ん中の部分でいつの間にか綺麗に真っ二つに折れており。槍の矛先がある方をいつの間にかマリナが左手に持っていた為に、矛先を折ったその姿を見切る処か気づくことすら出来なかった全員は只の少女だと侮っていたマリナの実力に唖然とさせられる。

「言っておくけど、私達が伝えた事には嘘偽りは無いわ。このまま何もしていなくても南の大陸の軍隊がこの大陸に攻めて来る事には変わりは無いと言う事だけはもう一度御伝えしておきますね。……さあ、行くわよ亮太」
「あっ、ああ……」

最早どれだけ説得しても理解してくれないと感じていた亮太も彼女の後に続いて家を出る。

残された三人の家主達は嵐のような余りの出来事に暫く唖然としていたが、一番先に我に返ったユリが慌てて台所で作っていた握り飯を笹の葉でくるんでから急いで宛もなく追い掛け様とするものだから、父達は慌てて引き止める。


「ユリ!! いっては駄目だ!! 奴等は只者ではない!!」
「あれだけの動きを見せた人間を俺は見たことがない!! どんな目に会うか解らないぞ!!!」

その必死に引き止めようとする二人は、玄関から出ようとする前に振り替えって見せたユリの表情を見て思わず黙り混む。彼女は目が揺れて見える程に涙を目に貯めていたのである。

「わたしは……まだちゃんとお兄さん達に……ありがとうって言ってない……!」


そう言い残して家から飛び出して行った彼女の後ろ姿を見せられてつい二人は黙り混み。先に立ち上がった父が外に出ていこうとする為、慌ててショウタが行き先を尋ねる。

「待ってくれ親父何処に行くんだ?」

「……今から村長さん所に行って話をしてくる。ショウタ、お前はユリを連れ戻してきてくれ。武器も忘れるなよ……」

そう言い残してシゲルは家を去っていった。



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