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転生したので、役職がフリーターから仲間と戦う召喚士になりました 作者:礼状

04. 衝突する願望篇

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04-12 戦士達の咆哮

・ルルの話し方を砕けさせました。
・女狐→魔女に代えました。
・アダマンタイトソードの名前間違いを修正しました。
・ソルトを消失させました。
 時は再び地上の砂漠でシャルロッテを見送った後のラムセスに戻る。

 彼の周囲には依然として元々いた14体を超えるサンドワーム達とは別に、驚くべき事にあちこちからサンドワーム達が集合しつつあると言う、サメが生息する海の上を漂う丸太の上にしがみついている様な危険な状況であり。

 その悪くなる一方である状況の中でラムセスは、ここにシャルロッテを先に行かせる事で捲き込まずに住んだ事を喜んでいる自分に気がつき苦笑いする。

「ふっ、やれやれ。世話の掛かる犬ほど情がうつると言う奴かな?」

 周囲を囲むサンドワーム達の動きをスカイジェットを動かして各サンドワーム達に機敏に向ける事で牽制しつつ、両手に持つシュツルムバリスタに残っている大矢を確認する。

(残り、合計37本か……。サンドワーム達がそれ以上の数で攻め寄せてくる可能性も考えられる以上、余り過信出来る数ではないな……)

 その様な状況分析をするばかりで、全く動こうとしないラムセスに我慢出来なくなったのか。
 後方から隙を伺っていた3体のサンドワーム達が周囲を周回する事を辞めて、ラムセスに向かって高速で砂の海を泳ぎながら接近し、イルカショーの様に飛び上がってその大きく開けた大口で左・中・右から食い千切ろうとするが。
 ラムセスが機体を華麗にサイドステップさせた事により、3体のサンドワーム達は御互いに熱いキスをさせられる事となり。

「キィャアァァァァ??!」
「マヌケめ、何も考えずに動くからだ!!!」

 その隙を逃さぬ様に、ラムセスはスカイジェットの両腕の外側に折り畳まれている腕と同じ長さを持つアダマンタイト・ソードを横に展開し、その城壁すらバターの様に切り裂く剣に風の魔力を纏わせる事により薄くエメラルドカラーに発光させつつ。

 空中でぶつかり合い、ゆっくりと地面に崩れ落ちようとしている3体のサンドワーム達に狙いを定め、ここぞとばかりにブースターを吹かせてその落下点目掛けて突撃する。

「先ずは三つ!!!」

 空中で勢いを失ったサンドワーム達に逃げ場は無く、擦れ違い様に放たれたラムセスの斬激をもろに受けた3体のサンドワーム達の頭と胴体は切り離され。
 周囲には彼等の悲鳴と泥の様な体液がばらまかれる!!

 その地獄絵図の中に居る鬼神の姿を見たサンドワーム達は彼等に知能が残っているかは分からないが、ただ呆然とその姿を見つめている。

 しかし、そんな彼等にじっと身を潜めていたもう一人の狩人が襲い掛かる。

「グキャァ……!?」
「イタァ……?!」

 突然、迂闊にも動きを停めて砂から顔を上げてラムセスの後ろ姿を見ていた2体のサンドワームの頭に何かが当たりその顔の半分がトマトを潰した様に押し潰れた後、雷鳴の様な轟音がラムセスの背後から二回聴こえて来たのである。

「ああ、この攻撃はもしや……」

 思わずその命中精度と威力に身に覚えがあったラムセスは身体に刻まれた恐怖と痛みによる軽い震えと共に、頬に1滴の冷や汗を垂らしながら苦笑いを浮かべる。

 《ラムセスさん、背後にいる敵を倒すことで援護するね……》

 その狩人の正体は、ラムセスがいる戦場から250m後方で偵察機であるロングイヤーに搭乗しているルルであり。
 彼女はどうやってかは知らないが、全長8mの巨人にも合うバイポッドを展開して支えられている155mm対物ライフル砲をほふく状態で構えていて。
 ライフルの隣には火薬の煙りが残る、プロパンガスの瓶レベルの大きさの空薬莢が落ちている事から、その威力の理由が伝わって来る。

