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転生したので、役職がフリーターから仲間と戦う召喚士になりました 作者:礼状

04. 衝突する願望篇

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04-05 弱肉強食の世界②

・綾瀬が町の盗賊達の体内に魔石を取り込んでいる事に気付く描写を加えました。(10/11)
男達が待ち構えるモカロフの町の入口に到達した亮太達は、町の代表者を名乗るインゾと言う怪しげな男に出迎えられた。

「やあやあやあ!! ようこそこの様な小さな町にお出でくださりました!! 私、この町を取り仕切らせて頂いていますインゾと申します!!!」

そう言って黄色い歯すら輝いて見える満面の笑みで亮太達を出迎えるインゾに対して、彼等の事を不審に思っている姉御肌の弓兵ベレッタが亮太に対して彼がハグをしようと間合いを詰めようとした所で、既に牛すら貫く大きな矢が装填されているロングボーガンを向けて制止する。

「待ちな!!! まだあんたが信頼出来る人間とは分からない以上、私らの主に近付く事は許さないよ!!」

その威勢の良い彼女の迫力にインゾは「ひっ」と短い悲鳴をあげて一時停止した動画の様に動きを止める。

「キャー姐さんカッコイイー!!」
「良いぞベレッタ姐さん!!」

その当然の反応にシャルロッテや彼女を慕う弓兵達からも彼女を支持する歓声が上がる中で、危うく得たいの知れないインゾと言う男を頑丈な甲冑を装備しているとは言え、迂闊に懐の中に入れてしまいそうになっていた亮太は緊張感が戻って来た故に冷や汗を一筋流す。

「ベレッタ、ありがとう」
「しゃんとしなよ、ここはもう戦場何だからね……」

そう御互いに聴こえる程の小声で二人が会話を交わした後、亮太は警戒を強める意味で自分の前衛として騎士の中で一番素早い剣技を放つ事が出来るシャルロッテと、心から信頼出来るアルバインを左右前方に立って貰い。

自分はレベルアップにより新たに追加された自分の視界の中に映像や、大小様々なウィンドウを展開し操作する事ができる様になっている視覚型モニターを操作していき、言語翻訳機能をONにする。

すると耳にする言葉全てが理解出来る様になり、テレパシーの様に自分の話す言葉の意味を直接相手の脳内に送る事により、言語を知らなくてもコミュニケーションを成立させるシステムが起動した事を確認した亮太は話し合いを開始する。


「はじめまして、私達は……その……」

思わず派遣転生者である亮太が自分達の事をどう名のるべきかと悩んだ所で、亮太に振り返る形でシャルロッテが小声でささやく。

「リョータ騎士団……」
「リョータ騎士団と申します! はっ!?」

自分の名前を騎士団名にすると言う、名前の前に【(スーパー)】を付けて名乗るぐらいもどかしい提案をつい承諾してしまった亮太が背後であざとく舌を出しながら笑うシャルロッテに顔を真っ赤にして詰め寄ろうとした所で、慌てた様子のインゾが声をあげてくる。

「なるほど!! リョータ騎士団、素晴らしい名前ではないですか!!! いやー憧れてしまいますよー」

そんな明らかな接待モードの彼に亮太が慌てて訂正しようとした所で、以外にもアルバインが嬉しそうな声をあげる。

「リョータ騎士団……いいではないですかマスター!!! これで私達が奮闘する事が晴れてマスターの名を輝かせる物となるのですから!!!」

「やめてあげてアルバイン!! 俺、羞恥心で死にそうになるから!!!」
「くくく……エエんやないの亮太さん? 有名になるって事は目立つと言うデメリットもあるけど、それだけ評価されるって事なんやから」

そう言って笑いを堪えながら説得する綾瀬の言葉に小心者の亮太が再び唸り声をあげているうちに、ヴァルハァムの兵士達がこうしている間にも攻めてきている事を知っているインゾはご機嫌を取りつつ、話を先に進めようとする。

「いやーリョータ騎士団!! 素晴らしい名前では無いでしょうか!! 所で、皆さんがこの様な小さな町に来られたのはお仲間を探しに来られたからですよね?」

「はい。私達はこの町に仲間達が3人捕らえられている事を知らされた為、ここまでやって来ました! 貴方達が無条件で彼等を引き渡して下さるなら、我々も貴方達に手をあげる事はしないと御約束しましょう」

