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転生したので、役職がフリーターから仲間と戦う召喚士になりました 作者:礼状

05.日ノ本の灯が沈む時篇

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05-02 恋の形は複雑で

・3人の関係をどうするかと悩んだのですが、敢えて妥協策を取りたいと思います。
・また、今篇から秀吉達を代表する戦国武将達がそっくりさんではなく、この惑星では本物である事が判明した為、漢字表記にさせて頂きます。
「嫌な……夢を見ちまった……。ここは、何処だ?」

 見知らぬ少女とその父親が殺されると言うよくわからない夢から覚めた亮太は、自分がアサツユ城の一階にある診療所に設けられている、個室の暖かいベットの中で目が覚めた事と。同じベッドの両脇にマリナとアルバインが一緒に寝息をたてている事に驚かされる。

(うおっ、そうか……。昨日は夜遅くまで秀吉さん達とこれからの事について話し合っていたんだっけ……。はは、職場で寝落ちするだなんて、何年ぶりだろうかな……)

 亮太は自分が昨夜遅くまで秀吉達と語り合っていた事を思い出し、彼女達に心配をかけてしまった事を反省しつつ、現在の時刻を確認する為に半透明のシステムウィンドウを出現させて、画面の真ん中に出ているデジタル時計を見、現在時刻が朝の11時頃である事に気がつく。

(……完全に戦いの疲労と徹夜の疲労で倒れた形か。マリナとエリスには心配をかけてしまっただろうな)

「マスター……ふふっ……」

 そう言って左隣で幸せそうに微笑みながら寝ているアルバイン事、エリスの表情を見てホッとした亮太であったが、彼女とは反対に右隣でマリナが辛そうに謝りながら頬に涙を垂らしている事に驚かされる。

「ごめんね亮太さん……私もう、亮太さんとは会わないから……うぅ……」

「マリナ……! ごめんな……僕が後先考えずに口走ったせいでこんなに思い詰めて……」

 昨日、シャルロッテからエリスが亮太に対して10年近い片想いをしていた事を告げられた為、たった数日間しか共に居た訳でしかなく、恋と言うよりも好意を持っているだけであったマリナは彼女の思いを踏みにじっている様な罪悪感に潰されてしまっていた。
 その事を自分の気持ちに従って、後先考えずにプロポーズしてしまった亮太は深く反省しており。恋愛経験がほぼ無い為にどう解決すれば分からないが、何とかしないと行けない使命感だけが沸騰したお湯の様に沸き上がりつつあり。
 その思いはうなされているマリナの手を繋ぐ事でしか表せないでいた。

「うん……りょ、亮太さん?」

「おはよう。沢山心配と迷惑をかけて本当にごめん、マリナ」

 寝ぼけ眼で目を擦りながら起きた、今はツインテールではなくストレートヘアーのマリナに亮太は謝罪しつつも、小さな彼女の手を握る。

「いえ、あの、そんなことは……無いですよ?」
 
「嘘はつかないでくれよマリナ。だったら何でそんなに目を張らして、この世の終わりの様な寝言を言っていたんだよ。今回の事は僕に責任があるんだから、マリナは気にしなくて良いんだ……」

 そう言って亮太はモカロフでの戦いで既にメンタル面がボロボロになっていたマリナを励まし、優しく抱き寄せる。
 その行動にマリナは驚きのあまり目をぱちくりさせた後、瞳に滲んできた涙を見せまいと、ぎゅっと瞑る。

「亮太さん……私……私はね……どうすれば良いのかわからないよ……」

「大丈夫。最初は誰でも分からない物だから、一緒に力を会わせて見つけ出そうよ」

「うん……」

 その言葉を聴けたマリナから余分な力が抜けたのを感じた亮太は、少しホッとしたのも束の間、後ろから感じる視線にドキッとさせられる。

「……おはようございます、マスター。マリナちゃんも思い詰めていた様だったけど、流石はマスターですね……」

「お、おはようエリス。昨日も大活躍してくれただけでなく、寝床までつきあってくれてありがとうな」

「いえ。私はマスターの剣ですから、当然の事をしたまでです」

 そう言って無理矢理に笑みを浮かべている気がするエリスに、亮太はまたしても最善の言葉は何かを考えさせられる。

(“二兎を追うものは、一兎を敷かず”とは言うが……。正しくこう言う時の事を言うんだろうな……)