 《次弾装填……目標、後方でうねうねしている気持ち悪いの……》
【ラジャ! 敵の動きと位置に合わせて照準を行います!】
  《あんまりズームはしないでね?》

 その遠くまで砲弾を叩き込む榴弾砲と同じ以上の威力を持つ155mm対物ライフル砲は、戦場の状況を見て、狙撃兵に最善のターゲットを伝える役目を勤めるスポッターの様に手伝ってくれている【高性能自立型AI・H∧L(ハル)】のサポートを受けながら次なる目標に狙いを定める。

【目標の脅威度を考え、ラムセス機の隙を伺っているこの三体がよろしいかと思います!】
 《うん、私もそう思う……》

 少年の様な機械音声で語りかけるH∧Lの言う通り、普段は頭部のおでこ辺りに装着されていて、本来は遠くの目標を撮影する為に用いられる望遠レンズ内蔵式ゴーグル型カメラを使用する事で拡大された映像の中には4体のサンドワーム達がいた。

 《じゃあラムセスさん。今から貴方の後ろにいる敵を撃つから、ラムセスさんはそのまま前方の敵をお願いするね?》

 その淡々とした、戦場に似つかわしくない少女の声を聴きながら。ラムセスは同意する。

「了解した」

 すると、先程と同じ様に遥か後方から轟音が聴こえ始め、次の瞬間には後方にいた4体の内3体のサンドワーム達の頭が見事なミンチに変わっており。
 計算されたその砲撃はラムセスが陣取っているサンドワームの死骸に当たる事は無く、衝撃はあれど被害は出ていなかった。

「やれやれ……私はこれ程の相手と戦っていたのか。今更ながらゾッとさせられる……」

 そう言いつつもラムセスも自分に割り当てられた獲物を刈るために、先程から大きな口を開けて威嚇している正面の獲物に対して、何時でも発射出来るようになっている2丁のシュツルムバリスタを構えようとするのだが……。

 《ラムセスさん!! 急いで退避して!!》
「突然どうしたと言うのだ?」

 そう言いつつもラムセスは指示に従い、スカイジェットのブースターを点火させてサンドワームの死骸の上を滑走路に見立てて、離陸する為に機体を加速させて行く。

 《ヴァルハァム陸軍の人がチャリオットと共に持ってきていた投石機を使って、ラムセスさんがいる場所にいっぱい火の魔石を投石し始めたの!!》

「何だと?! 閣下がその様な事を何故!?」

 しかし、その疑問に対して答えが帰って来る前に渡り鳥の如く投石された魔石が町の方から飛来し、次々とサンドワーム達とまだ陸地にいるラムセス目掛けて降り注いだのである。

「おぉぉぉ!!!」

 そのバレーボール程の大きさがある着弾した火の魔石の数は100を超え、地上の状態はまるで火山が噴火した様に燃え盛り、あちこちが溶解し始める程の威力を持っており。
 無論、その場にいた熱さに強いサンドワーム達でさえ耐えられない程の灼熱が砂漠を支配していく。

「何故です、何よりも義を重んじられる筈の貴方が何故この様な騙し討ちの様な真似をされるのです!? ガトラス閣下!!!」

 やがてその衝撃と炎は離陸中のラムセスに大量に降り続く投石と言う形で襲い掛かる。

「くっ、いかん!! 前方にも魔石が!!」

 機体が浮き上がり始め、後少しで空中に飛翔出来たであろうスカイジェットの進行方向にまるで狙ったかの様に魔石が次々に着弾し、大爆発を引き起こす。

「南無三ッ!!!」

 その爆心地にスカイジェットは進路を代える事も出来ずに飛び込んでしまい、元々飛行運用を前提として設計されている為に装甲が薄い機体は、合計8個分の大爆発を受けて頑丈なコックピットを残して千切れ飛ぶと言う壮絶な最後を迎える事となってしまうのであった。


 ーーーーー◇ーーーーー


「……お前達、一体これはどういう用件だ」

時を同じくして、盗賊達の残党がいるか等の確認の為に町の探索を行っていた綾瀬率いる騎士達とヴァルハァム陸軍を率いる軍団長ガトラスとその軍師アルダール達は、大きな井戸があり円形になっている町の広場で味方であった筈のヴァルハァムの兵士達に突然槍を突きつけられて包囲されてしまっていた。

