挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
転生したので、役職がフリーターから仲間と戦う召喚士になりました 作者:礼状

04. 衝突する願望篇

54/87

04-08 熱砂に潜む者【下】

・マリナと男の会話で抜けていた部分を修正しました。
それは突然の出来事であった。

「うわ、何の音や!?」
「あれは! 見てください綾瀬さん!! マスター達が向かわれた方角に火柱が!!」
「なんやて?!」

町を占拠していた盗賊達を纏めて無力化し、その戦闘の間協力し会うことが出来た大ヴァルハァム王国の兵士達と綾瀬達が互いに情報交換をしていた最中、救難信号を出していた転生者達を救出に向かっていた亮太達の異変に彼の仲間である騎士達が気づき、ざわめき出したのである。

彼等は亮太達がいる町の裏側を指差して綾瀬に不審な点を伝えて来たために綾瀬が注目して見てみると、まだ夕暮れ時には早いにも関わらず空が赤く染まっており。

仄かに火薬と焦げた臭いが漂って来たために、綾瀬達はその茜色の空が自然に生まれた物ではなく人工的な物である事を認識させられる。

「くっ、騎馬隊を集めよ!! マスターの危機を何としてもお救いしなければ!!!」

「落ち着きアルバインちゃん! 亮太さん達も警戒しとったにも関わらずああなってもうたんやから、尚更迂闊に飛び込んでもうたら貴方達も無事ではすまへん筈や!!」

「では、マスター達を見捨てろと言うのですか!?」

「そうやない! 先に確かめないとあかん事があるっちゅーことを言うてるだけや! 下手をすれば、ウチらと同じとんでも能力を持つ転生者達に襲われている可能性があるなら尚更や……」

自分達の目の前で主人である亮太が危機的状況にいるであろう事を考えて焦るアルバインを綾瀬が宥めつつ、先ず状況を聞き出すために綾瀬は真剣な表情でトレノと連絡を取り、先に状況確認を取ることで話を勧めていき。

「おっ、繋がったね」
《連絡が遅れてすまない。これから今起きている事を説明させて貰うね》
「一体何があったんよトレノくん?」

やがて連絡が繋がり大ヴァルハァム王国の者達がざわめく中で、綾瀬達の目の前に現れたスクリーンに映るトレノから得られた情報は綾瀬達を驚かせる物であった。

《……私達が救出対象としていた彼等が、亮太くん達を人質にして私達に交渉する権利を主張しているんだ》


ーーーーー◇ーーーーー


綾瀬達がトレノからの説明を聴いているその頃、大破したパワードアーマーの中で意識を失った亮太は何処か違う場所で目を覚ました。

「う……うーん……。ここは……」

そこで目に写ったものは窓処か扉の一つもない白一色の部屋であり、その病院の個室程の広さを持つ殺風景な部屋の真ん中に唯一の家具としてある白いシーツに包まれたベッドの上で、亮太は元々異世界攻略の時から身に付けていた機動隊の防具は脱がされており。

代わりとして、手術される患者が着ている様な検査着を身に纏わされていて。

最悪なおまけとして両手両足を英語の【X】の形でベットの隅と隅にある支柱に透明の糸でくくりつけられて身動きが取れない状況にされていた。

(こいつは不味い事になっちまってる……!! マリナは何処だ!?)

その異常な事態を確認した亮太は自分が意図的に襲われて拉致されてしまった事を認識させられ、共に拉致されているであろうマリナを探そうと周囲に視線を送るが彼女の姿は何処にも無く、ただただ自分以外は誰もいない無音の空間が有るだけであった。

「どうやらお目覚めのようだね」

その状況を何とか理解し終えた亮太であったが、突然誰も居なかった筈の部屋に一人の来客者が現れる。

その人物は亮太が初めて見る長身長でやせ形の金髪でオールバックと言う髪形に眼鏡が似合っている、目の下に濃い熊が出来ているやつれ気味のイギリス系男性であり。

彼は灰色の長ズボンとワイシャツの上に白衣を着込んでいて、感情が読み取れない研究者風の機械的な雰囲気の男だった。

「あんた、これはどういうつもりだ!! 貴方達が救難信号を放ったから助けに来たと言うのに、それにマリナを何処にやった!!?」

突然の遭遇ではあったが亮太は自分の視界の中で彼の頭上に写る、彼が転生者の一人である事を示すネームプレートを確認したために亮太の怒りは燃え上がり、彼等が亮太達を誘き寄せる為に意図的に自分達を罠にかけたと判断し、その行動理由とマリナに何をしたのかを問い質す。

「こんな仕方で出迎えてしまいすまないと思っている。だが、我々も後には引けなくてね」
「どういう意味だ……」


男は亮太の相槌を男は聴きつつ、部屋に軽快な足音を響かせながらゆっくりと亮太が拘束されているベッドの左側に立ち、見下ろす形で立ち止まる。

亮太が何をするのかと横目で見ながら身構える中で、男は右手を軽快に鳴らして何もない空間から最初から有ったかの様にパイプ椅子を生み出して腰掛け、驚く亮太を尻目にその理由を語り出す。