 良くあるハーレム物に訪れる難題に激突した、恋愛経験処か女性と面と向かって腹を割って話すことが出来ない亮太は、起きたばかりなのに冷や汗を頬に垂らす様な修羅場に捲き込まれていく。

(どうすれば良いかはわからない……。ただ、中途半端話をに流そうとすればそこから関係にヒビが入って、取り返しのつかない事になる事は必然だ……。そうか、だからハーレム物の主人公は鈍感で、周りが勝手に解決してくれる様な感じになるのか……)

 そんな世界の心理を悟り始めた亮太は恐る恐る、細いコードを切って爆弾処理を行う様に会話を繋いでいく。

「エリス。僕はエリスの事を身近に居てくれる親友として、とても信頼している」

「こ、光栄ですマスター!」

「ここまで来れたのも、エリスが身体を張って奮闘してくれたから、勇気を保てたのだと強く思っているんだ」

「は、はい……」

 この亮太の建前言葉から、純粋無垢なエリスも何となく勘づいてしまう。

 この後に続く言葉は今まで自分には言い出し辛く、御互いの立場を変えるかもしれない物であると。

 だからだろうかーー

「あっ……」

「エリスちゃん……」

 彼女は無意識的に涙を流していたのは。

 それでも、人は重要な時に己の意思でけじめをつけなければ成らない。

 中途半端な気持ちのままだと、より多くの苦しみと悲しみを生むことになるのだから。

「……エリス。勝手だけど僕は、マリナと結婚したいと思っている。そして、これからもエリスと“良き関係”で有りたいとも願っているんだ……」

 その言葉が訪れる事を彼女は、亮太の隣にマリナが連れ添っている姿を見たときから分かっていたのかも知れない。だからこそ彼女は主人に遣える最強の騎士として振る舞い、主人が本当に苦しんでいる時以外には近付く事もしなかった。

 何故ならそれはーー

「ひぐっ……私はただ、貴方だけに恋しておりましたマスター。ただ、そうしていたかっただけなのです……ああ……ううぅ……」

「エリス……すまない……。本当にすまなかった……」

 仮面が取れた様に作り笑いも出来なくなり、大粒の涙を流して一人の恋破れた少女になってしまったエリスは、亮太に懺悔するかの様に抱きついて悲鳴をあげる。
 その彼女を突き放した亮太には抱き締める権利も、慰める権利も無いために、ただただ彼女の叫びを聴き続ける事しか出来なかった。

 その姿をマリナもただ涙で滲む眼に焼き付ける様に見る事で、彼女の思いを受け入れる。

「マスター……。私は、まだ諦めが着けそうにありません……。だから、二人目の奥さんにしてください!」

純情そうなアルバインからは想像できなかったその宣言に、思わず亮太とマリナは目を見開いて驚愕する。

「ええっ?! そっ、それで良いのかエリス?!」

「3人で夫婦になってしまうんだよ!?」

「マスターとマリナちゃんは……やっぱり嫌ですか? 私は、マスターの事も大好きなのですが……マリナちゃんの事も大好きなのです……。だからこのままいがみ合う位なら、私は構いません!!」

冷静に聴くと、どんだけ亮太にとって都合のいい展開だよと叫びたくなる話だが、アルバインに取って亮太の妻となる為にはこの手段しか思い付かなかった様で。
「娘さんを私と結婚させてください!!」と言う様な剣幕で語るアルバインに二人は圧倒されてしまい。

