挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
転生したので、役職がフリーターから仲間と戦う召喚士になりました 作者:礼状

04. 衝突する願望篇

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

60/102

04-14 モカロフは茜色に染まる

 町の大広場で突然起こってしまった陸軍内の仲間割れのせいで大混乱に巻き込まれていた綾瀬と騎士達は、大ヴァルハァム陸軍隊長であるガトラスを8000人に上る陸軍兵士達の中で反旗を翻した5000人近くの兵士達から守るために、彼等の周囲を四角形の形をした四重の防衛陣形で囲みつつ、反旗を翻した兵士達の説得を試みていた。

「今更仲間同士で争って何んの意味があるんですか!」

「俺達だって陛下にあんな事はしたくなかったさ!!」

「そうだ、この戦いはイザベラが計画した物だ……。俺達は大切なものを奴に握られてしまっているんだよ……!!」

 どうやら彼等も望んで反旗を翻したのではなく家族を人質に取られていたり、身内の仲間達から説得を受けていたり、住む場所を取り上げる等の脅しを受ける等の彼等の立場の低さに目をつけられて脅されている節があり。

 もしそう言った不安材料が取り除かれるならばヴァルハァムに無理に従う理由も無くなるのではと綾瀬達が感じたその最中、突然町の周囲で大爆発と共に巨大な炎の入道雲と共に轟音が響き渡った。

「うぐぅ、これはまさか、艦砲射撃?!」

 その轟音の発生者は町から7キロ程離れたヴァルハァム海軍による海上からの砲撃であり。いきなりそんな砲撃が行われるとは聴いていなかった親衛隊の男は歯を食い縛り、こめかみに青筋を浮かべながら激昂する。

「これはどういう事だ!? 私は聴いていないぞ!??」

「簡単な話よ! 貴方も捨て駒にされてしまったのよ!!! さあ、助かりたい人は私達に着いてきなさい!!!」

 そして、そんな大混乱に陥っている状況の最中に綾瀬達とガトラスに味方した5700名の陸軍兵士はささっと離脱してしまった様で。
 逆に町に残されたのは仲間を私利私欲のために裏切り、綾瀬とガトラスの説得に耳を貸さなかった2300人の兵士達と10人弱の親衛隊達だけであり。

「きっ、貴様ら何をしている!! 見す見すガトラスどもを見逃すだなんて失態を許されるとおも……ぐぁ?!」

「うるせぇ!! おまえの様なボンボンのせいで俺達は何もかもを失おうとしているんだぞ!?」

「どうしてくれるんだよ親衛隊様よう?!!」

「ひぃ、やめてくれ!! 暴力はよっ、良くないぞ君たち?!」

「こいつ、今更何を!!」

 その事に気がついた彼等は慌ててガトラスを探させようとする親衛隊と、助かりたいために逃走を主張する陸軍兵士達と意見が食い違い。命の危機に面しているにも関わらず罵しりあいを始めてしまう。

「おいおいお前達、そんな下らない事を言っている場合じゃないぞ!? 追加砲撃が行われている、早く逃げるんだ!!!」

 そんな彼等の元に、遂に海上からの第2射が迫って来ている事を海上を観察していた兵士が気がつき、皆が散り散りになって町から退避した所で町に次々と先程と同じ火の魔石を弾頭に用いた砲撃が町を焼き付くしていった。

「有りました! こちらです綾瀬殿!!」

「さっすがアルバインちゃん!! 後でお礼の飴ちゃんあげるから楽しみにしときや!!」

 そんな炎に飲まれる町を尻目に綾瀬達は降り注ぐ瓦礫や炎から騎士達に守られながら、砂漠の中に幾つか設置されている地下基地に通じる空母の様な隠しエレベーターを使って地下に避難する様に指示が出されているので、急いで指定の場所にヴァルハァム陸軍の仲間達と共に少し地面に沈み混んでいる場所に駆け込む。

「ここが入口になっていると言うのか? ただ凹んでいるにしか見えんが」

「閣下、今は私達に賭けて見てください! 必ず損はさせませんから!!」

「ふん、威勢の良さは健在だな! 良いだろう!! 皆のもの、先程の事は置いて今はその命をワシに預けて欲しい!!!」
「しかし閣下……」
「我々は……」

 思わず彼を裏切り。その刃すら向けてしまった兵士達は浮かない顔をする中で、ガトラスは何時もの調子で啖呵を切る

「生きていなければ、お前達の悩みを聴くことも説教の一つもうて無くなるだろうが!! 全てを取り戻す為にも今は辛いことはワシに背負わせて、黙ってついてこい!!」
「……はっ!!」

 彼の一声で決心が着いた彼等は今度は迷い無く、車6台分が入る事が出来そうな巨大な四角く凹んだ土の上に積めていった。

「アルバインちゃん達はどうすんの?!」

「私達は侵攻してくる敵軍を無力化するようにマスターから指示が出ていますので、お気遣い無く!!!」

「……わかった。だけど無理だけはしないでねみんな!!」

 その言葉を背中で受けた彼等は、それぞれの武器を胸に構える騎士式の敬礼で答えて見せる。
 すると突然地面の床がゆっくりと地下へと降りていき、外で響き渡る砲撃の轟音と熱気は地上と地下を繋ぐ隔壁が閉じたことにより遮断された。