「閣下、申し訳ありませんが我々は貴方達をこの辺境の地で排除せよとの命令を受けているのです……!! 御許しを……!!」

そう震えながら語るヴァルハァム陸軍兵士の言葉を聴き、綾瀬が「陸軍隊長を暗殺せよなんて命令が出たと言うの?」と思わず声をあげる。

「その通りです、裏切り者の魔女」

すると包囲している兵士達の真ん中を掻き分ける様にして、砂漠であるにも関わらず銀色の甲冑の上に高級そうな青いマントを纏った、顔立ちの良い8人の白人らしき男達が気取った様子で現れる。

「お前達は確かイザベラ親衛隊の……!!」

怪訝そうに彼等を呼ぶ軍師アルダールの発言を聴いた彼等は癇に障ったのか、彼等のリーダーらしき銀色のカールした長髪を持つ男が彼の元に無言でつかつかと歩いて来て、突然その白い手袋を嵌めた左手で平手打ちを喰らわせた。

その行動に周囲に緊張が走る中で、男は汚れた野良犬に触ったかの様にその手袋を苛立ちと共に脱ぎ捨て、仲間に新たな白い手袋を用意させる。

「軍師アルダール。イザベラ様の名を汚すような品の無い呼び方は慎む様に!! 女王陛下は我々と共にヴァルハァムを豊かにし、大陸を納める程の超大国とした崇高な御方だ!!」

「ふっ、我等を愛してくれた女王を殺した娼婦に何故我々が感謝せねばならないのか、是非ともこの惰弱な私に理解出来る様に教えて欲しいものだな!!! 」

「貴様ッ!!!」

その挑発し会う憎み会っている二人をガトラスが制する。

「辞めないかお前達ッ!!! 今すべき事は何故この様な状況になったのかをお前達が伝える場であろう!!」

その数段格上の威厳を持つガトラスの言葉を受け、息がかかる程の至近距離で言い争っていた二人は互いに睨みあったまま距離を離す。

「確かに貴様の言うとおりだなガトラス。よろしい、ならば我等に託されたイザベラ様からの言葉を伝える。
今日、この時を持ってガトラス大陸軍隊長はその任を度重なるイザベラ様に対する反対意見を具申し、国の繁栄を大きく遅らせた罪状により解き……この地にて我がアルマンの剣により処刑する事に決まった」

そのとんでもない書状の内容をさも当然とばかりに男は読み上げつつ、腰に刺している純白で金の装飾がされている柄から両刃剣を優雅に抜き放ちながら、兵士に捕縛されているガトラスの元に歩み寄る。

「数々の愚行を……その命を持って(あがな)うが良い!!!」
「そうはさせないよ!!」

その候補の空から聴こえて来た威勢の良い少女の声に、ガトラスの胸に突き立てようとしていた剣は止まり。

「何者だ!! 我が神聖なる技を邪魔する者は名を名乗るが良い!!」

思わず振り返り空を見上げるのだが、彼等の目は太陽を背にしている少女を捉える事が出来ない。

「私の名はソルト!!! 世界で一番空を愛する魔法少女だっ……て、うわぁ身体が消えてーー」

そう言いつつも身体が良いところで消えてしまったソルトを除く、周囲を空から見張っていたソルトが率いていた4組の航空部隊は、地上に催涙玉を大量に投下していく。
その見慣れぬ白い雪玉の様なボールの効果を知らないヴァルハァムの兵士は驚き戸惑い、逆に催涙玉の効果を知る綾瀬達は鼻と目を守る為に綾瀬に風の加護をかけて貰う事で状況に備える。

「ぐわぁぁぁ?! 目がぁぁぁ鼻がぁぁぁ?!!」
「げほっげぼっ!! 駄目だ、何も見えんぞぉ!!!」

突如として広場に立ち込めた目と鼻に激痛を与え、その煙りによって視界を奪う白い霧はたちまち彼等の戦闘力を奪い。

「武器を捨てよ! さもなくば切り捨てる!!」
「良くも我等が閣下を嵌めてくれたな!!!」

逆に体の周囲を風の加護によって白い霧が近づかないように守られている綾瀬と騎士達、そしてガトラスを支持するヴァルハァム陸軍兵は次々に裏切ったヴァルハァムの兵士達の持つ武器を破壊し、襲い掛かる相手には手痛く反撃する事で無力化していった。

