挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
転生したので、役職がフリーターから仲間と戦う召喚士になりました 作者:礼状

05.日ノ本の灯が沈む時篇

77/99

05-06 黒船で来港【Final】

遅くなりましてすいません!
 
 話は織田家との交渉を行う亮太達が名古屋港でまだミーティングを行っていて、指定した時間の約30分前の信長側視点で進められる。

 今回亮太達が日ノ本に上陸する地点となっている織田家の領土である津島港(名古屋港)は、切り分けられた複数の大陸を橋で繋げた様な神社がある西側の天王島と、間に3隻程の漁船が通れる幅を持つ川があり。

その川を跨いだ形で東側には大きな大陸があり。そこには船着き場が設けられた【五ヶ村】と呼ばれる270軒以上の小屋と6軒の屋敷に、14軒の屋敷と同じ大きさの蔵がある港町がある。

 その東側の船着き場付近では織田家の足軽兵達が慌ただしく船着き場を行き交っており。彼等は船着き場の外側に向けて、矢盾と呼ばれる置き鏡の様に地面に突き立ち、銃撃や矢を防ぐ高さ2mの矢盾が幅二メートル間隔で8重に設置されていて。
 その盾の裏には火縄銃や、弓を扱う足軽兵達が緊張を何とか納めるかの様に談笑しており。その様子を織田家から数日前から避難指示を受けていながらも村の小屋にこっそり残っていた地元民達が、木造の長屋の小窓からこっそりと見ていた。

「やれやれ……南蛮の人間に依存する様なら、織田家も終わりだみゃあ……」

「噂によれば、天皇陛下が協力を申し入れられた相手らしいけどみゃあ?」

「ふん。馬鹿じゃみゃあお前さんは……。天皇陛下は自らが誰からも相手にされないから、南蛮の良くわからない奴等に騙されたんだみゃあ……」

「おい……!! 幾らなんでもその言い様は不敬であろうみゃあ?!」

 明かりの無い長屋の中で吐き捨てる様にそう語る中年男に、思わずもう一人いた男が声を荒げそうになる。しかし中年男は反省する素振りも見せずに言い返す。

「不敬であろうが無かろうが、100年近く内戦が続いて疲弊しきっている日ノ本には南蛮の奴等を追い返す力は残っていない……。そんな日ノ本に奴等を上陸させてしまえば……どうなるかはお前にもわかるよみゃ?」

「そ……それはみゃ……」

 その言葉を聴かされた反論していた男は思わず言葉が返せなくなり、そうなる事を予想していた男は変わらず冷静に話を纏める。

「だからこそ我々は今川家と松平家と手を組んで、織田の馬鹿殿と南蛮どもをこの街で亡き者とするんだみゃ……」

 彼等の様な思いを持って街に居る者は、今回の襲撃作戦を決行する時を今か今かと待ち続ける。


 ーーーーー◇ーーーーー


 そして彼等の様子は船着き場に築かれていて、織田家の家紋が刻まれている黄色い天幕の中で方膝をついて平伏している黒いスーツに赤ネクタイ姿のトレノにより、天幕の地面に映像を映し出す事で丸見えになっていた。

「ーーと言う思わくを持つもの達がこの街の小屋や、屋敷に潜伏していて。東側の陸路からは1部の反対派である今川家と松平家の者達が独断で港への襲撃作戦を行おうとしている様です」

「であるか。やはり、反対する者達が雪崩れ込んで来るか……」

 そう言って天幕の中央で冷静に返したのは、鎧姿で椅子に座りながら口元に手をやって思考にふける、ちょび髭を生やし始めた若き織田信長であり。
 彼の前にはバスの座席の様に左右に織田家の家臣達(佐久間信盛さくまのぶもり丹羽長秀にわながひで柴田勝家(しばたかついえ)、弟の織田信勝(おだのぶかつ))が並んで椅子に座っており。