 一瞬周囲が暗闇に包まれたが、直ぐに巨大エレベーターの床に仕込まれていた非常灯が点灯した事と、先程までいた地上付近で起こっている大地を揺らす砲撃の衝撃と音を生還した彼等は聴き。
 心から巻き込まれなくて良かったと胸を撫で下ろす中で、綾瀬はガトラスに冗談っぽく「これで閣下も私達と同じ反逆者の仲間入りですね」と微笑みながらささやく。

「なぁに、元々我等はあの女の法では無くヴァルハァムの法に従う兵士だ。何の問題もあるまい?」

「あはは!! そうでしたね、失礼致しました閣下!!」

「うむ!! 分かればよろしい!!」

 それに対してガトラスも冗談を交えて返事を返しつつ、心の中では国家誕生以来一番の混迷期を迎えている祖国を憂いて気を落とす。

(さて……我が王の心をどうすれば取り戻せるかな)

 そんなガトラスと同じ思いを持っている兵士達が項垂れる中で、突然綾瀬に外に声が聴こえる形で通信が入る。

 《こちらナバル。予定通り皆を引き連れて来ましたのだけど、そちらの状況はどうなのかしら綾瀬さん?》

「なっ?! 王女ナバル様だと?!」

 《あら! その図太く逞しい声はガトラス君ね!! 元気にされていたかしら?》

 送ってきた彼等からすれば亡くなった事になっている王女ナバルの明るい声が降下を続けているエレベーター内に響き渡り、流石に皆は呆気に取られる。

 それもその筈、彼等からすれば既に病気の悪化で亡くなったとされている彼女の葬儀は国葬として壮大に行われて、既に二年半近くの月日が流れており。
 この後、彼女の死が外国の者達による陰謀であったとして、大陸制圧の命が軍部に通達されて彼等は感傷に浸る暇もなく、まるで彼女の死を忘れる為に行われた多くの血を流させた武力による大陸制覇を成功させた後と言うこともあり。
 王女が亡くなったと言う事事態が嘘だったという仮説が出てきてしまった結果、彼等の中で自分達が罪の無い大勢の人達の命を刈り取っていた事を正されたと言う気持ちもあり、兵士達は大きく困惑させられる。

「じゃあ、俺達がやってきた事はやっぱり……?」

「ああ、何て事だ………!!」
 
 その様子をテレビカメラで見てとった王女ナバルはあえて空元気をみせて彼等を励ます。

 《あ、大丈夫ですよ皆さん! わたくしちゃんとイザベラさんに殺されてしまいましたから、貴方達は悪くありませんよ!!》

 そう言って両腕を胸元に引き寄せてオーバーアクションで頷く彼女に、当たり前だが今度は別の疑問が生まれてしまう。

「では貴方はいったい?」

 《はい、よくぞ聴いてくださいました! 私は黄泉の国からこの地に再び舞い戻り、愛する殿下と民の幸福を取り戻す為に舞い戻ってきた王女ナバルその人です!》

 《お母様! その説明だけじゃあ皆余計に混乱するだけですよー!!》

 そんなうきうきした様子で自己紹介をかます自称王女ナバルに、思わず娘イスカの突っ込む声が聴こえるカオスな状況の中で、ナバルは慈愛に満ちた微笑みを浮かべて一言伝える。

 《それは仕方がない事ですね、イスカちゃん。何故なら私が本物であると言う証拠は何一つ無いのですから……。なので私は王女ナバルとして思うまま、愛する民を救うために行動させて頂きます》

 《前方、四キロ先に六隻の魔石機関式大型軍艦を確認致しました! 後、2分後に射程に入ります!!》

 突然横から割り込んできた女性兵士の伝令に、王女ナバルとそれを見ていた者達の空気は引き締まる。

 《畏まりました。彼等は全員がヴァルハァム海軍の方達なのでしょうか?》

 《いいえ! トレノ様からの情報によりますと、六隻の内真ん中と一番後方にいる艦が見張り役のヴァルハァム親衛隊が取り仕切っているだけで、それ以外の船は多国籍の奴隷達であるとの事です……》

 《そう……それはいけませんね……》

 何故その状況がいけないのかと言うと、先ず国のあり方を示す軍隊が多国籍の奴隷達を用いて作戦行動を取ることで、【私達は力を用いて、弱い立場の人達を一番危険な地に送り込む外道です】と言うメッセージを出して国の品格を落としている事と。

 今回の作戦で不祥事が出てしまった場合に彼等に全ての濡れ衣を被せて、自分達の立場を強引に正当化しようとしている事が丸解りである事などが考えられる卑怯な行動を彼等は取っていたのである。