「かはっかはっ!! 己、野蛮人どもめがぁ!! この様な恥辱を味会わせた代価支払わせてやるぞ!!」

お前に言われたくないと言うセリフと口に入った粉を吐きながら、ガトラスを処刑しようとしていたアルマンは上空に黄色いテニスボールの様な物を放り投げ、空中で爆発させた。

「貴様、何をした!!」

その不可解な行動を何人かの敵兵を無力化していたアルバインが気づき、してやったりとした表情のアルマンに詰め寄る。
すると男はニタリと笑いながら、甲冑を纏った乙女に海がある方を指差して説明する。

「くくっ、今上げた信号玉は海で待機している仲間達に援護を呼び掛ける合図を送ったのさ!! 直ぐにその合図を受け取った大勢の仲間が、帆を張って水上も地上も突き進む事が出来る新型のガレー船に乗って押し寄せてくるだろう!! 」

「そうか……彼等を殺すために最初から念入りに考えられた陰謀であったのですね……。マスターに知らせないと……」

そう言ってアルバインはこれ以上余計な事を男がしないように、剣の面の部分で男の頭を叩いて気絶させてから、しばらく連絡が途切れていた亮太との交信を試みる。

《ザッ……ザザッ…その声はアルバインか?》
「マスター! 良かった……御無事でしたか!!」
《勿論! 何てったって僕が助けに行っ……ザッ……からね!!》

そう言って交信に混じってきたのは、スカイジェットと共に地下施設に侵入し、落下した衝撃で機体を大破させながらも出口を探して迷っていた亮太とマリナを見事に見つけて見せたシャルロッテであり。

彼女がかなりの無茶をしていた事を通信で聴いていたアルバインは、浮かれている彼女に釘を刺しておく。

「シャルロッテはちゃんと迷惑を御掛けしたラムセスさんに御礼を言うのですよ? かなり危険な行動をさせたのですから!!」
《うぐっ! い、一応マスターを助ける事には成功したから、少しは多目にみて欲しいなー……って。ねえマスター?》
《俺に振っても、反省会は皆平等に開くから諦めた方が精神的に楽だぞシャル?》
《そっ、そんなー……》

そんなやり取りを音声だけで確認していたアルバインは、ついつい綻んでしまう口元を元に戻しつつ指示をこう。

「マスターは今ある現状を何処まで知っておられますか?」

《一応、ヴァルハァムの人達の間でいざこざが起こっているのと。海岸付近にヴァルハァムの大型魔石船が6隻、その大型船に積まれていて今は兵士が乗船している車輪付きの大型ガレー船32隻がいることをルルに報告してもらっているよ》

その内容にアルバインは息を飲みつつ指示を仰ぐ。

「では、我々はどう致しましょうか?」
《そうだね……。彼等と戦うとしても、先ず敵対している者としていない者が現在入り乱れている状況にあるよね?》

その言葉を聴いて、アルバインは8000対900足らずと言う人数差が有るために未だに鎮圧に手間が掛かっている戦場に目を写す。

「はい! 綾瀬様と私達騎士隊が敵兵を無力化する為に奮闘しておりますが、このままだと敵の増援が来る方が速いかと思われます!!」

その言葉を聴いて亮太は少し考えてから指示を出す。

《……分かった。一先ず海軍は俺が引き受けるから、アルバイン達はガトラスさん達の安全を確保する意味で綾瀬さんに交渉人になって貰って、彼等と相談しつつ保護して欲しい》

「分かりましたマスター、最善を尽くしますね!!」

《ありがとう。お互いに最善を尽くそう》

その士気の高い彼女の返事を聴けた亮太はそう言い残して通信を切り。新たな命令を受けたアルバインも今話し合った事を伝えるべく、綾瀬の元へと駆けていった。


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