 適応力の高い信長と違って、突然トレノから超未来的な技術を見せられた皆は色々な意味で慌てふためいていた。

「な、地面が水面の様に村の様子を映し出しておるだと?!? これが南蛮の技術力だと言うのか?!!」

 お髭がボウボウ過ぎて、熊の様な容姿をしている柴田勝家は大声をあげながら座っていた椅子を後ろに転がしながら立ち上がり。

「あらあら……この様子だと一千を超える人達がやって来そうですね……」

 鮮やかな着物の上に鎧を着たような華やかな姿をしながら、モニターを見ながら呟く大和撫子美女な丹羽長秀。

「これは……困りましたね……。天皇陛下からの書状を見ても気にしないやからがこれだけいるとは……」

 そう言いつつ、額に汗を滲ませる織田家に長らく使えている30代の佐久間信盛。

「ははははは!!! 丁度いいではないですか兄上!! わざわざ反抗する意思を持つもの達が纏めて来てくれたのじゃからな!! 国賊として纏めて葬ってくれるのじゃ!!!」

「余り残虐な事はしてくれるなよ信勝。彼等は戸惑っているだけの無知な民なのだからな」

 そう言って信長に諭されたのは信長の弟であり、黒い鎧に何故か金の装飾が施された赤いマントを羽織り、高笑いをする中性的な容姿を持つ美少年、織田信勝である。

 そんな個性的な彼等と対峙しているのは交渉役として日ノ本に訪れているトレノであり。彼等は自分達の命運を左右する来訪者となるであろう亮太達を待ち構えていたのだが。
 亮太達が訪れる前に彼等の周囲には自分達の事を気に食わない者達が大勢の刺客を送り込み、自分達を亡き者とすると共に得たいの知れない亮太達の出鼻を挫いて追い返そうとしている者達の出現に追い詰められていた。

「親方様……。トレノ様が言われた通りの場所を調べさせた所、全ての場所に伏兵が潜んでおりまして。同じく、東側からも今川家と松平家の武装した反対派が直ぐそこまで近付きつつあります……」

「であるか。ご苦労であった。引き続き監視を続けよ、港に足を踏み入れる直前まで攻撃はしてはならぬぞ?」

「御意」

 この事を理解している信長は周囲に敵を近付けさせない為に、港の入口に建てさせた二ヶ所の砦に信頼できる兵士達に4重の防衛線を整えさせ、忍び達には怪しげな者達を見張らせていた。

 その怪しげな者達の中には織田家との同盟に反対し続けている松平家と今川家の者達だけでなく、今川家と三国同盟を結んでいる北条家、武田家の忍び達。
 そして、外国との関わりをより増やす事になるであろう織田家の今後を気にしている堺の商人達に、敵対している美濃の斎藤家の者達の姿も確認されていた。

 その数は既に千人に達しており、監視員によると未だに増え続けている事が見受けられる。

「ここまでは予想通りだ……。トレノ殿、そなたの家臣達が到着するまでどれ程掛かる?」

「はい。彼等が船着き場に雪崩れ込む前には到着出きるかと思われます」

「ふむ……。それまでは何とか凌がねばな……」

 正しく、自らの身を危険に晒して火中の栗を拾いに行こうとしている信長に、織田家の中にも異議を持つものも出始めてはいたが。
 信長は前回亮太達に贈られた数々の見たこともない好ましい実を産み出す食物の種や、ビニール袋に包装されていた小さくもとてつもない回復効果が得られたパワーバー、ペットボトルに淹れられていたミネラルウォーター等を見て、今回の交渉は金山を見つけたに等しい価値がある事を見抜いており。

 下手をすれば自分の命を狙う者達の評判を日ノ本において地の底にまで下げ、自らが一番この国を纏める役目に近しい者に成れるのではないかと言う思いも少なからず有った。

 その事を気取られないようトレノと微笑みを交えながら話す信長の元に、港を見張っていた者から伝令が届く。

「海の向こうから白い煙を吐きながら近付いて来る、6隻からなる巨大な黒船の船団を発見致しました!!」

「であるか! 皆、此処からが我等の立場を今後大きく左右するであろう正念場だッ!! 心して掛かれッ!!!」

「はっ!!」「おおおッ!!」「ええ、参りましょう!」「よし! 思う存分暴れるのじゃ!!」

 時に午後12時54分。後に【津島の号令】と呼ばれる戦いは、信長の号令と港の外側から聴こえて来たホラ貝の野太い音を持って開始された。

「日ノ本を南蛮に売ろうとする織田家を打ち払えッ!!!」
「奴等の横暴を許してはならなぁい!!!」
「これは祖国を守る為の戦いだ!!! 絶対に許すーー」

「放てえぇぇ!!!」

 その最初の戦闘は村から蜂の巣をつついたかの様に船着き場へと殺到してきた武装した反対派に対して、矢盾によって造られた織田家の陣地から雨の様に放たれた矢によって火蓋が降ろされる。

