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転生したので、役職がフリーターから仲間と戦う召喚士になりました 作者:礼状

04. 衝突する願望篇

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04-11束の間の休息

 無事に合流を果たすことが出来た亮太とマリナは、彼女を襲った男を転送の杖でトレノ達がいる部屋へと送り届けた後、スカイジェットに搭乗していた時に負った火傷や、マリナの耳に取り付けられてしまったクリップタイプのピアスを取り除く治療等をベットの上で行っていた。

「良かった、ピアスを着ける為に無理矢理耳に穴を開けられていた訳じゃ無かったんだね……」

「はい、彼は私達では無く、自分達を無意味に消耗させた毘沙門天を憎んでいるだけの様でしたから……」

 この時に治療に用いられたのは身体に起きる殆どの怪我や、病気等を治癒する事が出来る効果を持つ聖者の杖ホーリーロッド《Rank,SR》であり。
 亮太は自分以上に辛い想いをさせられたマリナを優しく励ましつつ、ここからは御互いによりいっそう力を会わせて頑張ろうと意見を交わし合う。

「皆には悪いけど、ちょっと休憩してから行こう。いきなり大量の魔力を消耗したせいで、残りの魔力が尽きかけているからね……」

「そうですね……。私も少し疲れてしまいました……」

 そう言って亮太は二人が失っている体力と気力を回復する為に、影でランクアップさせて効果と品質を高めた瓶入り牛乳セット《Rank,R+++》と、通常のパワーバーの10倍近い回復量を持つハイ・パワーバーを数個召喚し。二人はベットに腰掛けながら食事を始める。

「う~ん、このアップルパイ味美味しいですよ! 亮太さんも食べて見てください!」

「どれどれ……おっ、本当だ。以前のパワーバーはドライフルーツの様な物が入っているだけだったのに、今回のはまるで出来立てのアップルパイみたいに美味しいね!
 でもこのロイヤル牛乳だって絶品だよ?」

「ふえ? この牛乳さんがですか?」

 そう言って亮太が手渡した牛乳は上質過ぎて薄い黄金色をしている瓶牛乳であり、牛乳好きの亮太が勧めるだけあってその味は絞りたての牛乳の旨みを濃くならない程度に凝縮した様な初めて味わう味であり。
 思わず牛乳を飲み終えたマリナが夢心地になって幸せそうな笑みを浮かべてしまう程であった。

「はふぅ亮太しゃん……私今幸せですぅ……」

「あはは、マリナによろんで貰えて本当に良かったよ。それじゃあちょっとトレノさんに連絡を取るから、そのままゆっくり休んでいてね」

 怒濤の如く続いていた危険な環境ですり減らされた精神を回復した二人は、そのまま食事を続けて失った体力も回復しつつ、現状を把握する為にトレノと連絡を取る。

 《良かった、無事なのかい二人とも?!》

「御心配を御掛けしましたトレノさん。先程地下に潜伏していた転生者の方達が敵に襲われていた私達を地下に回収する事で一度は助けてくれたのですが、本当は私とマリナを人質に捕ろうとした様で。
 今は何とか彼等を無力化して、マリナとも合流を果たす事が出来ています」

 《なるほど状況は解ったよ亮太くん。こちらの状況は地上で綾瀬くん率いるチームがサンドワーム達と戦っている所だけど、亮太くんが転送してくれた転生者二人の確保は無事に行われている事も伝えさせて貰うね。
 後、残り3人の転生者達に関しては僕達の元に亡命する意思を伝えてくれたから、後は亮太くん達が無事に地上に上がって来てくれれば今回の救出作戦は終了となるから、油断せずに戻って来て欲しい!》

「分かりました! 今からマリナと脱出します!!」

 その交信を終えた亮太は隣に座るマリナと視線を合わせて互いに頷き合い、脱出する為に動き出そうとするのだがふと亮太がある重大な事に気がつく。

「えーと、そう言えばマリナ?」
「はい、どうされましたか亮太さん?」
「……今、服着てないよね……?」
「え、あ……いゃぁぁぁ?!!」

 亮太の言う通り、マリナは現在ベットの白いシーツだけで身体を隠している状態であり、ついつい亮太あらの告白を受けて舞い上がっていたマリナはその事を忘れてしまっていたらしく。
 今更になって顔を今までで一番に真っ赤にさせながら、大声を上げない様に必死に堪えながら素早くベットの下に隠れてしまう。