「私の名前はリチャード・ケンジー。君と同じ、自分が望む形の部屋を造り出す事が出来る能力を持つ転生者だよ。
そして君が心配する彼女はどうしたかと言う質問に関してはだが、先ず彼女に掛けられていた強化する力を我々の身の安全の為に無効化させて貰っているのと……。
彼女の身体を今の君の様に拘束させて貰っている、ただそれだけさ……」

そう言って溜め息を吐く様に語る彼の言葉を聴いて、亮太の頭の中で色々と聴きたい事は浮かんだが、先ずは彼等が何故この様な行動を取らざるを得なくなったかを聞くことにした。

「何故この様な事をする必要が有ったんですか? 私達は貴方達の敵では無く、寧ろ貴方達が虐げられた事を知っているが故に救援に来たと言うのに!」

それに対する彼等の答えは意外にも純粋な物であった。

「先ず転生者である私達を用いて大ヴァルハァム王国の攻略を勤められていた事は知っているかな?」

「……俺達の上司からは20人近くの転生者達が先行して奮闘していると言う話と、何らかの理由で壊滅した事は聴いています」

「そうだね。だから貴方達が助けに来てくれた事も聴いているよ……」

「そこまで知っているなら何故!?」

その動機が良く分からない彼等の行動に思わず亮太が声をあげるが、力無き彼の瞳はそのことすら無駄だと言わんばかりに曇り続けており。

男はぽつりぽつりと彼等をここまで疲弊させた出来事が静かに語られていく。


ーーーーー◇ーーーーー


「ここは……一体何処なんだ?」

イタリアで大工として働いていた私は我が国を襲った大地震の為に倒壊した美しい街並みを取り戻すため、国家規模の再建プロジェクトに自ら望んで参加していた。

当たり前だがその仕事は私が今までに経験した事が無い程の仕事量であり、重機によって片付けられた家があった場所に国中の大工達と災害ボランティアの援助が駆け付けて、てきぱきと簡易的な小さな家を次々に建てて行ったにも関わらず連日舞い込んで来る仕事は減らなくてね。

それは大地震が起きてから1年を過ぎても無くなる事は全く無く。

気づけば半年で60件の家を仲間達と共に新しい家を待ってくれている人達の為と、期間に間に合わせる為に必死に働いていた所、過労のせいで気がつけば口から泡を吹きながら死ぬと言う不甲斐ない最後を迎えた私は、気がつけば病院の待ち合い室の様な場所に放り込まれていた。


「よし、貴様ら!! 今日からお前達は私の部下として世界を救う勇者として働いて貰うからな!!!覚悟しておけ!!!」

そこで案内された執務室の様な部屋で、おそらく私と同じ様に連れてこられた国も性別も違う20人の者達と共に、神様を名乗る【毘沙門天】と言う不敬な男に詳しい理由も聴かされる事もなく突然アラブの様な見た目の街を標的にして、与えられた力を用いて占拠する様にと頼まれたわけだ。


ーーーーー◇ーーーーー


「何だよ……その無責任な話は……」

その話を聴いていた亮太は唖然とさせられる。

確かに亮太の場合も能力を与えられ、経験も何も無い状態でと言う点は似てはいるがマリナが身近でサポートしてくれたり、亮太よりも先にヴァルハァム王国の内部に潜入し和平派の仲間を纏めて行くと言う地道な方法を取っていた綾瀬が合流してくれた状況とは違い。

何も知らない彼等は、何も知らない土地で、何も知らないまま能力を与えられて無謀にも突撃を強要されたのである。

「何故その様な誰が見ても無謀な行動を毘沙門天は取ったのか分かりますか?」

その質問に対して、リチャードは一言で答えた。

「……彼は、【自らこそがこの惑星を支配するにふさわしい】と良く私達に話していてね。きっと、彼と同じ様な立場にいる者達より先に手柄を立てようとしたのだろう。良くある話さ」


「まさか、彼以外に惑星の統治を目指していた者達よりも自分の考え方を棚上げしたいからその様な強行軍を結成させたって言うのかよ……!!」

その考え方を理解した亮太はふと、彼等の奮闘をモニター越しにヒデヨシ達と見ていた時にトレノが苦笑いしながら呟いていた事を思い出す。

《うーん……ちょっとやり過ぎかな……》

その発言は当時チマチマと足場を固めながら確実に攻略する準備を欠かさなかった恵比寿のやり方では無く、全てをブルドーザーの様に力押しで蹴散らすと言う自らのやり方が優れている事を認められたいと言う為だけに暴走していた毘沙門天の愚行であったらしく。

更に彼が散々急かしていた事の原因の一つとしては敵を大きく見くびっていた事もあり、敵の規模や装備処か見た目すら知らないまま後先考えずに大ヴァルハァム王国を攻め続けた結果20人の転生者の内7人が戦死し、3名が捕虜となると言う多大な犠牲を払うと言う最悪な結果を産んでしまった事も聴かされる。