「マリナとエリスがそれで許してくれるなら」

「うん。私もエリスちゃんともっと仲良くなりたいから」

「ほ、本当に良いのですか? お二人とも? 結婚した時に、誰が一番かで揉め合ってしまわないですか?」

余りにすんなりと受け入れられてしまった為に動揺するアルバインに、二人は微笑みながら返す。

「僕たちが愛し合い、支え会う気持ちがあれば大丈夫だよエリス」

「うん! きっと私達なら恋人も親友も超えた関係になれるよ! だから改めてよろしくお願いします、エリスちゃん!!」

その返答を聴けたアルバインは瞳から暖かい涙が溢れ始め、思わず目の前にいる二人を包むように抱き寄せてしまう。

「うあぁぁぁ……ありがとうございます……ありがとうございます二人共……」

「これからも力と心を会わせて頑張って行こうな……エリス?」

「良かったね、エリスちゃん……。良かったね……」

その嬉し泣きの声は外の廊下まで響いており、彼等の事を一番心配していた少女が個室の扉にもたれ掛かる様に盗耳を立てつつ苦笑いしながら聴いていた。

「ありゃりゃ……やっぱりそうなっちゃうよね……うん……」

 3人のこれからを案じていたピンク髪の少女も苦い思いを噛み殺す様に飲み込み、せつなげに呟いた。

「でもありがとうマスター……アルバインと向き合ってくれて……」

 やがて数十分と言う時を費やして見守っていた少女も去り、エリスが今までの思いを吐き出した後。3人は元々疲れでやつれていた顔を更にやつれさせてはいたが、今までの相手に気を使ったよそよそしい態度ではなく、何処か前よりも腹を割って話している様な自然な雰囲気が生まれていた。

「あ、もう気がついたらお昼だな……」

「では、亮太さんにマリナちゃん。良かったら屋上で食事を取るのはどうでしょうか? 亮太さん達が眠っている間に、秀吉様達が張り切って島をお造りになられている様ですし」

「はい! そのアイデアとても素敵です! 勿論、亮太さんも文句無いですよね?」

「勿論。僕もそうしたいと思っていた所だよ」

「もう、取って付けた様な返事をしてー」

「あはは。亮太さんには沢山付き合って頂けましたからね」

 その返事を聴いた二人はくすくす笑いながらマリナは左手を、エリスは右手を握って、3人共に同じ服装である白いTシャツと黒のジャージ姿の亮太を外へと連れ出して行くのであった。


 ーーーーー◇ーーーーー


 場所は変わって、昨夜亮太達が話し合っていたアサツユ島を守るためと更なる繁栄の基盤となる防衛ラインの設営工事が行われていた。
 その設営の対象となるのは、昨晩の内に召喚されて作られていた島の外側、半径250キロ圏内を監視する12個の小島は勿論。
 戦艦2隻が横にならんでも楽々通れる様に設計された高さ80mを越える二重の水門付き城壁に、アサツユ島の四方を守る為の軍事基地となる名古屋より10倍大きい【四隅島】であり。

 その各島や城壁には、昨夜から召喚された疲れ知らずの20万人規模の大勢の人達が自分達の持ち場件、生活する場所として与えられた拠点の整備を朝か早くから開始していた為に、既に予定されていた物の40%程が完成しつつあった。

 その召喚士にしか成し得ないであろう技に、数日前までは戦国田舎暮らしをしていた秀吉達3人は圧倒されつつも、自らにも与えられた力を行使していた。

「ふう~やれやれ。三時間に一時間休憩を挟みながらなのに、もう外側の小島が全て予定通りに完成するとは。二人共に張り切りすぎではないか?」
 
 そう言いながら建設中の城壁の上にいて、薄緑の作業服と黄色いヘルメットが妙に似合っている秀吉が、350mmのペットボトルに入っているお茶を飲みながら遠くにいる二人とモニター越しに会話をしていた。

 《兄上も張り切っておられる様で何よりです。それはもしかして、亮太くんが紹介してくれた【ねね殿】に良いところを見せる為ですか?》

 その秀長の探りを受けた秀吉は動揺して、思わず飲んでいたお茶でむせてしまい。頬を赤らめながら反論する。

「おまえな! ねね殿は確かに可愛いい美少女じゃが、まだ15歳の年端もいかぬ乙女なんだぞ!? こう、大人の色気と言う物処か……汚れも知らぬ乙女なのじゃ……」

 《なるほど。だからどう接して良いか分からないと? くくっ……》

「何がおかしいのじゃ、正則(よしはる)よ!?」

 田舎では散々「ハーレムを作ってから死にたい」とまで豪語していた男が、いざ女性を紹介して貰えたらあたふたしている様子が面白くて仕方無かった正則の笑い声が漏れ聴こえてくる中で、周囲には丁度12時を告げるサイレンが鳴り響いた。