「うぅぅ……もう亮太さんのお嫁に行けないよぅ……」

 その犬らしい行動に同じく赤面しつつも亮太は慌てて後ろを向きながら、マリナに謝る。

「マリナごめん僕が早く伝え無かったせいだ! 後ろを向いたまま、新しい着替えを用意するから出てきてくれよ!」

「新しい着替えですか?」

 マリナにその人に合わせて形作られる英雄の装備《Rank,SR》を贈る事とする。

「わあぁ……亮太さんに頂いたこの装備凄いです! 私の体に良く馴染むし、奥底から力が沸き上がって来るみたいです!!」

 彼女の為に形作られ用意された装備は、彼女が初期に身に付けていた白と黄色のメイド服をモチーフとしたバトルドレスと呼ばれる女性用の軽甲冑であり。

 何処が普通のドレスと違うのかと言うと、先ず敵からの攻撃から身を守る為に銀色の胸部と背部を守るキュイラス、スポールダーと呼ばれる肩当て、手と肘までを守るガントレット、爪先から膝までをレッグアーマー等が身体を守る。

 更にスカートの外側の上下左右にも動きを阻害しないような位置に敵の攻撃を軽減する軽甲が装着されていて。
 一見するとその外見からスカートに鉄板を装着している様に見えるために少し重そうに見えるが、ゲームのレア装備の様に軽甲で装備を揃えている事によるボーナス効果と英雄の装備のステータスアップ効果により、彼女の全てのステータスが何と2,5倍程上昇する効果を発揮するので問題にはならない。

 その体の芯から沸き上がって来る様な力を感じたマリナが驚き喜ぶ姿を見た亮太は嬉しい半面、今ある彼女本来の笑顔を守れる様に努力する気持ちを固めつつ。
 雑貨屋の注文リストの中から選んで購入した二個の白いヘアバンドを掌に召喚してマリナに手渡す。

「亮太さん、もしかしてこれは……」
「何時もの髪型じゃないとマリナが落ち着かないかと思ってさ」

 その2本のヘアバンドをマリナは照れくさそうにはにかみながら、左手を胸元に置いたまま右手を差し出して受け取る。

「ありがとう亮太さん。早速使わせて貰いますね?」
「うん、マリナにきっと似合うと思うよ」
「あっ、ありがとうございます! えへへ、嬉しいなぁ」

 そう言ってマリナは頬を赤らめてもじもじしながら、初々しく早速亮太に貰ったヘアバンドをキャラメル色のストレートロングヘアーを馴れた手つきで纏めて行くと、驚くべき事に見馴れたツインテールになった途端マリナの目付きがつり上がり、性格も以前のツンとしたものに戻ったものだから亮太は驚かされる。

「なっ、何よそんなにジロジロ見て?」

「あ、マリナの性格が替わるスイッチって髪型が関係していたんだ……。通りで僕の傍にいた時は寝るときだって絶対に髪を溶かずにいた訳だね」

 その言葉を聴いたマリナは思わず今の性格に戻ったせいで亮太に嫌われたのでは無いかと心配になるのだが、亮太は笑顔でマリナと視線を会わせる為に少し屈んだ体勢で彼女の頭を撫で始める。

「なっ、何でいきなり撫でだすのよ?!」

「いや、僕が知らない所でとてつもない努力をしてくれていたんだと解って、つい感謝したくなってしまってさ。本当にここまで傍にいてくれてありがとう、マリナ」

 その労いの言葉を受けたマリナは顔から湯気が出るんじゃないかと思うほどに赤面してしまい、無理矢理声を張り上げて照れ隠しをする。

「ううう……亮太のバカ!! そう言う事はここを無事に脱出してから言いなさい!! 良いわね?」

「……了解、じゃあ皆の元に戻ろうかマリナ」

 このまま二人が仲良く一緒に居るためには戦場で任務をこなして戻らなければ行けないと言う現実の中で、今回の経験を通して亮太は戦闘と言う行為を今まで考えていた英雄の物語や、崇高な聖戦等とは考える事を辞めて冷めた視点で見始める様になる。