「敵は素人では無いぞッ!! 腕の立つ者に対しては三人で良く狙って仕留めよ!!!」
「はっ!!」

 陣地の一部を任されている指揮官が言うとおり、農民を寄せ集めた一揆集とは違いあきらかに統率の取れた動きで小屋と小屋の間から矢を正確に飛ばして来る敵兵の攻撃に、現場にいる兵士達は矢盾で身を隠しつつも、嫌な汗を掻きつつ弓で必死になって反撃していた。

「奴等め……外側から来る増援を待っているのか?!」
「あがぁ!!! 矢が、足にぃ?!! 足にぃ!!」
「ぐぅ、大丈夫だ!! 俺達の戦力は奴等より多い!! 持久戦になれば我々にぶがある!!」

 兵士達の言うとおり、この大一番に織田家が割いた戦力は一千程の敵兵より四倍近く多く。もし敵が港町に乗り込んできたとしても、北側の森に待機している友軍が不意討ちを行う手筈も取られていたので、犠牲は出たとしても負ける戦では無いと踏んでいた。

 だからだろうか。突然の事態に対応する事が出来なかったのは。

「そ、外側に建てられている砦から大きな音と共に炎が上がったぞ!!!」
「な、何なんだあれは!!?」

 外からの外敵に対抗する為に築かれていた砦から、ガスタンクが爆発したかの様な巨大な爆発が突然起き。その爆風と熱風は肉の焼けた臭いと共に船着き場を防衛している足軽兵達にも届いてしまい、思わず皆が矢盾の隙間から顔を出して砦の方を見る。

「何が……起こったんだ……?」
「……まさか、奴等南蛮の武器を使ったのか……?」
「おい! 南蛮の武器って何だよそれ?!」
「ああ!」

 小さな火薬であっても貴重品とされている尾張で爆弾を造った者はまだおらず、火薬では無いと言う事から導き出された彼等の答えはーー

「間違いない。あれは最近南蛮人が売りに来ていた、様々な力を宿す【魔石】を使った物だ……」

 亮太達がアサツユ島に来る前に、何度か日ノ本に訪れていた商人が扱っていた魔石による物であった。

 そしてそれはーー

「おい。あいつが持っている矢の矢尻……赤く光っていないか?」
「え……?」

 小屋に潜伏していた者達も持ち合わせていた切り札であった。

「くたばりやがれぇぇ!!!」

「いかん奴を仕留めろ!!! 鉄砲隊、前ぇぇぇ!!!」

 素早く見つけられた魔石を矢として構える者に対して、後方に温存されていた火縄銃隊が駆け足で矢盾の間を潜り抜け行き。小屋の中から此方を狙っている者に対して射撃体勢の取れた者から狙いを定め、合計10丁程の火縄銃が轟音と共に一斉に火を吹いた。

「うがぁ……おの……れぇぇ……」

 木製の小屋の外壁を貫いた玉は矢を向けていた男に4発程着弾し、男は鬼のような形相のまま倒れこんだ様で。その数秒後に小屋は火山が噴火したかの様な耳が潰れるかと思うほどの爆音と共に炎を撒き散らし。その炎は両隣の小屋と人間を捲き込みながら四散していく。


「ああああああッ!!! 熱い、あつぅぅぅぅ……」
「誰か、誰か、水を……!」

 何とか爆発から生き延びた人間も火が燃え移ってしまい、燃え盛る小屋から出てから陸に挙げられた魚のようにもがき苦しみながら死んでいった。

「何なんだよ……何なんだよこれは……!!!」
「ひっ、ひいぃぃぃ?!!」
「や、奴等何て物を持って来やがったんだぁぁぁ!!?」

 戦国時代においても敵を追い詰めたり、大勢で攻めてくる様に見せ掛ける為に家に火をつけたりする事例は山程あるが。彼等が体感しているのはそう言った想像できる内に収まる様な物ではなく、現代で言うところの爆撃の様な物であり。
 こう言った大爆発に巻き込まれるかも知れないと言う心理的ダメージは、常に神風特攻隊の驚異に怯えさせられた海軍兵士の6割近くが精神病院に送り込まれた事からもわかる。