「なんたる愚劣な手段を取らせたのだ……!!」

 これには流石の王女ナバルも言葉を濁し、彼等に荷担してしまっていた現場にいる陸軍兵士達も思わず怒りを露にする。

「ナバル様。彼等の迎撃には亮太君達も参加する事になっていますので、あまり無茶は……」

 《ありがとう綾瀬さん。気を使わせてしまったわね》

 そう言って微笑みと調子を取り戻した彼女の様子を見て綾瀬は恐縮しつつも、明るく振る舞う。

「御安心ください。私達は今ある悪い状況を変えるために派遣された、立派で無くとも手強い勇者達ですから」

 その言葉を聴いた周囲の兵士達はポカンとした顔で見ていたが、王女ナバルとガトラスは笑みを浮かべる。

 《ええ。知っています》

「……やはり、おまえさんは変わり種であったか」

 綾瀬が語ったその言葉はやがて亮太達を含んだ仲間達によって実現する事となる。


 ーーーーー◇ーーーーー


「ふふっ、ふはははは!!! 見よ!! 先程までは蛮族で溢れ帰っていた町が真っ赤に焼かれ、美しく輝いてーーうおぇぇぇぇ!!!」

「このままだとあそこで焼かれる人間より先に、旦那の体の方がやばいんじゃないですかい……?」

 地上の町を味方事焼き払う様に命令した若い親衛隊の男は甲板で風を浴びながら、今ある船酔いと言う苦しみから逃れる様に将来待ち受けているであろう明るい未来に思いを馳せながら吐いていて。

 その看病を良く日焼けしたがたいの良い男が、迷惑そうに付き添っていた。

「ふっ、くく……。なあに、今回の戦果を献上すれば私は昇進する事が決まっているのだ……!! そうすれば、この様な……経験をする事は、もう、なーーーおろろろろ」

「あー……みてらんねーなこりゃ……うん? 何だありゃ?」

 そんな時、付き添っていた船乗りがある物を発見する。

「……町を覆っていた炎が、ある一部の地面に吸い込まれて行きやがる……」

 それは焼肉屋さんで大量の白い煙をすいとる天井の換気扇の様であり。多くの嵐を乗り越えてきた男性の第六感が、その光景は危険な意味を持っている事を伝える為に背筋を凍らせる。

「……くっ、船長大変だ!!」

「うおぁ?! 貴様、この私をぞんざいに扱ったな!? 帰ったら軍法会議にかけてやるからな!!!」

突然、小石の様に扱われた親衛隊の青年が声をあげるが、男は振り返る事もせずにブリッジへと駆け込んでいく。

「何なのだいったい……うん?」

何がついている訳でも無く、純白の甲冑の汚れを落とすように青年が手ではたく中。彼は船乗りが見た恐怖の正体を目撃する。

「なっ……あ、ああああ……!!!」

そこに存在したのは町一つを燃やし尽くすには多すぎる炎と、その炎により燃やし尽くされた者達の怒りと無念を受け継いだ“150人の炎を纏った全長10mを超える巨人達”であり。

まるで寝起きの様に周囲をキョロキョロと見渡していたり、自分の身体や炎に包まれている手足を見ていた彼等は突然一斉に顔を上げて、海の上にいる彼等を睨みつけ始めた。

その異常な様子はまるで赤鬼の軍勢の様でもあり。絶対に関わっては行けないと言うメッセージを発していた。

「ひっ、ひいいい……」

思わず吐き気も引っ込む恐怖に包まれた青年が悶えているその時、異常事態に気がついた陣形の真ん中にいる艦が主砲による砲撃を行い始めた為に、周囲に轟音が轟いた後に慌てて警戒を促すサイレンが鳴り響く中で。
何時もなら「連絡も無しに砲撃するとは何事だ!!」と怒鳴り散らしているであろう青年は迫り来る恐怖から解放されるかも知れないと考え、歓声を上げて喜び出す。

「よし良いぞ!! あの気味の悪い巨人を吹き飛ばせ!!」

彼等が炎を纏っている事から最初の砲撃で用いられた炎を起こす弾頭ではなく、砲弾の重さで周囲を叩き潰す通常弾頭により行われた砲撃は次々と巨人達に着弾して行き。
その姿が舞い上がってしまった砂漠の砂により見えなくなって仕舞う程であった。

「あはははは!! ざまぁないぜ!!!」

思わずガッツポーズを取って喜ぶ青年は勝利を確信し、気づけ薬だと船員に持たされた度数の高いウイスキーの様なお酒が入った銀色のボトルを(ふところ)から取り出して煽って一息つく。

「やれやれ、驚かせやがって……ヒクッ! よーし、船長!! 本国に転進らぁ!! 私はーかえるぞー!! ヒクッ!!」

そう言って千鳥足でブリッジに青年が木製のドアを開けて入っていったのと、砲撃を行った真ん中にいた艦に燃えあがる巨人が4体飛び乗った事により巨人の纏っている炎が水のように船内と弾薬庫に行き渡ってしまい。
艦が船員達の断末魔が消え入る前に大爆発を引き起こしたのは同時であった。



 
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