「お、もうこんな時間か……。皆の者!! 作業は一旦やめて昼飯にしようではないか!!!」

「「「おおおおおおおっ!!!」」」

 周囲から聴こえてくる作業員の男達の歓声を聴きつつ、秀吉はアサツユ島で作ってもらった昼食を満載した輸送船が港からやってきて、各地の水門を潜り抜けて城壁と城壁の間にある幅10キロの空白地帯を船着き場として利用し。
 水門の中に船を停泊させて陸地の人と売り買いをする水上市の様にして貰う事で、城壁の上に置かれているクレーン車を用いてコンテナに詰められた食料を引き上げる予定であったのだが……。

「おい……アサツユ島を中心にして物凄い水しぶきをあげながら、馬鹿でかいホバークラフトが14隻、12時の全方角に向けて突っ走ってきてるんじゃが……」

 《ああ。新しく手に入ったポモルニク型エアクッション揚陸艦の試験運用も次いでにやって起きたくてな。不味かったか?》

「いや、不味いわけじゃないが、船にしてはいかんせん早過ぎるだろ正則よ!?」

 《そりゃそうだ。なんせ四枚羽の巨大なプロペラが三つ付いていて、時速は110キロを超えるそうだからな》

「最早、城が海上を走っている様じゃ……」

 現代の知識を与えられている秀吉さえ度肝を抜かれたのは、甲板の上にトレーラーに載せられる様な輸送用コンテナを沢山積んでいる、ロシア海軍の誇る世界最大のホバークラフトであり。
 全長57m、150tのペイロードを持ち、400平方メートルの広さの車両甲板を有する海上を走る駐車場と言っても過言では無い積載量があり。
 武器としては30mm口径・6砲身のガトリング砲二門、数基の対空ミサイルや、ロシアが得意とする22連装ロケット弾発射機を二機備え。
 詳しい搭載量としては歩兵360名または戦車3両あるいは歩兵戦闘車8両とその搭乗員80名を搭載してしまう化け物であり。
 今まで海上を見張ってくれていた新生ヴァルハァム王国の穴を埋める為もあって、海外に向かう場合に迅速に駆け付ける早い足と、輸送能力と戦闘力を両立させた船が欲しかったアサツユ国としては期待の新船である。

 そんな事を言っている内に、ホバークラフトは水しぶきを上げて虹を作り出しつつ内側の城壁に減速しながら辿り着き。その船の下にあるクッションを利用して、城壁に擦り付ける様にして横付けされた船体に対して城壁の上から頑丈なロープが次々と投げ込まれ、船は城壁に固定されていった。

「よーし!! フックを下ろせ!! ゆっくりだぞゆっくり!!」

そして甲板上に固定されているコンテナを引き上げる為に、城壁の上で50tレベルの重い荷物を運搬する為に配備されている、キャタピラで動く大型クローラークレーン車が釣り堀の竿の様に4台が横並びで稼働しており。

ゆっくりと甲板上に置かれている4つのコンテナ目掛けてゆっくりとフックを降ろしていき、そのフックをホバークラフトの甲板上にいる作業員達がベルトで固定しているコンテナの天辺にそのフックを引っ掻けていき、それを確認した甲板作業員達が確認していく。

「あのコンテナとか言う箱一つで、2000人分程の食料が一度に運べるんだから凄いもんじゃな~」

戦国時代においての戦闘食と言う物は保存性を考慮すると余り選択しが無く、干した米粒であったり、焼き味噌や、梅干しに、竹包の水筒と頭に被っている三角傘を利用した炊飯がメインであった。