 尚且つ彼等は見てしまったのである、まだ警戒していない小屋の中から矢尻に赤い魔石を輝かせている者達が、自分達に狙いをつけている様子を。

「ぜっ、全軍撤退!!! 撤退ッ!!!」
「逃げろ!! 早く逃げないと焼かれちまうぞぉぉぉ!!!」
「嫌だぁぁ!!! あんな死にかたはしたくねぇぇぇ!!!」

 指揮官の声に反応するよりも早くに織田家の足軽達はあちこちに逃げ出しており。彼等が逃げ出した後の防衛陣地には8重に築かれた矢盾、弓、火縄銃、長槍等が四散しており。

「ナンマンダブ……ナンマンダブ……ナンマンダブ……!!」
「まっ、待ってくれ!! 置いていかないでくれ!!」

 その中に数人の逃げ遅れた者達が頭を抱えて震えていたり、先程の矢の応酬で負傷してしまったために身動きが取れずに助けを求めている者達がいた。

 そして、織田信長の時代では1丁50~60万円程で取引されている地面に転がる火縄銃を黙々と回収している者や、質の良い刀や槍等の武器を拾い集めている者達がいた。

「あ……あんた達逃げなくて良いのかみゃあ!!?」
「このままだと織田家は滅びてしまうみゃ!!」
「だから事が収まるまで隠れておいて、平和になったらこの武器を売り捌いて金儲けをするのさ!!」

 そんな火事場泥棒をした者達は、小舟が置いてあるであろう船着き場に沢山の武器を抱え込んで走っていった。その余りの行動に思わず唖然としていた一人の足軽が唖然としている内に、燃え盛る小屋の向こうから雄叫びが聴こえて来る。

「な……今度は何なんだみゃ……?!」

 足軽が慌てて目をころして良く見てみると、炎の中を一騎の馬と武将が太刀を抜きながら駆け抜け、その後方から大勢の足軽達が長槍を持って追い掛けている映画のワンシーンの様な光景が見えてきた。

「てっ、敵の本隊だみゃあ!!!」

 思わず恐怖で尻餅をつきながら叫んだ足軽兵の言うとおり、騎兵の背中には今川家を表す二文字の家紋が刻まれた旗が激しく揺れており。彼等は防衛線が崩壊した織田家へ止めを刺しに来たのである。

「うっ、くっ……少しでも食い止めないとみゃ……」

 そう言って抜けてしまった腰を叱咤しながら、名も無き兵士は側に落ちていた玉が込められ、縄にも火が残っていた火縄銃を手に取り正面から来る敵将に震える手で狙いを定める。

「ふん、織田家の命運もここに尽きえりよ!! ははははははは!!!」

 弱小と呼ばれていた尾張の兵士達を嘲笑いながら、無人と思わしき防衛陣地目掛けて突き進む敵将に足軽兵は照準をつける。

(ここで撃ったら……もう助からないだろうみゃ……。おっかあ、元気でやってくれみゃ……。わしは……最後に男になるみゃ……)

 敵に見つからない為と射撃を安定させる為に姿勢を出来るだけ低くし、足軽は横に転がる矢を胸に受けた死体に紛れながら、彼の今までの人生の内で最大最後の獲物に狙いを定める。

(うるさい心臓だみゃ……落ち着け……落ち着いてくれみゃあ……)

 距離にして40mと言う、相手の全身だけでなく顔もうっすらと見える距離で男は銃身を震わせながら相手を見つめ続ける。

(もう少し……もう少し近付けて……)

「いっ、命だけはお助けください!! ほっ、ほら! これだけの種子島も持っておりまーー」
「ちっ!! 戦場を汚す不届き者が!! 恥を知るが良い!!!」

 目の前で先程武器をかき集めていた者の逃げ遅れが斬られたその刹那。

(……今だ!)