 それは絶望が煮えたぎる釜の中に容赦無く入れられた同じ転生者達を見たためか、マリナと言う大切な人が尋問を受け泣き叫ぶ姿を見たからかはわからないが。
 少なくとも機動隊の防具を見に纏い、小銃を構え直したその後ろ姿からは今までがむしゃらに走り続けて来た彼とは違う意思を含んだ覇気が流れ出していた。

「………………」

 その何かを決意したであろう青年の後ろ姿に何かを感じた少女は、黙しながらも心配そうに見つめている事しか出来なかった。

「あれ、おかしいな……これはトレノさんの情報と違ってかなり不味い事になってないか?」

 亮太が先ず部屋を出る前に行った事は、地上で戦っている仲間達の状況を召喚した者達のステータス確認と彼等に途切れていた魔力供給が再開した事の確認であり。

 視野の中に表示された仲間達のステータスを表示するメニューにはシャルロッテとラムセスが搭乗しているスカイジェットが深刻なダメージを受けている事が、問題を示すマルチウィンドウに表示されている事も不味いのだが。
 現在ラムセスが孤立した状態で大勢の敵に囲まれていると言う情報も記載されていた為に、慌てて亮太は状況を一番に理解しているであろうルルに連絡を取る。

「……ルル聞こえていたら変事をしてくれ、頼む」

 すがる様に何度も響くコール音を聴くが遂にルルが変事をする事は無かった。

「彼女の反応は確かに地上で確認出来ているのに。一体地上で何がーー」

 だがその代わりに他の転生者らしき人からのコールサインが来た為に、亮太は驚きつつも回線を繋げる。

 《始めまして、私はあなたと同じ転生者のクリスティン・ヒュルケンベルクと申します》

 その落ち着いていながらも芯のある声の女性が連絡を取って自己紹介して来たクリスティンを名乗る女性に、亮太も自己紹介をしようとするのだが急いでいる様子の彼女の言葉に遮られる。

 《ごめんなさい、時間が限られているみたい。手短に今起きている状況を説明します。現在、ヴァルハァム陸軍の者達が貴方達の仲間達を協力者の振りをして油断させる事で不意を討ち。人質として拘束しています》

「何だと……!!」
「何ですって?!」

 その衝撃的な話は亮太とマリナに衝撃を与え、その情報が真実である事を告げる様に複数枚の写真が送られてきた。

 そこには周囲を槍や、剣を持ったヴァルハァム陸軍の兵士に突きつけられながら地面にうつ伏せで寝かされている綾瀬と騎士達が写っている写真や。
 黒煙を吐きながら、コックピット部分以外全てを破壊されて砂漠に転がされているラムセスが乗っているであろうスカイジェットの姿を、二人で見れる様に出現させたテレビモニターで確認した亮太とマリナは唖然とさせられる。

「皆は無事何ですか? 彼等の要求は?」

《今のところ死者は出ていませんが。彼等の要求は……自分達の領土に不法に侵入し、暴動を起こした私達転生者を引き渡す事を彼等を解放条件として来ています……》

「何て事だ……」

その悔しそうなクリスティンの説明を聴いて亮太は酷く困惑させられる。

(本来、計画無しに彼等を強行軍としてしまった者が受けなければ行けない責任を全て彼等が取らされ様としている……!! しかも、綾瀬さん達を人質に取られると言うおまけ付きだ……どうすれば皆が救われる!?)

最早、目的を完遂したかに思えた理不尽な戦争に巻き込まれた転生者達を回収するだけの任務はその本来の目的から外れ、人質として捕らえられている敵軍からの救出作戦へとその表情を全く変えてしまったのである。

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