「それが、アサツユ国では殿様以上に豪華な定食が3食出る……。いやはや、ワシらは恵まれておるわ」

その言葉を体現するかの様に、大勢の作業員達が今か今かと待ちわびている城壁の上に降ろされたコンテナの中には、ノートパソコン程の大きさの強化プラスチック製のトレイと蓋がされたお弁当箱がレンガの様に敷き詰められており。

そのお弁当箱を手洗いうがいを終えて清潔になった6000人程の作業員達が、四つのコンテナの前に並んで一人一人受け取って行く。

「ひゅー! お待ちかねの昼飯だ!!」
「早く食べようぜ!!」
「20階にある自動販売機にお茶を貰いに行こうぜ?」

そんな和気藹々(わきあいあい)と昼食を楽しむ作業員達に秀吉は目を細めつつ、最後に自分の分のお弁当を取りに行くのだが……。

「ちょっと待ってくれ……ワシの分が無いじゃないか……」

コンテナの中は見事に空っぽになっており、割り箸一本も残っていなかった。

「あー……誰かが多目に持って行ってしまったのじゃろうか? すまない、残っている弁当は無いーー」
「よし、次は外側の城壁に届けに行くぞ!! ロープをほどけ!!!」

秀吉が海上にいるコンテナを載せているホバークラフトに声を掛けようとした所で、ホバークラフトは固定されていたロープをほどいて、じっとお弁当箱を待ってくれている次なる仲間の元へと向かって行ってしまった。

「おーい!! 待ってくれ!! ワシだって腹ペコ何じゃよ?!」

そんな悲鳴に近い叫びはホバークラフトの巨大な扇風機の様なプロペラから出る轟音に書き消されてしまい、秀吉はその後ろ姿を城壁に備えられている小窓から見送る事しか出来なかった。

「何でじゃ……何でこうなるのじゃ……ひもじいのぉ……」
「お待たせ、秀吉さん!! お弁当を持って来たわよ!!」

そんな人生の終わりの様な絶望感に打ちのめされていた秀吉に、背後から元気の良い少女の声が聴こえて来た。

「その声は……ねね殿か?!」
「うん! 折角妻になったんだから、手作りの暖かいお弁当を食べて欲しいと思って、作って来ちゃいました!」

思わず慌てて振り返った秀吉が見たものは、まだ年端も行かぬ15歳と言う年齢である為に着ている割烹着が小学生の給食係の様に映る、少し羽っ毛のある少しオレンジ掛かった濃い茶色をした短髪と明るい笑顔が眩しい少女であり。

彼女は女性との縁を欲しがる秀吉の望みを叶える為に亮太により召喚された、姫様《Rank.SR》である。

「じゃあ、地面にシートを敷いて食べましょうか秀吉様?」

「ああ……妻が居ると言う事はこれ程嬉しい事だとは思っても見なかった……ぐすっ」

「もーう、何で泣き出すんですか秀吉様?」

「す、すまん。つい嬉しくてな……」

そんな秀吉に感動をもたらした彼女が大事そうに手に持っているのは、可愛らしい桜色の風呂敷に包んで持ってきた3段重ねのお弁当であり。
彼女はそのお弁当を片手で持ちつつ、割烹着のポケットから地面に敷くシートを取り出すのだが……。

「あっ、しまった! お弁当箱を持っているからシートを敷けないじゃない! どうしよう……」

「そ、それならワシに任せてくれねね殿! こう見えて、故郷では敷物の秀吉と呼ばれておってな!! こう言う事は大得意なんじゃよ!!」

「そうなの?! じゃあ……お願いするね秀吉様?」

「おう、任しとけい!!」

そう言ってウキウキ気分でシートを敷いて行く秀吉を見た周囲の人達は、お弁当をつつきながらにやにや顔でその様子を見守っていた。

「ありゃ、数日もしないうちに嫁さんに尻に敷かれるな……」
「ああ、周りが見えないほどにのめり込んじまってるもんな……」
「ちくしょう……わしも嫁さんが欲しくなっちまったじゃねーか……」

斯くして、それぞれに元気を得た者達はその後も作業を続け、島の防衛線は三日後に完成する事となる。
+注意+
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