圧倒的な軍勢を持ちながら、無罪放免に近いその破格の条件にインゾの心が強く跳ねるのだが、その条件を飲んでしまうと自分達が蹂躙(じゅうりん)されてしまう事が分かっている為に、インゾは必死になって頭を捻る。

「ま、待ってください! それではまるで我々が騎士様のお仲間を誘拐した犯罪者の様ではありませんか?!! 寧ろ我々は被害者なのですよ!?」

「何ですって?」

思わぬ返しに亮太が戸惑っている様子を見たインゾは内心で(よし、こいつは只のボンボンだ……)と侮り、隠していた牙を剥き始める。

「おやー? 御存知無かったのですか? 実は彼等は魔石を身体に取り込んでしまった、魔石中毒者でしてねー。魔石の影響で凶暴化した彼等が我々の町を襲撃してきたものだから、我々は多大な犠牲の元に彼等を捕縛せざるを得なかった訳なのですよ……。あそこを御覧なさい」

そう言ってインゾが指差した先にはこんもりと盛り上がった地面と、名前の刻まれた木の棒が何と60本近く立ち並んでおり。
思わず亮太が、「まさか……」と声をあげた所に被せる様にインゾが泣き真似をしながら相槌を打ってくる。

「うっ、ぐすっ……。彼等は無抵抗な民を容赦無く殺す野獣でした!!! あそこには……うっうっ……私の妹や、友人が無残な死体となった姿で埋葬されたのです……」

地面にへたりこみ、号泣しながら拳を地面に叩きつけるその迫真の演技は素人では見抜けないほどの見事なものであり。現にその悲痛な姿を見て、アルバインやシャルロッテが涙を流し。

後ろに控えている兵士達の何人かも貰い泣きしてる有り様であり。

その耳から入ってくる情報から手応えを感じたインゾは立ち上がり、両手を翼のように左右に広げて悲しみと怒りを籠めた声で亮太を追求してくる。

「貴方達に分かりますか?!! 無力な我々の苦しみが!? ただ大切な家族達が犠牲になる所を見ている事しか出来なかった我々の気持ちが!?」

「被害者の方々の苦痛は良く分かりました……彼等に対して心から謝罪します……」

俯き、両手を握り締めながらそう言った亮太の苦しみ様に、今回の事件が彼等によるものだと理解していた周りに居る一部の者達は、インゾをおだてあげる亮太のその演技力に感心する中で、味をしめたインゾはとどめとばかりに亮太に近付いて一言告げる。

「……着いてきてください。私達の家族を殺した者達をご紹介致します……」

そう言って彼は予想以上の効果を発揮したであろう自分自身の演技力に思わず酔いしれる。

(くく……くくく……。チョロイ!! チョロイ!!チョロイ !!チョロ過ぎる!! やはり今の俺には天が味方している様だ!!!
このまま奴等を利用してヴァルハァムの奴等と同士討ちにさせ、奴等の装備と捕虜を手に入れられれば我が王国は再びこの地に立つであろう!!! なんてな……くくくく……)

彼は気付けなかった、後悔と罪悪感に打ちひしがれていると思っていた亮太が顔をあげて自分の後ろ姿を鬼の様な形相で涙を流しながら睨み付けていた事を。

そして彼が紹介した墓の下に無念の内に眠っている人達が転生者達に殺されたのではなく、盗賊である彼等が来る以前まで平和に暮らしていた町の村人達全員の墓であり、彼等が虐げに虐げられた挙げ句に殺された民達である事を亮太とその騎士達全員に知られてしまっていた事を……。


「……各員、第三戦闘装備を着用せよ」
「「「ハッ!!!」」」

普段の亮太から出たとは考えられない程に低く、抑揚の無いその声で発せられたその使令に騎士達は亮太と想いを同じくして大きな声をあげて応え。
全4段階設定されている装備レベルの内、SRランクまでの装備を兵士達全員に解禁すると言うほぼ全力に近い三段目の装備を準備し始める。