 沈黙を続けていた防衛陣地から、一発の雷の様な豪音が轟いた。

「おぐぁ?!!」

 弾丸に回転力を与えて跳ばす為のライフリングがされておらず、火薬の爆発の勢いだけでピンポールの様に打ち出された弾丸はーー

(は……外してしまったみゃ……! は……ははは……)

 小柄な馬の上にいる武将の兜に掲げられている、金色のV字型の角を火花を散らせながらへし折った。

「ふはははっ!! そうかそうか、まだ戦える者がおったか!!」

 そう言って鉄砲の音を聴いて暴れる馬をあやしながら、武将は何処か嬉しそうに呟く。

 しかしそれは、生涯最後の攻撃を行った足軽の敗北を意味しており。“熟練”した者が操作した場合でも、18 - 20秒程装填に時間がかかる種子島を扱う足軽兵には、目の前にいる騎兵に対する反撃するチャンスは潰えた。

「ワシの……負けじゃ……」

 誰もがそう思ったその瞬間、沸騰したやかんから出る様な空気の抜ける音が遠くから聴こえて来た。

「何の音だ?」

 その言葉を武将が吐いたところで、彼の後方にあった景色が纏めて空中で起こった白い爆発によって吹き飛んだ。

「ななななな何が起こっているみゃあ!?」

 足軽が矢盾に隠れているその間にも次々と起こり続けているその現象は、40秒近く経った所で止んだ。

「こっ、これは……」

「誰か、助けてくれぇ!!! 身動きが取れないんだ!!!」
「駄目だ!! 槍でも歯が立たない!!! 何なんだこれは!!?」
「あっ、結構好きかもこの味……」

 そして煙が晴れた所で彼が見たのは、一面に泥々になった白いお餅の様な物が雪のように巻き散らかされていて。そのお餅の中では大勢の敵兵が、蜘蛛の巣に掛かった虫の様に悲鳴と助けを求める声が鳥の巣の如く響いていた。

「これが……南蛮人の力なのか……」
「南蛮人……かみゃ?」

 自分の背後で起きた事に対する答えが何となく浮かんだ武将には先程の猛烈な気迫は無く。ゆっくりと馬から降りて、後方にある惨状を眺めつつ沈黙した。


 ーーーーー◇ーーーーー


 《こちら【Black1】。トリモチ弾による砲撃により、危険度の高いレッドターゲットの無力化に成功》

「こちら【大鳳】了解。引き続き海上からの監視を行いますので、何かあれば報告します」

 《ラジャー。引き続き待機を続けます》

 召喚士である亮太と召喚された者達との間で使用出来る通信システムを用いて行われたこのやり取りは、今回の作戦を行うに当たって新たに用意された、旧日本海軍が第二次大戦末期に建造した【装甲空母大鳳】の第一艦橋で行われていた。

 亮太が立っている周囲には、現代のイージス艦の艦橋の中身をそのまま積み替えた様な内装になっていて。
 正面の窓の上には複数のレーダーにより補足されている周囲の現状や、日ノ本の状況が映し出されている複数の30インチモニターが窓の上に掛けられていたり。
 機械のパワーアシストがあり操艦しやすくなっている舵や、長期間の任務にも耐えられる様に基本的には立ちっぱなしだが、持ち場の後方にはマッサージ機能の着いたリクライニングシートが乗組員分用意されている。

【※因みに亮太達の乗艦している大鳳の他にも多くの艦船が周囲を守っていて。
 大鳳の前方には色々と魔改造された戦艦長門がおり。この二艦に敵を近付けない様にする為にダーツの的の様に外側の四隅を守る四隻の巡視船がいて、四隻の陽炎型駆逐艦が巡視船の穴を埋める様にして十字の形で巡視船の外側に就いており。
 更にその外側を8隻の同じく陽炎型駆逐艦が外周を守ると言う、各艦の間を2Km取った形の輪形陣を組んでいる。
 しかし今回日ノ本近海に向かったのはペリー率いる六隻の黒船であり。
 今回の依頼を達成するにあたり、亮太達は日ノ本に上陸する事をメインとするのではなく、あくまで織田家の護衛と安全確保を主体とした作戦を組み。
 その狙い通り魔石を敵に使用されると言うアクシデントは有ったが、現時点では織田家の護衛を行う事に成功している】