「しかも奴は窮地に立たされ死んだのは自分達の責任だとして、自分の失敗を正当化する事までして見せたんだよ」

「そんな……」

「やがて奴の言動は落ちるところまで落ち、【作戦の失敗の責任はお前達が取れ】として生き残った私達に対して玉砕するように命じると言うとんでもない無能をさらけ出してきてな。
数少ない攻略作戦の生き残りである7人の転生者達の内、2人のアジア人がコンビを組んでそのまま姿を眩まし。

残った五人である私達も戦場から離脱して、ヴァルハァム王国の追跡を必死に回避しつつ命からがらこの地に流れつき、何とか命を繋ぎ止めている有り様だと言う訳だ」

その理由を聴かされては流石に怒りに震えていた亮太も、彼等が何も信じられなくなる理由も嫌でも分からざるをおえなくなる。


「だから私達はその時の愚かな指揮官と同じ様に自分達を玉砕させてでも手柄を立てようとする様な思惑を抱いている指揮官が複数居る事を踏まえつつ。
その様な指揮官に命じられて暴挙に走った自分達と同じ様な転生者達が攻め寄せて来る事を考慮した結果、君達を騙し打つ形で襲撃する事で有利に立つ事によって、先に自分達の要求を飲ませてから見極めようと言う作戦の元に行動していた訳さ」

その話を聴かされた亮太は、以前アサツユ村でヴァルハァム王国からの驚異から守られている事を伝える為に流された映像を思いださせられる。

その内容はヴァルハァム王国に占領されている町に突然巨大な竜となった転生者が現れて、ヴァルハァムの兵士達を薙ぎ倒しつつ、地元の住民達を解放していく物であった為に、順調に話が進んでいるのだと考えていた為にショックを受ける。

そしてマリナの事に関しても亮太は再び驚かされる事となる。


「……それと、君と共にロボットに同乗していた彼女は意図的に精神を操作されている痕跡がある事が、調べた結果判明した」

「何ですって?!! 彼女が何故その様な事をされていたと分かるのですか?!」

その拘束されていなければ、今にも掴みかかって来そうな亮太の剣幕に男は少し落ちてきていたメガネを手で上げて調整しつつ。その理由を説明していく。

「私は、自らが望む形の部屋を作成する能力を持っていてね。彼女をその能力で設計した検査室で診察したんだよ。その結果がこれさ……」

そう言って男が指を鳴らすと亮太にも見えるよう天井に20インチ程のモニターが現れ、自分と同じ様に白い部屋の中にあるベッドに拘束されているマリナの姿を上から撮るような形で映し出された。

そこには白い検査着を身に纏い、頭の上に突き出ている左側の犬耳に牧場で飼われている牛のように緑色のピアスを開けられ、何時もの威勢の良い彼女とは正反対の今にも泣き出しそうな顔で拘束されているマリナがいて。

《亮太さん……ごめんなさい……亮太さん……》

彼女は震える声で亮太に謝罪し続けていた。

「マリナ!!」

その痛たましい彼女の姿を見せられ、思わず彼女の名を叫んだ亮太の声は彼女には届いていない様であり、その様子を見てとったリチャードは静かにマリナに語りかけ始めた。

「……マリナさん、失礼します。今、お話ししてもよろしいですか?」

その突然の呼び掛けにマリナは驚きの余り、身体をビクンと震わせ。
全くよろしい訳がない問い掛けに対して、震える声で答える。

《今度は……私に何をしろと言うのですか?》

「そう怖がる必要はありませんよ。私はただ、貴方にまた幾つか聞きたいことがあるだけなのですから」

《そ、その質問に答えるならば……亮太さんを解放してくださりますか?》

その声には怯えと、恐怖が混じり有った震える声ではあったが。亮太を想う気持ちによって支えられている様な芯がある声でもあった。

その心情を読み取った亮太は改めてマリナが自分の味方である事を再確認し、続く質疑応答を聴かされて大きく揺さぶられる事となる。

「それは私の質問全てに貴方が正直に答えて下さるのならば、と言う状況であればですが……」
《勿論です! 正し、亮太さんを解放すると言う約束は必ず守って頂きますからね!》

その含みがあるリチャードの回答に対して、彼が考え方を変えてしまわない様にするためにマリナは勢い良く答えて見せる。

その勇ましく、優しい彼女に亮太は胸を打たれるのだが。その感情はまるで無罪だと信じている友人が裁判にかけられている様に重苦しく、彼女を信頼しているが故に不安なものでもあった。

そのソワソワしている亮太の様子をちらりと見てから、リチャードは途切れた会話を再開する。

「分かりました、必ず約束は果たしましょう。では、最初の質問に移らせて頂きますね……」

その言葉にマリナは緊張した面持ちで小さく頷く。

(頑張ってくれマリナ!! くそ、応援しか出来ない俺ですまない……!!)

「では、最初の質問とさせて頂きますねマリナさん……」
《はい!》


ーーーーー◇ーーーーー


その後行われた話し合いの内容を俺は良く覚えていない。

ただ耳に焼き付いているのは彼女が泣き叫びながら俺の名を呼びながら謝罪する声と。

胸元を染め尽くしているであろう、何処からか滴り落ちる生暖かく赤い液体の感触だけ……。

それだけは感じる事が出来た……。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