その戦が始まる前の騒々しくも狂気をはらんだ光景を見て、思わずマリナが背を向けてミントの光が漂う煙草に火をつけている亮太を引き止める。

「亮太待って!! 感情的になったら危険だよ!! 彼等は詐欺師で、圧倒的な軍勢を相手に生き延びてきた相手何だから!!」

「ああ、分かっているよマリナ。だからこそ第三戦闘装備を身に付けさせているんだ……ふぅー」

マリナに背中を向けたまま亮太はそう語りつつもエメラルド色の粒子を放つ煙草の煙を吐き出す。

その態度に危機感を持ったマリナが亮太の前に回り込み、彼の顔を見て戦慄する。

まるで感情が削ぎ落とされた人形の様に無表情でありながら、視線はじっと町へと向かっていくインゾに向けられており、その姿は暗殺を行うスナイパーの様であった。

そんな亮太の隣に普段は温厚なアルバインが歩み寄って来たために、マリナは彼女ならば亮太を止めてくれると思い、パッと顔を輝かせて彼女を見るために振り返ったのだが。

「マスター、町に入場する為の6人一組の分隊を指定された通り30部隊作りました。残りの騎士達は周囲の警戒と、町の外をぐるりと包囲して援護をする遠距離支援部隊として活動して貰いますね」

「ああ、ありがとう」

そう伝えたアルバインの姿は、亡くなった方達を弔う為に祈りを捧げていた為に甲冑を脱いでいるにも関わらず、その口調は音声案内のように酷く落ち着いたものであり。
危険を感じたマリナはアルバインにも声をかける。

「アルバインちゃんも状況に流されちゃ駄目だよ! 奴等が何れだけの外道であったとしても、私達を混乱させられたとするならば彼等を喜ばせる物となってしまう!」

今は友人としたうアルバインを止める為に叫んだその言葉を聴いた彼女はマリナを抱き寄せ、震えた声で心情をつぶやく。

「うん……分かっているよマリナちゃん……。でもね、私……私……自分でもどうして良いか分からないの……。罪の無い町の人達を殺害した彼等の罪は決して許されない事だけど、私達が感情に任せて討ち滅ぼした所で亡くなった方達は戻ってこない……。
だからこそ私はマスターの意見に従うの……」

「亮太の意見?」

「はい。せめて、これ以上の犠牲を出させないように彼等を討ち取る……。それがマスターが私達騎士に下された使令なのです」

「そんな……」

そのやり取りを聴いていた綾瀬は何も言わず静かに亮太を見守っていた為、亮太は思わず声をかける。

「綾瀬さんはどう思いますか?」
「うち? せやねぇ、彼等のやっていた事はきっちりと出すとこ出して裁かれるべき案件やし、それに……このまま彼等を放っておけば更に不味い事になるよろうね」

その意味深な一言に思わず煙草を吸い終わり、吸い殻を粒子に代えて処分した亮太も振り返る。

「その不味い事とは何ですか?」
「実はね、彼等の体内から微弱やけど魔石の反応がしてるんよ。……あんだけヴァルハァム王国を相手に暴れまわっておきながら生き残ってきた猛者どもや、そんな奴等の魔石が暴走すればさぞかし良い働きをするやろうと思ってね」

その一言を受けて、周りの空気は凍りつく。何故ならば既に亮太達は魔石により暴走したラムセスと対峙した経験があり、彼はたった一人で島ひとつを壊滅に落とし入れる力を発揮しており。

その様な災害レベルの力を残虐な者達を核とした場合どうなるか全く予想がつかないのである。

「じゃあ……もう戦うしか無いの?」

そう辛そうに話すマリナに亮太も少しづつ心を動かされ始め、ある事を思いつく。

「……じゃああらゆる事に飢えている彼等を新たに製作する島に集めて生活させながら、再起を果たさせる事は可能かな」

そのアイデアにマリナは目を輝かせて同意する。

「良いわねそのアイデア! 彼等は元々自分達の自由と国家を追い求めていた訳だし!!」

しかし綾瀬とアルバインは反対の意見を述べる。

「うーん……島流しにしてもうたら余計に増え広がって驚異になるんとちゃう? あちらさん、物凄いヴァルハァム王国を恨んでると言うよりも、野生化している感じやし……」

「マスター、1度悪に堕ちた者は心から生まれ変わりたいたいと思える強い悔い改めと、その思いに応えてくれると心から思える相手がいなければとてつもなく難しいのです……」

それらの意見を聴いて脳内で纏めていた亮太であったが、ふと前を見ると100mほど先から何処か苛立ちながら大声をあげて亮太達を呼んでいるインゾの姿が見える。

「皆様がた!! 余りのショックに悩まれるのは分かりますが、早く来てください!!!」

その様子に更なる不信感を覚えた亮太は何故そこまで急いでいるのかと考えていた所で、上空からの偵察をたのまれているソルト達から連絡が入る。

《亮太さん聴こえる?》
「大丈夫、ばっちり聴こえているよ! 何があったんだ?」
《実は、砂漠を突っ切る形でヴァルハァム王国のチャリオットに乗ったおじさん達がそっちに向かっているみたいでさ!! 後、20分もしないうちにそっちに到着すると思う!!!》