 そんな色々な時代が入り交じっている艦橋内には、旧日本海軍の軍服を着た船員達がおり。亮太は艦長席の隣に作ってもらったリクライニングチェアーに座り、以前プレゼントしたバトルドレスを身に纏っているマリナを膝の上に載せていた。

「思っていたよりも不味い事になってるわね……。砦を守っていた人達だけでも、200人近くの人達が犠牲になってる……」

「ああ……彼等もやはり僕達の知っている地球とは異なる力の影響を受けている、異世界の住人だったって訳だ……」

 そういいつつ通信を終えた亮太はすかさず大鳳の格納庫の中で航空機や、スカイジェット達と共に格納されている偵察用のパワードアーマー、ロングイヤーの中で待機してもらっているもう一人の戦友に通信を送る。

「こちら亮太。ルル、聴こえる?」

 《こちらルル。かんどりょーうこーうだよ?》

「さっきは報告してくれてありがとう。お陰様で、敵全員が織田軍の陣地に雪崩れ込むと言う最悪の事態は免れたよ。他に異常は見られないか? 魔石の反応があったみたいだけど」

 《ん。どうやら、脅し目的で片手で数えられる程しか用意できて無かったみたいだよ。まだ厄介な相手は……砦を占領している人達と、逃げ惑う兵士に混じってノッブさんに近付いている人達かな?》

 その重要な報告を受けた亮太は思わず目を見開いて、思わずルルを問い詰める。

「それってとんでもない話じゃないか?! トレノさんと信長さんは大丈夫なの?!」

 《ん。大丈夫だよ。このデータはトレノさん達にも送っているし、相手は武器を持っていると言っても素人の強盗の様なものだからね。あっ、やっぱり何とかなったみたい》

 その台詞を聴いた亮太は慌ててブリッチの正面の窓の上に設置している30インチのモニター画面を見て、尾張港における織田軍の状況を確認する。

「うおっ……」

 そこには防衛陣地を越えて来た敵兵に怯える足軽達を叱咤激励しながらも、長槍を振るう柴田勝家や。状況を確かめつつ細かな指示を飛ばしている丹羽長秀。槍を取って襲い掛かってくる相手を次々と払い除ける佐久間信盛に、華麗な蹴り技で次々と相手をノックダウンしていくトレノの姿があった。

《のわぁぁぁ!!? 敵兵が左側からも雪崩れ込んで来たのじゃーーー!!? はようッ! はよう弾を籠めた銃を渡すのじゃ!!!》

《はっ、はい信勝様!!》

 特に亮太の目を引いたのは、ガタガタと震えながらも次々と足軽達に弾と火薬を籠めさせた種子島を動きの怪しげな敵兵に次々と撃ち込む信長の弟の信勝と。

《……盗賊どもめ。ワシが味方と敵の区別も出来んと思っていたか》

 怒りと悔しげな感情を顔に張り付けた様な形相で、種子島を信勝と背中合わせになりながら淡々と撃ち込んでいる信長の姿があった。


(火薬の質が悪く、反動も強い種子島であれだけの射撃制度と敵兵を瞬時に見分ける洞察力……。やっばり、信長さんはどの世界でも只者では無い)

まるで映画のワンシーンを眺める感覚で状況を見守っていた亮太に、監視を行っているルルから連絡が来た。

《マスター。さっきの150人程の敵は第一陣だったみたいで、後続から400人強の第二陣が東側から来て……あれ?》

「どうしたんだルル? 何かあったのか?」

重要な話の途中で何かに気がついた様なリアクションを取ったルルに、思わず亮太が聞き返す。

《ん。どうやらノッブの仲間が、敵陣の裏を取る形で助けに来たみたい》

「味方だって? 一体誰が」

その疑問に対してルルは再び自分が見ている映像を、亮太達にも見える様にモニター画面に音声つきで映し出した。

《み、皆さん!! 今すぐに刀を納めてください!!! この戦いは皆さんにとっても、私達にとっても何の益も産まず。寧ろ災いを産み出す物です!!》

モニター画面いっぱいに映し出された威勢良く声を上げているのは、茶色い馬に跨がっている142㎝程の小さい体に似つかわしくない金色の鎧を身に纏う十代後半の少女であり。

そして、その背中に背負っている旗印は日本人なら一度は見たことがある、丸に三つ葉葵の松平家の家紋であった。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