この情報を得た亮太達は何故彼等があそこまで自分達を町に入れたいかを理解する。

「なるほど……奴等め、俺達とヴァルハァム王国軍を戦わせる事が狙いだったのか……。だとすれば早く転生者達を助けに行かないと不味いな……。ん?」

冷静さを取り戻した亮太が状況を分析し、何とかして本来の予定であった転生者達の救出作戦に集中しようとした所で、突然地図のデータが添付されたショートメッセージによる差出人不明の連絡が入る。

「何だこれ?」

そう言いつつ、恐る恐る視覚モニター内で開封されたその手紙には町の外れの小屋の中に転生者達が監禁されている事を示唆するメッセージと、目的地の小屋に赤い丸が書かれた地図のデータであった。

「“同じ転生者の仲間より”か……。トレノさんはこの人を知っているのだろうか?」


そのデータを皆で見る事が出来る様にするためにモニターに映して皆と眺めながら、亮太達はその差出人不明の相手をトレノに調べて貰う事にする。

すると驚くべき事にその差出人は救難信号を出していた5人の内で町から少し離れた場所でコンビで行動している二人の転生者であるらしく。

亮太達はそれに従って作戦を大幅に変更する事にする。

「各員、これより救助作戦を開始する。皆は町に居る者達を出来るだけ町から出られないように釘付けにして欲しい、その間に俺達が町の外れにある小屋にいる仲間を救出し離脱する。
ヴァルハァム王国の軍勢に対しては戦闘は控える様に、以上」

その命令を受けた騎士達は皆右腕を胸の前に組んで応え、それを確認した亮太達も町へと向かおうとするのであるが。

「あ、あんた達どういうつもりだよさっきから?! 早くついてきて欲しいと言っているではないか!!」

もちろんそんな事を一刻も早くヴァルハァム王国と亮太達を戦わせたいインゾが許すはずもなく、慌てて抗議をしに来るのであるが。

「すいませんインゾさん。俺達はヴァルハァム王国の方達と戦いたい訳ではないので、頼まれた仕事をさせて頂きますね?」

「な、何をいってやがーー」

インゾがそう言い終える前に亮太の手元が輝き出し、光が収まったその手の中には転送の杖が握られており。

「そんなに戦いたいならば、あんたが体を張って時間を稼いできなっ!!」
「まっ待ってくーー」

彼は光に飲まれてその姿を消してしまう。


ーーーーー◇ーーーーー


「あっ、あちちちち!!? な、何で目を開けたらこんな砂漠地帯に俺様がいるんだ?!」

インゾが跳ばされたのは町から一キロ程離れた、砂の凹凸が激しい砂漠地帯であり。

その中で状況が読めずには混乱させられるインゾであったが、不意に山の向こうからジェット機が上空を飛んでいく様な地響きと、音が聴こえて来たために思わず視線を砂山に向けると、驚くべき事にガトラス率いるチャリオットの大軍が砂山を勢い良く飛び越えてくる所であり。

「う、うわあぁぁぁ!!! うぎゃ!!」

彼はそのヌーの大軍に飲まれていく様に鈍い音を立ててからはその姿は見えなくなってしまい、残ったのは馬の(ひづめ)と、砂煙だけであった。


「今、何か当たりませんでしたか閣下?」

「ふはははは!! 安心しろアルダール!!! この砂漠を通る時は良く砂漠ネズミや、サボテンと接触する事はあるが人間はおらん!!! 
何故ならばこの砂漠を通る人間は奴等に襲われる事を懸念して、一年以上前からこの砂漠地帯を通る事は禁じられているのだからな!!!」

そう言いながら隣を並走するチャリオットに乗っているアルダールに告げたダグラスの視線の先に、何やら町中を覆うほどの白い煙りが焚かれている事に気付かされる。

その異常な光景を見て、彼等の中である情景が思い浮かぶ。

「……奴等、騎士達を捕まえて食しているのではあるまいな?」

現に食糧難に陥っている彼等の町では度々人肉を食らっていたと言う報告がなされていた事もあり、ヴァルハァムの兵士達の中で緊張と不穏な空気が流れ始める。

「急ぐぞ皆の者!!! 最悪の事態が起こるその前にぃ!!!」

彼等は長き遠征のラストスパートを駆けて、町を目掛けて突入していくのであった。更なる犠牲者をこれ以上出さない為にも。
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